EDF日本支部召喚   作:クローサー

32 / 46
ヤマト条約締結より、半年後。


第20話 彼等の行動

世界は、大きく変わりつつある。

 

その始まりは、中央暦1639年8月の事だった。

第二文明圏ムー大陸の西…西の果てに突如としてある国家が現れる。

 

その名は、グラ・バルカス帝国

 

通称を第八帝国とする彼等は、周辺国の第二文明圏外国や列強国への接触を開始。しかし第二文明圏の多くの国が攻撃的であり、尚且つグラ・バルカス帝国への認識が文明圏外国ということもあって各国にさんざん軽くあしらわれ、遂には第二文明圏列強国 レイフォルの保護国であるパガンダ王国が、国交開設に出向いていた皇族を含んだ使者団を処刑する事件が起きた。この事件にグラ・バルカス帝国は遂に怒り、パガンダ王国を含んだ第二文明圏への侵略を開始。パガンダ王国を僅か4日間で滅ぼす。保護国を滅ぼされた第二文明圏列強国 レイフォルはこの行動に怒りを表し、グラ・バルカス帝国に対して軍事行動を開始した。列強最弱国とはいえ、それでも100門級戦列艦や竜母を含んだ43隻の艦隊。これだけでも並の文明圏の海軍は敵わなかっただろう。

 

しかし、グラ・バルカス帝国はそれを遥かに超える超兵器を投入したのだ。

レイフォル艦隊殲滅の為に出撃したのは、「グレード・アトラスター」単艦のみ。しかし300mを超えるその巨体に搭載された武装と能力は恐るべき戦闘能力を発揮し、レイフォル艦隊を20分足らずで殲滅。その勢いそのままに、グレード・アトラスターはレイフォル首都 レイフォリアに向かい、全力攻撃を開始。その結果レイフォリアは灰燼に帰し、レイフォル皇帝は居城にて砲撃に巻き込まれて死亡。残存した軍部はグラ・バルカスに対して無条件降伏。戦争勃発より僅か3日間でレイフォルは滅亡。グラ・バルカス帝国はレイフォルを自国領に編入し、入植を開始。

グレード・アトラスターが単艦でレイフォル艦隊43隻を撃滅し、その足でレイフォル首都レイフォリアを焼き尽くして列強国を滅ぼした事は、この世界の歴史に激震を起こし、グレード・アトラスターは世界最大最強の艦として恐れられる事となった。

 

 

それからたった2ヶ月後、今度は東の果てで同等以上の激震を走らせる事件が起こった。

中央歴1639年11月12日12時、世界のニュースにて「イーディーエフ」と名乗る国家が、突如第三文明圏列強国 パーパルディア皇国に宣戦を布告したのだ。この発表に対し当初の各国はイーディーエフを、侵略を開始する前のグラ・バルカス帝国と同じように文明圏外国と認識して、勃発した戦争はパーパルディア皇国が勝利するだろうという予想が世界共通だった。

ところが予想に反してパーパルディア皇国は僅か数日で工業都市デュロが陥落。直後に皇都エストシラントにグレート・アトラスターを遥かに超える巨体を持った超巨大戦艦が出現し、エストシラントに駐屯していた海上及び航空戦力を殲滅。そして超巨大戦艦からラヴァーナル帝国のコア魔法にも匹敵する威力の砲撃が警告として放たれ、パーパルディア皇国に無条件降伏を突きつけた。その力に屈したパーパルディア皇国は、「ヤマト条約」と呼ばれる終戦条約を締結させられ、全属領を失うだけでなく、軍の縮小や魔導技術の喪失等多大な代償を支払い、列強の座から転落する事となった。

そして独立した72ヶ国の元属領国家群は、イーディーエフの主導の元「フィルアデス連邦」を建国。技術提供等を受けて急速に発展しているという。

 

世界は震えた。

第二文明圏の列強国が併合された矢先に、今度は第三文明圏の列強国が降伏に追い込まれ、第三文明圏が事実上イーディーエフの支配下に置かれたのだ。残された第一文明圏、第二文明圏の国々はイーディーエフとグラ・バルカス帝国に対する警戒を強め、調査を開始する。

