売国戦記   作:焼き肉定食

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皆様!大変お久しぶりです!
延々と細々と書いてやっと形になったかなぁ〜と思ったので投稿します!

なんやかんや詰めたいもの詰めたら一万文字超えちゃいました!
毎話なんですけど私の書く所って同じ事を何回も言ってるのが多いです……(@_@;)

今回は原作からの引用もあるのですが、自己満足で書いたオリジナル会話も多いので幼女戦記感とか売国機関感とかうーん?ってなるかもです……(´-﹏-`;)
 
最近忙しくて原作読めてないから……すいません!
それでも良きっていう優しい紳士・淑女の皆様お待たせしました!どうぞ!



演目終幕 "殉国"

▲  帝国 帝都ベルン 宰相官邸 中央広場

 

 

「ロフスキ殿。ご無事でなによりです」

 

「デグレチャフ少佐も」

 

事後処理を隷下部隊に任せ、その場を後にしたターニャは中央広場で現場の後処理の指揮を執っていたロフスキ少佐を見つけ、彼女の元へと向かい。お互い五体満足で再開できた事を讃え合う様に握手を交わす

 

「聞くまでもないのですが、戦果は十分に?」

 

「えぇ、血を見飽きる程には。しかし、年甲斐なく宰相官邸で派手にやり過ぎました。ゼートゥーア閣下に何と申し開きをすれば良いのやら」

 

ターニャは自分が肉片(ミンチ)にした奴等()の事を考えながら肩を竦めて見せ、ロフスキ少佐等が殺したであろう無惨な亡骸を一望しながら共通の上司を出しに軽口を言う

 

「ウフフ、閣下の事です。寧ろありのままお伝えした方がお喜びになるかもしれませんね」

 

「フフ。いやはやまったく、違いありません。勲章の1つでも推薦して頂けるやもしれませんな」

 

死屍累々と化した広場をざっと眺めながらのちょっとした談笑、プロだから許される談笑も早々に懸念していた事を切り出す

 

「西通用門もそうでしたが、やはり少年兵が幾ばくか居りますな。煩わしい事この上ません」

 

何という不条理か

労働人口の半数をラインの大地にぶち撒けた帝国において若者は貴重な人的資源だというのに

 

人的資源(それ)が間違った思想に染まり、無益に消費されていく勿体なさときたら……

 

「子供……まったく面倒な。家庭で何を教えているのやら」

 

戦闘の処理で壁際に並べられる(片付けられた)死体をざっと見ればあまりに若すぎる遺体がちらほら

 

「帝国の教育水準も落ちたものです。先人達が見ればさぞ嘆き悲しむでしょうな」

 

「教育担当者はサーベルで斬られても文句は言えないわね」

 

はぁ、とターニャ・ロフスキがため息混じりに呆れていると

敵勢力の殲滅を終えたロベルト大尉がロフスキ・ターニャの所へと駆け寄ってくる

 

「ロフスキ少佐殿、デグレチャフ少佐殿」

 

「ロベルト。残敵掃討は?」

 

互いに敬礼を交わしながら首尾は?と尋ねればロベルト大尉は百点満点の回答を伝えてくる。信頼の置ける士官とは大変素晴らしい

 

「敵性戦力の掃討は完了致しました。捕虜も幾らか捕らえてあります」

 

「結構、大変に結構です。舞台を整えた甲斐がありました。後はオペラ座で捕虜を締め上げればいいでしょう。ご苦労様」

 

捕虜をオペラ座に引っ張っていく段取りはつけてある

死体の片付け辺りは国家憲兵にでも放れればいいのだが……

 

「はい。しかし、総じて少年兵が多く後始末が面倒になるかと」

 

「忌々しいことね。とまれ、それは局長と参謀本部の方々に任せましょ。きっと悪辣なあの手この手で収めるでしょうよ」

 

中央広場以外の西・東通用門にも低俗な少年兵共がいた事に目眩を覚えながら帝国政府当局者は若者にもっとまともな教育を施すべきね、とボヤキ。全体の損害を纏めていたロベルトに訪ねる

 

「ダメージレポートを、最終的な損害は?」

 

「憲兵隊に死亡はなし、重傷が2名ほど。軍医によれば重傷者も命に別状はありません」

 

「その軍医ってジャコモ?」

 

「はい」

 

「そう。奴が保証するなら確実ね。それは良いことだわ」

 

