大変長らくお待たせ致しました、、、
実に一年ぶりの投稿でごさまいますねェ!!
ちまちま書いたり、改変を繰り返してどうにか仕上げました、、、
素晴らしき大作の売国機関・幼女戦記のこんな事柄があったらいいなぁと細かい所を自分なりの解釈も交えて描写したいなぁと思って書き始めた作品ですが、久方ぶり過ぎてもう作品を忘れられてそうですw
楽しんで頂けたら嬉しいです!
は
▲ 帝国 帝都ベルン 帝国参謀本部
ゼートゥーア中将との会談を終えた
ロフスキ・ターニャの二人はシルサルスキ少尉の先導で用意された車へと向かう為に参謀本部の廊下を歩いている
前方からロフスキ・ターニャにとって馴染み深い人物が
眉間にシワを寄せ、疲れからなのか若干やつれ気味の顔を僅かに強張らせ、手元の書類に目線を落としながら歩いてくる
「……? ロフスキ少佐とデグレチャフ少佐ではないか。
ロフスキ・ターニャに気がついたレルゲン中佐は先程の強張った表情から一転し、張り詰めたモノが無くなった様な爽やかな表情に変わる
レルゲン中佐は再び再会出来た事を喜びつつ握手を、と手を伸ばし、対するロフスキ少佐も親愛を込めレルゲン中佐との握手を交す
「レルゲン中佐、貴方も無事で。また会えて嬉しいわ」
「御無沙汰しておりました。中佐殿とロフスキ殿はお知り合いであられたのですか?」
レルゲン・ロフスキの両者が旧知の中であったという話題を得たので世間話がてらに訪ねる事にしたのだが、言ってからターニャは少し不味ったかと後悔する
(万が一男女の関係であったのなら
自分の意外性と軽率な発言に苦慮するターニャだが、結果的には徒労に終わる事となる。ターニャと握手を交わしながらレルゲン中佐は特に気を悪くする様子もなく答えて下さる
「デグレチャフ少佐も久しいな。ふむ、そういういえば言っていなかったな。ロフスキ少佐《彼女》とは軍大学からの馴染みでな。早い話、同期生だ」
「そうね、私も言っていなかったわね。特に
ロフスキ少佐も意に介さる事もなく答えて下さったが、何とまぁ最後に
「それは!軍大学の御学友でありましたか!なんだか此処で会ったのも偶然とは思えませんな!」
藪に蛇が待ち構えてると知っていて尚、藪に突っ込む趣味もないターニャは少々大げさに応えて話を切りに掛かる
自分で言っといてなんだが、まぁ帝国の中枢である参謀本部だ
そこにルーデルドルフ閣下に酷使されているレルゲン中佐殿が居られても、むしろ当然なのだが
「ははっ。案外、偶然では無いのかもしれんな……。して、今日は何故に参謀本部へ?」
ターニャの軽口にレルゲン中佐は分かってか冗談めかしつつ応え、冗談もそこそこにとレルゲン中佐は若い少尉に一瞬目を配りながら気になっていた事を同期生に訪ねる
「少し彼女の事で。彼女
「モ、モニカ・シルサルスキ少尉であります!」
新任の引き取りに来たと簡潔に言うロフスキ少佐とは対象的に後ろに控えて姿勢を正していたシルサルスキ少尉は少し慌てた様子でピシッと敬礼をレルゲン中佐に向ける
それにレルゲン中佐は納得顔でシルサルスキ少尉に向き直り短い答礼で応え、シルサルスキ少尉を休ませる
「見ない顔だとは思っていたが、新任であったか。参謀本部作戦部のレルゲン中佐だ。……そうだな。少尉、今後気苦労(胃痛)が増えるだろうが頑張ってくれたまえ」
まだまだ青い新米少尉の肩に手を置き彼女の今後を心底憂い、レルゲン中佐は先輩として心からの忠告もとい激励の言葉を掛ける
「なに、一つの忠告……いや、激励とでも思ってくれ給え。困った事があれば相談に乗るぞ」
「は、はい!御配意痛み入ります!」
シルサルスキ少尉もレルゲン中佐の並々ならぬ意思を感じ、思わず背筋を伸ばし、レルゲンの瞳を真っ直ぐと見返してしまう
「
ロフスキ少佐は後輩思いのレルゲン中佐を優しくいびりつつも、その手にある書類の束に眼を向け、暗に質問する
「あぁ……これか。……貴官等ならば問題無いだろう」