 

しかしその成果は殆ど上がらない。それは、両国が共通して閉鎖的であるという事に起因する。

グラ・バルカス帝国は、当初の接触に於ける各国の対応が原因で、完全に他国不信となっていた。自国領化もしくは隷下となった国に対して以外、積極的な交流は一切行わず、本国の位置は徹底的に秘匿している。対してイーディーエフは、既に第三文明圏の21ヶ国と国交を結んでおり、その調査はグラ・バルカス帝国と比べれば容易だった。しかし此方もイーディーエフの本国(日本列島)に入れる者は事実上皆無な状態であり、果たしてどのような国であるのかは、人聞きする以外に方法が無かった。そしてフィルアデス連邦を含めて殆どの国々がイーディーエフをよく知らず、その力の庇護下に入る為に国交を結んでいるだけだった為、結果として大した事は分からずじまいだった。

辛うじて分かったことは、フィルアデス連邦の復興速度と街並みの景色から推測される、隔絶された技術力を保有しているという事実と、皇都エストシラントにやってきた超巨大戦艦の存在のみだ。

 

確実に言えるとしたら、パーパルディア戦争より約半年が経過した現在の世界は、平和だ。

 

 

 

 

 

 

クワ・トイネ公国。

EDF日本支部がこの世界に転移した直後に、初の接触が行われた国家。天然食料に飢えていたEDF日本支部にとって、天然食料が腐る程にある国家が天然食料を(EDF日本支部から見て)超安値で輸出してくれているのはとてもありがたい事であり、EDF日本支部の対応は地下資源を輸出しているクイラ王国と同等の最恵国待遇であり、EDF日本支部が国交を結んでいる国の中で唯一、インフラ整備と駐在軍の両方が行われている。それ程にEDF日本支部にとってクワ・トイネ公国は大切な国であり、クワ・トイネ公国もEDF日本支部によって国を発展させて貰い、そしてロウリア戦争の際に国を救ってくれた恩があった。

だがその内心は、少しの恐れがあった。

ロウリア戦争の際にクワ・トイネ公国を救う為に参戦したEDF日本支部は、その力で50万のロウリア軍を殲滅するのみならず、ロウリア王国の各都市を壊滅させ、ロウリア王国を滅亡させた。その光景を目の前で見ていたクワ・トイネ公国は感謝よりも恐怖が優った。もしあの力がこの国に向けば、ロウリア王国と同じ運命を辿る事となると。

しかしそんな懸念と恐れとは真逆で、EDF日本支部は純度100%の笑顔でこれまでの対応を変わらず続けてくる(ロウリア戦争の後始末の殆どは此方に丸投げしてきたが)。それを暫く見続けていたクワ・トイネ公国は「此方がとんでもないヘマをしなければ大丈夫だ」という確信を得て、これまでと変わらぬ対応を続ける事とした。

そして現在では、EDF日本支部の援助もあって第三文明圏外国とは思えぬ繁栄を遂げ、国はとても豊かとなった。EDF日本支部の駐在軍があるとはいえ、依存し過ぎると万が一の際に大変な事になりかねない為、軍の増強もゆっくりではあるが行なっている。そしてフィルアデス連邦建国後、遂にEDF製兵器の輸出が開始。旧式の兵器かつ少数なれど、その威力は極めて強力であり、急速にクワ・トイネ公国は軍事力を増強しつつあった。

今もクワ・トイネ公国はEDF日本支部へ天然食料を送り、国を豊かにする努力を怠っていない。

 

 

 

 

 

 

アルタラス王国。

かつての第三文明圏列強国、パーパルディア皇国の隣国であり、パーパルディア戦争勃発の安全装置を外した国でもある。

パーパルディア戦争勃発前、アルタラス王国はパーパルディア皇国の半保護国的な立場に置かれていた。その国力差を背景に、パーパルディア皇国は毎年奴隷の献上を要求して来ていたが…今年は何を思ったのか、国の発展の中枢であるシルウトラス鉱山の献上と、王女ルミエスの奴隷化という余りにも理不尽な要求を突きつけてきた。しかもルミエスの奴隷化に関しては、第3外務局所属在アルタラス大使の私的な要求という、国家として余りにも度が過ぎた傲慢な物であった。