存外、国家憲兵隊の連中もしぶといらしい

国家憲兵に死亡無しとの報告にヨランダは上出来ね、と

ここ最近の糞の様な現実の中ではまぁ上等な出来事に満足し、満足気に煙草を吹かそうと、煙草を取り出すロフスキにターニャはウヘーと心の中で項垂れていると

 

「……その。一点追加で損害のご報告が……」

 

「ん?」「?」

 

いつもの堂々とした姿は鳴りを潜め、バツの悪そうなロベルト大尉の言葉にロフスキ・ターニャは違和感を覚え、身構える

その報告は先程の愉快な空気を一変させるに足らず、ロフスキをドン底へと突き落とすに足るものであった

 

「……ジェイコブ中尉が死にました」

 

「ッ!!」「!」

 

その報告にロフスキは鈍器でぶん殴られたかの様な強い衝撃を受け、全身の血の気が引く様な感覚に襲われる。余りの衝撃に眼を大きく見開き、咥えようとした煙草が手からすり抜け地面へと落ちる

 

ターニャも面食らいながらも、どうにかその報告を噛み砕き、そっと目元を隠す様に軍帽を深く被り、ゆっくりと眼を伏せる

 

「……また……一人か」

 

「……戦友。私には、一人の戦友がいた。彼は、眠る。私達は、歩く。神よ、願わくば彼を憐れみ給え」

 

銃撃戦である以上、死と隣り合わせ

仲間が被弾して戦死する可能性がある事など理解し、常に意識もしている

 

しかし、それでもロフスキは血が滲む様な力で強く固く拳を握り込み、無念さを滲ませる。ジェイコブ中尉の事を心底信頼していた様子だったし。かなりショックを受けているようだ

 

ターニャはそんなロフスキ(彼女)を諌める様に、慰める様に。そして何よりジェイコブ中尉の魂がヴァルハラで真なる安らぎを得れるように鎮魂の詞を読む

 

「デグレチャフ少佐……お気遣いに感謝を……」

 

「いえ、……彼は良い士官でした。残念です」

 

貴重で有能な士官の損失

自分の部下ではないが、非常に残念でならない

 

「遺族へ手紙を書かねばなりませんね。死因は?」

 

ターニャの配慮に感謝を告げ、残されたジェイコブ()の遺族に宛てる手紙を書く為に、ロベルトにジェイコブ中尉()最後の勇姿(死因)を訪ねるが。訪ねられたロベルトの表情は強張り、どこか迷うように言い淀み、先程よりバツが悪そうに軍帽で目元を隠す

 

「その……」

 

「どうしましたか大尉。あなたが言い淀むとは珍しい」

 

少しの沈黙の後に紡がれるは名誉、誇り、剰え恥すらも捨てた下劣な蛮行。目の前が真っ暗になるような錯覚すら覚え、吐き気を催す様な不条理(クソ)

 

「背後から撃たれました……。降伏したはずの少年兵に……」

 

「……」「……ほう?

 

頭が理解するのを峻拒するに値するそれ

理性の限界を試し、挙げ句粉々にブチ壊すレベルの愚挙

ロフスキが抑え込んでいた理性が音を立てて崩れ去る

 

ほう?

 

糞の様な現実を何とか咀嚼し、頭に浸透させていけば現れるは轟々と燃え滾る地獄の爆炎の様な怒り。溢される言葉は紛れもなくロフスキの奥底から湧き出る心情そのもの

 

ノルデン(国境会戦)で寒さに凍え、ライン(塹壕戦)で血泥を啜り、生還すれば売国奴呼ばわり。あげくチキンホーク共から背後から撃たれる……?義務も名誉も知らぬクソ豚風情がッ!!。祖国に!!帝室に!!身を捧げた勇者を!!穢れきった口で罵って愛国者気取りだと⁉」

 はっはっはっはっははははっははははは!!!

