EDF日本支部召喚   作:クローサー

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今回は閑話です。初のギャグ風味に挑戦。

※2020/2/3、一部を改訂しました。彼女が此処に居ない理由が無かった。


閑話 事件再来(改)

ロウリア王国との戦争が終結し、再び平時となったEDF日本支部。

その一室。所狭しに様々な機器と書類の山が大量にある中、唯一広々とスペースが確保されているテーブルの周囲に、数十人の男女達が一堂に会していた。

 

「全員、集まったね」

 

彼等は、EDF兵器開発部の者達。EDF創設時からあらゆるEDFの兵器の設計図を引き、そしてフォーリナー大戦時からはフォーリナーテクノロジーを吸収して利用し、様々な超兵器を作り上げてきた天才達だ。彼等無くして、EDFがフォーリナーに勝利する事は絶対に不可能だったと断言出来る。

そしてその男達は、基本的にこうして集まる事は無い。何故なら彼等は其々設計図を引く種類が違う。ある者はレンジャー、ある者はウイングダイバー、ある者はフェンサー、ある者はビークル(大型兵器)、ある者は艦船、ある者は…いや、これ以上は長くなり過ぎる故に割愛する。

 

…ちなみに、今から行われようとしている会議の音頭を取ろうとしているのは、かの有名な篠ノ之束だ。

そこ、嫌な予感がするとか言わない。

 

「それじゃ、会議を始めようか…」

 

兎に角。各人の殆どが異なる分野の兵器設計者である以上、こうして集まる理由はそれ相応の事だ。

例えば、兵器開発部全体で各人が引いた設計図に関する意見交換。兵器開発部に与えられた予算の各人への配分決定。

 

そして…

 

 

「第1回、新型かんしゃく玉兵器開発会議を!!」

『応!!』

 

上層部の忠告に懲りず、新型のかんしゃく玉兵器をまーた開発している時くらいだ。

 

「皆!ようやく新しい増額予算が降りたよ!これも全て1t級クラスター式かんしゃく玉爆弾が実戦に於いても有効だと認めてくれたからこそ!!ならば私達が開発するべき新兵器とは何ぞやぁ!!」

『かんしゃく玉だ!!』

 

その答えは絶対に違う。

 

「そう、私達は新たなるかんしゃく玉兵器を開発する!!偉い人達(上層部)は我々が作り上げたかんしゃく玉を「暇潰しの遊び道具」と揶揄した!だけどそれは違う!!私達は全身全霊を以って、最高傑作のかんしゃく玉を完成させたんだ!!」

 

それこそ只の遊び道具じゃねぇか、とツッコミを入れられる者はここに存在しない。

 

「私達はかんしゃく玉に秘められた可能性を諦めたりはしない!!現にEDF空軍は、今戦争でかんしゃく玉という力を存分に発揮させた1t級クラスター式かんしゃく玉爆弾を使用した!本来はスーくん…じゃなくてレンジャーの為だけの物であったにも関わらず!!」

 

その本来の意図でさえ、どのレンジャーもかんしゃく玉なんて珍兵器は手に取った事は無い。ましてやストームリーダー(スーくん)さえも、そんな珍兵器を手に取った事さえも無い。

 

「なら!!それ以外の兵器でもかんしゃく玉の威力は確実に発揮出来ると私は確信してる!!ロケットランチャー、グレネードランチャー、ミサイルランチャー、ギガンテス、イプシロン装甲レールガン、タイタン、グレイプ、ネグリング自走ロケット砲、ネレイド、ベガルタ、プロテウス!!ありとあらゆる兵器にかんしゃく玉の可能性を求め、実現しようじゃないかぁ!!!!」

『おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』

 

…馬鹿と天才は紙一重というが、この者達(大馬鹿共)に限っては「馬鹿と天才が同居している」と言った方が良いだろう。

 

「それじゃあ!!今から各人の持ち込んだ意見発表タァイム!!」

 

誰か、この馬鹿共を止めてくれ。

 

 

 

 

 

 

EDF予算委員局。

地球と人類を守る為に存在するEDFだが、彼等の側には常に天敵が潜んでいる。

 

金である。

 

理想は幾らでも強い武器や兵器を量産出来るのが一番なのだが、それをしようにも希少素材の入手やら生産ラインの確保維持などにも兎に角金がいる上、フォーリナー大戦時に製造技術が失われ、現在に於いても再生産が不可能となっている武器もある。その1つがストームチームのレンジャーが標準装備としているAF100だ。

