【完結】プロシュート兄貴「オレ達チームは仲良しクラブじゃないと言ったな。あれは嘘だ」   作:飛沫

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アニメ観て再燃したので、この話の基本はアニメベースになってます。
とりあえず今回は兄貴からペッシへの思い。


四月一日深夜、自室にて

 ソリッド・ナーゾ。

 ボスがかつて使っていたという偽名の男を探しているという女が噂になる時、組織の空気が僅かに変わった。

 いったいどういう関係だったのか。会って何をするつもりなのか。一人娘がいるらしいが、その娘はボスの血縁者なのか。

 片隅で語られる噂話だが、熱が籠もった会話とは裏腹に、噂が事実かどうか確認してやろうと言いだす者は皆無だった。

 当然と言えば当然か。ボスの周辺を探すということは死を意味する。

 今まで面白半分でボスの正体を探ろうとし、生まれてきた事を後悔するような拷問の果てに殺されたのは、何もソルベとジェラートだけではない。何人、何チームもそんな目に合ったという話は組織内に随分と広まっている為、馬鹿でもない限り危ない橋を渡ろうとする奴はいないだろう。だいたい麻薬を扱う連中は、そんなことをしなくても薬の値段を上げるだけで、欲しい金額が懐に入ってくる。幹部の連中も、充分立場の恩恵を受けている。ヒソヒソと話だけをして、しばらくすれば噂自体されなくなるだろう。そう考えていたが。

 

「ソリッド・ナーゾというボスの偽名の男を探している女の住所が分かった。……行くか?」

 

 噂から数日後、数枚の紙を手にリゾットが訊ねてきた。

 その紙は何だとイルーゾォが問えば「ソルベとジェラートが遺したボスの情報だ」との答えが返ってきたので、オレは思わず笑ってしまう。

 なるほど。ソルベとジェラートは何かあった時の為に、リゾットの奴にだけ自分たちが集めた情報の隠し場所、或いは情報そのものを教えていたのか。リゾットもリゾットだ。「二人のことは忘れろ」と言っていながら自分が一番気にかけていたんじゃねーか、と。

 身内には非情になりきれない、甘い奴だ。

 

「これは、ソルベとジェラートがよこしたチャンスだと思っている。ソリッド・ナーゾの娘は父親であるボスの正体を知っている可能性があるし、例え知らなくても此方が抑えておけばボスの情報を手がかりを掴めるかもしれない」

 

「オレたちを蔑ろにしたボスから地位と金を奪い取り、見下していた他の連中に実力を見せつけてやる。勿論、危険が無いとは言えない。娘を守る為、正体を知られないようにする為刺客を放ってくるだろう事は容易に考えられる。おそらくはスタンド使い、親衛隊の連中だ。腕や脚の一本や二本、使い物にならなくなる可能性はあるだろう」

 

「だがオレはこのメンバーなら、必ずボスを引きずり降ろす事ができると確信している。これは己惚れや驕りではなく、お前たちと共にいて思った率直な意見だ。強制はしない。全くの無傷で成し遂げられるモノではないだろうからな。しかし、オレはやる。お前たちは……どうする?」

 

 リゾットの言葉に全員が息を飲み込んだあと、首を降って傍に付く。奴がオレたちを信じているのと同様に、オレたちだって奴を、他のメンバーの能力の強さを信じているのだ。

 その後準備が整い次第、オレたちはボスの娘を確保すべくドナテラという女の家へ向かったが、室内に娘はいなかった。ボスが何かを感じ取り、幹部の誰かに娘の保護を命令したのだろう。せっかくのチャンスを不意にしたのは惜しかったが、それでも根気よく家探しをすれば多少の情報を得ることは出来た。向こうも向こうでオレたちが予想以上に早く嗅ぎつけてきたから、痕跡を全て消すことはできなかったのだろう。

 手に入れた情報とネアポリスにいて素早く行動出来そうな幹部を照らし合わせた結果、娘を保護したのはペリーコロかポルポのどちらかだろうという結論になった。とはいえペリーコロはスタンド使いではなかった筈だし、ポルポの野郎は刑務所暮らしだ。どちらも娘の護衛は難しい。更に突き詰めて、ポルポのお気に入りの部下の一人で、スタンド使いであるブチャラティが率いるチームに任されているんじゃないかという話が出た。確定ではないが確率としては高いほうだろう。

 夜が明け次第、偵察も兼ねてホルマジオがブチャラティチームの連中に接触することになった。不安はない。ホルマジオのスタンド能力なら、誰にも気づかれることなくヤツらの隠れ家に侵入し、娘を連れ去る事ができるだろう。

 はたして娘は、父親であるボスの情報を持っているだろうか。母親が死ぬ間際に探そうとしていたくらいだ。オレたち同様、何も知らないかもしれない。

 だが、それは承知の上だ。捕らえれば利用方法なんざいくらでも出てくるだろう。

 何だったらボスを追跡する際に、メローネのスタンドの餌食にでもしてしまえばいい。血縁者同士、案外と使えるかもしれない。可哀想だと思わないわけではないが、オレたちがのし上がる為の尊い犠牲というやつだ。

 

「……ペッシ」

 

 ふと、弟分の顔が浮かぶ。チームに引き込んで二年、殺しは未だ成し遂げていないが能力と実力は既に一人前と考えていいだろう。

 おそらく、この戦いでアイツは人を殺す。マンモーニから卒業できるし、大仕事での殺しならば自信もついてビビることもなくなる、いいこと尽くめだ。

 

「そういえば、ペッシを初めて見つけた時は、面倒見る気なんて一切なかったな」

 

 懐かしい思い出か。アイツが薄汚れた仲間をビーチ・ボーイで釣り上げる様を初めて見た時、ポルポの試験を受けずともスタンドを使える人間がいるのかと驚き、興奮した。

 でも、それだけだ。ペッシの能力も『人間を釣り上げるだけ』のモノで、面白くて便利そうだが暗殺に使えるとは想像もしていなかったし、リゾットに連絡も入れた時も『スタンド使いのガキを見つけたから、捕まえて組織の人間に渡せば、それなりの金になるんじゃないか』もいう程度の気持ちだった。考えが覆ったのは、ペッシが仲間だった男の片腕を見た時。

 

『殺してやるって言ったんだ!!』

 

 叫んだ瞬間にビーチ・ボーイの針を男の体内に潜り込ませ、容赦なく壁に打ち付ける姿にコイツのスタンド能力は人を釣り上げるのではなく、人を殺すためのモノなのだと理解した。

 分かればとにかく欲しくなった。こんな能力をスリの手伝いだけに使うのは惜しい、もっと色々な場面で力を奮うべきだと。

 その後銃弾に怯み、すっかり怖気づいた様子にこの甘ったれがと舌打ちしたくもなったが、逆に何も知らないコイツに一から教えてやれると思えば、苛つきも直ぐに育てる楽しみに変化した。

 明日、オレたちは人生一番の大勝負に出る。ペッシの成長がチームが栄光を掴むことに繋がると考えれば。

 

「楽しみだな、ペッシ」

 

 オレの大切な弟分。輝かしい未来を、どうかオレたちに見せてくれ。

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