フォーリナーに対する対宙迎撃作戦は、殲滅出来る可能性は決して高くない。
そして我々に逃げ場などは存在しない。
なんの前触れも無く、全世界に現れたアグレッサーの輸送船…「レイドシップ」の飛行船団。
飛行船団は、無機質に、容赦無く地上戦力の投下を開始。巨大生物はひたすらに人を喰らい、機甲戦力は町々を破壊していく。その速度はレイドシップの持続投下によって、破滅的速度で惑星を侵食していく。
僅か十数分で、「世界」の人口の数%が失われ、殆どの国はその状況にマトモな対処法を取ることが出来ずにいた。
そして
この破滅的状況の中、まともに戦う事が出来た国は。
一番の最善手を打つ事が出来たのは、EDF日本支部及びグラ・バルカス帝国。
当然といえば当然。彼らは良くも悪くも惑星外侵略的存在の類のエキスパート。そして、アグレッサーの全世界急襲から僅か数時間前に、フォーリナー船団を発見した事もあり、結果的に彼等は万全の臨戦態勢でアグレッサーと開戦する事が出来た。はっきり言ってこれはEDF日本支部にとって「不幸中の幸い」だ。もしも接敵の順番が逆であれば、EDF日本支部は無防備状態でアグレッサーと接敵する事になり、決して無視出来ない被害が出てしまっていたのは想像に難くない。
そして2つの
EDF日本支部はどうかというと、グラ・バルカス帝国程の勢いこそは無いものの、全体的には優位な戦局となっている。対アグレッサーの防衛網の構築は、時間が足りなかったために最初期迎撃の戦果はあまり無かったが、それでもEDF製兵器の威力は、実弾に限ればグラ・バルカス帝国製兵器を大きく上回る。更に対フォーリナーに備えて陸軍部隊を各地に分散配置していたお陰で、結果的に日本列島各地に出現したレイドシップを早期迎撃する事に成功。運悪く早期迎撃に失敗し、投下された巨大生物やアグレッサー兵器に関しては、空軍による徹底的な制圧爆撃により、周辺全てを巻き込んで殲滅を進めている。中にはフォーリナーの飛行ドローンに相当する自律兵器「アタックポッド」を吐き出しているレイドシップもあったが、それらも空軍のファイター、もしくは陸軍部隊の対空攻撃によって数を減らしている。
極端な話、敵が眼前に現れても先制を取って致命的一撃で殲滅出来れば、アグレッサーもフォーリナーも怖くは無い。ただ、それを行える状況や条件が果てしなく厳しいが。だからこそ、最善を打てるときはとことん打つ。街や兵器はいくら壊れても直せばいい。だけど命にそんな事は出来やしない。故に、徹底的に、巣を形成される前に、滅ぼす。それが、奴等に対する一番の戦略だ。
…だが、それを行える国は、この世界にはほとんど存在していなかった。
その例外は、主に2つの国家と2つの大陸。
フィルアデス連邦、神聖ミリシアル帝国、そしてロデニウス大陸とムー大陸。
まずフィルアデス連邦は、EDF日本支部が強力な支援を行っている国であり、その影響力は絶大だ。故にその宗主国の指示により、予め軍の展開と市民の避難準備は事前に行われていた為、人的被害は想定される最小限である
ロデニウス大陸とムー大陸に関しては、防衛戦略上配置されていた両国の部隊によって戦況を劣勢程度に抑える事に成功していた。…列強国のムーは緊急事態であるが故にグラ・バルカス帝国軍の無許可越境をされる事になったが、最早そんな事を咎めている暇は無かった。
その両国の勢力範囲外である第一文明圏は、地獄となっていた。
ワープで第一文明圏上空に現れたレイドシップの船団は、何の迎撃も受ける事なく、ワープ戦力投射を開始。レイドシップによって第一文明圏に降り立ったアグレッサーの巨大生物「ストームアント」や「ボムビートル」、機甲戦力の「スコージャー」は第一文明圏の蹂躙を開始。一切の区別なく人類を殺戮するその存在に、僅か1時間で第一文明圏の人口は1割が失われた。しかし、この破滅的状況に神聖ミリシアル帝国はラヴァーナル帝国の置き土産と言われている古代兵器「空中戦艦パル・キマイラ」及び「海上要塞パルカオン」の全力投射を決定。現在の第一文明圏はパル・キマイラ5機とパルカオンの砲撃及び対空魔光弾によって各地のアグレッサーに打撃を与え、何とか
しかし、それを行える国は現在一つ足りとも存在しない。
EDF日本支部もグラ・バルカス帝国も、宇宙より来たる天敵の迎撃に備えていたのだから。
