EDF日本支部召喚   作:クローサー

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ハーメルンの日本国召喚二次創作としては、初のお気に入り登録者数2000件突破をしました。
今回は、21話の二番煎じだったりするのでカット祭り。すまぬ…


第22話 次なる備えへ

はっきり言って、この戦争は勝ち負けが確定したワンサイドゲームそのものと言っていいだろう。

EDFの強力な復興支援とバックアップの元、強力な歩兵装備に身を包んだフィルアデス連邦軍と、殆どの魔導技術を失った中世レベルのパーパルディア皇国軍。

彼我の戦力差をとてもわかりやすく言うのならば、「RPGのラスボスが軍を率いてレベル1の勇者を蹂躙しに来た」と言ったところか。

当然勝負にならない、なる訳がない。パーパルディア皇国の絶対防衛線は1日足らずで崩壊。EDFの最旧式兵器であったとしても、パーパルディア軍を蹴散らすには十二分、負ける要素は皆無。絶対防衛線を打ち破ったフィルアデス連邦軍は、その勢いそのままに包囲網を縮める

 

…という事はなく、彼等は冷静に一度立ち止まった。

その理由は、大きく分けて2つ。一つは「消耗した弾薬補給」、一つは「死体処理」。フィルアデス連邦軍が絶対防衛線を崩壊させるのと同時に、各地に数千万単位のパーパルディア人の死体の山が生まれた。それを適切に処理しなければ、死体は腐って疫病などを周辺に撒き散らす事になる。正直な話、パーパルディア人の死体処理などしたくもなかったというのが彼らの本音ではあるが、それを怠れば、帰り道は疫病で汚染された土地を通らなければならなくなる為、不本意ながらも確実に行わなければならなかった。彼らにとって幸運だったのは、手持ちの火器の中に死体処理を容易にする物(火炎放射器)があった事だろう。死体に向けて火炎放射を行えば、その火力によって死体を灰にする事が出来た。

フィルアデス連邦軍が死体の処理におよそ2日を掛けている間、パーパルディア皇国は何をしていたかというと、「何も出来なかった」。

正確に言えば、戦火を少しでも逃れようとする人々の波をどうにかしようとしていた。魔力通信や幸運にも戦火から逃げ延びた僅かながらの人々、そして皇国軍の動きがフィルアデス連邦軍侵攻の事実を近隣の都市や村へと伝え、人々を恐慌に陥れた。それによって皇都エストシラントへ逃げ延びようとする人の波が形成され、千数百万単位の難民が皇都エストシラントに押し寄せる事となる。当然そんな大波を受け入れられるキャパシティなど存在する訳が無く、エストシラント郊外に(難民の数に対して)小規模な粗末なキャンプを建てるのが限界だった。エストシラント内部では、皇族をどうにか生き延びさせる為に様々な案が出されたのだが、その全てが現実的なものでは無かった。亡命はパーパルディア皇国に友好的な国が無くなっている為不可能で、フィルアデス連邦軍を撃退する事は戦力差から考えると全く手段が思いつかない。何処か安全な場所に逃げ延びるなど、少なくともパーパルディア皇国…いや、フィルアデス大陸にそんな場所は存在せず、そして別大陸であったとしても、没落国の皇族を匿うほど懐の深い国も存在していない。

 

詰み、以外の何物でも無い。

 

中央歴1640年7月11日。フィルアデス連邦軍は死体処理を終え、再び侵攻を開始。包囲網を縮めつつ、そしてどんな小さな村や町も容赦無く炎の海で包み込み、全てを灰燼へと変えて行く。そこには一片の慈悲も無い。そしてその包囲網の終着点であるエストシラントでは、無制限徴兵が開始。志願した者達に対して武装や超即席訓練が施された他、非戦闘員である市民に対しても粗末な武装が配られ、皇族を除いてエストシラント近辺の誰もが何かしらの武器は一つは所持している状態となった。…しかし、それでフィルアデス連邦軍を撃退できる訳もない。

