【完結】プロシュート兄貴「オレ達チームは仲良しクラブじゃないと言ったな。あれは嘘だ」 作:飛沫
苦手な方はご注意下さい。文字数少ない割に時間かかったのは、書いてる本人が例のシーンの見過ぎで軽く落ち込んだからです。書くのなんて、このシリーズ書くときから分かってたんですがね。
たまにペッシはゲスかどうかという話になりますが、個人的にはゲスだと思ってます。悪役だし、ブチャラティがそう言ってましたし。
でも、命乞いして背後から襲うよりは、最後まで足掻いてくれた方が好きなので、ゲスで問題ないです。
敵役なんだしね、ゲスでいいんだよ!!
何かを思う間もなく、ビーチ・ボーイの糸がオレの首に巻き付いた。そのままゴリュ、という鈍い音とともに、視界がありえない方に向く。見えない方向から「ヒッ」という高めの悲鳴が上がる。
「グハッ」
口内に血の味が広がり、収まりきらない血が口や鼻から零れ出た。口を開けば大量の血が足元に散らばる。
痛い、苦しい、息が出来ない。
上の三つが占めてよく働かない頭のまま、何とか首を動かして、霞む視界のまま前を見た。妙な角度になっているのは、首が上手く動かないからだ。折れたのだということは、血を吐いた瞬間から理解していた。
「オレは、死ぬのか?」
目の前にいるブチャラティたちに問う為に、疑問を口にしたのではない。映画の超人でもあるまいし、首が折れたら人は死ぬのが当たり前だ。
死ぬ事そのものに恐れはない。直ぐにかたをつけてくると思っていたホルマジオとイルーゾォが死んだ時から、死の可能性はチラチラとよぎっていた。プロシュートの兄貴だってグチャグチャの状態で、なんとか息をしている有様だ。兄貴が力尽きるか、オレが窒素してくたばるか、順番なんてそう変わらないだろう。
死そのものよりも、死んだ後の事を考える方が、どうしようもなく怖かった。
だって兄貴たちと違ってオレは、まだ二人しか殺していない! これじゃあ死んだところで、兄貴と同じ地獄の底に行けるとは思えなかった。兄貴のような性格に憧れて、死後も同じ所に行けますようにと願ってついてきたのだ。一緒にいられないなんて、絶対に嫌だ。
どうしよう。どうすればオレは、死んでも兄貴の傍にいられる。
必死で考えていたら、胸元でモゾモゾと動く感触があった。それで思い出す。列車を止めようとしていた時、運転室にいたアレを持ってきていたことに。
ああ、そうだ。コイツだ。コイツを使えば、後四人殺せる。
オレが胸元から運転室にいた亀を取り出して見せつけてやれば、ブチャラティとミスタのスタンドが目を見開いた。持ってきていると思わなかったのだろうか。随分とおめでたい奴らだ。
亀の中からボスの娘を出してから、ブチャラティに告げる。
娘は返してやる。連れて逃げればいい。だけど、他の仲間はオレの道連れだ。守ると意気込んでいた仲間を失って、絶望を味わえと。
これでオレが殺した人間は、六人になる。多いか少ないかは解らない。だが、今の放っておいても死ぬような状態じゃ、あと四人も殺すことが出来れば充分だと思う。それにコイツらは、正義の味方というヤツだ。ただ電車に乗っている一般人をより、追われている娘を守ろうとするのコイツらを殺せば、オレの罪はもっと重くなるだろう。
オレの言葉を黙って聞いていたブチャラティが、目に静かな怒りを湛えて口を開く。
「さっき、お前の目の中にダイヤモンドのように硬い決意を持つ気高さを見たが……。落ちたな、ただのゲス野郎に」
ヤツの言葉に、思わず笑いたくなった。ゲス野郎? 何を今更。オレたちのチームが何をやっていたか知らないわけじゃないくせに。
オレたちは金を貰えば人々の暮らしを良くしようと努力する政治家や、まだ十にも満たない金持ちの妾や本妻の子供を躊躇いなく始末する殺し屋だ。そんなことを繰り返して、他の連中がオレたちのチームをなんて言っていたか。
『暗殺者チームってのはドンづまりのチームだ。報酬も少ない上にボスからの信頼もない。期待されてない連中が追いやられる場所さ』
『あんなチームに配属されるくらいなら、死んだ方がマシだ』
どうせお前やお前たちのチームの連中も、そんなことを思ったり口に出していたんだろう。
オレの関して何か言っていいのは、チームの皆と兄貴だけだ。お前に言われても虫唾が走る。
声に出せない苛つきをぶつけるように、身体ごと傾かせて持っていた亀を尖った石のある地面へ突き出した。皆落ちてしまえばいい。オレも、亀の連中の命も、ブチャラティの希望も!
最後に、ブチャラティがどんな表情でオレを見ているのか気になって、視線を向けた。てっきり悔しそうな、或いは絶望に満ちた顔をしているかと思ったのに。
「何をやったってしくじるもんなのさ。ゲス野郎はな」
ブチャラティはジッパーで伸ばした腕を投げつけるようにして、オレの顔を殴りつけた。力任せに殴りつけた衝撃で、掌から亀がこぼれ落ち、反対にオレの身体は飛ぶように浮き上がる。そして落ちる途中、ろくな抵抗もできないまま、奴の渾身のラッシュを全身にくらった。
「
別れの言葉と同時に、殴られた箇所に付けられたジッパーによって、オレの四肢はバラバラになる。見えたのは甲羅に傷一つない亀と、列車の車輪から転げ落ちた兄貴の背中。ジワリと涙が浮かぶ。
「兄……貴……」
ゴメンよ。仇を取れなくて。せっかく兄貴が命を張ってまで、オレが勝てるようにサポートしてくれたのに。
最後に思ったのは後悔だった。その後オレの身体は川に落ち、水の冷たさに晒されながら意識が途切れた。