「フォーリナー船団、10分後に迎撃射程圏内に突入します!!」
「全基地に通達、テンペスト発射用意!!目標、
「通達完了!!…全基地の発射プログラミング終了を確認、余剰重複目標無し!!要塞戦艦ヤマト、照準開始しました!!」
「自立衛星ライカ、砲列発射用意完了!以後、独自タイミングで発射を開始します!」
迫るその時。対宙戦力はテンペストVLS324基、第3、第4、第5、第7艦隊、要塞空母デスピナ、要塞戦艦ヤマト、軍事衛星ライカ。
対するフォーリナーの戦力は、マザーシップ2隻、キャリアー400。
手数と射程はEDFが圧倒しているが、質はフォーリナーが上回る。
対宙迎撃時間は、僅かに1時間。僅か1時間で、フォーリナー船団を殲滅出来なければ、戦況は更に劣勢と成りかねない。相対的に見てもフォーリナーの戦力はアグレッサーよりも強大。輸送船1隻だけでも、脅威度は極めて高い。
だからこそ、此処で、なんとしても、すり潰す。
「要塞戦艦ヤマト、砲撃準備完了!!」
「テンペストVLS、解放完了!!」
「フォーリナー船団、更に減速!!2160km/hで接近中!!」
「対宙迎撃射程圏内突入まで、後10秒!!9、8、7、6、5、4、3、2、…」
「フォーリナー船団、突入!!」
「迎撃開始!!!!」
刹那、戦略レーダーでリンクしていた各対宙迎撃部隊は、同時に対宙迎撃を開始。大阪、東京、札幌、九州基地にある324基のテンペストVLSから、巨大な噴煙を上げてテンペストSA1タイプOが発射。凄まじい推進力で垂直上昇し、僅か数分で大気圏を突破。更に速力を増し、マッハ12でフォーリナー船団へと猛進していく。が、そのミサイル群よりも速く、飛翔していく砲弾が2つ。要塞戦艦ヤマトより放たれた、100cmグラインドバスターだ。
マッハ21という速度で、2発のグラインドバスターは1隻のマザーシップ…マザーシップ・アルファに直接衝突。1発の威力が核爆弾に匹敵する運動エネルギーの威力は…マザーシップの装甲を貫き、損傷を与えることに成功する。
「グラインドバスター着弾、マザーシップに損傷を確認!!」
「よし…!!」
「続いてテンペストミサイル、拡散開始します!!」
オペレーターの言葉に合わせたかのようなタイミングで、テンペストミサイル群の各ミサイルが分解を開始。内部から3発のテンペストA0が発射され、総数は3倍の972発に増加。更にプログラミングによって各方向に回避機動を取りつつ拡散して、多方面からフォーリナー船団へと迫る。
しかし、それを阻むべくマザーシップ2隻の小型砲台が起動。装甲表面の一部が分離し、400の小型砲台となる。そして、射角内のおよそ200の砲台から、赤色のレーザーが発射。一部のレーザーは回避機動によって外れるものの、それでも軽く150のミサイルは迎撃された。
十数秒毎に発射されるレーザーにより、次々と数を減らしていくテンペストミサイル群。
831、769、521、486、445、375、309、271…
このまま、全弾撃墜か。そう思われたが、しかし。人類の技術は、フォーリナー船団に打撃を与えるには事足りたらしい。
迎撃を掻い潜った16発が、キャリアー16隻に着弾。その威力は大なり。テンペストA0はキャリアーの装甲を貫通し、内部で爆発。フォーリナーテクノロジーと圧縮空間技術によって実現を可能とした
機能を停止したキャリアー16隻は、漂流を開始。他の健在なキャリアーと衝突されながら、宇宙のゴミの一つとなる。
「キャリアー16隻、撃墜!!」
「グラインドバスター、テンペスト第2波発射確認!!グラインドバスター第2波、着弾まもなく!!」
グラインドバスター第2波、マザーシップ・アルファに着弾。更なる損傷を確認。されど小型砲台の不具合動作は確認出来ず。
テンペストミサイル群第2波、キャリアー25隻に着弾。撃墜に成功。残り359隻。
「グラインドバスター第3波、着弾……ッ!?マザーシップ、防御スクリーンを展開しました!!効果確認出来ず!!」
「クソッ!!!!グラインドバスターでも防御スクリーンは突破出来ないと言うのか…!?いや、砲撃は続行し続けろ!!マザーシップを少しだけでも疲弊させるんだ!!砲撃目標変更、マザーシップ・アルファ及びマザーシップ・ベータ!!」