 

中央歴1640年7月27日。25万のフィルアデス連邦軍は皇都エストシラントを包囲、少しの打ち合わせの後に総攻撃を開始。パーパルディア皇国軍はそれに対して、ヤマト条約締結時に地下に隠して殺処分を免れていたワイバーンオーバーロード20騎を投入。条約違反がバレるだろうが、国家存亡の危機を前にそんなことも言っていられる訳がない。25万の大軍を殲滅する事は不可能だろうが、士気を崩壊させて撤退させる事は出来る。寧ろ、ここまで追い詰められたパーパルディア皇国が助かる道はそれしか無かった。

 

しかし残念ながら。フィルアデス連邦軍の持つ武装は、そういった相手(・・・・・・・)に対して非常におあつらえ向き(・・・・・・・)な物ばかりだ。

 

430km/hでフィルアデス連邦軍に突撃していくワイバーンオーバーロード20騎に対し、フィルアデス連邦軍は対空砲火を展開。一つ一つは所詮人の手ではあるが、25万人から撃ち放たれる「対フォーリナー兵器」の超濃密な弾幕は、ワイバーンオーバーロードの強靭な鱗を竜騎士ごと瞬間的に貫通して穴だらけにし、血を吹き出させながら地に叩き落とすには充分であった。

僅か10秒足らずでワイバーンオーバーロードは全騎撃墜され、残るは数千万人のパーパルディア人とエストシラント。他の都市から逃げ延びてきた人達を溢れさせながらも収容していた難民キャンプを吹き飛ばすと、エストシラント内部に突入。殲滅を開始するが、今回の戦いは少々訳が違った。

 

一つは、死力を尽くしてフィルアデス連邦軍へと突撃してくるパーパルディア皇国の市民達。

一つは、25万対1000万人超という物量差。

この二つの要因により、エストシラント市街地に突入したフィルアデス連邦軍は、自軍を遥かに超える人の波に翻弄される。例え質が超越していたとしても、これほどの物量差を火力で覆すのは容易ではない。更に場所は狭い市街地、人数も火力も限られる中、凄まじい人津波の前に、フィルアデス連邦軍は一時後退せざるを得なかった。幾ら火力優勢があっても、数に対する火力と弾薬が不足してはどうにもならない。さてどうするか、各方面軍の指揮官は雁首を揃えて知恵を絞り始めた。策を練らずとも勝利は出来るだろうが、その際の被害は決して無視できるものではなくなる可能性がある。スティングレイやゴリアスで全部吹き飛ばしても良いのだが、皇族は出来るだけ多く生け捕りにしたい(生き地獄を味わわせたい)

しかし切れる手札は限りなく少ない。さてどうするかと悩んでいたら、ピストン補給にやってきた数台の武装装甲車両 グレイプが視界に入り、1人がふと思いついた。

 

「グレイプを突っ込ませて縦横無尽に暴れまくれば、纏まりが無くなって各個撃破できるんじゃないか?」

 

グレイプは所詮武装装甲車両であり、ギガンテスのような役回りは出来ない。が、逆に言えば装甲車両であるが故に非常に高い走行性能と、(EDF基準では)それなりの装甲、そして武装として速射砲1門を搭載している。つまり、戦おうと思えば十分に戦える。そして今回の相手は、防御力など皆無の人間達。グレイプだけでも強力な機甲戦力になると判断したのだ。

 