 

「最高だ!!じつに最高じゃないか!!!」

 

箍が外れた様な嗤い、手近な死体を掴み上げると、溢れんばかりの憎しみと憎悪、嫌悪を、憤怒をこれでもかと込め、床にへと叩き付け、力任せに蹴り上げる

  

「恥を知らぬ獣共め!!害獣風情め!!人間様に噛み付くだと!?」

 

それでも収まり止まぬ怒りを込めてサーベルを思っ切り振りかざす

鬼の様な形相で怒りを顕にするロフスキ(彼女)を見て、オペラ座の隊員等やヴィーシャが額に脂汗を浮かべ、僅かにたじろいでいた

 

「糞が!!何の価値もない害獣共が!!駆除だ!!」

 

怒りを爆発させ激しく取り乱すロフスキをロベルトやニーナ、ターニャは静観に徹する。その最中にターニャは過去に軍法も、剰え戦場の道理さえ知らぬ糞共がいた事を思い起こす

 

(統制の取れない民兵。少年兵など碌でもなし。あのクソ忌々しいアレーヌを思い出すな)

 

一度捕虜になった人間がその立場を利用して兵士の背後を突くという危うさを知らぬとは、無知は何よりも恐ろしい。

 

一歩間違えれば捕虜を取らぬ撃滅戦が始まり、終いには捕虜の大量虐殺が起こりうるのだから

 

「……ふぅ……」

 

ターニャの思考を他所に僅かな間であったが、荒れ狂ったロフスキは徐々に、そして静かに落ち着きを取り戻す

 

僅かに荒くなった呼吸を落ち着かせる為、一度ゆっくりと深呼吸を入れる。そして、寂しげな声色で先程の醜態の詫びの言葉を述べ、少し一人になると告げる

 

「……ごめんなさい。少しばかり歩いて頭を冷やします。爾後は、局長に良しなに……」

 

「少佐殿……」

 

案じる様なロベルトの言葉にロフスキは手で制し、すれ違いざまに彼の肩に手を置き”悪いけど後は頼みます”と告げ、ゆるりと煙草を取り出し咥えながらゆっくりと外への歩みを進める

 

そんな彼女の背をロベルトとターニャは静かに見送る事しか出来なかった。彼女の姿が遠くなるとターニャはロベルト大尉に声を掛ける

 

「……大尉。報告は私も同行しよう」

 

「……感謝致します。デグレチャフ少佐殿。ジェイコブ中尉とロフスキ少佐殿は原隊からの仲でして……」

 

「構わん。誰だって親しき者を失うのは辛いものだ」

 

塹壕戦の経験者、詰まる所戦訓を得たベテランの喪失

補充をするとて補充要員が戦争経験者である確証はなし

各方面軍も貴重なベテラン士官を手放す筈もない

 

「とまれ、先ずは事後処理か。ここは大尉に任せよう。ヴィーシャ!」

 

「は、はい!」

 

ターニャは次席指揮官のロベルト大尉に部隊指揮を任せ、シュンと寂しげな表情を浮かべるヴィーシャを呼びつけ、少し言葉を交わした後に国家憲兵隊の部隊長への言伝を頼む

 

「ヴィーシャ、大丈夫か?」

 

「はい、少佐殿。申し訳ありません」

 

「なに、構わん。憲兵隊の指揮官への伝令を頼む、現場の処理を彼等に引き継がせるぞ」

 

「はっ!直ちに!文書はいかが致しましょうか?」

 

ヴィーシャも悲しい気持ちはあるのだろうが、ひとたび命令が下ればヴィーシャは直ぐに切り替えて行動を起こす。良くも悪くも戦争の教訓が活きている

 

「口頭で構わん。文書が必要なら後ほど送ると伝えろ。一刻も早く撤収だ」

 

「了解です!」

 

その後ハイネマン局長に戦果・損害の報告

遅れて到着した国家憲兵隊の増援に死体の処理を丸投げし、手配していたトラックに捕虜を押し込みオペラ座の地下へと連れて行き牢屋に放り込む

 

 

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あの悲劇から数日後

 

 

帝国 帝国軍参謀本部 戦務参謀次長執務室

 

 

その日ターニャ・ヨランダは参謀本部への出頭が命ぜられ、オペラ座を離れ参謀本部へと出向いていた。ハイネマン局長は先んじて参謀本部に向かったとの事で、ノックして入室すればハイネマン局長とゼートゥーア閣下は会談の最中であった

 

[ロフスキ少佐入室致します]

 

[デグレチャフ少佐同じく入室致します]

 

両少佐が入室すると会談を止め、ゼートゥーア中将は労いの言葉を二人に掛ける

 

「デグレチャフ少佐、ロフスキ少佐。二人とも呼び出してすまなかったな。顔が見られて嬉しい限りだ。珈琲の1つでも用意させよう。どうだね?」  

 

「ご配慮に感謝を。しかして仕事がありますれば」

 

