【完結】プロシュート兄貴「オレ達チームは仲良しクラブじゃないと言ったな。あれは嘘だ」 作:飛沫
漫画読んでいた時は
ペッシ→二十ちょっとくらい
プロシュート兄貴→二十代後半くらい
かなと思っていたのですがアニメ見たら
ペッシ→なんか子供っぽい、十八か?
プロシュート兄貴→若そう、二十半ば?
な感じがしたので。実際の所わかりませんが。
いやー、声優さんって凄いなぁ。
「相棒、どこに行っちまったんだよー」
落ち着かない気持ちのまま、オレは辺りを見回した。フェリー乗り場に着いたのは十八時。それから三十分が経ったのに、相棒は一行に姿を見せない。
船が出るのは二十時十五分だから、時間的にまだ余裕があるといえばあるけれど、チェックインなんかを考えればそろそろ来ないとまずいハズだ。焦った気持ちのまま、置かれている時計と出入り口を何度も見比べていた時、強い視線を感じた。見返せば高そうなスーツだけれど、どこか普通とは違う雰囲気の三人組の男が、オレの事を指さしながら口を動かしている。
(マズイ)
頭の中で警鐘が鳴り響く。顔に見覚えはないけれど最近の相棒の行動から考えれば、あの男たちはスられた連中なのだろう。あんなヤバそうな空気を纏う相手に捕まったら、どんな目に合わされるか。想像するだけでも恐ろしい。
震え上がっていると向こうもオレが見ていることに気がついたようで、こっちに向かって歩いてくる。とにかく逃げなくては。弾けるようにして、別の出入り口向けて駆け出した。
* * *
どれくらい走っただろう。人通りの多い道を目指していたものの、足音や話し声が聞こえる
度にビビりのオレは足を止めて回り道をするハメになった。そうして自分でも方向感覚があやふやになりかけていた時。辿り着いた先は行き止まりの小路だった。
「……ッ!」
ザァッと血の気が引く。この小路は見覚えがある。あまり人が通らない為に、よく相棒が逃げる先に使っていた小路だ。ましてや今は夜、多少大きな音がしてもきっと誰も気が付かない。
「ガキの浅知恵で逃げられると思っていたのか。ここは俺たちの縄張りだ。どう誘導すれば、何処に逃げ込むかなんてお前たちよりもよぉく知ってるんだよ」
複数の足音と同時に男の声が聞こえた。聞き覚えのある声。記憶を思い返して、昨日聞いた怒鳴り声に似ていることに気がつく。コイツら、昨日相棒が財布を盗んだ相手だ。
「わ、悪かったよ。金なら返すから……助けてくれよォ」
半泣きになりながら、ポケットに詰めていた紙幣の束を取り出す。服は以前から持っていた金で足りたし、船のチケットもまだ買っていないから手はつけていない。円満に解決するとはサラサラ思っていなかったけれど、金を返せば数発殴られる程度で、許してもらえると考えていたのに。
「あぁ? 金を返せば許せしてもらえる? ガキが、これだけ俺たちに手間かけさせてそんな甘い話が通ると思ってたのか」
「で、でも! 金には全然手はつけて」
「俺たちマフィアはな、舐められたら終わりなんだよ。特にお前たちみたいなガキには。頭の悪いガキが手を出したらどうなるか、見せしめが必要なんだ。こういう風にな」
「……ヒッ!!」
真ん中にいる男が、向かって何か投げてきた。ソレは右腕だ。マネキンだと思いたかったけれど、切断部分から覗く白いモノはマネキンにはあり得ないものだし、手の甲にある特徴的なケロイドは相棒のモノにしか見えなかった。
歯をガチガチと鳴らして震えていると、男が下卑た笑いを浮かべながら言葉を続ける。
「あのガキもな、数発殴りつければ泣きながら許せしてくれと金を出してきた。だが、それで許せば警察や刑務所なんて必要ねぇだろ? 今頃はスナッフフィルムの犠牲者か、臓器の献体として腹かっさばかれてだろうよ」
迷惑かけたんだ。最後くらいヒトサマの役に立たねぇとな。
その言葉を聞いた瞬間、身体の震えが嘘みたいに止まった。代わりに、怒りが全身を支配する。なんで、なんでそんな酷い事を。確かにオレたちはロクデナシだ。でも、だからって。
こんな惨い目にあうほど、悪い事なんてしてない!
