【完結】プロシュート兄貴「オレ達チームは仲良しクラブじゃないと言ったな。あれは嘘だ」   作:飛沫

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アニメでもギアッチョとペッシの絡みは無かったんですが、まぁ二年も同じチームにいれば映らない所で会話くらいしてたよね、ってことで。
言葉尻か何かにギアッチョがキレてペッシがソレにビビッてメローネが冷静に返す。そんなやりとりとか見たかったなー。


ペッシ君とギアッチョ君

 

「ここで大丈夫だ、ギアッチョ。降ろしてくれ」

 

「ああ、分かった」

 

 路肩に車を寄せて止めれば、助手席からチームの仲間、メローネが降りる。

 

「迎えはいいんだな?」

 

「ああ、ギアッチョは昨日まで仕事でようやく今日が休みになったんだろ? 帰りは一人で帰ってくるさ。じゃあ、楽しい休みを」

 

 メローネはヒラヒラと手を振りながら車から離れると、すぐ近くの街路樹に身体を預けて通行人の観察を始める。ヤツ曰く、他人の癖や仕草を注視することによって健康状態や血液型、調子がよければ星座や年齢すら判断する事ができるのだとか。なので自分の人間観察は趣味と実益を兼ねている、というのは本人がよく口にしている。関わりそうもない、赤の他人の事なんかどうでもいいと思うが、メローネがソレを楽しんでいるのならオレが口に挟むことはないだろう。実際、ベイビィ・フェイスを誕生させるには母体となる女の星座や血液型は、ターゲットとの相性を調べるのに重要だ。素直に言う女の方が少ないのだから、経験を元にある程度の推測を立てて行動した方が仕事は捗るのかもしれない。

 木に寄りかかっていたメローネが目の前を通った女を呼び止めるのを見届けてから、オレはゆっくりと車を動かした。どこかに出かけようかと思うのだが、行きたい場所が浮かばない。そんなことをしている内に、手は勝手にハンドルを動かしていて気がつけばアジトのすぐ近くまでやってきていた。この無意識の行動は仕事で染み付いたクセなのか、オレがアジトを気に入っている証拠なのか。どちらか判断が付けられずに複雑な表情をしていると、視界の隅に緑色の動くものが入る。もしやと思って顔を向けると、予想通り動く緑色は最近オレたちのチームに入った新入り、ペッシだった。デカイクーラーボックスを担いでいる所を見ると……コレから釣りってところか?

 ゆっくりと、ハンドルを回してペッシの後ろに車をつける。オレができるだけ音を立てずに移動させたのもあるが、尾行されているのに気づかないってどういうことだ。狙われる可能性のある仕事に就いているのだから、もう少し周囲に気を向けろよ。

 クラクションを鳴らせば、大げさに肩を揺らした後にソロソロと振り向くが、相手がオレだと分かると「ギアッチョか〜」と胸をなでおろす。

 

「びっくりさせないでくれよォ。オレ、てっきり退けって意味で鳴らされたかと思ったじゃねーか」

 

「んなもんでイチイチビビってんなよ。オレらは気分次第で簡単に人を殺せる能力があるんだぜ」

 

「まだ殺しをしたことのないオレに何言ってんだよ。だいたい一般人殺したって面倒くさいだけじゃん。金にもならねーんだし」

 

「まーな」

 

 想像していた以上の正論を返されて、思わず納得してしまう。

 

「で、ペッシ。クーラーボックス持って出掛けるってことはこれから釣りか?」

 

「おう。今日兄貴はホルマジオと出掛けて一日帰ってこないし、オレは休みもらったからビーチ・ボーイの練習がらて海に行こうかと思って。ギアッチョも……休みだよな?」

 

「オイオイ、ペッシ。今オメーはオレと組んでんだぞ。テメーが休みなら相棒のオレだって休みなのは当たり前だろ。それとも何か、オレは休み無しで身を粉にして働けってか? ところでよォ、身を粉にしてって」

 

「イヤイヤ、別にそういう意味で言ったんじゃねーよ。ただ、ギアッチョはオレよりも色々できるからさァ。やる事が多いんじゃないかと思って」

 

 不意に思った疑問を口にする前に、ペッシに遮られた。蒸し返してもいいのだが、それをすると話が一向に進まなくなるのでグッと堪えて、話を続ける。

 

「なるほどな。それでオメーは、これから海に向かう真っ最中って訳だ。歩いてか?」

 

「うん。オレ、ギアッチョみてーに自由に出来る車持ってねーし。そんな離れた距離じゃねェから、このまま向かうつもりだけれど」

 

「だったら連れて行ってやるぜ、どうする?」

 

「え、いいのかい!? じゃあ頼むよ、ヘヘッラッキー」

 

 儲けたと嬉しそうな声で、ペッシは助手席に乗り込んできた。生憎とこの車は後部座席がない作るなので、クーラーボックスは胸元に抱える形になるが。

 

「何処に停めればいいんだ」

 

「別に決まった釣り場なんてなんから、ギアッチョが車停めやすい所でいいぜ。車停めてくれた場所の、あんまり人目に付きにくい所で釣るよ」

 

「じゃあ、あそこだな。距離はそんなねーけれど、一応シートベルトしておけよ」

 

 シートベルトに手をかけるのを横目で確認してから、アクセルを踏んで運転を再開する。数分もするば、海岸が見えてきた。拓けた場所に車を停めれば、ペッシは礼を言いながら車から降りる。

 

「ありがとう。ところで、ギアッチョはこれからどうするんだい?」

 