廊下を見渡し人気が無い事を確認したレルゲン中佐は僅かに声を潜めてロフスキ・ターニャ・シルサルスキの3人に耳打ちする
「まだ非公式とされている事案だが、調印式以降イルドア・帝国間で軍・政府共に協議が急激に増えていてな。私も
「それはそれは。日和見主義の調停者様が今更疲弊した帝国と御協議だなんて。
「このタイミングでの接触とは帝国に得るものを見出したとしか見えません。危険では?」
「彼の国に思う所があるのは理解している。私とて思わぬ訳ではないし、デグレチャフ少佐の危惧も最もだ。しかし、イルドアとて友好国となり得る可能性があるのだ。とても見過ごせんよ」
4方面を囲まれ、その全てが仮想敵国であった帝国に取って包囲の打開は建国以来万年の夢であった
惜しみない努力と反吐が出る程の妥協で連邦とは苦虫を噛み砕きながらも友好をもぎ取った
打開の夢に誘われ勢い任せに北方に全力投射すら行った
結果は危機感に駆られた共和国に西方の無防備な工業地帯をぶち抜かれかけ貴重な国力・兵力を擂り潰すという惨憺たるモノ
「それに、講和を纏めてもらった恩義もある。それが話せる相手ならば尚の事な」
軍事的余力のある、なしに関わらず帝国にとって武力ではなく、友好的に打開出来るのなら飛び付きたくもなるというものだ
「感謝こそするけれど、好きになる道理もないでしょう?合州国や連合王国、剰え共和国にまで媚び売る蝙蝠共よ」
「そこに協商連合も、と加えるべきだろうな。だが、先方も然程余裕がある訳でもないらしい。彼等もなりふり構っていられないのだろうさ」
昨今のイルドア国内情勢は帝国程ではないにしろ芳しくない
工業の北部、農業の南部
性質の異なる両地域の対立が起こるのにそう時間は掛からなかった。貧富の差が齎した政治抗争は日増しに激化してると帝国内の新聞ですら書き立てている。
「心疚しいが、それは帝国も同じだ。足りない物を互いに補い合えれればそれに越した事もなかろう」
「どうかしらね」
期待も薄いと言った表面で笑うロフスキ少佐。無論、ロフスキ少佐の目は笑うどころか微笑んですらいないが……
そんなロフスキに対して、レルゲン中佐は若干キマりが悪そうに頬を掻き、早々に話題を変える
「……言い遅れたが、君達の働きがなければ調印式の挙行は不可能だっただろう。本当に感謝している」
改まって頭を下げるレルゲンに、ターニャ・ロフスキは各々の言葉でそれに応える
「小官は軍令に従い、命令を遂行しただけですので」
「
「それでも、だ。……失った君の部下は残念に思う」
報告書あたりで眼にしたのであろう今作戦の損失についても、しっかりと配慮出来る辺りレルゲン中佐はやはり参謀本部の本流殿なんだろう
「事を成してこそ。ヴァルハラにいるジェイコブ少佐も浮かばれるというものよ。それに、かく言う貴方の方も相当に危うかったと聞いたわ。……ギルベルトはまだ?」
「あぁ……軍医も手を尽くしてくれているが、こればかりは目覚めるのを待つ他ないそうだ。ヴァイオレット君も付き添っている」
未だ目覚めない旧友の様子を伺うロフスキ少佐の表情は神妙な面持ちであった。容態を聞いたロフスキ少佐は瞳を閉じ一呼吸入れ、踏ん切りをどうにかつける
「そう……命あるだけ良いと思わなければ。願わくば同胞等の魂が
(
「……だな。神なぞより戦友魂の方が我々に味方し得る、か」
「神なんて祈るだけ無駄よ。ヴァルハラに渡った戦友達こそ信頼に値する」
「神なんぞよりも戦友に、軍医に、医療技術に頼る方が建設的でありましょう」
神を自称する胡散臭いあの忌々しい存在Xを知っていれば、神など存在し得ないと断言出来る。よしんば居たとて神とやらは性根の腐ったクソ野郎なのは間違いない
「ははっ、二人とも厳しいな。だがまぁ、違いあるまい」
乾いた笑いを浮かべたレルゲン中佐は何かに納得したのか小さく頷き、取り出した懐中時計を開いて時間を確認する
「……そろそろ行かねば。ルーデルドルフ閣下と約束があるのでな」