「……ろしてやる」
「あん?」
「殺してやるって言ったんだ!!」
右手から釣り竿を出して、右の男目掛けて振り上げる。増悪の感情で、人に釣り竿を向けたのは始めてだった。針が男の脚に入り込んだと同時に、思い切り腕を振りかぶって壁に激突させる。
大きな音を立てて、男の身体が崩れ落ちた。呆然としている男たちに構わず、今度は左の男に狙いを定めて釣り竿を振り上げる。同じように壁に叩きつけてやれば、微かに呻いて動かなくなった。
(後は、コイツを―――!)
釣り竿を向けようとした時だった。パァン、と乾いた音と共に足元の石畳が割れ、破片が足元をかする。
真ん中いた男が銃を取り出し、オレ目掛けて撃ってきたのだ。向こうも動揺していたお陰で当たりはしなかったけれど、向けられた人殺しの道具はそれだけでオレの怒りを削ぎ、恐怖を呼び戻すのには充分過ぎた。
「……なるほど、ガキが言っていた『不思議な力』ってのはそれか。確かによく解らねぇ、手品みたいな力で肝が冷えたが……コレには敵わないだろ」
今度はオレの顔に銃口を向ける。こんな距離じゃ避けられない。何より、恐怖のせいか膝が笑ってマトモに動くことが出来ない。
怯えるオレを見て余裕を取り戻したのか、男は再び笑みを浮かべた。壁に叩きつけた男たちも、派手に咳き込みながら立ち上がろうとする姿が見える。
「腕を撃ち抜けばひょっとしたらと思うが……。万が一ってこともある。金にならないのは惜しいが、テメエはここで死んどけ」
人差し指が引き金にかかるのを見て、オレは死を覚悟した。そして、これ以上先の事を見たくなくて目を瞑る。その時、知らない誰かの声が聞こえた。
「ザ・グレイトフル・デッド」
やってくる筈の痛みと死は一行に訪れず、コツコツという靴音が聞こえてきた。薄っすらと閉じていた目を開くと沈みかける夕日を背に、此方に向かってゆっくりと歩いてくる人の姿があった。逆光で、顔はよく見えない。
「ったく、男二人をスタンドで倒したからもしやと思って見ていたんだが、銃を向けられた程度でビビるとは。まだまだ甘ェな、テメーは」
だが、やはり見どころがあるな。楽しそう言うと、その人は胸元から銃を取り出す。仲間なのかと思ったが、その人は銃口を下へと向けた。
つられるように視線を移し、悲鳴を上げた。さっきまでオレに銃を向けていた男が倒れていたからだ。しかも髪は真っ白、肌はシワクチャの、まるで百を超えたような年寄りの姿で。倒れたままの左右の男たちも同様だった。
もしやと思って掌を見ると、アイツら程じゃないなしろ、オレの掌も皺まみれになっている。もう一度悲鳴を上げて尻もちをつくと、その人はチラリとオレを見たが、直ぐに倒れている男へと視線を戻した。そして肩口に足を乗せると、後頭部に銃口を押しつける。
「た、助け」
「あん? 助けろ? オレにんな義理はねェな。しかし人の来ない所に来てくれて助かったぜ。老化で殺すのは少し時間がかかる。こっちの方が手っ取り早い」
銃声と共に、ビシャリと大量の血が辺りに飛び散った。その様を興味なさ気な目で一瞥すると、今度は左右に向けて一発ずつ銃弾を打ち込む。全員が死んだのを確認すると、その人はオレの前に立ち、見下ろしてくる。
近くに立たれて、ようやく顔が見えた。きっちりと結んだ金の髪に、整った顔のこの人は。
「よォ、マンモーニ。オレの顔は覚えているか?」
「昨日オレを見て笑っていた……兄ちゃん」
「上出来だ」
オレの答えが気に入ったかのように、満足げに笑う。今、三人もの人間を殺したとは思えないような表情だ。
「どうして……助けてくれた、んです?」
「そんなモン、オレが四人分の命よりもオメーに価値があると思ったからに決まっているだろ。他に何がある」
……四人?
