EDF日本支部召喚   作:クローサー

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閑話だけどシリアス。


閑話 蠢く者達

フィルアデス連邦の宣戦布告と殲滅戦を知るのは、何も当事者達だけという訳が無い。

フィルアデス連邦の復興及び軍事支援を行なっているEDF日本支部は当然知っている事だし、見捨てたとはいえスパイ等の諜報手段をパーパルディア皇国(元友好国)に残していった国もあった。

 

その筆頭と言えるのは、神聖ミリシアル帝国、ムー、リーム王国の3国だろう。

 

神聖ミリシアル帝国とムーは、其々が第1文明圏(中央世界)と第2文明圏の列強国であり、国力も1、2を争う超大国である。それ故に列強国同士としてパーパルディア皇国と国交を結び、大使館や国民の駐在も行われていたのだが、先日のEDFとの戦争による急激な没落とEDFの武力の前に、震撼した。両国は共にこの世界の魔導技術と科学技術の頂点に君臨していた為、写真技術やそれに相当する魔写技術を保有しており、僅か数日間でパーパルディア皇国に現れ、刻み込まれた戦闘の傷跡の撮影に成功し、それは直ちに本国に届けられた。

工業地帯が丸ごと廃墟になったデュロ、グレード・アトラスターがまるで小舟になるようなサイズの超巨大戦艦、その戦艦の主砲が咆哮する瞬間、そして砲撃によって一帯が吹き飛ばされてクレーターとなった写真。其れ等のインパクトは尋常ではなく、特に超巨大戦艦の主砲の威力は、神話の時代、全世界を支配していたと言われるラヴァーナル帝国が保有していたと言われる「コア魔法」と言われる古代魔法に匹敵するとの分析結果が出た。しかも現地の調査員によれば、着弾地点には一切の魔力反応は検出される事が無かった。つまり、少なくとも超巨大戦艦の主砲には魔導技術は一切使用されず、純粋な科学技術であれ程の威力を発生させたという事実が突き付けられた。

この事実の前に、ムーは騒然とした。ムーが現在保有している最新鋭戦艦 ラ・カサミ級でさえも主砲口径は30.5cmだというのに、超巨大戦艦の推測主砲口径は80cm以上。グラ・バルカス帝国のグレード・アトラスターでさえも38cm以上だと推測されているのに、この超巨大戦艦はその2倍。射程距離も考えると、最早勝負以前の問題だった。

神聖ミリシアル帝国も似たようなもので、特にこの国は「魔導技術は科学技術よりも圧倒的に優れている」と信じられていた為に、その衝撃はムーを超えていた。しかも主砲の威力がラヴァーナル帝国のコア魔法並みと分かった瞬間、上層部は「ラヴァーナル帝国が再臨したのではないのか」と半ばパニック状態へと陥った。そのパニックも、追加報告によって収まることとなったが、直ぐに頭を抱えることとなる。

まず、件の超巨大戦艦を保有する国家と敵対するのならば、必ず超巨大戦艦が現れるだろう。殆どの能力が未知数だが、それでも主砲の威力は知れ渡っている。其々が保有する大艦隊を密集してぶつけようとすれば纏めて吹き飛ぶ事は目に見えている上、そもそも撃沈出来る程の戦力を抽出した所で、一体何隻が生き残れるのか…

 

結局のところ、EDFとは無闇に敵対するべきではないという結論となるが、EDFの本国の入国は固く閉ざされている。それ故にまずは事実上の属領となっているフィルアデス連邦と国交を結び、其処に建てられているEDF日本支部の連絡館の門を叩き、国交締結の交渉を持ち掛ける事となった。

 

 

そしてリーム王国は…神聖ミリシアル帝国やムーとは違って列強国ではないがそれに近い、いわゆる準列強国の軍事力と軍事技術を保有していた。これはパーパルディア皇国が隣国であり、かの国の拡張政策に飲み込まれないように軍需産業に力を入れていたのが大きい。しかしそれ故にパーパルディア皇国の影響を多大に受けており、パーパルディア皇国と同じく領土拡張政策を国是としていた。

その為、パーパルディア皇国が大敗北し、全属領が独立して国力が大幅なダメージを受けた事は、リーム王国が動き出すには十分な理由となった。しかしリーム王国は直ぐに動かず、冷静に分析した。まずパーパルディア皇国の元属領はフィルアデス連邦として建国され、パーパルディア皇国を電撃的に敗北させたEDFの強力な支援と独立保証が掛けられており、フィルアデス連邦に宣戦布告は自殺行為。かといって弱り切ったパーパルディア皇国に攻め込もうにも、間にはフィルアデス連邦があって地続きの侵攻は不可能。海からの侵攻を行おうにも、海軍の力は弱く、大軍を輸送する力も無かった。

