EDF日本支部召喚   作:クローサー

39 / 41
第27話 空間の占い(未来の運命)

EDF日本支部とグラ・バルカス帝国間での軍事同盟締結から、数ヶ月が経過した。

直後に開始された武器技術交換や情報共有などは現在も精力的に行われており、今日も特別改造仕様ホエール数機が、第一文明圏諸国と第二文明圏諸国の領空を超高空で侵犯しながら行き来する。最初は歩兵用兵器の交換だったが、今現在はビークルや大型兵器など、ホエールのペイロードが許す限りの物資を搭載していく。

そのような事もあり、EDF日本支部とグラ・バルカス帝国の兵器開発は次々とインスピレーションを受け、様々な方向から新兵器の開発が試みられている。その傍らに領土の要塞化を行う事も忘れない。要塞建設、対空砲・対宙兵器・大型弾道ミサイル発射器の設置、兵器生産、etc…やる事は大量だ。

 

そして、懸念も其れ相応のものばかり。それはEDF日本支部やグラ・バルカス帝国だけのものでもない。

 

 

 

 

 

 

第一文明圏列強国 神聖ミリシアル帝国。

世界最強の国と謳われる彼等は今、ある問題に頭を悩ませていた。

 

言わずともわかるだろうが…列強2ヶ国の崩壊と突如出現し、列強国をそれぞれ滅ぼした2つの国家の存在である。

 

この世界の各国は、大きく分けて列強国、文明国、文明圏外国で区別されている。其々の国力と技術差は隔絶しており、文明圏外国は文明国に敵わず、文明国は列強国に敵う事は無い。そこから国際社会の区別をすると第一文明圏(中央世界)、第二文明圏、第三文明圏となっており、数字が少ない順に国力と技術力が高い国が集結していた。

そして各文明圏に多大な影響を持つ11ヶ国(内訳は固定参加国(列強国)5ヶ国、持ち回り参加国6ヶ国)大国の代表が2年に1度、神聖ミリシアル帝国の港町カルトアルパスにて開催される国際会議「先進11ヵ国会議」にて今後2年の世界の流れを決定し、国際秩序を保っていた。

なお、この国際社会の範囲は第一文明圏、第二文明圏、第三文明圏、南方世界の範囲内であり、そこから外の領域は「世界」として認識されず、交流も無い。

 

そのような世界に突如現れたイーディーエフとグラ・バルカス帝国によって、保たれる筈だったパワーバランスと国際秩序は大きく乱れる事となった。

グラ・バルカス帝国は第二文明圏列強国レイフォルを滅ぼし、現在も第二文明圏の文明圏外国や文明国に対して植民地化を要求し、断ればその軍事力によって該当国を侵略、併合している。

イーディーエフはグラ・バルカス帝国と違って友好的な面が強いのだが、それでも属領のフィルアデス連邦によって第三文明圏列強国 パーパルディア皇国を滅ぼし、事実上第三文明圏を支配下に置いているという事実がある。

 

どのような国であれ、世界最先端であった列強国の2ヶ国が滅ぼされ、現在進行形で国際秩序が大きく乱れている。先端11ヶ国会議の固定参加国2ヶ国が居なくなってしまった事も問題となり、開催国である神聖ミリシアル帝国は空席を埋める国をどうするべきかを討議したが、結論自体は比較的あっさりと出た。

 

イーディーエフとグラ・バルカス帝国に使節団を派遣し、国交開設と先進11ヶ国会議の参加要請を行う事を決定する。

 

特にイーディーエフは先進11ヶ国会議を固定参加国として参加する事を要請するという事となり、事実上の列強国として神聖ミリシアル帝国は認める事となった。

何故イーディーエフのみが固定参加国としての参加要請を行ったのかというと、グラ・バルカス帝国とは異なって友好的な行動で第三文明圏各国と国交を広げており、パーパルディア戦争の際も、結果論ではあるが各国邦人には一切の被害もなかった事が挙げられる。

この事から国際常識を十分に持ち得て、第三文明圏を支配する大国であると神聖ミリシアル帝国も判断せざるを得なかったという経緯があった。

 