「兄ちゃん、まさかオレの相棒も」
「もう少し根性があれば、分からなかったがな。数発殴られた程度で金だけじゃなく、オメーの事までベラベラ白状したからよ」
「嘘だ!!」
兄ちゃんの言葉に、オレは食って掛かった。
「だって、相棒は昨日言ってくれたんだ。オレがいて助かる、感謝してるって! そんな、そんな」
「怯えて無様さらす姿は、オメー自身さっき証明してただろ。殺してやるって息巻いてたに、当たりもしなかった銃に怯えやがって。なんだあのザマは」
「……っ」
兄ちゃんの言葉に反論できずに下を向く。確かにその通りだ。オレは、あんなにも相棒の仇をとるつもりでいたのに、結局ビビッて出来なくて。兄ちゃんに助けてもらわなれけば、復讐も遂げられずに死んでいた。
「う〜……うぅっ」
情けない自分が悔しくて惨めで。ボロボロと溢れてくる涙も拭わずに、泣いていた。兄ちゃんはそんなオレを同情も侮蔑も含まない目で見ていたがしゃがみ込むと、こう問いかけてくる。
「変わりたいと思うか」
顔を上げ、ぼやけた視界で兄ちゃんを見れば、真剣なオルトレマーレの瞳がオレを見つめていた。
「ならばオレの手を取れ。取ったら最後、もうシャバには戻れねーし、死んだ先に行くのは地獄だ。だが、必ず与えてやる。生きていて良かったと思える誇りと、輝かしい栄光を」
そう誘ってくる顔は、悍ましいほどに綺麗で怖いくらいだ。
ふと、ずぅっと昔に神父様が教えてくれた話を思い出す。美しいモノには注意しなさいという内容だ。人は美しいモノに弱くて警戒を解いてしまうから、美しいモノの言葉や手を直ぐにとってはいけない。それはひょっとしたら悪魔で、貴方を罪を犯させようとしているかもしれない、と。
兄ちゃんの言葉は、正にそれだ。元々天国に行けるとは思っていないけれど、この手を取れば確実に地獄の最下層にまで落とされる。人を殺してもなんとも思わない、人でなしにされる。それでも。
「オレも……なれる? 兄ちゃんみたいな強い人に」
「なれるさ。いや、してみせるさ。オレが見込んだ男なんだからよ」
ついていきたい、後悔なんかしない。覚悟を決めて、オレは兄ちゃんが出してきた手をしっかりと掴んだ。
* * *
「そういえばオメー、名前はなんて言うんだ」
「え」
兄ちゃんに腕を引っ張ってもらいながら立ち上がると、唐突に名前を訊ねられた。
「名前だ名前。いつまでもテメーだのオメーだのと呼んでもいられないだろ」
「名、名前……」
父ちゃんたちから貰った名前は確かにある。けれど、もう長いこと呼ばれなかったから、名前で呼ばれてもピンとこなさそうな気がした。
「何だオメー、名前が無いのか?」
「いや、その……」
正直に理由を話せば、兄ちゃんは少しの間黙り込んでから「じゃあペッシだ」と言ってきた。
「ペッシ?」
「あぁ。オレの名前はプロシュートだからな。肉と魚。そう悪くはねーだろ」
「ペッシ、ペッシ……うん、オイラは今日からペッシだ。よろしく。ええとプロシュート……兄貴!」
ようやく名前を出せました。
とりあえず一番書きたいシーンは書けたので、次からはもうちょっとスローペースになると思います。