ゼートゥーア中将は直立する両少佐へ柔らかい声を飛ばす。そのお誘いにヨランダはにこやかな微笑みを浮かべながらやんわりとお断りの言葉を紡ぎ、綺麗に会釈する

 

「ふむ。そうかね?では……早速だがロフスキ少佐、御苦労であった。ジェイコブ・バタロン少佐(・・)の件は残念だった。彼の遺族には相応の褒賞が贈られる様に手配している。彼の義務への献身は見事の一言に尽きる」

 

「閣下にそう言って頂けたならば、ジェイコブ少佐もヴァルハラで浮かばれるというものです」

 

「我等もいずれヴァルハラに向かう。しかし、まだ成さねばならん事が山積みだ。これからも期待するぞ少佐」

 

「はっ!御期待に添えるように精進致します」

 

遺族の事は何一つ心配することはない。とロフスキ少佐に伝え、ロフスキ少佐も僅かに俯き。やや固い声色で応え、思い馳せる

そんな彼女にゼートゥーアは微笑みを浮かべて優しさを込めて激励する

 

「デグレチャフ少佐も先の件は御苦労であった。副官共々息災かね?」

 

「はっ、オペラ座に小官も副官も漸く馴染んで参りました。閣下もお変わり無いようで安心致しました」

 

「じつに結構。なに、私の心配は無用だとも。ご苦労だが、貴官等のこれからの一層の活躍に期待するや大である」 

 

「はっ!邁進致します」

 

宰相官邸襲撃でオペラ座を反逆者共に差し向けた事で、軍に潜むモグラ共に威圧と牽制を行うという戦術目標は見事に達せられた

 

やはりデグレチャフ少佐を使ったのは正解だったな、とゼートゥーアはくたばっていった反逆者共の末路を思い内心ほくそ笑む

 

そんな思いも束の間、ゼートゥーア中将は堰を切る様に呼び出した本来の目的を伝える

 

それと同時にハイネマン局長がロフスキとターニャに一枚の書類を手渡す

 

「さて、ロフスキ少佐。貴官等を呼んだのは何も激を飛ばす為ではない。貴隊の補充の件だ。ハイネマン大佐」

 

「はっ」

 

「補充……ですか?」

 

「ジェイコブ少佐の後任だ。必要だろう」

 

「失礼ですが、補充のアテなど、とうの昔に尽きたはずでは?MIA組が生還でもしてくれましたか?」

 

ロフスキは若干訝しみながらハイネマンに疑問を溢しつつ書類を受け取りざっくりと眼を通す

 

書類はターニャにも渡され、自身に渡されるとは思っていなかったので僅かに反応が遅れながらも書類を受け取り一瞥する

 

(ロフスキ少佐だけではなく、私にも書類を?また面倒事で無ければいいのだが……)

 

知り合って間もないが、共に戦っている間柄だ

ロフスキ少佐には出来るだけ協力したいが、私に不利になる様な面倒事は遠慮願いたい……

  

「新しい補充先がある」

 

ハイネマン局長から知らされるは

ロフスキにとって驚愕と表現するべき内容

 

今時の帝国で新たな補充先?再編成の影響で浮いた部隊でもあったのかと勘ぐるがそんな筈もなし、書類を読み終えたロフスキ少佐は堪らず異議申し立て。それは反論、反対、はたまた抵抗か

 

「反対です!断固として反対致します!閣下!ご存知でしょう!我々はオペラ座(・・・・)なのですよ!?」

 

「ふーむ。だから新品少尉には反対と?」

 

ロフスキはなんとか取り繕いながらもゼートゥーア中将に反駁する。ゼートゥーア中将肝入りの特別部隊(オペラ座)の指揮官とてロフスキ少佐は一介の少佐であり、ゼートゥーア中将は参謀本部戦務次長閣下であり、中将閣下なのだ。 前者は部下であり、後者は上司であり、絶大な権限と命令権がある

 

反駁するロフスキ少佐を優しくとも、鋭くとも形容し難い双眸に捉え、にっこりと微笑むゼートゥーア中将にターニャは背中に冷たいものが走る様な感覚を覚える

 

一方のロフスキ少佐は何とかゼートゥーア中将を翻意させるべく断固たる意志で喰い下がり、ハイネマン局長にもどうか説得するように訴える

 

「有害無益以外の何物でもありません!血と鉄の試練で真価を証明していない将校など!」

 