当然アルタラス王国の国民達は怒り、例え王国が滅んだとしても列強に痛烈な一撃を与える事を望み、そして国王も愛する娘を守る為にパーパルディア皇国との戦争を決意した。普通なら、戦う前から負けが確定している絶望的な戦争。しかしアルタラス王国は一つ、何よりも強烈な幸運があった。

 

それは開戦より僅か1ヶ月前に、EDF日本支部と国交開設と防衛軍事同盟を締結していた事だ。

 

アルタラス王国は即座に、防衛軍事同盟に基づいた参戦要請を行い、EDF日本支部は即座にそれを承認。その日の内に、アルタラス王国を通じて世界のニュースに向け発表する声明文を届け、アルタラス王国はそれを確かに通達した。しかしアルタラス王国にとっても、まさかEDFが、パーパルディア皇国相手に単独で、かつ先手を打つ形で宣戦布告までするのは想定外だった。とはいえアルタラス王国には、目の前の事に集中するべく、全軍を召集し守りを固める以外に選択肢が無かった。

しかしその直後、アルタラス王国の危機を知ったEDF日本支部が派遣した、最新鋭艦の要塞戦艦ヤマトが到着。アルタラス王国を見守るように首都ル・ブリアスの上空に留まり、アルタラス王国に住まう全員が、その力強い姿を目と脳裏に焼き付けた。

その2日後。パーパルディア皇国の艦隊を撃滅する為、不動であった守護神(ヤマト)は遂に動き出し、ゆっくりとル・ブリアス上空を周回し始めた。それを見ていたアルタラス人達は、パーパルディア皇国に対し鉄槌が下される日が遂に来たのだと、改めて確信。特別な感情を持って、着水してパーパルディア皇国に向けて航海していく守護神の姿を見送った。

 

更に数日が経過した頃、世界のニュースよりパーパルディア皇国の無条件降伏とその属国72ヶ国の独立が宣言された。そしてその直後、EDF日本支部より改めてパーパルディア皇国の降伏と、「パーパルディア皇国との終戦条約によって、アルタラス人の即時返還が約束された」という連絡が届いたのだ。

この大吉報に、アルタラス王国は湧いた。EDF日本支部はアルタラス王国の亡国の危機を救っただけでは無く、憎きパーパルディア皇国を完全に屈伏させた上、今まで奴隷として送られていた国民達が戻ってくるというのだ。湧かない筈がない。奴隷とされた全員が今まで過酷な環境に置かれていた為、一部の者は栄養失調や怪我等などの治療を完了するのに少しの時間を必要としたが、そんな事は些細な事。

数週間後。EDF空軍が所有する旅客機を総動員して元奴隷のアルタラス人が、全員が待ち望んでいた帰還を果たした。しかし元奴隷の全員が帰還出来た訳ではない。鉱山などの過酷な環境に耐え切れずに死んでいった者達や、パーパルディア人の拷問(娯楽)によって死んでいった者達も居た。しかし、その仇もEDF日本支部が取ってくれた。

そして奴隷返還と同時にパーパルディア皇国より送られた使者による謝罪と賠償金、元アルタラス王国大使のカストが引き渡された。その後、カストは当然のように死罪を宣告され、王城前広場にて首を刎ねられる事となる。

 

パーパルディア戦争を通じて、アルタラス王国にとってEDF日本支部は余りにも大き過ぎる恩を持つ国であり、アルタラス王国最大の友好国となる。

現在のアルタラス王国では、人々の記憶に深く焼き付いた守護神を讃える、様々な芸術品や絵画などが作られている。中にはフルーツを山盛りに盛って盛って盛り上げた「ヤマト盛り」なるフルーツ盛り合わせを開発する変わった者もいるらしい。

 

 

 

 

 

 