故に限られた予算の中で如何にEDFの発展を行い、より良い装備改良やメンテナンス等を行う為に各部局が頭を下げるのが、EDF予算委員局である。

今日も予算委員局員は、各部局から届いてくる様々な予算申請書類が届き、1枚1枚の内容を熟読して許可か却下の判子を押していく。それは局長も例外ではなかった。

 

「局長、兵器開発部より特別追加予算の使用許可申請書類です」

「分かった、そこに置いといてくれ」

 

手元に置いていた数枚の書類を処理し、兵器開発部から届いた書類を手に取る。

 

「さて、貴重な追加予算を一体何、に………………」

 

その書類の内容を見た途端、局長の動きがカチンと膠着した。瞬きどころか呼吸さえも数秒忘れたその驚愕。それは徐々に憤怒へと変換されて行き。

 

 

「ふざけんなあの大馬鹿クソ兎がぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

書類を握った右手に力が入って書類がグシャグシャになるが、そんな些細な事が気にならない程に大きな怒号が室内に響いた。

その書類には、シンプルに要約すればこう書かれていた。

 

 

新しいかんしゃく玉兵器作るから予算ちょーだい♡ by篠ノ之束

 

 

予算委員局に喧嘩売ってるのか あの兎(篠ノ之束)は。

 

 

 

 

 

 

その後はまぁ当然と言える事だが、兵器開発部は怒りの予算委員局長の突撃を受けた。

此処からは余りにも大惨事な為、詳しい描写を省かせてもらう。

 

 

「貴様らぁ!!この書類は一体どういう事だぁ!!」

『予算委員局長!?なんで此処に!!』

「貴様ら、ていうか篠ノ之博士が出した特別追加予算使用許可申請書の内容に決まってるだろうが!!新型かんしゃく玉兵器なんぞ作らせる訳がねぇだろ、もっと有効性が高い兵器を開発しろ!!」

「その言葉は聞き捨てならないよきょくちょー!!私達が作り上げた1t級クラスター式かんしゃく玉爆弾、ロウリア戦争でその威力を発揮したじゃん!!」

「新しいかんしゃく玉兵器がそれと同様の有効性を発揮出来るとは限らないだろうが!!試しに1回だけでもシミュレートに掛けた事があるのか!?」

 

『………………………』

「…………テヘペロ☆」

 

「テヘペロ☆じゃねぇんだよこの大馬鹿兎ィ!!!!数年前のかんしゃく玉事件を忘れてると思ったら大間違いだからなぁ!!!?やってねぇなら余計この予算下ろす訳にいかねぇだろうが!!第一予算が無尽蔵にあると思ったら大間違いだ!!予算が欲しいのは貴様らだけではない、他部局も1円でも多くの予算を欲しがってるんだぞ!?」

「うるせぇ催涙かんしゃく玉投げつけるぞ!!」

「逆ギレする上になんで既に新しいかんしゃく玉あるんだよテメェ!!ていうかお前と話してるんじゃねぇすっころんでろ阿呆!!!!」

「自腹で作ったんだから何の問題も無い!!良いですか局長この研究開発はかんしゃく玉の可能性を広げるだけでなく」(ポロッ)

『あ゛っ!?』

 

シュバ!!(篠ノ之束、無言の退避)

ボンッ!!(催涙かんしゃく玉暴発)

 

『ギィヤァ目がァァァァァァァァァァァァ!!!?』

 

 

…これ以上は当人達の名誉の為、割愛させて頂く。既に手遅れのような気もするが。

この後、予算委員局長は兵器開発部の説得に折れ(というよりは予算委員局長の方から行なっていた説得を諦めた)、特別追加予算の使用許可を出した。

特別追加予算の使用許可を予算委員局長よりもぎ取った兵器開発部はその後、総員の力を結集させて新たなるかんしゃく玉兵器開発に着手した。

無駄に洗練された無駄の無い無駄な兵器を作らぬように、開発は大胆かつ慎重に行われた。今回の研究開発はかんしゃく玉兵器化事件とは違い、完全に「対フォーリナー兵器」として開発される。故に開発経緯には盛大な遊びが入っていたとしても、その破壊力には一切の妥協をしない。故に本格的な兵器開発の意見交換には一切遊びは無く、その表情はEDFの最高頭脳を誇る研究者達のプライドと誇りを持ったソレであった。

