EDF日本支部召喚   作:クローサー

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さぁ、ゆっくりと始まっていきますよ第3章。

追記(書き忘れてただけ)
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第3章 静かな火種
第11話 国交交渉


第三文明圏と呼ばれる地域の中に、フェン王国という国がある。

日本列島とフィルアデス大陸の間にある縦150km、幅60kmの勾玉状の島。そこに人々は集い、小さな国が出来た。

フェン王国には魔法は存在せず、代わりにフェン王国の国民全員は剣を学ぶ事を義務とする。剣を極めし者は例え出生がどれだけ見下される者であろうが尊敬され、逆に剣に弱き者は、どれ程の美貌であろうとも軽蔑される。剣に生き、剣に死ぬ。その体現の文化がフェン王国の何よりの特徴と言えよう。

 

その首都 アマノキと呼ばれる街の中心部に、「天ノ樹城」と呼ばれる城がある。

木造で出来た…見る人が見れば和風とも言えるその城の広場に、フェン王国剣王 シハンはフェン王国軍の中枢幹部を集め、真剣な面持ちて話し始めた。

 

「パーパルディア皇国と…紛争になるかもしれん」

 

端的に発せられた剣王の言葉はその場にいた者達の予想を上回るもので、緊張が走るには十分な言葉であった。

 

まずフェン王国には、魔法が存在しない。

魔法が存在しない事によって生じる1番の問題。それは魔法を扱う魔導師が放つ事が出来る高火力な攻撃魔法を使う事が出来ない…と言うことではない。それはこの世界に於ける通信手段「魔力通信」が使えない事だ。

人によってはたかが通信方法、だと思うだろう。しかし軍事的に見れば、「遠方からでも一瞬で会話が可能となる」事は極めて重要だ。

(報告)(連絡)(相談)」という言葉があるように、軍事行動中…つまりは戦いの中で何処の部隊が勝利したか、何処の部隊が敗北したか。何処の戦線が敵戦線を突破出来たか、何処の戦線が突破されてしまったのか。これらの情報は1分1秒でも早く伝達する必要がある。この情報伝達速度が遅れる事があるようならば…仮に兵力が同等だったとしても、実質的な戦力は大きく増減する事となるのだ。

 

そして、剣王の口から放たれた仮想敵国…「パーパルディア皇国」。

彼の国はフェン王国が属する「第三文明圏」と呼ばれる地域の列強国であり、その国力は第三文明圏の中では絶大である。

フェン王国との国力は当然、絶望的な程開いている。比較すると、人口は70万対7000万。戦船(海軍)はバリスタを配備したフェン王国製の手漕ぎ船21隻に対し、パーパルディア皇国は第三文明圏最新の魔導戦列艦を422隻配備。航空戦力では魔法の無いフェン王国はワイバーンを1騎も配備出来ていない上、相手はワイバーン500騎と改良種 ワイバーンロードを350騎、計850騎も配備しているのだ。

 

ここまで説明すれば分かるだろう。

フェン王国は、間違ってもパーパルディア皇国と敵対してはならないのだ。それ程にフェン王国(第三文明圏外国)パーパルディア皇国(第三文明圏列強国)との力の差は絶対的。

 

場が静まる中、シハンは話を続ける。

 

「現在、ガハラ神国に援軍を頼めないか要請している。各方面でも対策を検討中だ」

 

ガハラ神国はフェン王国の隣国であり、神通力とよばれる魔法とは異なる力で「風龍」と呼ばれる、ワイバーンロードを遥かに超える空戦能力を持つ竜を12騎保有しており、その戦力は各列強国も一目置くほどだ。

 

「とにかく、各人…戦の準備をしておいてくれ」

 

 

 

 

 

 

話を終えた後。シハンは王宮中奥にある執務室で執務していると、側近である剣豪 モトムがシハンに話し掛けた。

 

「剣王。イーディーエフという国が、国交を開く為に交渉したいと来訪されております件…如何致しましょうか?」

「イーディーエフ?…ああ、ガハラ神国の大使から情報のあった…確かガハラの東側に出現した新興国家だったな。あの辺りは小さな群島に加えて海流の乱れもあった筈だが…各島の集落が集まって国が出来たのか?」