一方、フェン王国。

此方はアルタラス王国の様子とは変わって、やや不穏な空気を保ったままだった。

何故なら、フェン王国は第三文明圏国に於いて唯一、EDF日本支部との国交開設が出来ていないのだ。

その理由は、やはりフェン軍祭に於ける出来事だろう。その少し前から、フェン王国はパーパルディア皇国との紛争になる可能性が出てきていた。そんな時に接触してきたEDF日本支部に対して剣王シハンは、力を見極める為に自国の事情を隠し、海軍の親善訪問と、もうすぐ開催される軍祭に参加して欲しいと要請した。

その結果EDF海軍は、フェン軍祭の途中にやってきたパーパルディア皇国監察軍の攻撃に巻き込まれ、ワイバーン20騎と監察軍を殲滅して、その力を見せ付けた。しかし、フェン王国が自国の事情を話さなかったために、このような危険に晒されたEDF日本支部の心象は極めて悪化。国交開設の交渉は打ち切りとなり、再度交渉を試みようと準備している間にパーパルディア戦争が勃発。EDF日本支部はそれに掛り切りとなって国交開設の交渉に一切見向きもしなかった。

パーパルディア戦争終了後、今度はフェン王国が出向いて国交開設の交渉に挑んだが、やはりフェン軍祭の事が足を引っ張って全く交渉の目処が立たない。むしろEDF日本支部が門前払いにしないだけまだ良心的だと思えるレベルだ。こうしている間も、フェン王国は第三文明圏の中で孤立した国になりつつある。

フェン王国の受難は続いている。そしてその苦労が報われる日が、果たして来るのだろうか?

 

 

 

 

 

 

そして、EDF日本支部。

パーパルディア戦争を通じて消費した弾薬の補充、使用した兵器のメンテナンス、保護した元奴隷の治療と引き渡し、フィルアデス連邦の復興と発展協力、兵器開発部の暴走阻止(へ殴り込み)…戦争が終わっても、やる事は大量にある。戦争が終われば書類戦争。EDF日本支部は、種類を問わなければ毎日何かしらの戦争を行なっているものだ。

しかしこれも、10年前のフォーリナー大戦と比べればどれ程平和な事か。あの地獄の記憶がまだ真新しい(蘇る)彼等にとって、戦後処理の苦労など大したそれでは無い。

EDF日本支部も、パーパルディア戦争を通じて状況は大きく変わりつつあった。パーパルディア戦争前に結んでいた国交は僅かに20だったが、パーパルディア戦争にて解放した72ヶ国を一つの国家としたフィルアデス連邦と国交を結び、今現在では21ヶ国もの国と国交を結び、事実上第三文明圏をEDF日本支部の支配下に置く状況となった。

その影響力は、第三文明圏に於いては最早この世界の大国と同等。結果的にここまでの影響力を手に入れた訳であるが、ここでEDF日本支部の戦略部の一部が、ある戦略を提言した。

 

それは、「第三文明圏全体の要塞化」。

 

その提言は、余りにも性急過ぎるもの。日本列島でさえ10年かけても完全な復興、完全な要塞化を施すにはまるで足りていない。もしこの世界でフォーリナーを相手取るのならば、現状のEDF日本支部では戦力、人材、弾薬、技術力。その全てが不足しているのだ。だからこそ他国との関わりを必要最低限にしてEDF日本支部の戦力を増強させているというのに、いきなり21ヶ国に対しての要塞化を行える訳がない。技術啓蒙、武器輸出、インフラ整備等を21ヶ国に行うのは無理だ。

しかし、この提言が完全に却下される事は無く、フィルアデス連邦のみに限定して実行される事となった。やはりフォーリナーに備えるのならば、EDF日本支部単体ではあの戦力に敵わない。フォーリナー大戦は、全世界に極めて大きな爪痕を残して漸く勝利をその手に収める事が出来たのだ。この世界では、殆どの国がEDF日本支部より技術力が遥かに劣っている。故に戦略部の提言は、短期的に見るより超長期的に見るならば、間違っているどころか「一つの正解」でさえあるのだ。

