白銀のヘカトンケイル   作:北十五条東一丁目

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第47話

「俺たちの雇い主が、また何か思いついたらしい。近々遠出する用ができたと団長は言っていた。くれぐれもこの町からは出ないようにしてくれ」

 

 夜になると居酒屋のようになる冒険者組合のホールにも、朝っぱらから酔いつぶれているろくでなしの数は少ない。朝からここにいるのは、今日の稼ぎの方法について打ち合わせる、比較的勤勉な冒険者が多かった。

 恐らくはそうした冒険者の一組なのだろう。スキンヘッドの男と、年若い少年少女が一人ずつ。そんな奇妙な取り合わせの男女が三人、隅のテーブルに腰かけて、何かを話している。

 

「はい、大丈夫です。――今日は何かありますか?」

「とりあえず、今日は何も無い。町から出なければ、自由にしてくれていい」

「承知しました」

「ああ、じゃあな」

「はい、また」

 

 伝えるべきことを伝え終わると、目つきの鋭いスキンヘッドの男は、アルフェの向かいの椅子から立ち上がった。

 男の名前はウェッジという、リグスの傭兵団所属の斥候である。人相の悪いごろつき然とした見た目をしているが、団長であるリグスの命令にはどこまでも忠実な人間だ。それゆえに、毎朝のリグスとアルフェの連絡係という、使い走りに似た仕事を任されても、嫌な顔一つせずここに来ている。

 

 そのウェッジが、アルフェの側から離れる時に、彼女の隣に座る少年を見て、一つ首をかしげた。まるで、不思議なものを見たような顔をして。

 その仕草に気がついているのかいないのか、姿勢を正したアルフェは、その少年に目を向けると口を開いた。

 

「そういうことですので」

「う、うん」

「今日はよろしくお願いします」

「よ、よろしく」

「……どうかしたんですか?」

 

 背中でもかゆいのか、いつにもまして挙動不審な動きをしている少年――リーフに対し、いぶかしむ表情を向けるアルフェ。

 

「な、何でもない。行こうか、アルフェ君」

 

 そう答えたリーフの声は、少しうわずっていた。

 冒険者組合を出ると、二人は連れだって城への道を歩き始めた。今日の目的地は城に併設している学問機関――魔術研究所だ。昨日交わした約束を、早速果たそうというわけである。

 

「でも、私のような部外者が、急にその研究所? に行って、見学させてもらうことができるんですか?」

 

 並んで歩くリーフに対して、あらためてアルフェが質問を投げかける。

 彼女の疑問は当然であった。先進的な魔術知識は、どこにおいても重要な機密だ。伯の居城に付属している施設ともなれば、そこで扱う技術は通常、門外不出のはずだろう。突然関係の無い一般人が訪れたところで、奥に立ち入ることもできずに追い返されるはずだ。

 

「大丈夫さ。僕の付き添いとしてなら、君一人くらい」

 

 だが、リーフの態度には自信が見受けられた。

 彼のゴーレム研究の後援をしているのが城であるというのは、以前にリグスがアルフェに教えてくれた。しかしリーフはその研究所に通っている様子もなく、町中に独立した工房を構えている。

 そんなことを許されているくらいだから、もしかして彼は、そのような研究者たちの中でもそれなりの地位を与えられているのではないだろうか。何となくアルフェはそう思った。

 

「もちろん、詳しい研究内容とかは見せてあげられないだろうけどね。こいつを鑑定するくらいなら、知り合いに頼めばすぐだから問題ないさ」

 

 ぽんぽんとリーフが叩いた肩掛け鞄の中に入っているのは、以前に二人が廃鉱で見つけた黒い石だ。この鑑定が、今回の研究所訪問の目的ということになっている。

 魔術の徒が集まる研究所というのは、一体どんなところなのだろう。アルフェの故郷のラトリアにも、近隣の領邦に知られた魔術学校があったのだが、アルフェ自身は足を踏み入れたことも、見たこともない。アルフェはこれから行く場所の様子を色々と思い描きながら歩を進めた。