ピストン輸送にやってきたグレイプの内、10台を第二次エストシラント攻勢に転用する事を決定。翌日、再びフィルアデス連邦軍はエストシラントに突入した。

最前線に立ったパーパルディア人はさぞかし驚いた事だろう。昨日までと違い、真っ先に突っ込んで来たのは「およそ100km/hの速度で突っ込んでくる、15tもの質量を持った鉄の化物(グレイプ)」だったのだから。咄嗟にパーパルディア軍はグレイプに攻撃するものの、対フォーリナーを前提にした装甲の前には無力。それどころか車体上部に搭載されてある60mm速射砲の連続砲撃と15tのラムアタックによって、パーパルディア軍は次々と文字通り轢き潰される。血を浴びながら突っ込んでくる10台のグレイプによって、ひたすらに数だけは多いパーパルディア軍の大半…つまりは市民達の士気は完全崩壊。バラバラになった所をフィルアデス連邦軍が各個撃破していくという見事な連携の下、防衛線を次々と突破。

築き上げられる死体の山々を乗り越え、遂にフィルアデス連邦軍はパラディス城内部へ突入。そこでも近衛兵との交戦に入るが、やはりフィルアデス連邦軍に敵わない。何人かは火炎魔法などが命中するものの、アーマースーツの防御力によってⅠ度火傷(肌の表面程度)で済んだ。

 

そして、フィルアデス連邦軍は皇帝ルディアスを含んだ皇族34名を生け捕ることに成功。同時にエストシラントの完全制圧と、パーパルディア国民の殲滅も完了。

中央歴1640年7月28日、パーパルディア皇国は完全に滅亡した。

 

 

 

 

 

 

数日後、EDF日本支部第一会議室。

其処にはいつも通りのメンバーが揃い、緊急の会議を行なっていた。

 

「…以上がフィルアデス連邦、パーパルディア皇国間で勃発した戦争経緯となります」

「ふむ…予想より時間は掛かりましたが、死者を1人も出さなかった点を考えると十分に許容範囲ですね。ともかく…」

「オペレーション・パルヴァライゼーションはほぼほぼ理想の形で成就した、という事になるな。最新兵器の製造は引き続き日本列島のみで製造するが、旧式兵器ならば問題なくフィルアデス連邦で生産して戦力を整えられる。2億6000万人の人口と生産力、そして戦力を大した苦も無く手に入れた事は、今の我々にとっては非常に利益ある事だ」

「その通りです、司令長官。転移事変後、我々は幸運にも隣国となったクワ・トイネ公国とクイラ王国により、食料及び資源状況は寧ろ転移前より大幅に改善されました(・・・・・・・・・・・・・・・)。その一方で、戦力は転移前の1割もありません。…地球規模で戦力を整えていた中、日本列島だけが転移してしまったので当然なんですが。とはいえ、それを理由に戦力増強を怠るなど論外です」

「現在兵器開発部では、フィルアデス連邦に向けた新兵器の開発を進めています。陸軍装備はまだしも、海軍艦は旧世代のイージス艦では歯が立ちません。なのでアイオワ級フリゲート艦のコンセプトを更にスケールダウンした、仮称 デストロイヤー級フリゲート艦の研究を進めています。順調に進めば1ヶ月後には建造、試験後に実艦と設計図をフィルアデス連邦軍に譲渡する予定です」

「分かった、頼んだぞ。…さて、それでは問題に移ろうか」

 

パサリと、資料を捲る。

 

「先日発覚した不明機の日本列島侵入事件、件の不明機は逃したらしいな」

「…はい。最新鋭機ノスフェラートを試験飛行中だったガルーダ隊によって不明機2機を発見、警告を無視した為に撃墜を図りましたが…不明機はEMP(電磁パルス)によってマーレボルジェを無力化した後、クローク…いわゆる透明化によって視覚的に不明機をロスト。レーダーも機体そのもののステルス性能によって捕捉することは叶わず、振り切られてしまいました。本件の問題は、我々が日本列島に張り巡らされているレーダー網をいとも容易く突破し、日本列島東海地域にまで侵入されてしまっていた点、推定される技術力は我々と同等以上と思われる点、そして何よりも、この技術力が果たして「科学技術」であるのか、それとも「魔導技術」であるのか、それが分からないという点です」