確かにロフスキ少佐の発言も正しい

ベテラン勢と新人が連携をとろうにも、当分は経験の差異に戸惑い、連携が取りづらい事あるだろう。

 

ユリウス・カエサルが新兵で部隊を補充するのを嫌がり、新兵は新兵で新しい軍団を作ったのもむべなるかな

 

「とはいえ戦争モドキだ。数も必要だろう?」

 

ゼートゥーア中将閣下の言もまた正解であろう

戦いには数も必要だ。事戦争にとって質と数の問題は永遠のテーマだ。質を求めるか、数を揃えるか

それは軍を編成する上で切っても切れない真理であろう

 

軍も奮闘しているが、失ったベテランは蘇らない。徴兵でとにかく数を集めた帝国軍はちぐはぐと称されても仕方ない

 

畳み掛けるように続けるゼートゥーア中将に諦め切れないロフスキ少佐は食って掛かる

 

ゼートゥーア中将はハイネマン大佐に何事かを命ずると

ハイネマン大佐は小さく会釈し、部屋を退出する

 

「恐れながら閣下!なればこそです!数とカウント出来るのは塹壕戦の洗礼を受けた者だけです!それ以外などオペラ座には……!」

 

ここまで反駁されて尚、ゼートゥーア中将は優しげな微笑みを崩さずに 「貴官の言わんとする事は私としても重々理解しているとも」 と顎を撫で。うむうむと頷き、学者か教員の様な物腰柔らかな口調でロフスキ少佐を宥める

 

宥められ、少しずつ冷静さを取り戻したロフスキ少佐は己の醜態と高級将官に対する度重なる反駁を詫びる

 

「……度重なる非礼をお詫び致します。平にご容赦願いたく存じます」

 

「構わん、構わんとも。忌憚ない意見は何時だって歓迎だとも」

 

しばらくすると再びハイネマン大佐が入室してくる

その隣には若い女性士官が同伴していた

 

「閣下。シルサルスキ少尉を連れて参りました」

 

「うむ、ご苦労。さて、ロフスキ少佐。彼女がオペラ座の新人シルサルスキ少尉だ」

 

ハイネマン大佐に連れられ、ゼートゥーア中将に紹介されたシルサルスキ少尉は緊張からか額に汗が滲み、表情が若干強張っている。そんな彼女をターニャとロフスキは見定める様に見据える

 

(場馴れしていないか。良くも悪くも新米少尉といった所だな)

 

ターニャはそんな月並みの評価を内心下す

妙な沈黙がほんの僅かに流れた後に最初に口火を切ったのは意外にもシルサルキス少尉であった

 

「ほ、法務局独立大隊へ法務官として配属されました。モニカ・シルサルキス少尉であります!」

 

「ヨランダ・V・ロフスキ少佐です。法務局独立大隊にて法務課長の席を頂戴しています」

 

「参謀本部隷下戦略研究室室長ターニャ・V・デグレチャフ魔導少佐だ。現在は同大隊へ出向中の身だ」

 

敬礼と簡単な自己紹介を交わし終えるのを見計らい

ゼートゥーア中将はロフスキ少佐へこれ以上の無いであろう程の効果的なダメ押し

 

「士官学校首席だ。新品少尉の中では一番マシな部類を引き抜いた。能力(・・)は、この()とハイネマン局長が保証するが、どうかね?」

 

高級将官!参謀本部戦務参謀次長!軍の総本山である参謀本部のドン!しかも!ゼートゥーア派(自会派の主)でもあらせられる戦務参謀次長閣下自らが能力を保証!

 

これ程までに言われた申し出を拒否できる人間が帝国に一体何人いるのだろうか……。直属の上司である、ハイネマン大佐の名前も出されれば否応なしに認めざるを得ない

 

「……閣下と局長のご推薦なのですね?分かりました。これ以上は何も申し上げません。閣下の多大なご配慮に感謝を」

 

それに今の含みのある言い回し、ただの補充要員ではないのは明らか。ロフスキ少佐も察したのであろう。反抗心は鳴りを潜め、落ち着き払った声で受け応える

 

「ごめんなさいね。シルサルスキ少尉、貴方個人に含むところがある訳ではないの。ただ……オペラ座(ここ)はちょっとだけ特殊な職場だから」

 

優しげな微笑みをシルサルスキ少尉に向け、ロフスキ少佐は先程の批評に対して謝罪を述べる。それを受けたシルサルスキ少尉は気にする事なくビシッと敬礼と共に辞儀を返す

 