朝も昼も夜も、徹夜も厭わずに続けられた新型かんしゃく玉兵器の研究開発。それが実を結ぶのは約2週間後の事だった。

 

 

 

 

 

 

「…で、その新兵器の試射をこれなら行う訳だが…どう思う?」

「…期待もありますが、かなりの不安もあります」

「同感だ」

 

日本海に浮く要塞空母デスピナの艦橋にて、その会話は行われていた。艦長山本と副艦長が共に見ているのは、主砲の51cmレールガン連装砲。

先日、兵器開発部から届いた新型兵器「対地対空両用近接信管型キャニスター式かんしゃく玉砲弾」、通称かんしゃく玉砲弾の試射が日本海にて行なわれようとしていた。対地目標としてクワ・トイネより購入した木造船20隻、対空目標としてドローン100機を10km先の海域と上空に配置していた。着弾観測には安全な場所で待機しているセントエルモ級イージス戦艦と、わざわざこの為に呼び寄せた自律衛星ライカによって行われる。

 

なお砲弾受領の際、何故か同行していた某兎博士によると「2週間不眠パゥワーで作り上げたスーパーアルティメットウェポンの品質はこの私が保証するのだー!!」との事。

…これで不安を感じない者が、果たして居るのだろうか?

 

「艦長、レールガン連装砲の発射準備が完了しました。いつでもどうぞ」

「うむ…では、発射!!」

 

艦長の号令により、4基8門の51cmレールガン連装砲からかんしゃく玉砲弾が発射。その威力を充分に発揮する為に弾速を抑えて曲射されたそれは、目標船団へと向かっていき──

 

 

 

後に、試射を終えた第7艦隊よりEDF日本支部に届いた報告書には、こう記載された。

 

『対地対空両用近接信管型キャニスター式かんしゃく玉砲弾は一応の成功と見做して良い。しかし対地用としてみるならば大落角の曲射を必要とし、角度計算が通常射撃よりも長時間になり、尚且つその見返りに合う威力とは言い難い。逆に対空用としてみるならば、超音速で撃ち出された砲弾の衝撃波よりも広範囲を掃討可能であり、結果対空ミサイルの節約に繋がる。51cmレールガン連装砲の他に、セントエルモ級イージス戦艦及びアイオワ級フリゲート艦の主砲弾の量産を行えば、より濃密な対空弾幕を展開可能と考える。この為、対地対空両用よりも対空専用砲弾に特化した改良を希望する』

 

この報告書を元に兵器開発部は更なる改良を施し、「対空用近接信管型全方位拡散式かんしゃく玉砲弾」と改名された新型かんしゃく玉兵器が完成。後に勃発するパーパルディア戦争にも使用される事となる。

 

 

 

 

 

 

余談ではあるが、後日。

 

「ヤッホースーくn」

「正座」

「えっ」

「正座」

「あの、スーくん…?」 

「正座」

 「はい」

 

EDF兵器開発部の一室にて、予算委員局長からまたしても愚痴を数時間聞かされる羽目になったとある兵士によって、とてつもなく大きな雷を落とされる兎の姿が目撃されたらしい。




パーパルディア戦の事を考えつつ感想欄見直してたら、かんしゃく玉の事で頭が一杯になってしまった…

用語解説&状況説明
兵器開発部
今回の全ての元凶。天才ではあるのだが盛大な馬鹿達が集う。

篠ノ之束
一言言うまでもないが、またやらかした。

予算委員局
EDFの財布を握るオカン的な立ち位置。その為普段から各部局より届く大量の書類と戦争している。局長がブチギレたのも、普段から続く書類戦争によるストレスに1割くらいの原因がある。
残りの5割くらいは多分兎関連だろう、うん。

催涙かんしゃく玉
兵器開発部の1人が自腹で開発した非殺傷のかんしゃく玉。マトモに受けると悲惨な事になる。

対空用近接信管型全方位拡散式かんしゃく玉砲弾
今回の話を執筆する際に爆誕した、新たなるかんしゃく玉兵器。
詳細な解説は現時点で行なわない。いずれ本砲弾の餌食になる者達が現れるだろう。

第5章ルート選択

  • 辺境の魔王(寄り道ルート:執筆難度↑)
  • グ帝接触編(本編一直線ルート:難度→)

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