そして今回建国されたフィルアデス連邦はほぼ一からのスタートであり、下地が全く無い。つまりEDFの技術啓蒙を行うには極めて都合が良かったのだ。フィルアデス連邦の人口は約2億6000万人。これだけの人間がEDF技術の啓蒙を完了すれば、EDF日本支部は貴重な友好国を手に入れて貴重な人材を多数輩出する事が可能となるだけでなく、一個の大陸で兵器や弾薬の製造、兵士の育成が可能となるのだ。余りにも魅力的なメリットの前に、EDF日本支部は第1、第2師団と交代する形で第4師団及び工作部隊をフィルアデス連邦に派遣。独立保証を掛けると共に全力の支援を開始したのだ。

まだ課題は多く、その最適解は全く見えない。しかしEDF日本支部は、出来る限りの事を成していくだけだ。備えあれば憂いなし、とは言うが、彼等のそれは幾ら備えても、仮想敵(フォーリナー)の前には未だ足りてないのだ。

 

 

 

 

 

最後に、フィルアデス連邦。

パーパルディア皇国より独立した72ヶ国が、EDF日本支部主導の元に一つの国家となり、首都をマルタ州(元マルタ王国)に置いた新興国である。長くて数十年もの間パーパルディア皇国の苛烈な搾取を受け、そこに有ったのはボロボロになった人々や掘り尽くされた鉱山、痩せた土地に荒れた畑、ボロ小屋同然の町並みのみだった。しかしEDF日本支部より送られてくる強力な技術提供や復興支援、パーパルディア皇国からの莫大な賠償金により、僅か半年でフィルアデス連邦は列強国にも劣らぬ繁栄ぶりを見せつつある。現代的な建物、科学技術を元にしたインフラ整備、安定した食料提供等、EDF日本支部の惜しみない努力により、僅か半年でこの世界の準列強国並みの国力を獲得しつつあった。

そうなれば、人間は余裕が生まれ始める。そうなれば、同然考える暇も無かった事や考えた事もなかった事を考えるようになる。

 

そしてフィルアデス連邦内に共通していたその感情は一つの、途轍もなく強力な憎悪だった。

 

フィルアデス連邦が、その行動を起こすのは必然でもあった。

力を溜め、兵士を鍛え、戦略を作る。軍属経験がある者など殆どおらず、素人ばかりの試行錯誤。それでも彼等は殆どEDF日本支部に頼る事なく、自分達だけで行なっていく。場合によっては頼り切りも良いのかもしれない。しかしこればかりは、出来る限り自分達だけでやり切る事を決意していた。EDF日本支部もその意思を汲み取り、それに対しては特に口出しする事も無く、淡々とフィルアデス連邦に物資を届け続けていた。

ギリギリまで国力を増強し、兵士を鍛え、戦略を形成し、確認、確認、確認。何十何百にも及ぶ再確認の後、遂にフィルアデス連邦は動いた。

 

 

 

 

 

 

パーパルディア皇国の国境より10km北地点。

其処に存在する平野は今、いつもとは全く違う光景と雰囲気を見せていた。

整列するフィルアデス連邦の兵士達約5万。その全員が旧式のEDF製アーマースーツに身を包み、その両手にはアサルトライフル AF14やロケットランチャー スティングレイM1等が握られている。

 

彼等の前に、1人の男が立つ。

その男の名は、クーズ州出身 フィルアデス連邦第一方面軍司令官 ハキ。彼はパーパルディア皇国が支配していた半年前まで魔石鉱山の鉱夫であったのだが、フィルアデス連邦建国後は軍属に所属。かつてのクーズ王国にて名の知れた騎士爵の家の血が流れていたのと、感情的になりやすいハキの有効なストッパーになる副官のイキアの存在もあり、才能を開花。今では、約5万の兵士を率いる司令の座にまで上がっている。

 

確かに戦う事を願ったとはいえ、流石に此処までの立場までは望んでいなかった。そう思いながらも、ハキは自分の役目を果たす為、右手に握られたマイクのスイッチを入れ、スピーカーに音を入れた。

そして、言葉を紡ぐ。

 

「諸君…遂に、この時が来た」

 

最初は静かに、しかしその感情を抑え切るのは全く出来なかった。

 