「未だ未熟な身ですが、ご指導の程をよろしくお願い致します!」

 

「お返事はよし、ね。まずは挨拶まわりから始めましょう。少尉、早速だけれど車を頼めるかしら?」

 

「はっ!ただちに!……失礼致します!」

 

ロフスキ少佐に命じられ、慌ただしく退出していくシルサルスキ少尉を見送ったところで、ゼートゥーア中将に何事かを耳打ちされたハイネマン局長は、ゼートゥーア中将に一礼してそのまま部屋を後にする

 

人が捌けたのを見計らいターニャは思いの縁をゼートゥーア中将に尋ね様とするが、それを見透かすようにゼートゥーア中将はターニャの言わんとする事を言い当てる

 

「何か言いたげだな。デグレチャフ少佐、言い当てよう。何故新人少尉をそこまで有用視するのか疑問なのだろう?」

 

「はっ。疑問……と言うよりは不思議と言った方が良いかもしれません。やはりと言うか、青臭さが抜けておりません。敵意や悪意を向けられた事が無い様に見受けられました。そんな新任を閣下があれ程まで重要視する理由が小官には思いあたりません」

 

「デグレチャフ少佐に同意致します。新任丸出しと評する他ない少尉をオペラ座に配属する意図を、職責から、私個人としても閣下のご存念をお聞かせ願いたく思いますが……」

 

ターニャの言にロフスキ少佐は全面的に賛同してゼートゥーア中将に向き直り、改めてその真意を尋ねる

 

「ふむ。そうだな。端的に言えば目が欲しいのだ」

 

「目でありますか?」

 

言わんとする事に思い当たらないデグレチャフ少佐はその答えに疑問形で反応する。ターニャの発問に対し、ゼートゥーア中将は参謀将校らしく頷く

 

「あぁ。ウーガ中佐から提言でな。ウーガ中佐曰く、私やルーデンドルフ、それに貴官等など洗練された参謀将校は『物事の理非に対し即決を求め、できぬ輩を否定しすぎる』とな。聞き出した際のウーガ中佐の表情ときたら苦虫をグロス単位で齧った様な渋顔であったぞ」

 

悪そうな笑みを浮かべ顎を撫でる中将閣下ときたら空恐ろしい。察するに。意見を求められたウーガ中佐は部を弁えて発言を躊躇ったのだろうが……

 

我等がハンス・フォン・ゼートゥーア中将閣下が引くはずもなし、半ば圧される形で渋々思いの丈を語ったんだろう。そんな不運なウーガ中佐(同期)を不憫に思い心中で合掌しつつもターニャは思考を走らせる

 

(誉め言葉か、批判か微妙な所。 素直に褒められたわけではないが、貶されているわけでもなし。寧ろ帝国軍の中枢足るゼートゥーア・ルーデルドルフ(両中将閣下)と同等と言われれば悪い気もしない)

 

「ウーガ中佐殿は良識と良心に溢れておいでですから。出来ぬ者(無能)からの視点とは、盲点でした。小官もまだまだだと思い知らされる思いです」

 

「無能には無能と言うのが当然ですもの仕方ありません。無能の使い道など皆無です。強いて使い道があるとすれば肉壁にするくらいかしら?いずれにしろさっさと銃殺するべきでしょう」

 

参謀将校とは

機械の様にひたすらに合理性を突き詰め

常に必要の要請に答え続ける冷血漢

 

裏を返せば、決断力があり無能と有能を見極められ無能排せ、使える物は極限まで徹底的に使う能力のある組織人

 

「ハハハ。諸君らの言っている事は賛成できるものであるし、されるべきものだ。しかし、こと今回に至っては出来ぬ輩(無能共)に対し、あくまでも客観性を持って当たらねばならん。その点、我々は客観性(それ)を担保できんだろう」

 

全く霹靂する思いだ、とカラカラ笑う中将閣下は博士の様な声質で続ける

 

「従って思想的弊害が無く、徹底した参謀教育を受けた者(こちら側)の理屈に染まりきってもいない。それでいて帝国の事情をある程度理解しながらも、様々な方向からの客観的な視座と意見を得る事の出来る者が必要になった」

 

「なるほど。理解が及びました。確かに我々では出来ぬ役割であります」

 

「客観性……、私達では足らないのはもどかしいものですね」

 