「あら、邪魔してしまったかしら?呼び止めてごめんなさいね」
参謀本部引いては帝国軍で一二を争う人使いの荒さで知られるルーデルドルフ作戦次長閣下との約束!ロフスキ少佐自身、ゼートゥーア中将閣下に使われる身だ
その忙しさは底知れないモノだろう。そんな多忙人を引き止めてしまった事に対してロフスキ少佐は謝罪の言葉を述べるが、レルゲンはきっぱりと否定する
レルゲンとしては此処で出会い、話せた事に対して感謝しているくらいだった。旧友と話せるのは気晴らしには丁度いいし、意見が聞けたのも大きい
「いや、構わんさ。むしろ私も君達に会えてよかった。いい息抜きになった」
レルゲンの本心から出たであろう言葉にロフスキ少佐は頬を僅かに綻ばせつつ再び握手を交す。またいずれ必ず会おうと心を込めて
「そう言って貰えると嬉しいわ。ルーデルドルフ閣下には良しなにお伝えを」
「あぁ、閣下には必ず伝えよう。ではまた」
「えぇ、またいずれ」
「中佐殿もご自愛下さい」
「失礼致します!」
レルゲン・ロフスキ・ターニャ・シルサルスキの4人は互いに敬礼と答礼を交わし、四者四様に言葉を送り合った
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▲ 帝国 帝都ベルン オーヴァル通り
レルゲン中佐と別れシルサルスキ少尉が手配した車に乗り込み市街を通って目的地を目指すロフスキ・ターニャ・シルサルスキの3名
そんな道中にロフスキはもう何度になるかも分からない月並みな感情が心から溢れボヤキとなって口から吐露される
「帝都、それも昼だと言うのに、あいも変わらず閑散としてるわね」
戦争末期から現在に掛けて長らく街の店の殆どがCLOSEの看板を架け、これまた見事なシャッター街と成り果てているのだ
人通り・車の往来も戦前に遥かに及ばない
「戦争が長すぎました。戦前とは似ても似つきません」
「インフレ、不景気、社会不安、上げれば切りが無いわ。食料事情特に穀物類の収穫が不安定なのも要因ね」
農作物……特に穀物の不作、物流不通と戦後不安のダブルパンチで活気がないのが今や日常。物流が青息吐息だが辛うじて息をしてきた最近はOPENを架ける店もちらほらあるが圧倒的少数だ
(佐官級の御二方もインフレを気になさるんだなぁ。将校クラブ会費も馬鹿にならないし……。佐官殿、それも大隊指揮官殿ともなればそれ以外にも色々費用が掛かりそう……)
「密かに行った連邦からの穀物輸入で多少改善はあるようですが、それ以外が軒並み高騰していてはどうにも。暫くは暗い道が続きますな……」
共産主義と君主主義という体制上の相違から来る不信感は双方否めないが、それでも最低限の
「嗜好品が戦前の値で買えるのは何時になるのやらね。K-Brotやデデ肉、
戦前はチョコレートや砂糖、焼き菓子・蒸し菓子など多彩な甘味が帝都には溢れていた。サトウダイコンなど国を挙げての名産となっていた程だ
しかし、戦争とは残酷で食料確保の名目でサトウダイコンの畑の大半をじゃが芋に転作し、皮肉な事に帝国名産のサトウダイコンなど今や絶滅寸前だ
「コーヒーやチョコレートが恋しくある身としては正規の品が市場に出回る日が待ち遠しい限りです。それもイルドア王国の出方次第でしょうか」
(嗜好品……ココアとか好きなんだけど。いい加減代用ココアはもう嫌だし)
「えぇ。イルドアとの交流で帝国が何の損害も無く潤えればそれに越した事はないけれどね」
(御二人とも帝国を憂いておられるのだろうけど。うーん……正直まだ良く分からない人達だな。御二人とも綺麗だし美人なんだけど……冷たいというか……)
「そうね、……少尉。貴女はイルドア外交姿勢をどう見るかしら?」
「は、はっ!えと……その、僭越ながら小官が言及する立場にはないかと思うのですが……」
運転しながら後ろの
無論、会話は聞き逃さずしっかり聞いていたが……
上官殿等の会話に、新任の少尉がおいそれと参加して良いモノだろうか?