「いえ、それが…イーディーエフが言うには、人口は3600万人居るとの事です」

「3600万人…?ハハハハハ!ホラもそこまで堂々と出来るとはな!各島が小さい群島でそれは無理がある!」

 

政治的なブラフは別に珍しいものではない。それ故にそれを聞いたシハンはブラフと判断し、しかし決して嘲るような事はせず、快活に笑った。

 

「それが…ロデニウス大陸のクワ・トイネ皇国とクイラ王国は既にイーディーエフと国交を結んでいるらしく、その際に両国が派遣した視察団がイーディーエフを調査した結果…4つの大きな島から成る国土に、列強をも超える超文明を築いているらしいのです。ガハラ神国経由の情報も、同様の調査結果でした」

「ほう…列強を超えるは言い過ぎにしても…ガハラ神国がそこまで褒めるとなれば、それなりの国なのだろうな」

 

この会話をキッカケに、シハンとその側近達はEDF日本支部の人間と直接会う事を決定する事となる。

 

 

 

 

 

 

数日後。

EDF日本支部情報局員の一団は、地理的に隣国となったフェン王国と国交を結ぶ為に、フェン王国首都のアマノキに訪れていた。その先頭を歩く島田は、いつも以上に落ち着きのある態度を心掛けている。

 

「…懐かしいな、この雰囲気…」

「ええ…フォーリナー大戦前を思い出しますね…」

 

王城に向かう際、思わずそんな言葉が出た。

フェン王国の自然と雰囲気は、10年前にあった日本の自然や城を思い出させるものがある。そしてそれらは…10年前に地球に侵略してきたフォーリナーに悉く破壊され、戦前にあった自然遺産や自然は大半が消滅してしまった。EDF日本支部は現在も木の植え込みなどでかつての姿を出来得る限りを取り戻そうとしているが…それに振り分けられている予算は非常に少ない。

何故かというと、やはり大半の予算は対フォーリナーの軍事費に、そして残りの殆ども市民を養う為にその予算は使われ続けている。自然復興の予算は、それらの余剰金を細々とかき集めた程度しかない(しかも予算内容によっては…特に軍事費関連は余剰金を渡せない場合もあるのだ)。それでは遅々として進む訳がない。しかも殆どの人が自然復興に対して消極的というのも合わさる。

10年程度で人々はあの悪夢を忘れられる筈もなく、それ故にフォーリナーが再び襲来したら、復興した自然は瞬く間に消失してしまうだろうというのが今現在の主流な考え方であり、人によっては「自然復興だなんてものに無駄金を投げるより、その僅かな予算も軍事費に回すべきだ」という主張もしている。

 

 

閑話休題(それはさておき)

 

 

情報局員の一団は、王城の一室へと案内された。

 

「剣王が入られます」

 

側近が声を上げ、襖を開く。情報局員達は立ち上がり、礼をする。

──飾らない王。それが、情報局員達が剣王 シハンに対する第一印象だった。着崩しの和服で、それはまるで、古き日本人と一瞬思わせる程の雰囲気を持っている。

 

「そなた達が、イーディーエフの使者か」

「はい。…貴国と国交を締結したく、参りました。ご挨拶として、我が国の品をご覧下さい」

 

剣王と側近の前に、日本で作られた物が並ぶ。日本刀、着物、真珠のネックレス、扇、運動靴…

シハンは日本刀を手に取り、鞘から刀身を抜く。側近達も剣王の邪魔にならないように配慮しつつ、思い思いに検分を始める。

 

「……これは良い、とてもいい剣だ。貴国にも優秀な刀鍛冶がおられるようですな」

(10年前には、な…)

 