 

「最近はあんまり顔を見せてなかったし、僕にとってもちょうどいいんだ。たまには成果報告もしておかないと……。援助金を打ち切られたら、研究にも差し支えるしね」

「援助金ですか。それは、どのくらいいただけるものなのですか?」

「そこに興味をもつんだね……」

 

 リーフは呆れたように頭を掻いた後、小声で何かつぶやいた。

 

「でもまあ、そのほうが君らしいのかなぁ」

「何か言われましたか?」

「ううん、何でもないよ」

「……?」

 

 話しながら歩いているうち、周囲の風景が変わってきた。冒険者組合のある界隈と比べると、居並ぶ建物が徐々に立派になっている。城に近づいているのだ。

 

「今日は結構暑いねぇ」

「雨が降ったのは、大分前ですし。……そんなローブを着ているからですよ」

「へ、変かな?」

「別に、変ではないですが……」

 

 アルフェは言葉を濁した。

魔術士らしい服装をするのはいいが、街行く人々が涼し気な軽装なのと比べると、リーフの格好は異様だった。暑いと言うなら、そのローブを脱いで、ついでに伸ばし放題の髪も切ればいいのに。そんな素直な感想を、アルフェは胸の内にしまっておいた。

 そういえば、いつの間にかリーフの挙動不審も収まったようである。研究所の話だけでなく、天気の話や食事の話、歩きながらする二人の会話には、取り留めもない世間話も混じっていた。

 

「そう言えば、ステラ君は――」

「……」

 

 しかし、唐突にリーフにその名前を出されて、アルフェは自分の顔がこわばるのを感じた。

 

「――あ、ご、ごめん」

 

 そしてそれは、リーフにも伝わったようだ。彼は触れてはいけない話題に触れてしまったという顔をしている。二人の間を流れる空気が、息苦しいものに変わった。

 

 ――リーフさんが謝ることではありませんよ。

 

 リーフの謝罪に言葉で返すことができず、アルフェは心の中でそう答えた。

謝られることではないのに、謝られてしまった。

口に出して言えないのは、自分の未熟さだ。彼のアトリエで、ステラにはずいぶんと、治癒院を抜け出したことを責められたから。

 

 ――……責められた?

 

 いや、違う。ステラはアルフェを責めたのではなく、彼女はただただ、アルフェの身を案じていた。打算もなく、純粋に。

 

 やはり、彼女のあの優しさは危険だ。

あれに触れていると、自分がどうして旅をしているのか、何のために戦っているのか、そんなことを考えさせられる。覆い隠しているつもりのはずの、自分自身の意思の弱さを自覚させられる。

 

 ――こんな風になるから、彼女に会いたくなかったのに。

 

 でも、会ってしまった。

 あの時は、突然何を言い出すのだろうと思ったけれど、リーフがこうして研究所に誘ってくれたのは、ぐちゃぐちゃになった頭を冷やすのに、ちょうどよかったのかもしれない。

感謝というほどではないにしても、少なくとも彼をゴーレム狂いの変人扱いするのは、もうやめておこう。謝罪の代わりに、アルフェはそう思った。

 

「もうすぐ、着きますね」

 

 それでも、この話題に触れ続ける強さは、アルフェには無い。近づいてきた城に目を向け、彼女は露骨に話題をそらした。

 

 

 初めて訪れた魔術研究所は、この前押し込められた衛兵の詰め所よりも、随分と新しい建物に見える。城に付属する形になってはいても、城の建物とは、作られた年代からして違う感じだ。

 

「ここは、若いころのユリアン様が、伯に進言して創られたんだ」

「若いころ? ユリアン様は、今もかなりお若く見えましたが……」

「アルフェ君、ユリアン様を見たことあるの?」

「はい、一度。……遠くからお姿を拝見しただけですよ」

「そっか。うん、その進言をした時のユリアン様は、僕らよりもずっと小さかったんだって」

「本当ですか。すごいですね」

「だろう? でね――」

 