こうして、神聖ミリシアル帝国はイーディーエフとグラ・バルカス帝国に使節団を派遣する準備を進める事となる。

 

 

 

 

 

 

エモール王国。

第一文明圏に存在する列強国の一つであり、人口は100万人程度の規模が小さい国である。日本列島の四国程度の統治面積しか持っておらず、当然国力も其れ相応にしかない。(統治(可住)面積が狭いだけで、実際の領土はもっと広い)

にも関わらず列強国の一つとして数えられているのは、エモール王国に住まう「竜人族」が持つ魔力の高さと、竜種と意思疎通をし、味方にすることが出来る能力ゆえに列強国に数えられているのだ。

それ故に非常にプライドが高く、人間など魔力の低い種族への差別意識が強い。 その上「用があるなら、自分の足で来た者以外は一切相手にしない」という思想も持っており、他国から仲介を得る事が出来ないなど、やや鎖国的な面も持つ。

そんな国の首都、ドラグスマキラの北部。ウィルマンズ城の最北の別棟の一室にある薄暗いドーム状の部屋に、30人もの占い師達が集まっていた。その周囲には竜王ワグドラーンを始め、エモール王国の重役達が集まっている。

 

今日は年に一度行われる、国を行く末を左右する「空間の占い」が行われる日であった。

空間の占いとは、エモール王国に影響があると思われる重要事項の有無を調べ、もしあるならば早期にその障害となるものを排除するという目的で行われる。その的中率は98%以上を誇り、最早占いというよりは未来予知に近い。

 

空間の占い師 アレースルの両手に魔導師達から集まった魔力が集まり、淡い赤色の光を灯す。そしてドーム状の天井にも、星のような物が映し出された。

 

「──空間の神々に許しを請い、これより未来を視る」

 

静かに告げられたアレースルの言葉に、一同は緊張に包まれる。万が一エモール王国に不幸がもたらされる事になるという結果が出るのならば、各人の死力を尽くして解決に当たる必要がある。

 

「これは……………そん、な!!なんという事だ!!」

「何だ!?何が見えたのだアレースル!!」

 

アレースルの狼狽に、ワグドラーンも焦りを隠せない。

 

「…魔帝…!」

「何だとっ!?」

「み、見間違いではないのか!?」

 

その場にいる全員の表情が一気に青くなった。

 

「見間違いではない…!そう遠くない未来、古の魔法帝国が… 神話に刻まれしラティストア大陸が、復活する!!

「何という事だ…!」

「時期はいつだ!?」

「………読めぬ」

「では、復活する場所は何処だ?」

「…空間相位に歪みが生じている、場所も見えぬ。視えたのは、「ラティストア大陸が復活する」という未来のみである」

 

竜王を含め、全員が戦慄する。

遥か昔の神話の時代、世界を支配していた古の魔法帝国…ラヴァーナル帝国。ヒトの上位種とされる「光翼人」という種族によって建国された、他種とは隔絶した圧倒的な魔力と技術力で全世界を支配した歴史史上最強の帝国。他国と比較して進み過ぎた文明と、光翼人特有の極端に傲慢な国民性によって驕り高ぶり、ついには神々に弓を引いたとされている。怒れる神々は、ラヴァーナル帝国の本土であるラティストア大陸に巨大隕石を落とそうとした。だが彼らは国全体に結界を張り、大陸ごと未来へ転移して隕石から逃れたと言われている。

 

そんな恐怖の帝国が、98%以上の確率で復活しようとしている事実に、彼らの冷や汗は止まらなかった。

 

「して…我が国を含め、全ての種が再び魔法帝国に膝を折る事になるのか?」

「……………否、読めぬ。未来は不確定なり」

「不確定だと!?一体どういう事だ?」

 

今までの空間の占いにて、未来が視えないというのは一度もなかった。それ故に恐怖感よりも困惑が強まる。

 

「………言葉の通り、未来は…激しい炎光に包まれていて視えぬ」

「では…滅び、もしくは従属から回避出来る手段はあるというのか?」

「………ある!!」

 

アレースルは目を見開いて強く言い切った。

 