政治に関する事となれば迂闊な発言は色んな意味で危険だ
ここは戦略的後退あるのみ!
「諮問してる訳じゃないわ。自由に述べなさい」
「私としても若い人材の見識は得ておきたい所だ。聞かせてくれ給え」
しかし、同乗者たる少佐殿等は名実共に砲煙弾雨を生き抜かれた精兵中の精兵であられた。シルサルスキ少尉の考えた撤退路など元々無いも同義であった
「で、では……御言葉に甘え、失礼致します」
退路を絶たれたシルサルスキ少尉は自分が集め得た情報を頭の中で整理し、それでいて前進中に万が一にも地雷を踏み抜かぬ論理を構築していく。再編と補給を完了した理論を抱えて進撃する
「イルドアの外交姿勢には一帝国市民として多少思う所はありますが、イルドア王国からの支援は傍から見てもとても魅力的に思えてなりません。無論、相応の
話を進め、様子見とばかりにルームミラーをチラ見すればターニャ・ロフスキ両名は特に表情を変える事も、気分を害している様子もなかったが、続ける様にと無言で促されている気がしたのでダメ押しとシルサルスキは話を続ける
「先程のレルゲン中佐殿のお話では、イルドア側からの
「そうね。貴女の言う通り帝国内の情勢が不安定な今日、忌々しいけれど、友好をチラつかせた
帝国軍の中を少なからず知れば帝国の内情が芳しくない事はすぐに分かる。何処も苦しさに喘ぎ、藻掻いている
それは軍も政府も皇室とて例外足り得ない
「さらに言えば皇室も協調路線を強固にするように政府・軍に圧力を掛ける可能性すらあるでしょうね」
イルドア王国の中立政策で中々に拗れたとはいえ、王室だけで見ればイルドア王室・帝国帝室はそれなりに良好な関係ではあった
懇意であったルーシー帝国崩壊以降は、周辺国に比べれば比較的に友好を築けていたのだから
「ロフスキ少佐殿は協調路線にご反対なのでしょうか?」
「
「害虫でありますか……。デ、デグレチャフ少佐殿もイルドアが帝国を害し得るとお考えなのでしょうか?」
ロフスキ少佐は心底煩わしそうにボヤき、そんなボヤキを聞いたシルサルスキ少尉は少し引き気味になりながらも
シルサルスキ少尉の言葉にターニャは短く、然りと頷きながらも何点か補足を付け加えた上で理由を新任少尉に言い聞かせる様に語らう
「現状イルドアは不鮮明な事が多過ぎる。イルドア王国という国家が統一された意思の元で動いてるのか、何をどう考えて帝国に寄ってきたのか。諸々の理由で中には帝国を良く思わない連中も居るだろうからな」
イルドア情勢など新聞で見聞きする事以外で知り得ないので何も判断に困るが、領土問題で揉めてる両国に上辺以上の友好などあるのだろうか?答えは否だ
「奴等の信仰する国家理性が帝国を害する事を必要だと嘯いた瞬間、連中は迷う事無く帝国に牙を向けるだろう。こんな時世だ、いかなる可能性も廃するべきではない」
「な、なるほど。……政治が関係してくるのですね」
「面倒な事に、ね。
ターニャの発言を補完する形でロフスキ少佐はシルサルスキ少尉に答え合わせを行う
「それに、平然と蝙蝠外交を演じてた連中よ?表に出せない事の1つや2つあるわ」
「では……?」
ロフスキ少佐の論を聞いたシルサルスキ少尉はイルドア王国に何かしらの探りを入れるのかを暗に伺うが、それは存外あっさりと否定される
「Nein、まだその時じゃないわね。今は
現状の所何の実害も確認されてない以上はイルドア問題は後回しする他ない、排外主義を放置すればこの平和が侵されかねないのだから。たとえそれが歪な平穏であろうとも……
(政治……レルゲンも複雑な立場か。まったく苦労人は相変わらずね)
ロフスキが内心で同期の不憫さに憐情の念を感じ小さく溜め息を溢すと、シルサルスキ少尉の慌てた声と共に車が急停止する
「えぇ!?ちょっ!!……あっぶな……はっ、申し訳ありません!」
外交車が急に割り込んで来たのが原因とはいえ
急停車してしまった事を詫び、後部座席の少佐等に怪我がない事を確認する
「問題ないわ。……それにしても連邦め、相変わらず不遜な」
「