 リーフの解説を聞きながら、二人は研究所の中に進んだ。入り口には見張りの兵士が立っていたが、その兵士たちはリーフの顔を見てうなずくと、特に許可証なども求めずに、あっさりアルフェたちを中に通した。さっきのリーフの自信は、本物だったようだ。

 外は暑かったのに、研究所の内部は少しひんやりとしている。日陰に入ったからかと思ったが、それだけではなさそうだ。床や壁の石材自体が、ほのかに冷気を帯びているようにも感じられた。魔術的なものだろうか。

 

「とりあえず、これを鑑定してもらおう。それが今回の目的だしね」

 

 そう言ったリーフがごそごそと肩掛け鞄の中をあさり、黒い石くれを取り出した。バジリスクと戦った廃坑で採取した、魔力を帯びた石だ。

 

「バロウさんはどこかな……。研究室かな?」

 

 研究員らしき人の名前をつぶやいて、リーフは廊下を歩いていく。アルフェも一拍遅れて、それについて行った。

 

 

 研究所の廊下には、それほど人は歩いていない。移動している間、リーフと同じようなローブを着た男性一人とすれ違っただけだ。その人も、本に視線を落としながら歩いていて、こちらには目も向けようとしなかった。

 それ以外の魔術士たちはどこにいるのだろう。廊下の両側には、いくつものドアが並んでいる。これがリーフの言う研究室なのだろうか。このそれぞれに彼のような魔術士が詰め込まれているとしたら、結構な人数になりそうだ。

 

「あれ? いないのかな……」

 

 リーフは部屋の一つの前で足を止めて、扉をノックした。しかし、目当ての人物は不在だったらしい。

 

「じゃあ、実験室かな。ごめんアルフェ君、付いてきて」

 

 無言でうなずいたアルフェは、また少年の後に続いて歩き出した。

 

「これを分析すればいいのか?」

「お願いできますか? バロウさん」

 

 “実験室”とリーフが呼ぶ部屋の一番奥に、目的の人物はいた。

 大きな部屋だ。その名の通り、様々な実験器具が置かれている。リーフのアトリエにも似たような器具があったが、それをさらに複雑にしたような感じだ。室内には数人の魔術士がいて、各々の実験にいそしんでいる。

 

「ああ、もちろん。……ところでチェスタートン、その子は?」

「えっと、この鉱石を見つける時に協力してもらった子です。せっかくなので、見学でもどうかなって……。アルフェ君、僕の先輩のバロウさんだよ」

「アルフェです。初めまして」

 

 バロウというこの研究員は若くない。少なくともリーフとは相当歳が離れている。生え散らかした無精ひげには、少しだけ白いものが混じっていた。服装も、室内にいる魔術士の中で、この人物だけはローブではなく、くたびれたシャツを着ている。

 

「どうも」

 

 丁寧に頭を下げたアルフェに対して、ぶっきらぼうな挨拶が返ってきた。しかし男の目は、さりげないながらも興味深そうに、アルフェの姿を観察していた。

 

「分析――といっても、このままじゃな。こっちで製錬してもいいか」

 

 リーフから渡された鉱石を一通りこねくり回してから、バロウは言った。確かに、原石のままでは分からないこともあるのだろう。

 

「いいんですか?」

「ついでだよ」

「すみません。じゃあ、時間がかかりますね。日を開けた方がいいですか?」

「いや、そうでもない。一時間ももらえれば――。お前らはその間、どっかで時間を潰してくれ」

 

 そう言うと、バロウは早速鉱石を実験器具に設置した。そして彼が魔術を唱えると、驚いたことにその器具はひとりでに動き出し、鉱石に魔力の光を当て始める。

 

「だそうだけど……、どうする? アルフェ君」

「……そうですね。よろしければ、ここで見ていてもいいですか?」

 

