EDF日本支部召喚   作:クローサー

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予想以上に長くなってしまった上に予告詐欺になってしまった…


閑話 蠢く者達 2

フィルアデス連邦とパーパルディア皇国が戦争を行なっている最中。

EDF日本支部は何をしているのかというと、フィルアデス連邦に対する後方支援(物資提供、復興支援)と、日本列島の要塞化及び新型兵器の開発。つまりは殆ど普段通りの事を勤しんでいた。というよりも、それがEDFとしてやるべき事でもある。

現在こそ「国家」の形を取っているが、本来は「地球防衛軍(Earth Defense Forces)」であり、そもそも国家との外交などは素人同然。それも当然の事であり、そもそも転移前の地球には、フォーリナー大戦によって国家という物は存在しなくなっていたのだ。故にEDFは外交などというものを必要とせず、ただ地球防衛に勤しむ事が出来た。

しかし異世界転移などという想定外の事態により、EDF日本支部は即席で国家としての体を取らざるを得なくなり、現在に至る。順調そうに見えて、その実は極めて危険と言わざるを得ない。繰り返すようだが、フォーリナー大戦によって国家という概念は失われた事により外交というスキルは不要となり、政治家という職業そのものが無くなった。その為EDFは外交面において「言葉の遊び」というのを察する事が非常に厳しい。それ故に下手に外交を広げず、ゆっくりと日本列島及び勢力内国家の増強を行なっている。

勢力圏外の国家に対しては、入念な準備が整うまでは一切触れず、向こう側から接してきた際には極めて単純な方針を取っていた。

 

我々(EDF)の方から裏切る行為は絶対にするな。しかし相手が裏切ったなら容赦するな」

 

その方針は全くブレる事なく機能しており、侵略国家故に絶対的な敵対国家となったパーパルディア皇国は、EDF日本支部の強力な軍事支援を受けた元属領のフィルアデス連邦によって殲滅戦を受け、そのパーパルディア皇国との戦争にEDFを巻き込もうとしたフェン王国は、EDF側の信用を失い、今現在も国交締結は行われていない。今現在も隣国となったフィルアデス連邦の連絡館に現れては国交交渉を持ち掛けている。が、実際の所その交渉は無視してるようなものだ。EDFの信用を失っている以上、深刻な事態が起きない限りは国交を結ばず、余計な情報流出及び兵器流出のリスクを減らす。

7000万を切り捨てて2億6000万人の団結を得るか、70万を生かして3600万人の命(日本列島)が危険に晒される可能性を僅かにでも上げるのか。EDF日本支部は冷徹にその天秤を見極め、選んだ。例えその判断が如何に冷酷だと言われようが、彼等は「必要悪」と切り捨てる。そもそもとして、現在のEDF日本支部の力で全人類を守るのは全くもって不可能(・・・・・・・・)だと言わざるを得ない。転移前の地球でさえ、フォーリナー大戦後の人類内戦に於いても、全人類を護る為に1億4700万人もの人命を切り捨てた。そして世界復興に於いても、EDFは極一部の復興不可能地域*1を切り捨てた。

 

とどのつまりは…EDFとはいえど護れる命には限界があるという事だ。

 

そして彼等は、善悪の区別無く救いを齎す天人という訳でもない。彼等もまた、れっきとした「人間」だ。

 

故に彼等も、彼等なりの天秤を持ち、彼等なりの善悪の基準を以って救うべき者を、切り捨てるべき者を選ぶ。

 

そうして切り捨てても、フォーリナーの前には絶対的に戦力が不足する。幾ら力を蓄えようが、幾ら兵士を揃えようが、フォーリナーはそれを上回る物量と質の波で以って押し潰しに来る。勿論、それに対して何も対策を取らない訳もなく、今現在もEDF日本支部は新型兵器の開発には一切の余念を残さない。

 

そして今。天災達(兵器開発部)の手によって生まれた兵器が、空を飛んでいた。

 

 

 

 

 

 

