EDF日本支部召喚   作:クローサー

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遅れながらの明けましておめでとうございます。
展開が上手く纏まらなかったりで書き直しに大分手間取りましたが、ようやく少し進めそう…2歩進んで1歩下がるとかいう、かなり滅茶苦茶な執筆スタイルとなってますが、地道に頑張って行きます。


第30話 それは突然として

先進11ヵ国会議の参加国は文字通り世界情勢が大きく動く会議であるが故、世界に対して大きい影響力を持った国家が選ばれる。しかし本来の開催年にて、固定参加国であった列強国 レイフォル及びパーパルディア皇国が滅亡するという前代未聞の出来事が発生。その為1年遅れの開催及び参加国の変更が急遽行われる事となった。

2つ空いた()に、適度な緊張感を持ったEDF日本支部及びグラ・バルカス国の代表団が着席しており、たった今開催された先進11ヵ国会議の行く末を見守る態勢を取る。

 

すると早速、議長席付近…つまりは会議場中心に近い席に座る、頭に4本の角を備える青白い肌の男が手を挙げる。議長が指名した事によって発言権を得て、起立。魔導通信機による拡声器を通し、会議場全体に程よい音量で男の声が響く。

 

『エモール王国のモーリアウルである。今回の先進11ヵ国会議の開催にあたり、何よりも先んじて、そして何よりも重要な件を皆に伝えなければならない事がある。火急の件でもあるため、心して聞いてもらいたい』

 

従来の参加国の代表達が驚く。エモール王国は「竜人族」と呼ばれる種族による単一種族国家であり、人口1000万人程であるが列強国の一つに連なる国家であるのだが、豊富な魔力保有量等が相まって他種族蔑視及び軽視が主な体質だ。が、その竜人族の代表が、今まで見たこともないん殊勝な態度を見せたのだ。

その雰囲気に、嫌な予感を感じて場が静まる。

 

『…先日、我が国は空間の占いを実施した。その結果、ラティストア大陸が再び現れる事が判明した。つまりこれは、忌まわしき古の魔法帝国…ラヴァーナル帝国が復活する事を意味する

 

紡がれた言葉を理解した各国代表達は、EDFとグラ・バルカス帝国を除いた皆の顔色を青くした。

 

「………なんて、事だ」

「あれは伝承ではなかったのか…!」

「伝承が本当ならば、その力の前では我々には対抗する術が無いぞ!?」

 

会場が騒つく中、モーリアウルは構わずに発言を続ける。

 

『空間の相位が歪んでおり、時期や正確な位置の情報は観測出来なかった。しかし観測出来た情報による計算では、今から4年、長くても25年以内には、この世界の何処かに復活すると思われる。神話や伝承が何処まで本当であるのか、奴等…ラヴァーナル帝国にどれだけ対抗する事が出来るのか、検証する必要があるだろう。光翼人が残していった遺跡の高度さは諸君らも知る通り、ラヴァーナル帝国の持つ文明の規格外の発展度を物語っている。今後、我々は無益で不必要な争いを避け、軍事力の強化を行い、世界各国が協力してラヴァーナル帝国の復活に備えるべきである

 

発言を終えて席に着席したモーリアウルが議長席に視線を向けると、議長達も揃って頷く。騒然としていた会議場も、時間が経過していけば自然と落ち着きを取り戻し始め、各国代表達がお互いに頷き合い始めた。

すると、グラ・バルカスの代表団としてこの会議に参加していたシエリアが手を挙げ、議長はシエリアに発言権を与えた。彼女もモーリアウルと同じく席を立ち、発言を始める。

 

『発言の許可を頂きありがとうございます。私はグラ・バルカス帝国外務省のシエリアと申します。我々は信じ難い事であるのですが、別世界より転移してきた「転移国家」であります。その為この世界に関する知識を充分に持ち合わせておらず、ラヴァーナル帝国なる国家がどのような国家であるのか、空間の占いがどういった物で、どれ程の信頼性を持っているのか、我々は何も分からないのです。概要のみで構いません、ラヴァーナル帝国や空間の占いに関して、ご教示頂ければ幸いです』

 

グラ・バルカス帝国という単語を聞き、モーリアウルの眉が動く。が、手を挙げる前にミリシアル帝国の大使が手を挙げた事によってタイミングを失った。

そして発言権を得たミリシアル帝国大使による、ラヴァーナル帝国及び空間の占いに関する説明が始まる。

 

『神聖ミリシアル帝国のタリフだ。先のシエリア殿の発言の真偽は疑わしいものもあるが…その追及に関しては後々出来るから後に回そう。今は、この場にいる全員の認識及び危機感の共有を優先する事とする。まずラヴァーナル帝国とは皆が知っている通り、遥か昔の神話時代にて、「光翼人」という種族が建国し、全世界を支配していた魔法帝国だ。伝承や古代遺跡の解析でしか伝わっていない為、詳しい事は分かっていないが…我が国をも遥かに上回る技術力、そしてその技術力に裏打ちされた圧倒的な破壊力を持った兵器を多数開発していた事が判明している。中でも有名なのは「コア魔法」だろう。これも伝承でしか伝わっていないが、コア魔法1発で街一つが消滅すると言われている。他にも──』

