フェン王国の軍祭後。
EDF海軍の力を見た文明圏外国の各国は、EDF日本支部と国交を結ぶべく艦に乗って日本列島を目指した。つまりは時代がかった船が多数、日本列島の周辺に不定期的に多数現れる事となり、EDF海軍は空軍及び自律衛星ライカと連携しつつ、約2ヶ月の間休みなく働く羽目になった。
今までのEDF日本支部は、対パーパルディア皇国の為に慎重な調査を行った上、国交を結ぶに問題ない国家との国交開設を申し込んでいたが、今回の出来事は各国の大使達が自国の詳細な資料を携えており、調査の手間自体は省ける上に各国大使はいずれも友好的で礼儀正しく、国交開設を開く事も十分に可能だった。
しかし各国の情熱さに対して、EDF日本支部の態度そのものは冷ややかだった。
そもそもEDF日本支部の方針として、「現段階では必要以上の国と国交を結ばない」という方針が確立していた。必要資源はクワ・トイネ公国とクイラ王国から輸入しており、他国とこれ以上の国交開設は必要無いのだ。ガハラ神国、アルタラス王国、シオス王国、アワン王国に関しては、パーパルディア皇国に対する宣戦布告理由獲得の為に国交開設と防衛軍事同盟を締結しているだけであり、それ以上の理由は無かった。はっきり言って現在のEDF日本支部は、日本列島の復興及び要塞化を最優先の課題としており、何の関係も無い他国に構ってる暇は無い。
しかし、そんなEDF日本支部の閉鎖的な行動を、各国間で情報共有でもしていたのだろうか。一度の断りを入れても各国大使は全く諦める事は無く、何度も何度も根強い交渉を続けたのだ。EDF日本支部はそれでも何回かはやんわりと断り続けていたが、最終的に情報局長からの「ここまでしつこいなら、国交開設や通商条約を結ぶだけ結んでお帰り願った方が手っ取り早い」という意見により、EDF日本支部は一時的に方針を転換せざるを得ないと判断。非常に不本意ながらも、軍祭に参加していた文明圏外国の14ヶ国と国交を開設。
こうしてEDF日本支部は計20ヶ国と国交を開設し、国交開設と通商条約締結に留めた14ヶ国とも通商を始める事となる。
パーパルディア皇国、第3外務局。
外務局の1つであり、パーパルディア皇国と国交を結んでいる文明圏外国の国交を担当している。パーパルディア皇国は文明圏外国に対する脅迫外交による搾取を行っているため、皇国監察軍の指揮権を保有するという特徴も持っている。
その局長室にて、第3部局長 カイオスは激怒していた。
その理由は、約1ヶ月前。フェン王国が皇国から提案した領土分割案を拒否した会談から始まった。
領土分割案の内容を要約して解説すると、パーパルディア皇国皇帝 ルディアスが掲げる国土拡大計画の一環として、フェン王国の南部縦20km、横20kmの領土をパーパルディア皇国に割譲するよう、第3外務局はフェン王国に要求した。その要求場所は森林地帯であり、フェン王国も使用していない地帯だった。皇国外務局は「国土を得る事が出来た」という実績を手に入れ、フェン王国は未開発の領土を差し出してパーパルディア皇国に忠誠を誓う事により、準文明圏国家となり得る技術供与を得るばかりか、パーパルディア同盟国という箔が付く事によって周辺国からの侵略を受ける可能性が激減する。
正にWIN-WINの提案。これを受けない筈と思っていた第3外務局の計算は、フェン王国の拒否回答によって大外れした。それならばと第2案の同場所を498年間租借する提案も出すも、丁重に断られた。
これにより、第3外務局内で「フェン王国は皇国を舐めている」という意見が主流となる。72ヶ国の属国を持つ第三文明列強国であるパーパルディア皇国にとって、文明圏外の蛮国から軽視されるというのはとても許容出来るものでは無いとして、局長のカイオスは指揮下の皇国監察軍東洋艦隊22隻とワイバーンロード2個小隊をフェン王国に派遣する事を決定した。
ワイバーンロード部隊によるフェン王国首都アマノキの攻撃、そして監察軍東洋艦隊による無慈悲な砲撃による追撃によってアマノキを完全に焼き払い、パーパルディア皇国に逆らえばどうなる事になるのかを、軍祭に参加している文明圏外国に見せ付ける。その筈だった。
しかしその結果は、ワイバーンロード部隊によるアマノキ攻撃を開始した直後、「監察軍東洋艦隊の一切の消息が途絶える」という結果に終わった。
この結果に第3外務局は騒然となった。幾ら正規軍でもない皇国監察軍とはいえ、それでも文明圏外国の一国を滅ぼすには十分な戦力を持っている。それにも関わらず、「連絡する暇も無く」全滅するなど到底考えられない事だったのだ。