『…』

「自立衛星ライカの衛星偵察による現時点での調査段階では、では、不明機を開発できる程の技術力を持つ国家の存在は第三文明圏、及び第一文明圏の中では確認されていません(・・・・・・・・・)にも関わらず、この不明機が出現したという事は、我々が確認出来ていない文明、もしくは国家が超遠距離からこの不明機を発進させたか、もしくは文明圏内の国家が、何かしらの理由で技術力を隠蔽しているという可能性も否定する事は出来ません。どちらにしろ、レーダー網の改良などは急務と考えます。他にも不明機の侵入経路を調査してますが…期待は出来ません」

「そう、か…他に報告はあるか?」

「では、私から」

 

海軍元帥が声を上げ、また一つ資料を捲る。

 

「先程情報局長が言及しておりましたが、現在のEDFの戦力は転移前の1割もありません。数そのものはフィルアデス連邦軍を育成する事になってある程度のカバーは可能でしょうが、質そのものは日本列島以外ではどうしようもないでしょう。そこで、EDF海軍は質を限りなく高める為、以下の艦隊計画を立案させて頂きます」

 

大石が資料を捲ると、其処には大きな文字でこう書かれていた。

 

 

「決戦要塞艦隊計画 (X艦隊計画)」

 

 

「この計画は、決戦要塞X5及びX7を呉の超巨大ドックで1隻ずつ建造。第7艦隊を4隻の決戦要塞X5と決戦要塞X7、セントエルモ級イージス戦艦12隻、アイオワ級フリゲート艦24隻、計40隻からなる超大規模艦隊へと拡張し、場合によっては4つの分艦隊へと分離させる事により、臨機応変にかつ確固たる日本列島及び第三文明圏の領海確保を目的とした計画です」

「…この計画の理想形での完了は、何年後になる?」

「決戦要塞2隻を建造するだけでもおよそ6年、第3文明圏全域に十分な兵站とドックを整えるまでは…どれだけ順調でも10年はかかると思われます。何せ中世から現代に一気に飛躍させる事を前提にするのです。理想を追求して悪影響を一切無視しても、これだけの年月はかかるでしょう」

「………………………」

 

トン、と机を軽く叩き、決断。

 

「ひとまず、X7の新規建造を進めてくれ。対宙砲がヤマト1隻というのは些か不安だ、せめてもう1隻は欲しいと思っていたから丁度いい。X計画については段階的に、様子を見ながら進めていこう」

「了解しました」




用語解説&状況説明
パーパルディア皇国
フィルアデス連邦によって完全に滅亡。皇族はフィルアデス連邦軍に生け捕りにされたが、その後の行方はEDF日本支部は把握していない。(把握する必要も無い)

EDF日本支部
オペレーション・パルヴァライゼーションを完遂し、現在はフィルアデス連邦に向けた新艦艇の開発やレーダー網の改良、海軍増強などに力を入れている。

決戦要塞艦隊計画 (X艦隊計画)
EDF日本支部海軍が発案。現在EDF日本支部は要塞空母デスピナ(X5)と要塞戦艦ヤマト(X7)を各1隻ずつ保有しているが、これを更に1隻ずつ新たに建造、第7艦隊に編入させて通常艦隊も増強させる事により、決戦要塞艦4隻、通常艦隊36隻もの超大規模艦隊を設立。日本列島を含み、第三文明圏の領海を確実に確保する事を目標とした計画。
現在は決戦要塞X7-2(仮称)の建造準備が進められている。それ以外の計画内容は検討中。

不明機
閑話 蠢く者達 2で登場したカナード翼大型双発機。EMPやクローク能力など、EDFでも未だに研究、理論段階の技術が使われている。



第4章 オペレーション・パルヴァライゼーション、完!
最後はなんかゴリ押しな感じになっちゃいましたが、何回か書き直してる内に「重要な所だけ書けば良いや」みたいな考えになってしまったのでね…更新出来ないよりはマシです、うん。
第5章はー…どうしようかなぁ。試しにアンケート取ってみよう。

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