「それは、なんだ?」

「……2つの……新たな…国の出現。…この、激しい炎光が………?」

「新たな国?新興国か?」

 

要領を得ないその言葉に、ワグドラーンが問い掛ける。

 

「……否……其々が、其々の別の世界からの転移……転移国家である」

「転移国家…?」

「ムーの再来だというのか?それも二国だと?」

「「占い」で出た以上、最早荒唐無稽のお伽話などと侮るな。これは国儀ぞ。で、何処だ?何という国なのだ?」

 

一縷の望みを逃すまいと、ワグドラーンは真剣な表情で尋ねた。アレースルも精神をより強く集中し、一際に険しい表情となる。その両手の赤い光が益々強く輝き、周囲の魔導師達の表情も苦悶に歪められていく。相当な負荷が掛かっているのは明らかだった。

 

「東と西……第三文明圏と、第二文明圏の………フィルアデス大陸と、ムー大陸の……更にその先にある、島国……人間族が治めし国……」

「人間族、だと!?相手は古の魔法帝国だぞ!!魔力の低い種族に一体何が出来る!!」

 

部屋の中が騒がしくなるが、アレースルは変わらず意識の集中を続ける。

 

「分からぬ、何が出来るのかは分からぬが……この炎光は、炎は…………『厄災』だ。世界を燃やし尽くす厄災を、己の力で退けた、転移前の世界の守護者……」

 

 

「国名は…イーディーエフ…!!そして、グラ・バルカス帝国…!!」

 

 

アレースルはその言葉を絞り出した直後、汗だくのまま床に倒れ伏す。慌ててワグドラーンが駆け寄り、その身を抱きかかえた。

 

「イーディーエフとグラ・バルカス帝国か!よくやったぞ、アレースル!」

「イーディーエフと……グラ・バルカスこそ……魔法帝国に対抗する、唯一の鍵となろう……」

「無理に喋るでない、少し休め。おい、医師団を呼べ!」

 

王の命令を受け、別室で待機していた医師達が魔導師達の搬送を始める為、担架を運び込んで来た。

 

「鍵、か…イーディーエフとグラ・バルカス帝国とやらがどんな国かは分からんが、無下には出来んな」

「イーディーエフとグラ・バルカス帝国について調べろ!人間族の国如きに我等から外交を求めるのは癪だが、どんな国なのかを入念に調べ上げ、速やかに国交を結べ!」

「仰せのままに!」

 

命令を受けた外交担当貴族は、王に敬礼で応えた。

 

「なるべく早くだ!すぐにでも第三文明圏と第二文明圏に行くがよい、これは特命である!」

「それは……まだ早い……!」

 

アレースルが担架の上で、可能な限りの声量で声を上げた。ワグドラーンと、今にも駈け出さんとしていた外交担当貴族もアレースルに視線を向ける。

 

「何?」

「……彼等は……壮絶な戦いを、経験し……まだ、この世界を信用していない……!今、無理に国交を求めても、逆効果で終わってしまう……!彼等は、彼等自身に降りかかった災厄の一部をその身に取り込んでいる……!彼等の機嫌を損ねたその時は……それは、亡国の道にも成り得る危険な鍵……!」

 

アレースルは力強く、寄ってきたワグドラーンの服の袖を握った。

 

「時を、間違えてはならない…その時になれば、彼等はこの世界を守る為に彼等から動き出す!その時に、我等との国交締結を持ちかけるべきだ…!」

「…分かった、ならばそうしよう」

 

 

 

 

 

 

その後、アレースル等魔導師たちは到着した医師団に介抱され、担架に乗せられて病室に運ばれて行った。

ワグドラーン以下は、いつか来たるラヴァーナル帝国(ラティストア大陸)復活に備え、其々が準備の準備を行う為に各々の配置に付いて行った。これから彼等は、エモール王国という範疇を超えて「世界」を守るべく動き出さねばならない。

 

未来の占いという大役を果たしたアレースル達は、其々に充てがわれた病室のベットに横になり、急激に消耗した精神や肉体を休めていた。

 

「……………」

 