「それなんだけれどよ、何にも予定も計画もねーんだよ。オメーの釣りでも見てていいか?」

 

「オレは問題ないけれど……退屈じゃないかい? 何だったら近くの店で釣竿でも買うなり借りるなりしてこようか」

 

「したこともねーし、これからする気もないのに金かけるなんて勿体無いねェ。ダッシュボードにメローネが本突っ込んでたから、それ読みながら見てることにする」

 

「うん、分かった。飽きたら帰っても全線構わないから」

 

「おう」

 

 ペッシが歩いていく方角を確認してから、ダッシュボードに手をかける。開ければやはり、数冊の本が入っている。メローネはベイビィ・フェイスの教育の為か、蘊蓄や雑学の本をよく読む。押し込められていたいた本もその類だった。

 手にとってパラパラと捲ること数回。オレ好みの本を見つけたのでソレを手にして、ペッシが居るであろう方へ歩いていく。奥まった場所でシートを敷き、ビーチ・ボーイの糸を海面に垂らしているペッシの姿を見つけた。

 

「あ、ギアッチョこっち。ちょっと狭いけれど、シートに座って。暑さ対策にスポーツドリンク凍らせたペットボトルとタオル持ってきたから、好きに使っていいぜ」

 

「至れり尽くせりで悪くないんだがよ、何でオマエそんなカッコしてるんだ?」

 

 釣りをしているペッシは、タオルを被せるようにして被っていた。帽子を被らないのかという疑問に「だってよォ」と理由を述べる。

 

「帽子被ると髪がペシャンと潰れて『ハゲ』みたいに見えるんだよ。かと言って穴開けて髪出すのはなんか帽子の使い方としてどうかも思うし、変な風に目立ちそうだし」

 

「だな」

 

 帽子のてっぺんから立たせた髪の毛を出した男を見つけた場合を想像してみる。間違いなくオレは二度見し「何だアレ、どうなってんだ」と自問自答しているだろう。

 

「あ。そうだギアッチョ。なんか釣る魚のリクエストとかある? 流石にマグロとかは無理だけれど、普通の魚ならいけると思うぜ」

 

「あー、そうだな……じゃあトビウオ」

 

「解った」

 

 頷いてからペッシは右の掌からビーチ・ボーイを出現させると、沖めがけて糸を飛ばす。その後、クーラーボックスからビニールで包んだ魚の図鑑のようなモノを取り出して眺め出した。

 

「ソレ、メローネが買って渡したヤツか?」

 

 車でアイツを送っている最中、勉強熱心なペッシに本を買ってやったとペッシの勤勉さを褒めているのか、金を出した自分を褒めているのかよく解らない話を散々聞かされていたので、今見ているのがそうなのかと訊ねるとペッシは首を振って答える。

 

「コレは自分で買ったんだよ。趣味みたいなモンになるし。あ、そうだ。昼飯用にパニーニ作って持ってきたんだけどギアッチョも食う?」

 

「もらう」

 

 それからは隣に並んだり背中越しに寄りかかったりと、体制を変えながら過ごす。多少日差しは強いが、茹だるような暑さまではいかないから、比較的過ごしやすいと言えるだろう。悪くない時間の潰し方だと思いながらページを捲っていると「ギアッチョ」と名前を呼ばれた。

 

「どうした」

 

「オレ、ちゃんと人を殺せるようになるかな」

 

 顔を向ければ、どこか不安げな横顔が見える。

 

「他のチームの連中はさ、オレたちのチームが殺しをしてるから見下したり嫌ったりするけど、皆優しいし、構ってくれるからオレは好きだよ。死ぬんなら、皆と同じ地獄の底に行きたいくらいに。だから」

 

「そうだなぁ……」

 

 確かにコイツはビビリで、今の状態じゃ誰かと一緒じゃなきゃ仕事がこなせない。

 だが、スタンドの能力としては暗殺に十分向いているし、殺しや大怪我させるのはまだ動揺するものの、ターゲットに向けて糸を放って軽い怪我を負わせることや、釣り上げることに関しては、躊躇することなくやりとげているから。

 

「今すぐってのは無理かもしんねーけど、時間を掛ければイケんじゃねぇか。努力はしているし何より、オメー自体にやる気はあるんだからよ」

 

「本当かい!?」

 

「ま、肝心の時期は分かんねーけどな」

 

 その時、ビーチ・ボーイに反応が出た。二人揃って海の方へと視線を走らせる。

 

「今度は何だ、イカか? タコか?」

 

「いや、魚だ。あ、これ胸ビレっぽいな。ひょっとしたら……」

 

 リールを思いっきり巻き上げると、水面から大きな胸ビレを持ったトビウオが姿を表した。

 

「ギアッチョ! リクエストのトビウオ釣れたぜ!!」

 

「やるじゃねーかペッシ! ところでトビウオってどうやって料理するんだ」

 

「さぁ……? あ、そうだ聞いてくれよォギアッチョ。最近兄貴がさ、テレビとかで映ってた料理とか見るとオレに『食いてェ。オメーが作れ』って言うんだ。オレが出来るわけねーのに」

 

「はぁ? プロシュートのヤツ、ことある度に『オメーはいい暗殺者になれるんだから、そんな事してんな』って怒鳴ってんじゃねーか。言ってることとやってることが矛盾してるってどういうことだァ?」

 

 お互いに文句を言ったあと、笑い合う。まだ、日は高い位置にある。もう少し、此処でのんびりしててもいいだろう。




この話もあと数話で完結の予定です。
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