 このような装置が動いているのを見るのは初めてだ。好奇心を掻き立てられたアルフェは、器具から目を離さずにそう答えた。

 

「好きにしてくれ」

「ありがとうございます」

「……そう。あ、じゃあ、僕は今のうちに研究報告を済ませて来ていいかな。一人にして悪いけど」

 

 装置に集中しているアルフェとバロウを見比べてから、リーフは言った。

 

「はい」

「すぐ戻るから」

 

 二人から離れて、入口まで行ったリーフが実験室の扉を開く。丁度そこに、三人の魔術士が通りかかった。それまで談笑していた先頭の一人が、リーフを見て露骨に顔をしかめる。

 

「……チッ。何だ、お前か」

「……」 

「しばらく顔を見なかったが、どうしたよ?」

「おい」

 

 後ろの一人が、リーフに絡んだ男をたしなめる。しかしそれも、形だけという感じだ。

 

「相変わらず気の抜けた顔だな。浮かれ坊や」

「……」

「まあ、お前は主任に気に入られてるからな。好き勝手にやれりゃ、楽しいだろうさ」

「……失礼するよ」

「呑気なご身分だよなァ!」

 

 自分に取りあわず、脇を抜けて実験室を出たリーフの背中に、男の荒い声が降りかかる。

 実験室の入口で行われた、静かな学び舎に似合わない今のやり取りを、部屋の奥からアルフェは見ていた。

 

「……今のは?」

 

 冒険者組合では、比較的よく見る光景だが――

 

「……あいつは優秀だ。でも、優秀な奴ほど、それが気に入らない奴も多い。そういうことだな」

 

 バロウは装置から目を離していないように見えたが、耳には入れていたようだ。

 

「……ここでも、ああいうことはよくあるのですか?」

「気にしなくていいさ。あいつも気にしてない。……まあ、あいつが女連れで浮かれてるのは、事実だと思うしな。……せいぜい仲良くしてやってくれ」

 

 今の発言は、リーフか自分に対する皮肉なのだろうか。アルフェはそう思ったが、装置から目を離してアルフェを見たバロウの顔は、優し気に微笑んでいる。そこに悪意は無いように見えた。

 

「……バロウさんは、リーフさんのお友達なんですね」

「ゴホッ! おとも――なんだそりゃ」

「いえ」

 

 アルフェは再び装置に目を戻し、バロウも一つ肩をすくめた後、それに倣った。

 

 装置の原理は分からないものの、大小の部品がくるくると回転し、様々な色の光を放つのを見ているのは面白い。

 金属の製錬は火と熱によって行うとは、アルフェも昔読んだ本で知っていたが、こうして魔術によって行われることもあるのだ。魔力の光が当たると、黒い石から不純物が取り除かれ、みるみるうちに滑らかな光沢を帯びていく。

 

「ふぅ」

「お疲れ様です」

 

 バロウが最初に言った通り、一時間後には一通りの作業が完了していた。製錬が終わった後はバロウによる分析が始まり、拡大鏡やいくつかの試薬が使われた。残ったのは、手のひらに乗るほどになった黒い石だ。

 

「黒いままですね」

「宝石にでもなると思ったかい? ほら」

 

 バロウはアルフェに黒い石を投げてよこした。近くで見ると、純粋な黒ではなく、やや緑がかっているだろうか。つやつやとして綺麗だが、透明でもなく、宝石という感じではない。

 

「珍しいものなのですか? これは」

「そう……でもないかな?」

「……?」

「滅多に見ないが、そんなに価値のあるものじゃ――。そう言えばチェスタートンの奴は、まだ戻ってこないのか?」

 

 説明するなら、一緒にしてしまいたいんだがとバロウがぼやいた。リーフはすぐ戻ると言っていたのに、随分時間がかかっている。

 もしかして、またさっきのように絡まれているのだろうか。そう考えたアルフェは後ろを振り向いた。

 