上官殿達に怪我が無かったのは幸いであった……のだが、怪我の有無の確認の為にと振り返った事をシルサルスキ少尉は激しく後悔する
振り向いた先にはデグレチャフ少佐殿とロフスキ少佐殿が鋭い双眼を足早に走り去る連邦の外交車に向けておられるではないか
(怖過ぎ!)
グリン!と鳴りそうな程早く前に向き直り、車を再び発進させる
「コミー共が帝国を我が物顔で闊歩と。憲兵連中もそう簡単に止めれませんか」
「外交特権の賜物ね。戦前に政治家共が結んだ地位協定が心底恨めしいわ」
デグレチャフ少佐とロフスキ少佐は各々湧き出てくる連邦に対する憤りを滲ませながらも、それを踏み抑える
(クソッタレの共産主義者め!なぜ、こんな簡単なルールすら守れない!?連中のモラルの欠如と来たら!!やはり共産主義など世から根絶されるべき思想だ!!そもそもブツブツブツ……………)
(
ロフスキはそんな戯言を考える程度には苛立っているのか、と少し冷静さを取り戻し、苛立ちの根源を考えてみれば思い当たるのが幾つかとあるが……
(……政治か。まったく何処までも政治!政治!政治!政治!!ここ最近何にも増して政治が付き纏ってくる……政治のツケを軍が支払う。嫌なものね)
頭では政治の要請を理解しているが、ロフスキにしても煩わしいものは煩わしいのだ
軍人は常に政治と距離を置けと士官学校の座学の際に教官が口酸っぱく言っていたなぁ、とシルサルスキ少尉は現実逃避がてら懐かしい記憶を脳の棚から掘り返す
そんな束の間の現実逃避は上官殿に掛けられたと同時に即刻終了を余儀なくされるのだが……
「少尉、信じられないかもしれないけれど。私は対外協調主義者よ。連邦のイワン野郎共は確かに運転が下手」
「でもそれだけで排外主義を叫ぶ動物共よりは知性があるつもりだもの」
「そんな事は!ただ、軍人は政治に関わるなと教わっていたので……その……」
疑念を抱いていたと誤解を与えてしまった!?と慌てて弁解をと思案を巡らせる。が、当のロフスキ少佐は特に気にする事もなく
「構わないわ。正しくその通りだもの。そう……動物共さえいなければ、軍人はそうあるべきなのよ」
むしろその感覚は正しいモノだと、そうでなければならないとボヤくように、しかし、どこか
ふとロフスキとターニャは過ぎ去っていく街中に眼を遣れる。不思議な事に先程のより
見れば不承不承で納得するそれ。今の帝国で人の
((……クソ))
ターニャに、またロフスキを心中で毒づかせ、愁嘆させるに十分な
ターニャとは対照的に愛国心が強く国を憂うロフスキにしても帝国のこの現状を看過する事など到底出来うるはずもなかった
戦傷で脚や腕など人体に損傷を負った場合、大抵の場合は傷痍退役が常となる(一部例外あり)
戦前に渡される傷痍恩給は質素に暮せばそれなり、戦死・事故死(訓練中など)の場合に遺族が受け取れる恩給並びに遺族年金は慎ましく過ごせば安泰とまで唄われていた
しかし、前大戦の死傷者数は想定を有に超えた現在、恩給・年金制度は破綻し、辛うじて支給される恩給は雀の涙も真っ青になる微々たる額。
戦時国債を刷りまくったツケはライヒスマルク価値低下に端を発するインフレーションが物語ってくれている
結果、先の戦争は帝国の社会制度を見事に粉砕、各種社会保障制度を骨抜きした。中でも市井を直撃したのは物価に飛び火するインフレーション、医薬品の不足と高騰、医療費高騰、主食から嗜好品まで多岐に渡る飲食物の代用化だろうか
それでもターニャに言わせれば"それだけ"だ
無論、インフレも代用品も真っ平だが戦争よりは遥かにマシだ
「少尉、車を止めて」
「あ、はい!」
連邦の外交車に妨害されてからは問題なく順調に車を進めていた所、ロフスキ少佐に車を止める様に促され適当な路肩へ停車する
「ロフスキ殿?」
何か粗々をしてしまっただろうか?と少し緊張が走るシルサルスキ少尉だが見ればデグレチャフ少佐も何かあったのかと疑問顔
(少なくともデグレチャフ少佐殿の目には特に何もなかったっぽいし、私の事じゃないかな!多分!)