日本列島 関東地方上空1000m。

積雲の下を、2機の戦闘機と多数の無人機が飛行していた。戦闘機の外見は、コックピット部分まで装甲化されている事以外、現在EDFが主力戦闘機として採用しているファイターと殆ど変わらないだが、その中身は全くの別物だ。

 

 

その機体のプロトコードネーム(試作名)は、「ノスフェラート」。

 

ルーマニア語では「吸血鬼」という意味を持つ言葉。その言葉の通り、ある種ではそのような姿で一()当千の活躍を行えるという事を期待して付けられたと言ってもいい。

ノスフェラートは言わばファイターに究極の改修とチューニングを施した機体であり、その操縦難度とコストパフォーマンスから、エースパイロット専用機となる事を前提として開発された。

まず性能面で見ると、機体全体の大幅な改修と最新テクノロジーの導入によって機動力は大幅に増加し、ファイターとのドックファイトでは圧倒的な機動力を見せつけ、ファイター20機を圧倒する程の実力を見せつけた。最新の対飛行ドローンシミュレーションでも望外の活躍を見せつけ、後述の性能も相まって単機で5000機の飛行ドローンを殲滅した。

武装は殆ど変わらないが、30mmレーザー砲2門は信頼性の都合から20mmガトリング砲に換装された。

此処までは普通の戦闘機の改修と変わらないが、此処からがこの機体が「ノスフェラート」と呼ばれる所以となった、最大の特徴であり、強さでもある。

それは、無人機管制機能。

ノスフェラートには統合コンピューターシステムが搭載され、小型無人戦闘機「マーレボルジェ」の管制が可能となった。マーレボルジェは元々、即戦力の航空戦力として開発された為に、その性能はEDFの戦闘機と同等…いや、小型機かつ必要最低限の武装(20mmガトリング砲1門、ミサイルポッド2基)しか積まれていない為、機動力はノスフェラートをも上回る。しかし無人機である以上、人間のような複雑な機動や攻撃を行うには些か限界がある。大型機や基地からの遠隔管制を行うのも考えられたのだが、それではフォーリナーが繰り出すジャミングに対抗出来るかが不透明だった。そう、マーレボルジェはせっかく作ったのは良いが、いざシミュレーションなどを行ってみたら運用するには大きな問題が出てきてしまったのだ。

故に、天災達は考えて考えて考え抜いて、「戦闘機にマーレボルジェを管制させ、「一機飛行団」を作り上げる」という発想を閃いた。戦闘機を母機として、マーレボルジェが子機となって母機の盾と矛となる。これならばフォーリナーのジャミングにも影響無く、最大限の戦闘能力を発揮すると考えられたのだ。勿論戦闘機である以上、管制は最低限で、しかし最大限の戦闘能力を発揮する事を求められる。故に天災達は早期開発を諦め、マーレボルジェのAIの進化に力を注いだ。

苦節4年の時を経て進化を遂げたマーレボルジェ。そしてそれに合わせて統合コンピューターシステムやノスフェラートのコックピットインターフェース技術も進化し、円滑な管制と機体操作を同時並行でスムーズに行う為に、コネクション・フォー・フライト・インターフェース・システム…通称「コフィンシステム」が導入された。これはパイロットの手に装着された電極等を通じ、間接的に機体の制御系とパイロットの神経網を接続。機体外部のカメラ等から情報を摂取し、スティックやペダル等による旧来の操縦方法に頼らない、搭乗者の思考による航空機の直感的な機体制御を可能とした。更に統合コンピューターシステムに連携することにより、マーレボルジェの迅速かつ精密な管制を可能とする。このシステムの導入により、コックピットはキャノピーではなく装甲によって覆う事が可能となり、パイロットの生存性向上に繋がった。

以上の無人機管制機能とコフィンシステムの搭載により、完成当初のノスフェラートとは比較にもならない戦闘能力を獲得。その代償としてコストパフォーマンスも段違いに増加する事となり、名実共に「エースパイロット専用機」として誕生する事になったのだ。

 

 