「……探してきます」

「おいおい。あんた、ここは初めてだろ。俺が見てくるよ」

 

 バロウが大儀そうに腰を上げたとき、入口の方に気配が動いた。やがてその気配は声になり、扉の外から聞こえてくる。バロウもそれに気付いたようだ。

 

「あいつ……、面倒なのに捕まったな」

 

 バロウのつぶやきと共に、入り口の扉が開く。そこにいたのはリーフと、アルフェも一度、見たことのある顔だ。

 

「ご、ごめん。ちょっと主任と話してて、時間がかかっちゃった」

「まるで私が悪いような言い方ですね。あなたが中々顔を見せないからでしょう? まあ、この研究所に、話していて面白い人間がほとんどいないのも、問題の一つではあるんですが」

 その言葉を聞いて、実験室内にいた魔術師たちが身を縮こまらせたのが分かった。男は室内を見渡すと、アルフェの上で視線を止めて、おやと言った。

 

「おや……、また会いましたねアルフェさん」

「……こんにちは。お邪魔しています」

 

 目を細める男に対して、アルフェは一礼した。柔和そうな笑顔の奥に、油断ならないものが宿る男だ。

 

「あ、アルフェ君、主任と知り合い?」

「ええ、そうですとも」

 

 リーフの疑問に答えたのは、アルフェではなく男の方だった。

 

「先日私の方で、彼女を尋問させていただきました」

「尋問!?」

「そう、尋問。――さてアルフェさん。改めて私、ユリアン様の秘書官と、この魔術研究所の主任を務めさせていただいております、オスカー・フライケルと申します。お見知りおきください」

 

 本人の言う通り、彼は先日、ユリアン・エアハルトと共にアルフェを尋問した男だ。

 その男が今、アルフェに向かって、いやに形式ばった仰々しい礼をしていた。それに応えて名乗り返したアルフェの顔にも、さすがに驚きの色が浮かんでいたが、男の横に立つリーフのそれは、アルフェの比ではない。口をぱくぱくと開けて、意味不明の単語をつぶやいている。

 

「魔術の勉強にでも来られたのですか?」

 

 顔を上げた男――オスカーは、周囲の驚きを意に介さない様子でそう言った。

 

「見学と、鑑定の依頼です。リーフさんの付き添いで」

 

 アルフェも彼の言葉に、何食わぬ顔で返す。

 

「そうですか。では、あなたがチェスタートンの言っていた同行者ですね? 奇遇なことです。鑑定とは――、ああ、それですか」

 

 オスカーがアルフェの手にある黒い石に目を落とした。

 

「バロウが製錬したのですね。いい出来です。彼は優秀な錬金術士ですから、作業も速かったでしょう」

 

 アルフェが振り向いてバロウを見ると、彼はいつの間にか座っており、実験装置の方に向かっている。まるで、自分を話に混ぜるなとでもいうように。

 

「あ、終わったんですね。バロウさん、ありがとうございます」

 

 バロウは礼を言ったリーフの方を見ないまま、片手をひらひらと振って答えた。

 

「じゃ、行きましょうかチェスタートン」

「え? どこにですか?」

「立ち話もなんでしょう? ここでは落ち着いて話もできない。主任として、彼らが集中できるようにすべきでしょうし」

 

 実験室にいる他の魔術士たちは、それぞれの実験に集中しているように見えて、時折ちらちらと、この集団の様子をうかがっていた。

 

「な、なら、バロウさんに分析の結果を聞いてから――」

「大丈夫です。私にも分かりますから。さあ、行きましょう」

「え、ちょっ――」

 

 リーフの肩に手をそえて、オスカーが彼を引っ張っていく。

 実験室に残されたアルフェは、バロウの背中に目を向けた。

 

「いいよ、俺のことは気にしないで行ってやれ。――あいつは面倒臭い奴だから、気を付けろよ」

 

 背中越しに、バロウの声が響く。アルフェはそれに一礼すると、引きずられていったリーフの後を追った。

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