【完結】プロシュート兄貴「オレ達チームは仲良しクラブじゃないと言ったな。あれは嘘だ」   作:飛沫

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暗殺チームはリゾットさん以外、過去が明言されてないので好き勝手書けていいですね(ゲス顔)

ペッシのビーチ・ボーイを出すときの
釣り糸が出る→カシャンカシャンと釣り竿が出る
という描写が凄い好きでもう何十回も見ています。
カッコ可愛い……


ペッシ君とプロシュート兄貴 二

 バクバクと早鐘を打つ心臓を抑えつけるように、胸元に手を押し当てながらオレはこっそりと下を眺めた。

 

(もう、いなくなった……?)

 

 見る限り、道路には誰もいない。さっきまでは誰かの怒鳴り声が聞こえていたけれど、今はそれも聞こえない。端まで見渡し、誰もオレたちがいる屋上を注視していないことをようやく確認できて、安堵の息をつく。

 

(何だったんだろう。さっきの兄ちゃん)

 

 そう多くはないけれど、今までにも何度か逃げる姿を目撃されたことはある。そして、目にした人間は「信じられない」か「薄気味悪い」という表情しか浮かべなかったのに。

 

(あんな……笑うなんて)

 

 さっき、相棒を釣り上げる姿を見た高そうなスーツを着た兄ちゃんは違った。怪訝そうな顔をしたのはほんの僅かな時間だけ。後はオレを見つけると、まるで良いものを見つけたというような。それはもう、楽しそうに笑ったのだ。なまじ整った顔をしていた人だったから、向けられた笑みには妙な凄味というか迫力があって。オレは思わず、右手に持っていた釣り竿を離してしまったのだ。

 

(そういえばあの兄ちゃん、オレの釣り竿が見えていた? ……アレ?)

 

 あぁ、そうか。少し勘違いをしていた。兄ちゃんから探るような目付きを向けられ、オレは怖気づいて釣り竿を離した。そして釣り竿を認識してから、兄ちゃんは笑ったんだ。

 

(まさかこの釣り竿が見える人がいたなんて)

 

 汗ばんで湿った掌をじっと見る。あの釣り竿は魔法の釣り竿だ。六歳の頃、起きたら指先から十cmくらいの釣り糸が生えていて飛び起きたオレは、両親に必死で訴えた。だけど、顔の前にまで糸を見せても何も言わず「夢でも見たんだろう」と笑う父ちゃんを見て「この糸はオレにしか見えないんだ」と気付いた。最初は勝手に生えてきた糸だったが、オレが成長するにつれて糸はだんだんと長くなっていき、遂に十歳の時に今の釣り竿の姿になった上、オレの意思で自在に出せるようになった。

 けれど、今みたいに使うようになったのは十五になってから。両親が死んでしまって誰が引き取るという話になった時、皆オレのみたくれの悪さを気にして尻込みし、この年齢なら一人でも生活出来るだろうと世間に放り出された。その時に、魔法の釣り竿で何か出来ないかと色々試してみた結果『生き物なら何でも釣り上げることができる』『糸は壁なんかの障害物を無視して通過することができる』という事がはじめて解ったのだ。

 それからは日雇いの仕事があればそれに従事して、無ければ海で釣りをする日々が続いた。釣った魚を店に持って行けば、なんとか生活出来る金額にはなってくれたからだ。二ヶ月くらいその生活を続けていた時。

 

『なぁ、お前。それ、どうやって釣ってるんだ』

 

 同い年くらいの男が不思議そうな顔をして、訊ねてきた。そりゃそうだろう。周りから見れば、オレは道具も何も持たずに魚を釣り上げているのだから。

 適当に誤魔化していても男は納得せずにしつこく食い下がってきたので、遂にオレは魔法の釣り竿の事を話す羽目になる。目の前で釣り竿を見せても、やっぱり男には見えていないみたいだったが、釣り竿の能力はかなり魅力的に聞こえていたらしい。

 

『凄ぇじゃねーか! なぁお前、それならオレと組んで一稼ぎしようぜ!』

 

 臆病なオレは最初は乗り気になれずにいたが、男は必死で説得してきて。その内に段々嬉しくなってきたのだ。何しろ人に必要とされたのは久しぶりだったから。

 こうしてその日から、オレは男の相棒となってスリ稼業にすることになったのだ。

 

*  *  *

 

「オイッ! オイッてば!」

 

