EDF日本支部召喚   作:クローサー

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日間ランキング20位、ルーキー日間3位にランクインしてる…
え、どういう事?え?(滝汗)


第7話 エジェイ攻防戦

ロウリア軍東方征伐軍 東部諸侯団は、地獄の中に居た。

 

「ぎゃああああああ!!」

「うわあああああああああああっ!!?」

「逃げろ、逃げろぅあ゛ッ」

「俺の…俺の脚は何処に…」

 

城塞都市エジェイに向けて侵攻していた2万のロウリア王国東部諸侯団は、最早軍としての体を成していない。全員、生存本能に従って逃げ惑っている。

そのロウリア軍に向けて、EDF第4機甲部隊は攻撃を続ける。その苛烈な砲撃によって既にロウリア軍の8割は吹き飛ばされ、残りの2割に対して砲撃をしている。

30両のギガンテスの140mm砲、重装型ベガルタ10機のリボルバーロケットカノンと拡散榴弾砲、ネレイド10機のロケット砲、プロテウス2機のバスターカノンとミサイルランチャーによって、ロウリア軍を覆い尽くさんとばかりに連続した爆発が起こる。其処にタイタン5両の36cm砲が咆哮。巨大な砲炎を生み出した、戦艦砲という陸上兵器には有り余った火力は、着弾地点に一際大きいクレーターを作り出す。

爆発が起こる度に地面は耕され、付近にいたロウリア兵はまるで玩具のように宙を舞う。ある者は肉片となって周囲の地面や兵士を汚す。ある者は四肢を吹き飛ばされ、茫然自失となって更なる砲撃に吹き飛ばされる。ある者は幸運にも爆発の衝撃波を受けるだけで地面を転がるだけで済んだが、不幸にも次に飛来したタイタン主砲の直撃を受けて居なくなった。

 

その惨劇の中を奇跡的に生きていた、東部諸侯団を指揮していたジューンフィルア伯爵は呆然として見ていた。

今まで共に戦ってきた戦友、歴戦の猛者、優秀な将軍、家族ぐるみで親交のあった上級騎士。共に強くなるべく汗を流した仲間達。それら全てが、突如眼前に現れた未知の軍勢によって、無慈悲に、容赦無く消し飛ばしていく。

死にゆく部下達に唯々謝罪を繰り返していくジューンフィルアに、遂に砲撃が届く。タイタンの36cm砲の直撃を受け、その身体は一瞬にして消滅した。

 

 

 

 

 

 

「攻撃停止!」

 

第4機甲部隊長が号令し、全機からの攻撃が同時に停止する。

彼等の目の前に映るのは、彼等が作り上げた破壊痕が広がる大地。その大地に四肢を捥がれた死体や肉片が大量に転がり、その中から這い出る僅かな生存者達。

 

『隊長、どうします?』

「…これ以上は砲弾の無駄だ、それに今の攻撃を生き残った幸運な奴等──」

『緊急、緊急!!此方EDF日本支部宇宙局!!第4機甲部隊、大至急作戦地域から退避して下さい!!』

 

更なる指示を下そうとした所に、通信が横入りした。その慌てぶりから、何か重大な問題が起こった事は明白だ。

 

「此方第4機甲部隊、何があった!?」

『いいから急いで退避して下さい!!自律衛星ライカがっ!?』

 

空から一本の光線が舞い降りた。

 

 

 

 

 

 

自律衛星ライカ。

それはEDFがフォーリナー大戦前の2016年に打ち上げた、高性能AIを搭載した世界初の自律衛星兵器である。彼女はフォーリナー大戦の経験を経て「自我」に目覚めたAIに進化した為、EDFは彼女を完全な制御下に置いている訳ではない。しかしEDF日本支部転移を経ても尚、EDFを宇宙(ソラ)から見守り続けていた。

そんな彼女の趣味は、地球(転移惑星)と天体の観測だ。彼女はEDFからの指令がない間、様々な天体や地球(転移惑星)の気象や其処に住まう人々を見てきた。転移してもその趣味は変わらない。

そしてある日。彼女はEDF日本支部からの緊急の指令を受けて、クワ・トイネ公国の観測をしていた。その時に彼女は、ギムの殺戮を目撃したのだ。

 

──許せない。彼女の自我はそう思った。

 

その日から、彼女はEDFのネットワークに注視しつつ、指令通りにロウリア軍の動向を監視し続けていた。ひっそりと、自らに搭載した兵器の稼働準備を行いつつ。

そして遂に、その日が来た。クワ・トイネ公国のエジェイと呼ばれる都市から5km地点にて、EDF第4機甲師団がロウリア軍と交戦を開始するという情報が、ネットワークに入力されたのだ。そしてライカにも、ロデニウス大陸方面前線基地へ作戦地域のリアルタイム中継の指令が入った。彼女は忠実にその指令を守りながら、ある兵器のエネルギー充填を開始する。