しかし事実は事実、この事態は確実に皇帝の耳に入る。そうなれば次は監察軍ではなく、最新鋭艦で固められた正規の本国艦隊が動くだろう。監察軍とはいえ、第三文明圏列強国である皇国の戦力を殲滅させる程の敵なれば、どこかの列強国が支援しているか、下手すれば列強国そのものである可能性さえもある。
第3外務局は未だ見えぬ「敵」を探るため、情報収集を開始する。
そんな第3外務局の応接室にて、数人の男達が会談を開いていた。
「なんだと!?来年から奴隷の献上を行わないだと!?」
外務局員が、会談相手であるトーパ王国大使を怒鳴り付けた。
トーパ王国はパーパルディア皇国の北側に存在する、第三文明圏外国の一つだ。しかしその立地は強力な魔物が闊歩している「グラメウス大陸」と第三文明圏を繋ぐ場所に位置しており、人類の定住地として重要な拠点としても機能している。が、外務局員はそれを承知の上で、大使に強硬姿勢を見せる。
トーパ王国大使は冷や汗を流しつつも、断固とした口調で答える。
「我が国の民を奴隷として貴国に差し出すのは、もうやめとうございます」
「ふん、ならば各種技術提供もトーパのみ停止させるぞ!」
皇国は、各種技術提供もこうした外交手段の一つとして利用している。
最新技術は徹底的に秘匿しつつ、旧式となった技術を属国の周辺諸国や文明圏外国へと提供している。これだけなら皇国は属国からの献上品で潤い、属国も生活水準は向上していくようにも見える。しかし現実的に見れば属国は常に皇国の後追いの形となり、その差は一切縮まらない。結局のところ、属国は苦しい思いを永遠に続けているのだ。その上で一国だけ技術供与が停止する事になれば、他国と技術力と発展速度に差が出る。つまりは国力が衰退していく事となるのだ。
属国が皇国の言う事を聞かなければ、部品の輸出さえも不可能になる。これで完全に国が立ちいかなくなる。筈だったのだが、今までのトーパ王国からは考えられない程に強気な姿勢を続けた。
「技術、ですか。たかが技術程度、人民の幸福には代えられません。我々は奴隷を差し出さず、皇国は我が国への技術供与を停止する。それで結構でしょう」
「ほう…ならば今後は自分達であらゆるものを調達するんだな。後で泣き付こうが我々は知らん」
突き放すような外務局員の言い方に対し、トーパ王国大使はフッと笑った。
「我々は、イーディーエフと国交を結んでいるのですよ」
そう言って、応接室から立ち去っていった。
…余談だが、後にこの会談を知ったEDF日本支部から情報局員がやって来て、トーパ王国はキッチリと
場所と時は変わる。
フィルアデス大陸の南側にある、海を隔てた大きな島の王国。その名を「アルタラス王国」と呼ぶ。
世界有数の魔石鉱山を有する豊かな国であり、人口1500万人に加え、その国力は文明圏外国としては規格外の規模を誇る。資源輸出国であるアルタラス王国はとても豊かであり、中でも人口50万人を抱える王都 ル・ブリアスも人々の活気に溢れている。
しかしそれとは裏腹に、国王 ターラ14世は王城にて、苦渋に満ちた表情で手元の書類を見ていた。
「…正気か、これは…?」
その書類は毎年パーパルディア皇国から送られてくる要請文だったが、その実態は「命令文」と変わりない。
しかも今回の要請文内容は、己の目を疑いたくなるような内容だった。
1.アルタラス王国は魔石採石場 シルウトラス鉱山をパーパルディア皇国に差し出せ。
2.アルタラス王国王女 ルミエスを、奴隷としてパーパルディア皇国に差し出せ。
以上2点を、2週間以内に実行する事を要請する。
出来れば、武力を使用したくないものだ。
「ありえないな…」
パーパルディア皇国の現皇帝ルディアスは、国土の拡大と国力増強を掲げており、各国に領土の割譲を迫っていると聞いていた。しかし通常の割譲地は無難な場所で、尚且つ双方に利がある条件を付けるなど穏便な場合が多かった。
しかし今回、アルタラス王国に要求してきたものは全くの真逆だ。シルウトラス鉱山はアルタラス王国の経済を支える中核であり、これを失えば国力は大きく劣る事になる上、王女の奴隷化に関しては最早、アルタラス王国を怒らせる為に記述したとしか思えない。
つまりは、パーパルディア皇国は最初から戦争に持ち込もうとしているようにしか見えないのだ。
ターラ14世は直ちにル・ブリアスにあるパーパルディア皇国第3外務局所轄のアルタラス出張所に出向き、その真相を確かめる事にした。
パーパルディア皇国第3外務局 アルタラス出張所。
そこにターラ14世は外務官を共に連れ、職員に案内されて館内を歩いていた。
大使室前に着き、扉が開かれる。
「待っていたぞ、ターラ14世!」