腕を組み思考するロフスキにしても、ターニャにしても無能などさっさと切り捨てるべき対象以外の何物でもないのだ。無能(そんな輩)の視点や感情など分からぬし、理解できるとも思わない

 

「とはいえ新任少尉だ。ある程度使えるだろうが……。暫くは苦労する事になるだろう。なに、多少手荒でも構わん、白銀とオペラ座の薫陶をたっぷりと振る舞ってやるといい」    

 

陸戦のベテラン又は歴戦の塹壕貴族

何処までも最適化・合理化された参謀将校

そんな少佐連の俊英なる頭脳は、シルサルスキ少尉(哀れな新任少尉)扱く(教育)するかを思案し、熟考すれば自ずと二人の結論は同じ物となる

 

「ご命令とあらば幾らでも。しかし、シルサルスキ少尉(彼女)の胃が受け付けるかどうか怪しいかと。最悪昼食を戻しかねませんが」

 

「よしんばその場は耐えれても、後々に響いてくるかもしれない。吐くくらいは可愛いものと思う他ないのでしょうね」

 

二人の俊英が考えて尚、当然の帰結だと導き出した吐瀉する(結論)にゼートゥーア中将は面白いものを見たと上機嫌。しかしてそれとて必要の要請ならば安いものだ

 

「はっはは、然もありなん。しかしてそれも若者故の至だと思う事だな」

 

「まったく閣下もお人が悪い。あまり若者を嬲るのも程々に致しませんと」

 

『お酷い御方』と、ゼートゥーア中将(上官)に苦言を呈し肩を竦めて魅せるロフスキ少佐だが、そんなロフスキ少佐(本人)も邪悪な笑みをにんまりと浮かべているのだから堪らない

 

「いやいや、あまり年寄りの楽しみを奪ってくれるな。こんな時勢だ。若者を誂うのも数少ない楽しみの一つなのだ。あぁ勿論ターニャ・ロフスキ(貴官等)との対談も実に有意義で楽しいものだ」

 

「それは、大変光栄であります」

 

「そう言って頂けるのはとても光栄ですわ」

 

先程の事は吹っ切れたロフスキ少佐と愉快痛快と楽しげに話すゼートゥーア中将閣下。何気ない会話が甚くお気に召したのか、中将閣下は葉巻を取り出し優雅にカットなさるではないか

 

「貴官等も一服どうかね?……ふむ。デグレチャフ少佐は出来なかったか。危うく憲兵の世話になるところだ。いや、すまんな。貴官の齢を感じさせぬ有能さ故だと思ってくれ。他意はない」

 

「い、いえ。閣下の御気持ちだけ有り難く頂戴致します」

 

「ご厚意に感謝を。しかし、職務がありますので。……失礼を」

 

ゼートゥーア中将は詫びの言葉をデグレチャフ少佐に伝えながら、カットした葉巻に火をつけようとマッチ箱に手を伸ばす

 

喫煙の誘いをご遠慮する旨の言葉を言うと

火を求めているのを察したロフスキ少佐は謝辞を述べ、そっとゼートゥーア中将に歩み寄り、持っていた自分のライターをつける。

 

火が消えぬ様に右手を添えつつ、ゼートゥーア中将の方へやんわりと差し出す。そんなロフスキ少佐の好意に甘え、ゼートゥーア中将はライターで葉巻を燻し、ゆらりと葉巻を燻らせる

 

フゥーフウゥゥ〜ーー ……すまないな。ロフスキ少佐」

 

「ふふ、御一緒出来ませんので。これくらいはさせて下さい」

 

慎ましげに微笑むロフスキ少佐に謝意を述べ、燻らせていると。タイミングよく扉をノックする音が響くと、次いでシルサルスキ少尉が入室して律儀に敬礼しながら車の準備が出来たのと伝えてくる

 

「失礼致します!少佐殿!お車の手配が出来ました」

 

「ありがとう少尉。すぐ向かいますから少し待ってて貰えるかしら?」

 

「はっ!外でお待ちしております!」

 

シルサルスキ少尉が退出していくのを見送り、ゼートゥーア中将に向き直りお別れの挨拶を交わす

 

「お聞きの通り仕度が整った様ですので、我々はこれで御暇致しますわ」

 

「ふむ。楽しい時とはあっという間だな。時間は依然として味方ではないらしい」

 

「時間とはままなりません。不愉快な時は長いくせ、愉快な時ほどすぐに去っていく」

 