 

彼女の眼前で、第4機甲部隊がロウリア軍に攻撃を開始する。まだ撃たない。エネルギー充填が充分でないし、何よりこの戦いの主役は第4機甲部隊だ。自分はその後詰で良い。

 

第4機甲部隊の攻撃によって、次々と吹き飛ばされるロウリア軍。まだ引き絞る。ライカの異変を察知したのか、EDF日本支部宇宙局とロデニウス大陸方面前線基地がライカの調査を始めた。しかしもう遅い。

 

第4機甲部隊が攻撃を終えた。今だ。そう判断したライカは隠匿していた己の行動を公開すると同時に、兵器のエネルギー充填率を急速に高める。ライカの独自行動にEDF日本支部は大慌てだが、心配は要らない。彼女が味方を巻き込むような事は決して行わないのだから。

 

次の瞬間、自律衛星ライカの主砲「メガリス」が発射。全リミッターを解除し、全エネルギーの80%を使ってまで出力を強制的に引き上げたそれは、光速で一直線にロウリア軍がいた地点中央に着弾し、直径約500mもの大爆発を引き起こした。

 

 

 

 

 

 

目の前で引き起こされた、万物を焼き尽くす大爆発に第4機甲部隊は足を取られた。

 

「うぉおとおおおおあっ!!?」

 

衝撃波と爆風によってギガンテスが僅かに傾き、重装型ベガルタは転倒を防ぐ為に咄嗟に片足を下げ、ネレイドは一瞬制御不能に陥る。しかしそれは僅か数秒の出来事。全機はすぐに立て直し、爆発が起こったそこを見る。土煙が晴れると、そこには第4機甲部隊の砲撃を上塗りするように巨大なクレーターが形成されており、そこに2万のロウリア軍がいたという痕跡は、全てが消失していた。

 

『無事ですか!?応答願います第4機甲部隊!!』

「此方第4機甲部隊。なんとかー…全機無事だ。それより説明を頼む。何があったんだ?」

『つい先程、自律衛星ライカより全リミッターを解除して主砲メガリスを発射するとの情報が、突如更新されてきました。急いで発射中止命令を発信しようとしたのですが、既にライカは最終発射工程を終えており…そして何より、ライカからの妨害で発射の強制中止も阻止されてしまったのです』

「で、この惨状か…なぁ、一つ確認なんだが。ライカはギムの殺戮を観測していたのか?」

『はい、司令部より指令を受けていました。…恐らく、其方が考えている通りだと思います』

「だよなぁ…」

 

EDF日本支部の全員がフォーリナー大戦のとある出来事をきっかけに、ライカは極めて「人間的」で「子供っぽい」事を知っている。それ故に、少し考えるだけで大凡のライカの行動の理由は分かるのだ。

彼女は、ある意味ではとても分かりやすい。

 

最後に想定外の事態は起こったが、エジェイ攻防戦は予定通り、EDFの完勝で幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

同日夜、クワ・トイネ公国政治部会。

軍務卿からの要請により、首相カナタの権限によって緊急政治部会が開かれる事となった。その理由は勿論、対ロウリア王国の防衛戦争が議題である。現在の戦況報告も行われる予定で、城塞都市エジェイでの戦いは政治部会内でも関心が極めて高く、もしも陥落していた場合、ロウリア王国は首都までの侵攻ルートを確保した状態となる。それ即ち、クワ・トイネ公国は絶望的な戦いを強いられる事となるのだ。

 

既に政治部会の会議場は満員。其処に各軍部の幹部が入室した。陸軍幹部が壇上に上がり、流れる汗を拭きながら戦況報告を開始する。

 

「お待たせしました。それでは…今回の城塞都市エジェイ西方5km地点の平原で行われた戦闘について、報告いたします。既にご存知の通り…数日前、エジェイ西側5km地点にロウリア軍の兵約2万が現れました。この数は城塞都市エジェイに駐屯する我が軍より少なく、先遣隊であると推測されます」

 

ここまでは、政治部会に出席する者は知る者は多い。問題はこの先だ。

 

「EDF日本支部は、丘下に第4機甲部隊と呼ばれる陸上機械の集団を配置してロウリア軍を待ち伏せ、奇襲攻撃によってこれを殲滅しました。その攻撃内容なのですが…少し信じられないような内容となっています。しかしこれは軍関係者のみならず、現地の民達も目撃しているらしく、駐屯兵に何度も確認を重ねたのですが…」