「了解!!」
テンペストミサイル群第3波、キャリアー9隻に着弾。撃墜に成功。残り350隻。
グラインドバスター第4波、マザーシップ・アルファ及びマザーシップ・ベータに着弾。防御スクリーンに阻まれ、効果無し。
グラインドバスター第5波、着弾。同じく効果無し。
テンペストミサイル群第4波、キャリアー21隻に着弾。撃墜に成功。残り329隻。
グラインドバスター第6波、着弾。効果無し。
グラインドバスター第7波、着弾。効果無し。
テンペストミサイル群第5波、着弾。キャリアー24隻に着弾。撃墜に成功。残り305隻。
グラインドバスター第8波、着弾。効果無し。
グラインドバスター第9波、着弾。マザーシップ・アルファに命中?損傷の広がりが見られる。
テンペストミサイル群第7波、着弾。キャリアー18隻に着弾。撃墜に成功。残り282隻。
グラインドバスター第10波、着弾。効果無し。
グラインドバスター第11波──
此処からは、ダイジェストで迎撃の経過を描写していく。
まず、グラインドバスターは防御スクリーンによってマザーシップへの打撃は不可能となった。しかし現状マザーシップを撃墜できる唯一の武器だと思われていたため、砲撃は続行しているが、防御スクリーンが解かれる様子は無い。
テンペストミサイル群は、マザーシップの迎撃を受けつつも、キャリアーを撃墜しつつあった。しかし、フォーリナーも超音速小型物体の迎撃に慣れてきたのか、撃墜数が減少傾向にある。このままでは、キャリアーの殲滅さえ叶わずに対宙迎撃網を突破されるという状況下になりつつあった。
更に最悪な事に、マザーシップは飛行ドローンの発進を始めた。その数は既に3万を超え、テンペストミサイル群に対してレーザーによる迎撃や、集団特攻によるキャリアーの盾役としても機能している。
はっきり言って、状況は「最悪の中の最善」となりつつあった。
「フォーリナー船団、対宙迎撃最終ライン突入!!」
「全艦隊に通達、対宙迎撃を開始せよ!!」
「通達完了!!…第7艦隊テンペストミサイル発射!!続いて第4、第5…第3艦隊もテンペストミサイルの発射を確認!!」
遂に、大気圏まで眼前に迫る。それと同時に36隻のセントエルモ級イージス戦艦及び要塞空母デスピナの対宙兵器の射程圏内に突入し、合計40発のテンペストA0が、放たれた。
更に数を増し、総数1106発のテンペストミサイル群となったが…それでも、マザーシップの迎撃能力は優秀の一言に尽きた。
「フォーリナー船団、更に接近!!」
(くそ、迎撃しきれない…!!)
マザーシップの片方は損傷しているが、しかし迎撃の効率は最高潮。大気圏も迫っていることもあってか、レーザーの発射間隔も先ほどよりもかなり速い。テンペストミサイル群も通用しなくなって来ていた。
そして、遂に。
「マザーシップ2、キャリアー216、飛行ドローン4万、大気圏突入開始!!」
「ライカより、テンペストミサイル砲列発射を確認!!」
フォーリナー船団が大気との摩擦…断熱圧縮により、船体表面が赤熱化を開始し始める。その時、自身の存在を秘匿し続けていたライカが、圧縮空間より展開し、円状砲列形成していたテンペストVLS300基を一斉射。
横からの攻撃に全く意識していなかったのか、マザーシップと飛行ドローンの反応は、明確に、遅れた。
「キャリアー154隻、撃墜ッ!!残存数、48隻!!」
「フォーリナー船団の最終進路が確定!!第一文明圏上空!!…ッ、マザーシップ・アルファ、キャリアー10隻、飛行ドローン2万が分離!!要塞戦艦ヤマトに向かっています!!」
「第7艦隊を要塞戦艦ヤマトの援護に向けろ!!ヤマトは近接対空戦に移行!!」
次回予定、「要塞戦艦ヤマトvsマザーシップ・アルファ」。
-緊急状況報告レポート 自動更新-
状況:
即時出動態勢
陸軍:
アグレッサーと交戦中
空軍:
アグレッサーと交戦中
海軍:
第3艦隊、第4艦隊、第5艦隊は対宙迎撃を中断。日本列島、ロデニウス大陸、フィルアデス大陸への支援任務に就く
第7艦隊は旗艦の援護に向け接近中
第7艦隊旗艦 要塞戦艦ヤマトは近接対空戦用用意
敵戦力:
フォーリナー:マザーシップ2隻、キャリアー48隻、飛行ドローン4万
アグレッサー:レイドシップ多数、詳細不明
戦局:
劣勢、一部は破滅的状況