ノスフェラート2機を中心に、48機のマーレボルジェが編隊を組んで飛行する。

単機で最大24機の管制を可能とする為、このような光景が生まれているのだが…計50機の戦闘機が一個の飛行群として飛行している光景など、EDFとはいえども中々見れる事ではない。

 

『あの天災達、よくもこんな兵器を作れるもんだな。戦闘機でこんな芸当が出来るなんて誰が想像できるってんだ』

『それは同感だが私語は慎め、ガルーダ2。まだ試験運用の途中だ』

『此方ガルーダ1、予定地域に到着。これより戦闘試験の準備を行う。ガルーダ2、合わせろ』

『はいよ』

『ガルーダ隊。一応言っておくが、火器の使用は厳禁だ。万が一が無いよう、シミュレーションモードの確認を行え』

『…ガルーダ1、システムオールグリーン』

『ガルーダ2、システムオールグリーン』

『よし、ガルーダ1。配置に』

 

ガルーダ1の機体と管制下にあるマーレボルジェ24機が加速。仮想戦争訓練に於いて、約20km地点から模擬空戦を行う流れだ。そのまま超音速飛行に入り、距離を取り始める。その矢先だった。

 

『…ん、何だ今のは?』

 

ガルーダ隊を誘導していた空中管制機(AWACS)、コードネーム ゴーストアイが妙な声を挙げた。

 

『どうした、ゴーストアイ?』

『ほんの一瞬、レーダーが何かを捉えた。念の為観測データを精査する。ガルーダ隊は待機してくれ』

『了解』

 

ガルーダ1はスロットルを緩め、乱れた編隊を再構成。そのまま現空域に留まる事、数分。

 

『此方ゴーストアイ。観測データの精査の結果、やはり100分の1秒間だけレーダーが何かを捉えている。反応はガルーダ隊から見て東側約230kmを推定800km/hで飛行中。ガルーダ隊は直ちに不明物体の捕捉に向かえ』

『ガルーダ1よりゴーストアイ。不明物体がこの世界の原住生物…つまりは知能が高い生物だった場合、対応はどうする?』

『…相手が凶暴な生物でもない限り、下手な刺激を行なって怒らせる必要は無い。遠くから見守る以外に最善はないだろうな』

『了解。これより不明物体の捕捉に向かう。シミュレーションモード解除、全部装チェック…完了。行くぞ、ガルーダ2』

『フォーメーションは?』

『デルタ16、ロッテ1』

 

その瞬間、マーレボルジェが編隊を再構成。ガルーダ隊のロッテ編隊を中心として、3機編隊のデルタフォーメーション(三角形編隊)を16個構成する。この間、僅かに30秒。

 

『再編成完了』

『アフターバーナー、彼我の距離を一気に詰める』

 

コフィンシステムを通じて思考出力された操作情報はがフライ・バイ・オプト(操縦補助システム)を介してノスフェラートに入力。刹那としない間にスロットルは全開となって大出力が解放され、約60秒の時間をかけて最高速度のマッハ4に到達する。無論、マーレボルジェも母機に合わせてマッハ4で追従する。

 

周辺に50のソニックブームという爆音と衝撃波を走らせながら、彼等は一直線に西へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

マッハ4の速力で目標海域に到達するのは、僅か5分。

 

『ゴーストアイ、反応はあるか?』

『…いや、今の所再捕捉は出来ていない。それと悪い知らせだ。どうやらこの空域周辺は磁気嵐*2が発生しているらしい。最悪目視の方が役にたつかもな』

『マジかよ…』

 

コフィンシステムによって全方位に視界を得ることが出来ているとはいえ、所詮は目視。万全状態のレーダーよりも頼りないのは言うまでもない。しかしレーダーが役に立たなくなってしまうのならば、目視に頼る他に無くなってしまう。

 

『…いや、方法はある。マーレボルジェを周辺に展開し、レーダーを同期させるんだ。そうすれば磁気嵐の影響下でも、ある程度はマトモにレーダーが使えるかも知れない』

『確かに、それならやってみるのも良いかもな』

 