 

その後もラヴァーナル帝国や空間の占いに関する説明、及び対ラヴァーナル帝国対策に関する討論で費やされ、1日目を終える事となる。

 

 

 

 

 

同時刻、神聖ミリシアル帝国南西海域 マグラス群島より北東100km地点。

その海域に、ミリシアル最強の精鋭艦隊 第零魔導艦隊の姿があった。魔導戦艦3隻、重巡洋装甲艦2隻、魔導船3隻、小型艦8隻、計16隻から成る艦隊は、力強く海上を進んでいる。

彼等は先進11ヵ国会議開催により、母港のアルトカルパスより出港してこの海域にて数日間の訓練航海を行うのが、第零魔導艦隊の習慣となっていた。先程まで行っていた陣形訓練を終え、次は砲撃訓練を行う為の準備を開始していた。砲撃訓練の目標は無人島のマグラス諸島であり、定期的な砲撃魔法構成の威力確認も兼ねている。ミリシアル帝国の艦砲は全て魔法による魔導砲であり、炎と雷の魔法と精霊の加護を仕込む事によって、その威力の真価を初めて発揮する。が、このバランスは大気中に漂う魔素の濃度によって変化する為、砲弾が長く飛べば飛ぶ程、術式魔法を発動した砲弾に魔素が付着し、威力に変化が生じる。その為、魔力注入のバランスの確認を取る事もこの訓練は兼ねている。

 

「…ん?」

 

ふと魔導レーダー員が気付く。

一部の画面が白い。最初の数瞬はレーダーの故障を疑ったが、にしては違和感がある。いずれにしろ、レーダーに異変がある以上、クロムウェル艦長に報告するべきと判断して声を挙げる。

 

「艦長、レーダーに異常が発生。索敵に支障が発生しています」

「何?今から砲撃訓練なんだぞ、原因は何だ?」

「現在調査中です。少しお待ちを」

「早めに頼むぞ」

 

報告を終え、早速レーダーの異常を調査しようと機器の操作を始めた。

 

刹那。画面に映る白い面が、数え切れないほどの点に分裂した(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「────ッ!!!?」

 

その瞬間、レーダー員は直感した。これはけしてレーダーの故障ではない。いや、寧ろ故障であって欲しかったと思う程の事態。

 

 

つまり、余りにも多過ぎてレーダー上では「白い面(・・・)」に見える程の数のナニカ(・・・)が、真っ直ぐにこちらに向かってきているという事だ。

 

 

「艦長、これはレーダーの故障ではありませんッ!!詳細不明、数多数、時速800km以上のレーダー反応です!!真っ直ぐ我が艦隊に接近しています!!」

「…一体何の冗談だ?時速800km以上など、天の方舟さえも遥かに凌駕しているぞ」

「私だって冗談だと思いたいですよ!!でも、これは明らかに故障のそれではありません!!」

「クラレント、及びガラティーンより通信!二艦共に同様のレーダー反応を探知、指示を仰いでいます!!」

「ッ…!!全艦、対空戦闘用意ィ!!レーダー員、目標群の到達時間は!?」

「およそ240秒!数は依然として不明…数え切れません!!

 

全艦内にけたたましい警報音が鳴り響く。対空要員は全速力で対空魔光砲の砲座に付き、術式を起動して空を睨む。

 

「群島に展開している空軍に応援要請をしろ!」

「そ、それが…先程から応援要請の通信を送っているのですが、全く応答がありません!」

「何だと…!?くそ、本国に連絡だ!内容は我が艦隊はこれよりマグラス群島にて恐らく敵対的な所属不明飛行群と接触寸前、至急応援を求む!」

「了解しました!」

「目標ッ更に増速!?嘘だろ…時速1000km以上に増速、到達まで後60秒!!」

「全艦、対空戦闘用意完了!」

「射程に入り次第各個に射撃始め!」

 

やがてそれは、水平線より現れる。

猛々しく空を裂き、そして空を埋め尽くさんと言わんばかりの物量を以って襲来する死の行軍。それは緑と白、赤と白の皮膚を身に纏い、他者に絶対の殺意を以って全てを蹂躙する軍団。

 

「ワイ、バーン…?」

 

 

『────────────ッ!!!!』

 

 

 

咆哮。

音を置き去りにする速度によって、後ろに置き去りにされて無意味と化す。しかし第零魔導艦隊の全員が、はっきりとその殺意を確信した。

音速を超えた速度によって、まもなく第零魔導艦隊の対空火力の射程圏内に突入。その直前、第零魔導艦隊全艦より、注ぎ込める全ての火力が空に向けて撃ち放たれた。




用語解説
第零魔導艦隊
神聖ミリシアル帝国海軍の精鋭艦隊。最新鋭艦が配備される艦隊であり、質と練度に於いてはミリシアル帝国海軍最強と謳われている。

新種ワイバーン?
第零魔導艦隊の前に突如現れた生物。凄まじい物量と音速を超える速度の飛翔など、この世界の生物でも考えられない身体能力等を持っていると思われる。特徴として緑と白、もしくは赤と白の皮膚を持っている他に、翼と前脚が一体化しているように見える。
尚、彼等が飛来してきた方向にはマグラス群島がある。

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