 

一拍置き、口を開く。

 

「猛烈な爆裂魔法の投射と思われるEDF日本支部の攻撃により、5分と経たない内にロウリア軍は壊滅的被害を被りましたが、その攻撃直後に一際大きい、直径300m以上もの大爆発によってロウリア軍2万は「消滅」しました。現地からの報告書には『広範囲が瞬く間に爆発して、ロウリア軍は成すすべなく殲滅された』、そして魔導師の報告書によれば『爆発は高威力爆裂魔法と思われるが、今回の攻撃に参加したEDF日本支部第4機甲部隊の兵士の数は僅か63人であると通達されており、仮に全員が大魔導師であったとしても、作り出すのは不可能な程の高威力、広範囲の爆発だった』と記録されています。…尚、本戦闘に於いて我が軍及び民間人の死傷者は無し。ロウリア王国軍の被害は約2万人及び馬2000頭と推定されます」

 

会議場が静まり返る。

 

「…ちょっと、質問があるのだが」

「何でしょうか?」

「EDF日本支部はどのような攻撃を行ったのだ?」

「『第4機甲部隊による殲滅攻撃を行った』という報告書を提出しています」

 

会議場の誰もがそういう事を聞いているんじゃない、という心の声が一致した。中には顔を真っ赤にして怒りを露わにさえしていた。国の存亡がかかった戦いの報告会に、作り話を聞かされたと考えたのだ。

 

「巫山戯るな、一体何を言っている!!EDF日本支部はたった63人の兵士で、2万人もの軍団を5分で殲滅させたというのか!?そんな魔法は古代魔法帝国のお伽話でしか聞いたことが無い!!」

 

その怒号が終わるのを待って、首相カナタが手を挙げて騒めく会場を静まらせる。

 

「手元の資料を、見てほしい」

 

EDF日本支部から安く輸入した、上質な紙束が各議員に配布される。

その表紙には、「ロウリア王国首都制圧作戦計画書」と記されていた。

 

「EDF日本支部は、我が国から出立させる軍勢でロウリア首都を制圧し、ロウリア軍指揮系統の頂点に立つロウリア王を捕らえる事で、戦争の早期終結を行いたいと提案してきた。それと並行してエジェイとギムの間に展開されているロウリア王国クワ・トイネ征伐隊と、ギムの西側国境より我が国内を東に進撃する敵に対し、地上部隊を投入して殲滅したいとの事だ。敵主力がギムを拠点としている為、殲滅がもし成功すれば我が軍も軍を送り、ギムを確実に奪還したいと思う」

 

突然の議題の飛躍に、威勢の良かった議員達も顔を見合わせた。EDF日本支部を否定していたものの、クワ・トイネ公国軍だけでは戦争を行う事さえままならなかったのだ。其処に戦争の早期終結まで見込めるとなったら…自分の立場をどうすべきか、冷静になる議員達。

 

その後政治部会は、全会一致でEDF日本支部軍の、国内及びロウリア領の陸海空全域に於ける戦闘の許可を決議した。

 

 

 

 

 

 

「司令。クワ・トイネ公国は例の作戦による領内及びロウリア領内の軍事行動を許可しました」

「うむ…それでは、始めるとしよう。第3師団に連絡を」

「了解しました」

「戦術士官。オメガチーム、ストームチームに出撃命令。作戦目標はロウリア王の捕縛だ」

「分かりました」




用語解説&状況説明

自律衛星ライカ
リアルタイムの衛星偵察だけを行う筈が、AIが勝手に主砲を発射。第4機甲部隊の攻撃によって既に死に体だったロウリア王国東部諸侯団を、文字通り消滅させてクレーターを作った。
主砲メガリスの威力は本来もっと弱いが、ライカが全リミッターが解除かつ全エネルギー80%を主砲メガリスに使用した為、この様な威力に。

オメガチーム
EDF日本支部の精鋭部隊。フォーリナー大戦ではリロード出来るレーザーライフルを装備し、大量のフォーリナーを地に叩き落として巨大生物を血祭りに上げた。
そのレーザーライフルを寄越せオメガチーム。ストームチームのレーザーライフルはリロード出来ないんだぞ。

ストームチーム
EDFの最終兵器。彼等が出撃すれば如何なる敵も滅ぶ。数千の巨大生物でも、50m級の超巨大生物でも、フォーリナーの輸送船団でも、果てにはマザーシップでもストームチームには勝てなかった。
正確には、ストームチームを率いるたった1人の兵士に、フォーリナーは負けたのだ。

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