【完結】プロシュート兄貴「オレ達チームは仲良しクラブじゃないと言ったな。あれは嘘だ」 作:飛沫
まさか生きている間に、動く暗殺チームが見れるとは。
ところでビーチボーイの能力は、物も釣り上げる事が可能なのでしょうか?
アニメや原作見ると、生き物相手にしか発動させてなかったので。
スタンドの説明文見てもはっきり書かれていないし……。
パレルモの旧市街にあるカフェのテラス席に、男が一人座っていた。
ヘリンボーンのスーツに身を包み、ブロンドの髪をキッチリと纏め上げた男は、十人中十人が「綺麗な顔をしている」と答えるほど整った顔をしていたが、今は眉間に深いシワを寄せ、通りを歩く人を睨むように見つめている。
お陰で眺めが良いと評判のテラス席は、男が撒き散らす不機嫌なオーラのせいで誰もいない。
(あのガキ。次見かけたらただじゃおかねぇぞ)
思い返すのは、一時間程前の事。暗殺を依頼されたターゲットを老化させ弱らせたところで、忍ばせていた銃を使い仕留めた後の帰りだった。突然、脇から薄汚れた子供がぶつかると、そのままポケットから姿を覗かせていた財布を掴み、走り去っていったのだ。
これが普段ならば逃げ去る前に腕を掴み、殴りつけるなり蹴り上げるなりして、盗んだ財布を奪い返していただろう。しかし今回は万が一の目撃を防ぐために己の肉体を老化させていたので、素早い対応ができなかった。不幸中の幸いというか、スラれた財布には大した金が入っていなかったが、男がにとっては盗んだ子供を逃したという事実の方に怒りの比重があるので、あまり慰めにはなっていない。
イライラした気分のまま、運ばれてきたエスプレッソに口をつけようとした時だった。通りから怒声が聞こえたかと思ったら、一人の子供がこちらに向かって走ってくる。擦り切れた服に、痩せた体躯の子供だ。その姿を目にした途端、男は更に目付きを険しくさせる。
(あのガキ!!)
見間違えるはずもない。走ってきたのは先程のスリの子供だ。盗られた財布を取り返すべく、男は荒々しく代金を机の上に叩きつけるようにして置くと、柵を飛び越えて子供へと近づいていく。一方子供の方は、背後から響く怒声を気にしながらしきりに頭上に視線を送っていた。やってくる男に気付いた様子はない。しかし何かを見つけたのか、表情を明るくするとそちらの方へ向かって走り出した。体重が軽いせいか、スピードは早い。男は舌打ちをして、追いかける。
見失わぬよう必死になって追えば、子供は奥へ奥へと駆けて行き、足を止める。
(ハン、何を目印に走っていたかは知らねーが、行き止まりじゃねーか)
袋の鼠となった子供に、男は口元を緩く釣り上げて速度を緩める。こうなってしまえば、逃げ場はない。子供は身に覚えがないと言い張るだろうが、適当な理由で痛めつければ財布を出すだろう、そう思っていたら。
「オイ! ここだ!」
子供は突然、右手を上げて声を張り上げる。すると、壁となって道を塞いでいる建物の屋上から、もう一人子供が姿を見せた。緑色の髪に顎と首の境目がない、まるで木の幹のようなかなり特徴的な体躯の子供は、声の主を見つけると手にしていた緑色の釣り竿を振り下ろす。
途端、子供の身体が重量に逆らうかのように浮かびあがった。子供は不快そうな表情を浮かべるがそれも一瞬で、壁に足をつけると再び勢い良く走り出す。まるでアクション映画のように垂直に壁を登り切ると、子供たちの姿は見えなくなる。
その様を、男は信じられない気持ちで見ていた。
「何だ、今のは」
無意識のうちに言葉がこぼれる。釣り針で服を引っ掛けて持ち上げたのか。
(いや、違う。糸はガキの体内に潜り込んでいた)
男は直ぐに否定する。遠目からでもはっきりと見えていた。あの釣り糸はまるで無い物かのように服をすり抜けて子供の体内に埋まり込み、釣り上げていたことに。つまり屋上の子供が手にしていた釣り竿は、普通の釣り竿ではないのだ。
「……ック」
先程までの怒りが嘘の様に、気分はすっかり高揚していた。薄汚い子供を追った先で、こんなに面白いモノを見つけることになるとは。
ふと上を見れば、恐る恐るといった表情で下の様子を伺っている子供と目があう。気づかれると思ってもいなかったのか、子供はビクリと身体を震わせ右手に持っていた釣り竿を手放す。瞬間、まるで空気に溶け込むかのようにかき消えるソレを見て、男は確信する。
(あのガキ。生まれつきのスタンド使いか)
笑みを浮かべる自分に、何かを感じ取ったのだろう。子供は怯えた表情を浮かべたまま、しゃがみ込むようにして身を隠した。姿が見えなくなっても暫くその箇所を眺めていたが、不意に背後が騒がしくなったので振り返る。
いたのは、数人の男。金回りは良さそうだが、顔つきと身にまとう雰囲気は明らかに堅気のものでは無い。おそらくは同業者だろう。
「クソ、あのガキ何処に隠れやがった。おい、お前ら! 浮浪者共に金握らせて、ガキを探させろ。まだこの辺りに隠れてんだろ、捕まえて俺の前に連れてこい!」
中央の男が叫ぶと、両端にいた男は返事をして走り出す。その光景を眺めてから、男は建物に背を向けて歩き出した。連中に子供たちの居場所を教えてもいいのだが。
(オレにんな義理はねえしな。それに、アレらが動いてくれた方が手間が省ける)
そうして大通りへと出ると、公衆電話を見つけた。数回のコールの後に聞こえたきたのは低い男の声。
「リゾットか。ちょうどいい」
『……プロシュートか。終わったのか?』
「ああ、今しがた」
『そうか、ご苦労だったな。報告は』
「そのことなんだがな、仕事は終わった。文句のつけようがないくらい完璧にな。だか、戻るのは少し遅くなる」
『どういう事だ?』
「何、面白いモノを見つけてな」
『……面白いモノ?』
「ああ。だからそっちに戻るのはもう少し先になる」
「楽しみにしておけ、リゾット。ひょっとしたらいい土産を持って帰れるかもしれねぇぞ」
あれ?ペッシ喋るどころか名前すら出てねぇじゃん!