しかしアレースルだけは意識を眠りにつける事なく、ずっと、己が見た未来を考えていた。

あの時、アレースルは「未来は激しい炎光に包まれて見えない」と言ったが…それには少し語弊がある。本当は、僅かな数瞬だけ、炎光の中で確かに未来を見た。しかしそれは僅か数瞬だったが故に…果たしてそれが空間の占いによる光景なのか、それとも見える事を願った己が見た幻覚なのか、判断が付かなかった。

同時に、それは決して現実となって欲しくない光景(・・・・・・・・・・・・・・・・)だったからだ。

 

それはそうだろう。常人ならば、一体誰が──

 

 

「世界の滅亡」なんて未来を、望むのだろうか?

 

 

 

(…………)

 

そして、もう一つ。

未来を救う鍵は、2ヶ国だけではない(・・・・・・・・・)

しかしそれも、その国が判明する前に体力が尽きて完璧に観測することは叶わなかった。しかしその姿は、朧げながらも見る事が出来た。

 

一見すると人と何ら変わらない姿。しかしその背からは、美しく輝く一対の光翼があったようにも見えた。

 

(…馬鹿馬鹿しい。そんな事、あり得るはずがない)

 

脳裏に浮かんだ推論を、切って捨てる。彼はどうしても、その推論を信じきる事が出来なかった。もしその推論通りなら、彼…いや、竜人族のみならず、この世界の人類にとって、それは忌むべき存在。

 

ラヴァーナル帝国を建国した人類の上位種、「光翼人」。彼らが、未来を救う鍵の一つとなるのだから(・・・・・・・・・・・・・・・・)




用語解説&状況説明
神聖ミリシアル帝国
先進11ヶ国会議に向け、EDF日本支部とグラ・バルカス帝国に向けて使節団を派遣する準備を始める。

先進11ヶ国会議
神聖ミリシアル帝国の港町 カルトアルパスにて2年に1度のペースで開催される、各文明圏の有力な文明国11ヶ国が集まる国際会議。
参加枠は固定参加国列強国5ヶ国と、持ち回り参加国6ヶ国で構成される。

エモール王国
第一文明圏の列強国。空間の占いにて魔法帝国の復活を感知し、不確定の未来の鍵となるEDF日本支部とグラ・バルカス帝国の調査を開始する。
が、今回の空間の占いには不吉な内容も…

空間の占い
エモール王国で年に1回行われる国儀。98%以上の的中率を誇るが、魔力の高い竜人族の中でも特に強力な者を30名も集めなければならないなど、かなり高度な魔術である。

ラヴァーナル帝国
魔法帝国とも呼ばれている。遥か昔の神話時代にて全世界を支配していた国家であり、現在世界最強と謳われる神聖ミリシアル帝国よりも遥かに高い国力と技術力を持っていると言われている。実際にその痕跡と思われる古代遺跡が複数発見されている。

ラティストア大陸
ラヴァーナル帝国の本土がある大陸。神話の時代、ラヴァーナル帝国がラティストア大陸ごと未来に転移した為、現在の世界には存在しない。
空間の占いで、近い未来に復活することがほぼ確定視される。

光翼人
ラヴァーナル帝国を建国した種族。他種とは隔絶した魔力と、高度な知恵を持つ人類の上位種と言われている。現在の世界では光翼人は確認されていない。
神話によると倫理観が完全に常軌を逸しており、光翼人以外の他種族を人として見ていない。知覚系の魔法と保有魔力量が突出し、その能力を生かして高度な文明を築き上げたという説が主流。





















何処かに存在する、◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎。
そこに、「ソレ(・・)」は存在していた。

『…』

ソレはゆっくりと穏やかに、天に手を伸ばす。そしてその手から膨大な力が発せられ、空間が歪み(・・・・・)ヒビが入り始める(・・・・・・・・)
しかしその現象は別の力によって中和され、何も無かったかのように元に戻る。その結果にソレは怒るわけでも無く、悲しむ訳でもなく。代わりに二度、手を天に伸ばすが、今度は空間の歪みは起きない。しかし満足したのか、手を下ろした。

 ▲ページの一番上に飛ぶ
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。