「ッ!?」

 

 肩を揺さぶられ耳元で叫ばれて、ようやくオレは我に返る。顔を上げれば変な顔をしてこっちを見ている相棒がいた。

 

「どうしたんだよ、さっきからボンヤリして。大丈夫かよ、オイ」

 

「う、うん。さっきオレたちを見ている人がいたから。びっくりしただけだよ」

 

「人が見てたァ?」

 

 オレの言葉につられるように、相棒も下を覗き込む。

 

「いねーじゃん」

 

「う、うん。さっきどっか行ったみたいだ」

 

「だったら大丈夫だろ。オレたちに気づいてたらずっとこっちを見ているだろうし。お前は気にしすぎなんだよ」

 

「そ、そうだね。そうだよな!」

 

 相棒の言葉に自分の声を被せて納得させる。ああ、そうだ。オレはビビリでカンがよくないから、変に勘違いして不安がっていただけだ。だって釣り竿は今まで誰にも見られたことはない。家族にだって。これから先、見ることのできる人なんて現れるハズがないんだ。

 

「それより見ろよ、この紙幣の量! まだ三人だけど今日はもうこれで充分だな!」

 

 一方相棒は興奮した様子で盗った財布をひっくり返して、オレたちの前にちょっとした紙幣の山を作る。

 思わずつばを飲み込んだが、同時に不安も生まれた。最近の相棒は少しずつだが、無謀になってきている。大人しそうな観光客相手のスリが、最近は金持ちそうだけれど、どこかヤバそうな相手に変わってきた。さっきの怒声も動転してよく聞いていなかったけれど、もしかしたらオレたちを探している声かもしれないし。

 

「じゃあほら、今回のお前の取り分」

 

「え、コ、コレだけかよォ?」

 

 紙幣を纏めていた相棒が金を差し出してきたが、その量を見て思わず不満が口に出た。どう見ても相棒の取り分が多すぎる。スリを行うのは相棒だから、取り分は向こうが多いというのは最初に決めた約束事だし、理解していたが今回は少なすぎだ。これじゃあオレの取り分は相棒の三分の一もないことになる。

 だけどオレの文句にも、相棒は涼しい顔で反論してきた。

 

「何だよ、身体張ってるのは俺の方なんだぜ。お前に俺みたいなことできんのかよ」

 

「ウッ、そりゃぁそうだけどさァ」

 

 情けないが反論できない。確かにその通りなんだから。

 俯いたまま出された金を受け取る。変に反論したせいか重たい空気が辺りを漂うが、その空気を破ったのは相棒だった。

 

「え……?」

 

「……悪かったよ。調子に乗り過ぎた。確かに今日はお前に助けてもらわないと不味かったんだ。マフィアっぽい相手の財布に手ェ出しちまったからさ。追いかけられる時、殺されるかもって思ってたから、お前の姿を見たとき本当に安心できたんだ」

 

 そっぽをむいたまま、紙幣を渡された。

 

「あ、ありがとう」

 

「気、気にすんな。さっきはああ言ったけれどさ、お前には感謝してるんだ。俺一人じゃ絶対、こんなに上手く金を稼ぐことなんか出来ないんだからよ」

 

 うぅ、重苦しいのはなくなったけれど、また微妙な空気になった。な、何か言わないと。

 

「な、なぁ!」

 

 意を決して、オレはここ数日前から考えていた事を相棒に伝える。

 

「シチリアから、出よう!」

 

「は!? お前いきなり何言って」

 

「だつて、マフィアに目を付けられちまったんだろう! なら、ここでスリを続けるのは難しいよ。それに、今日結構な額の金が手に入ったことだしさ、見つかる前に逃げたほうがいいと思うんだ!」

 

 相棒は顎に手を添えて考え込んでから「そう……だな」と頷いてくれた。

 

「じゃあさ、じゃあさ、何処に行く!?」

 

「落ち着けよ。とりあえずは……ネアポリスだな。その先は着いてから考えようぜ」

 

「わ、分かった」

 

「じゃあ、明日船着き場に集合な。あ、服も買い替えておけよ。あんまり汚ねー格好してると怪しまれるから」

 

「うん、じゃあ明日!」

 

 約束をして、一旦別れる。この時、オレは想像もしていなかった。次の日に、世界観がガラリと変わる出会いが待ち受けているということに。




またペッシの名前が出てない……というかモブの名前すら出ていない……だと
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