「我がフィルアデス連邦は、イーディーエフの援助とパーパルディア皇国の賠償金により、僅か半年で列強国にも劣らぬ繁栄を見せつつある。しかし、我々は未だに自立して何かを行えた訳でもない。今現在も、こうして此処に立っているのもイーディーエフの援助が無ければ不可能だった。しかし、今から我々は、誰に言われるまでもなく、我々だけで行動を起こす時がやって来たのだ」

 

「我々はかつて、72ヶ国に分かれていた。其々が己の国を想い、様々な争いを続けてきた」

 

「我々はかつて、家畜以下の存在だった。パーパルディア皇国に飲み込まれ、数十年もの間傲岸不遜なる支配と搾取を受け続けていた」

 

「しかし今は違う。我々は「人間」だ!!それ以外の何者でもなく、それ以外の畜生でも無い!!」

 

「我々は今、団結している!!72ヶ国であった時代にあった諍いなどはもはや存在せず、ただ一つの目的に我々は猛進する事が出来る!!」

 

「かつて我々を支配していた暴君は牙を抜かれ、只々緩やかな滅亡の時を歩むだけの存在となった!!しかし、ただ緩やかに滅んでゆくというだけで、奴等が我々に行なってきた事を赦せるのか!?」

 

「否、否、否ァ!!断じて赦せるか、赦せるものかぁっ!!」

 

「諸君らに問う!!奴等に相応しい末路は何だ、奴等に相応しい滅びは何だ!!」

 

刹那、5万の兵士が口を開け、スピーカーの音量を遥かに超えた総音量で応えた。

 

『殲滅だ!!徹底的な殲滅だ!!!!』

 

「そうだ、その為に今我々は此処にいる!!我々は遂に、報復の機会が与えられた!!今この瞬間だけは、人を捨てろ!!奴等の全てを喰らい尽くす獣となり、奴等の全てを蹂躙し、破壊し、殲滅しろ!!

 

兵士達も最早その感情を抑えきれず、5万の叫声が響き渡る。

その様子に満足し、ハキは後ろを…パーパルディア皇国の方向に振り返る。そして何も持っていない左手にAF14を持ち、最後に叫んだ。

 

「全軍!!進撃開始!!!!」

 

それが、最後の引き金となった。

 

 

 

 

 

 

中央歴1640年7月9日。

フィルアデス連邦はパーパルディア皇国に対し、宣戦布告および殲滅戦を宣言。

同時に、フィルアデス連邦軍25万が5方面よりパーパルディア皇国へ侵攻を開始した。




「Machine Gun ft. GUMI English」という曲があるのですが、この戦争にはピッタリかもしれませんな。

用語解説&状況説明
フィルアデス連邦
「必ずあの国を滅ぼしてやる」
EDF日本支部の支援を受け、パーパルディア皇国に対して宣戦布告及び殲滅戦を宣言。同時にフィルアデス連邦軍25万が侵攻を開始。
ちなみに25万という数は、現在アメリカ軍が配備している兵士数を超えている。(Wikipedia調べ)

EDF日本支部
フィルアデス連邦に技術、復興、軍事支援を行なっている。フィルアデス連邦の行動も知っているが、特に口を出す事は無かった。

パーパルディア皇国
ヤマト条約によってボロボロな状態になっているところにフィルアデス連邦の宣戦布告(殲滅戦)を受けた為、慌てて軍の防衛配置を開始。

クワ・トイネ公国
EDF日本支部の力に少し怯えながらも、順調に天然食料輸出中。とはいえ、クワ・トイネ公国の懸念はまず起こり得ないのだが。

アルタラス王国
パーパルディア戦争にて、EDF日本支部に亡国の危機を救ってくれたのみならず、元属国に居たアルタラス人を救出してくれたお陰で、今現在もお祭りムード。国王はフィルアデス連邦の宣戦布告を把握し、どうするか検討中。
一瞬ターラ14世を雑に病死させようかと考えたが、結局存命。ルミエスに不幸は降りかかる事は無かった。

フェン王国
アルタラス王国とは真逆に扱いが悪くなった。そしてフェン王国の苦労は多分報われない。

 ▲ページの一番上に飛ぶ
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。