「それは戦時でも平時でも変わらない。まったく蝙蝠野郎(時間)*1が帝国の味方になるのはいつになるのやら……」

 

忌々しい時間というどうにもならない敵に対して、ゼートゥーア中将は軽口を言い。ターニャがそれに同調し、それにロフスキが賛同する

 

そんな会話も早々にロフスキ少佐は演劇の舞台挨拶の様に甲斐甲斐しく会釈する。不思議とそれが様になっているのが彼女の育ちと教養の高さを感じさせる

 

「この度はご多忙の所失礼を。どうぞ。オペラ座が手掛ける愉快な演目(吉報)をお待ちください」

 

「不出来ながら小官も拙いお手伝い(タップダンス)で盛り上げるとしましょう」

 

「結構、結構!大いに期待しよう!帝国の未来の為に厄介を鉄と血で解決してくれたまえ」

 

「「はっ!」」

 

 

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ーーーーーーーーーー

 

 

少佐連が退出して静かになった次長室でゼートゥーアは葉巻を口に思案し、思いを馳せる

 

(ハハハ。ロフスキ少佐め……こんな時代でなければ本気でオペラ歌手か、俳優にでも推薦するのだがなぁ。いや戯言になるか……)

 

同じユンカー出身で昔より交流のあり、ゼートゥーア自身が手掛けた特務大隊の指揮官。豊富な経験と実績での絶大な信頼を寄せるヨランダ・V・ロフスキ少佐

 

(デグレチャフ少佐の様な者が1ダースでもいれば(・・・・・・・・・)帝国軍も安泰なのだがな。奴の提出した論文の有用さ・戦歴を思えば思う程に、こんな戯言(・・・・・)も考えるか……)

 

同じく自身が実現させた魔導大隊の元大隊指揮官であり、己の懐刀。そして何よりその年不相応な知識と圧倒的な実務能力を持つターニャ・V・デグレチャフ少佐

 

(しかしデグレチャフ・ロフスキ(彼女達)を得られたのは本当に幸運であった。くそったれの神に唯一感謝するとすればそこか)

 

多岐に渡って使える真の参謀将校

こんな時代にあっても心より信頼出来る配下達

大戦争を生き延びた猛者達

 

どれも得難いものだ。それが揃い踏みで自分の手の内にある。実際、損害とてあったがその有用性は見事なまでに実証済み

 

宰相官邸襲撃とて一歩間違えば再び戦乱に陥りかねなかったが、特務機関オペラ座は情報戦を展開し、罠に掛かった敵を圧倒的武力で排し得た

 

(気まぐれな運命からなんとしても戦後を掴み取ってやる)

 

ふと気づけば葉巻の灰が落ちようかとしているではないか

口をつけたのはたったの2回であるのに……

 

「……それほど長く思案していたか。……フゥー……」

 

灰を灰皿に落とし、口いっぱいに煙を含みのゆっくりと吐き出す。そんな所に黑電話の音が響き渡る。ゼートゥーアは受話器を取り出てみれば相手はハイネマン局長からであった

 

「あぁ私だ。……うむ……ふむ……了承しよう。それと……一点追加で頼みたいのだが…………あぁ………共産主義者共の……………

 

ゼートゥーア中将はまだ比較的新しい葉巻を灰皿に押し付け、電話の内容を噛み砕き、新たな指示を行い。

すっかり多忙な現実へと誘われていくのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
敵にも、味方にもなるモノの事




最後までご覧頂きありがとうございます!
如何だったでしょうか?書いているとカルロ・ゼン先生の言い回しとかほんとに素晴らしいって感じますね。本当に偉大なお方です!

そういえばヴァイオレット・エヴァーガーデンのアニメが地上波で放送もされましたね!感動しましたわぁ〜♪

私事なのですが、最近hoi4(時間泥棒ゲー)というゲームで幼女戦記の世界観を楽しむのがブームですよ!(誰得情報)

またほそぼそと書いていきますのでどうか売国戦記をよろしくお願いします!色々構想自体はあるんですが、、表現とか時間とか諸問題があって中々投稿が進まないですね!

ではご覧になって頂きたい本当にありがとうございました!御意見!御感想!お気に入り・評価!ここ好き!誤字脱字!誤用等など頂ければ励みになりますのでお願いします!

今後のオリジナル展開について

  • 構わん、やれ。
  • は、早まるな!
  • 全て心の中だ。今はそれでいい。
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