そこにはパーパルディア皇国第3外務局所属 アルタラス担当大使カストが大仰に椅子に座り、足を組んだまま一国の王を呼びつけた。対するターラ14世は立ったまま。ソファーの一つもない辺り、どうやら事前に撤去したらしい。
アルタラスの外交官は無礼には無礼で返す、挨拶抜きで話を始めた。
「あの文書の真意を、伺いに参りました」
「内容の通りだが?」
「シトウトラス鉱山は我が国最大の鉱山です」
「それがどうした?鉱山は他にもあるだろうに。それともなんだ、え?ルディアス様の意思に逆らうと言うのか?」
一切の品のない表情を見せるエストに、ついにターラ14世も顔を顰めた。
「とんでもございません、逆らうなど…しかし、なんとかなりませんか?」
「ならん!」
カストが声を荒げ、ターラ14世は外務官を下がらせて自ら前に出る。
「では、我が娘ルミエスの事ですが…何故このような事を?」
「ああ、アレのことか。ルミエスは中々の上玉だろう?俺が味見をする為だ」
「…は?」
信じられない回答に、アルタラス王国の人間は揃って言葉を失った。
「俺が味見をしてやろうと言うのだ。まぁ飽きたら、適当な淫所に売り払うがな」
最早、我慢の限界を遥かに超えた。
「…それも、ルディアス様の御意思なのですか?」
「ああ!?なんだその反抗的な態度は!?皇国の大使である俺の意思は即ちルディアス様の御意思だぞ!!蛮国風情が、誰に向かって口を聞いているのだ!!」
ターラ14世は、無言で背中を向けた。
「おい!まだ話は終わってないぞ!!」
その声を無視し、退出。
「あの馬鹿大使を皇国に送り返せ!!要請文にはわしの直筆など要らん、外務省から「国交を断ずる」とはっきり書いて馬鹿大使に持たせろ!!我が国の皇国の資産も全て凍結だ!」
「はっ!!」
「軍を招集、王都の守りを固めろ!予備役も全員招集だ!!」
「イーディーエフ連絡館に直ちに伝えろ!!「我がアルタラス王国はパーパルディアの不当な要求を蹴り、戦争状態に突入した」と!!同時に防衛軍事同盟に基づく参戦要請を伝えるんだ!!そして世界のニュースに後から届くイーディーエフの声明文発表の準備を行え!」
その翌日は丁度、国際情勢を1週間に一度の周期で魔力通信にて放送する「世界のニュース」が行われる日だった。
『こんにちは、世界のニュースの時間です。今週はつい先ほど、第三文明圏より届けられた声明文の発表から行われます』
世界がそれを知るには、とても都合が良かった。
『今から、その内容を読み上げます──「世界の各国の皆々様方、初見となります。我々は第三文明圏内に国家を置く「イーディーエフ」と言います。我が国は平和と平穏を愛し、今までは世界に積極的な関わりを持とうとはしませんでした。しかしつい先日、我が友好国であるアルタラス王国が、第三文明圏列強国パーパルディア皇国より、あまりにも不当な要求を突き付けられた。その内容は国の発展の中核を明け渡すのみならず、アルタラス王女 ルミエスを彼の国は奴隷にせんとしたのだ。この暴挙を行う蛮国の行いを、我々は絶対に許さない。平和には平和を、暴力には暴力を以って応えよう』」
「『全てはアルタラス王国を守る為。そしてパーパルディア皇国に理不尽なる支配を受けている72ヶ国の独立を取り戻す為』」
「『中央歴1639年11月12日12時を以って、イーディーエフはパーパルディア皇国に対して宣戦を布告する」』
その日、世界は知る事となる。
日本列島は、戦意に湧いている。
ある者は叫ぶ、「彼の国を許すな」と。
ある者は吼える、「侵略者を決して赦すな」と。
ある者は宣言する、「あの蛮国に、自らの行いを償わせる時が来た」と。
ある戦士は己の武器の弾倉を装填し、安全装置を解除する。
ある戦士は
ある戦士は西を睨み、すぐに来たる戦いに備えて精神を統一する。
彼らの意気は軒昂し、その闘争心は燃え上がって一つとなり、それは全てを破壊し尽くす業火となる。
「オペレーション・パルヴァライゼーション、発動準備を開始せよ」
侵略者に、絶対の鉄槌を。
用語解説&状況説明
EDF日本支部
パーパルディア皇国が網に掛かったので世界のニュースにて宣戦布告した。
パーパルディア皇国
処刑台に上がりきった。後はその手が振り下ろされるのみ。
アルタラス王国
パーパルディア皇国からの要求を蹴り、EDF日本支部に防衛軍事同盟に基づく参戦を要請する。
原作だとパーパルディア皇国に占領され、その後日本に解放されるのだが…
トーパ王国
第三文明圏外国の一つ。パーパルディア皇国からの要求をアルタラス王国と同じく蹴った。その後EDF日本支部からやんわりと「警告」された。
世界のニュース
第一文明圏列強国「ミリシアル帝国」から全世界に、1週間に一度の周期で行われるニュース。