剣王シハンの言葉に、島田は内心でその言葉を紡いだ。

フォーリナー大戦で失われた物は人命や資産、自然だけではない。数多くの技術も人命や資産と共に失われ、中には同じ品質で再生産するには長い時が必要となる技術もあった。その失われた技術の一つに、日本刀の製造技術も含まれていた。現在では一応の製造には成功したものの、10年前の品質には程遠い。武器関連の製造技術はEDFが主導して取り戻そうとしているが、それでもロストテクノロジーの再生産は困難だ。今現在に於いて貴重な一振りの日本刀を今回の会談で持ち込んだのは、国交締結の為の手札の一つとして持ち運びの許可と、一応譲渡の許可も合わせて出されたのだ。

 

気を良くしたシハンは大陸共通語で書かれた文章に目を通し、EDF日本支部からの通商条約締結に於ける提示条件と書類に間違いがないか、口頭でも確認していった。

確認を終え、シハンは更に語気を緩める。

 

「失礼ながら、我々はあなた方の国をよく知らない」

(…ん?これは…)

「イーディーエフからの提案、これはあなた方の言うことが本当なのであれば、凄まじい国力を持つ国と対等な関係が築ける上、まるで夢のような技術も手に入る。我が国としては申し分ない。…しかし、だ」

 

一度言葉を切り、そして話を再開する。

 

「国ごとの転移や海に浮かぶ鉄船などといった事情や技術は、とても信じられないものだ」

「それならば、我が国に使者を派遣して頂ければ──」

「いや、我が目で確かめてみたい」

「…と、申しますと?」

「貴国の軍には、水軍(海軍)があると聞いた。その水軍の内、一つだけでも親善訪問として我が国に派遣して頂きたい。今年は我が国の水軍から廃船が4隻出る。それを敵に見立てて攻撃して欲しい。要は、力をこの目で見たいのだ」

 

シハンから提示された提案に、思わず情報局員達は面食らった。

今現在、まだEDF日本支部とフェン王国には国交がない。それなのに軍を派遣するというのは、それは威嚇行動と同意義の行動だ。普通ならそれは他国は嫌がる筈だというのに、フェン王国は「力を見せろ」と言い、しかも首都アマノキの沖でそれを見せて欲しいというのだ。

 

まさかの展開に驚きつつも、島田達はその後、本部にそのままの報告を送った。

 

 

 

 

 

 

「…なるほど。要は力試し、という事か」

「そうでしょうね。フェン王国は調査の結果、武の国であるという事が分かっています。あちらが望む力でないようならば、国交締結は難しくなるでしょう」

「しかし…それはそれで困ったな。海軍となると「加減が難しい」ぞ。我々の海軍艦は全て対フォーリナー艦だ。一隻だけでも其れ相応の性能だ…」

「この際は仕方ありません。アイオワ級フリゲート艦を派遣しましょう。1番小さい戦闘艦となるとそれしかありませんから」

「うむ。くれぐれも狙いが狂わないように言っておいてくれ」

「勿論です」

 

 

 

 

 

 

「あの計画はどうなっている!」

「はい…皇国監察軍東洋艦隊32隻が、まもなくフェン王国に懲罰の為出撃します」




用語解説&状況説明
フェン王国
日本列島とフィルアデス大陸の間にある島国。EDF日本支部との国交締結交渉の際、EDF海軍の親善訪問を提案した。

ガハラ神国
フェン王国の隣にある島国。フェン王国より先にEDF日本支部と国交締結を結んでいる。

EDF日本支部
ロウリア戦争後、周辺国と慎重にかつ少しずつ国交締結を結んでいる。クワ・トイネ公国との国交締結の際には「EDF日本支部」と名乗っていたが、現在は「EDF」と名乗っている。

アイオワ級フリゲート艦
詳しくは次回解説予定。艦隊の直衛艦として建造されている。

パーパルディア皇国。
第三文明圏列強国。ロウリア戦争を煽った黒幕(国家戦略局の独断だが)。


ふと思い付いた1発ネタ(?)
パーパルディア皇国「フェン王国に懲罰してやる」
フェン王国「やってみろよ」(EDF魂憑依)
書かないけど、これならフェン王国もパーパルディア皇国に勝てるんじゃないかな?(笑)

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