その為、海軍を増強しつつチャンスを伺っていたのだが…突如としてフィルアデス連邦がパーパルディア皇国に宣戦布告を行った事が現地のスパイより判明し、フィルアデス連邦に味方する形で火事場泥棒をしようと陸軍の動員を行ったのだが…此処でフィルアデス連邦は、彼等にとっては驚きの行動を取った。

リーム王国とフィルアデス連邦の国境地帯にフィルアデス連邦軍の大軍が配置され、あらゆる銃口がリーム王国軍に向けられていたのだ。

リーム王国軍は驚き、王都に連絡。まさかの事態に慌てた上層部はフィルアデス連邦に外交官を派遣したが…最早門前払い。「直ちに軍を引かせろ。さもなければ我が国に向けた、宣戦布告無き侵略行為と判断する」と通達されただけだった。

 

そう、リーム王国はフィルアデス連邦に何の連絡もする事なく軍の動員をしていたのだ。

 

フィルアデス連邦軍が国境地帯で待ち伏せられたのも、万が一に備えてフィルアデス連邦の隣国の監視を行っていたライカが通報し、EDF日本支部より情報が通達されたからだ。

フィルアデス連邦はリーム王国の動きを「自国への侵略行為」だと思い込み、しかし反撃しようにも殆どの戦力をパーパルディア皇国に投射した後であった為、警告して撤退してくれる事を期待し、すぐの攻撃は却下されたという経緯を持つ。

そんな事情も知らないリーム王国は、現在の状況で強行突破すればEDFが出てきてしまうと判断し、侵攻計画を中止。リーム王国軍が撤退する事によってこの一件は解決する事となる。

 

しかし。この戦争を見守っているのは、なにもこの3ヶ国だけという訳でもない。

 

 

 

 

 

 

パーパルディア皇国 城塞都市アルーニ郊外。

フィルアデス連邦軍によって火の海になりつつあるその街を、丘の上からビデオカメラで撮影している男がいた。そのビデオカメラからコードが伸び、男が持つ通信機に接続されている。

 

「おーおー…ひでぇもんだ。ちゃんと見えてっか?」

『はっきりと見えています。…全データ、受信完了しました』

「で、どうなんだ?そっちの分析結果は」

『…技術力、国力共に此方を上回っていると推測されています。特にあの巨大戦艦は驚異という他にありません。一切の放射能も検出されなかった以上、核技術も不使用で核弾頭に匹敵する運動エネルギーを投射しているとしか考えられませんでしたし』

「…運動エネルギーだけであんな威力が出るのか?」

『我が国でも、理論上で非核大量破壊兵器の研究はされていますが…これ程の物は想定外です』

「…」

『しかも半年で30万以上の兵士に対して兵器が十分に行き渡る程の工業力。たとえ旧式兵器であったとしても、途轍もなく脅威です。質と数を両立されられれば、我々は押し潰されるのが目に見えています。幾らあの人でも、一度に相手取れる数には限度もありますし…』

「そうならない為に、俺たちがこうしてるんだろ。それとも、何だ?お前はそうなるのが望みか?」

『まさか。選択肢が無いならまだしも、あるのなら最前を尽くすだけです。3年前のあの戦争をもう一度やるか、この世界(・・・・)で起きている戦争をやるかと言われれば、私は後者を選びますよ』

「全くもって同感だ。人類全員で地獄に引きずり降ろされるよりゃマシだ」

 

ビデオカメラの画面から目を離し、肉眼で火の海となったアルーニを見る。

 

「だから、まぁ、そうだな。彼奴ら(パーパルディア人)には全く同情心が湧かねぇな」

 

 

 

 

 

 

日本列島 関東地方某所。

 

「…周辺に動体反応無し。行ける」

「よし、直ぐに乗り込め。遅れるなよ」

「そっちこそ」




用語解説&状況説明
神聖ミリシアル帝国&ムー
フィルアデス連邦の宣戦布告前、EDFとの国交を結ぶ為にフィルアデス連邦と国交を結び、フィルアデス連邦内にあるEDF日本支部の連絡館にて国交締結交渉を行う。

リーム王国
パーパルディア皇国に対して火事場泥棒をしようとした所、事前連絡を怠った上にEDFからの事前連絡が行われたせいでフィルアデス連邦が過剰反応。このままじゃEDFが介入してくると判断し、止むを得ず中止する事に。

第5章ルート選択

  • 辺境の魔王(寄り道ルート:執筆難度↑)
  • グ帝接触編(本編一直線ルート:難度→)

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