マーレボルジェが周辺へと散開を開始。瞬く間に周辺300kmに即席のレーダー網が形成され、同期。その強度は空中管制機にも劣らぬ程のそれだ。

 

『ゴーストアイ、レーダー同期を』

『少し待て………準備完了、これよりレーダー同期を開始する』

 

更に本職(空中管制機)の同期も合わさってレーダー強度はさらに増し、遂にそれを捉える。

 

『見えた。ガルーダ隊を起点として方位010、距離60kmを800km/hで飛行中。高度3000m地点だ。直ちに急行してくれ』

『了解、これより急行する。警告はどうする?』

『原住生物である可能性もある。目視で確認後に行う』

 

スロットルを上げ、スーパークルーズ(超音速巡航)に移行。散開していたマーレボルジェと合流しつつ高度3100mに移動し、十数分の飛行の後、遂にそれを目視する。

 

『………此方ガルーダ2、目標を目視。積雲に上手く隠れながら顔を出してやがる』

『こっちも見えた…航空機だな。カナード翼機の大型双発機が2機だ』

『そのまま監視を継続してくれ。これより全周波数で警告を促す、ロックオンはまだするな』

 

『此方はEDF空軍空中管制機ゴーストアイ。日本列島上空を飛行中の所属不明機に警告する。お前達は現在EDFの領空を侵犯している。直ちにこの通信に応答するか、速度を600km/hまで減速し、此方の誘導に従え。繰り返す──』

 

 

 

 

 

 

『…いつの間にバレていたのか。仕方ないとはいえ、レーダーが使えないのも考えものだな』

『そんな事を言っている場合じゃないだろ。…どうする?』

『此処で戦うっていう選択肢もあるが…無意味に敵対感情を植え付ける訳にも行かない。切れるカードは全くないが交渉して、その後に振り切るしかないだろ』

『全く、今日は厄日だな…』

『我々の活動の成果で世界の命運が変わるんだ、そんな文句は心の底に閉まっておけ』

*1フォーリナー大戦により、それまで人類が建造していた石油プラントや原子力発電所など、事故が起きれば周辺地域に甚大な被害を及ぼす施設が多数破壊された。その結果、海は石油や産業廃棄物で汚染され、陸は放射能汚染や大気汚染が深刻な問題となった。大戦後、フォーリナーテクノロジーの恩恵もあって、殆どの地域は除染に成功しつつあった。しかしその頃になると、各汚染発生源地域は余りにも汚染が深刻化しており、完全な除染は不可能となった。その結果、EDFは世界各地の汚染発生地点周辺を「復興不可能地域」に指定し、無用な人間の立ち入りを禁止した。日本列島における復興不可能地域は、主に原子力発電所が存在していた地域であり、その箇所は11箇所にも及ぶ。

*2この世界では不定期的に原因不明の磁気嵐が発生し、規模によっては通信やレーダーに障害を引き起こす場合がある。魔導技術ならば影響は出ないのだが、科学技術を使用するEDFにとっては無視できない問題であり、対ジャミング対策の更新も急がれている。




用語解説
ノスフェラート(元ネタ:エースコンバット CFA-44)
試作開発されたエースパイロット専用次世代機。最新鋭テクノロジーによる改修によって機動力が大幅に向上したことに加え、コフィンシステムと統合コンピューターシステム導入により、無人戦闘機 マーレボルジェを最大24機を管制することが可能となった。これにより、「一機飛行団」を形成する事が可能となり、大幅な空軍戦力の増加が期待されている。

マーレボルジェ(元ネタ:エースコンバット マーレボルジェ)
4年前に開発された無人戦闘機。武装は20mmガトリング砲1門、ミサイルポッド2基と貧弱だが、機動力はEDF空軍随一。更に高性能AIの搭載により、管制支援を受けるだけで強力な戦闘能力を発揮する事が出来る。しかしシミュレーションにて運用上の問題が発生し、4年間の改修と進化を経て、ノスフェラートの子機として実地試験運用に至る。

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