シルサルスキ少尉の安堵を他所にロフスキ少佐は外に眼を配りそこから眼を離さずターニャに一言断りを入れる
「デグレチャフ少佐、少し寄り道をしても?」
「えぇ、小官は構いませんが」
ターニャも何事かと思いつつ断りに応じ、許可を受けたロフスキは車のドアを開け通ってきた道を戻っていく。ターニャとシルサルスキも車外に出るとロフスキの後に続いてい行く
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▲ 帝国 帝都ベルン ノヴァル通り
1ブロック程車で通った道を戻ったロフスキ少佐は、シャッターのしまった店と店の間の壁に体を預ける様に座り込む軍服の男性に声を掛ける
「……第14独立混成守備隊?」
(傷痍兵?ロフスキ殿の知り合いか?)(……傷痍兵?)
少し間を開けて追い付いたターニャとシルサルスキは、その軍人の左脚が欠損し、手元に少し縒れた軍帽と木製の松葉杖が置いてある事に気がつく
ロフスキ少佐に声を掛けられた男は顔をあげ、何処か懐かしそうな、そして無念そうな顔を浮かべ話し始める
「懐しい……名前です。……ライン戦線でお供しました。確か、貴方はジェイコブ少尉の上官だった」
「えぇ。ヨランダ・ロフスキよ。軍曹……で良いのかしら」
「ご記憶だったのですか?」
ロフスキは忘れるわけもないと続ける
「洟垂れジェイコブの保護者でしょう?確か、末期のライン戦線でMIAに、奴は泣いてたわ。生きていたのね」
(ジェイコブ少佐の教育係だったのか……)
ターニャはジェイコブ少佐の関係者だったのかと心内で納得する。帝国軍では度々新米将校に現場叩き上げの軍曹・古参下士官が指導係兼お目付け役として就けられる事が多々あるのだ
「えぇ……捕虜として生き延び、今はこのザマです。……あそこで死んでいればと思うこともあります」
ロフスキ少佐が自分を記憶していた事に驚きの表情を浮かべるが、すぐに重々しげな表情に変わり俯き、自らの胸に手を当て自嘲気味に呟く
「軍曹、誰が何と言おうとも私は貴方の献身と勇気を知っています」
ロフスキは
「戦友、貴方の屈辱は私の屈辱です。貴方の苦しみは私の不名誉です」
これ以上なく優しく、けれど。死んでいればなど決して言わないでくれと力強く瞳と表情に込めて何よりも言葉に込め伝える
「誇って下さい。貴方は義務と献身を果たした勇者だ」
(優しい顔……)(義務と献身か。尽くした結果が
沈黙し推移を見守っていたターニャ・シルサルスキが其々感想を心に留めていると、ロフスキは取り出したメモ紙に連絡先を書込む
「軍曹、もしお節介を受けてくれるならば……連絡を」
「……ご迷惑になりませんか」
連絡が書かれたメモとタバコの箱をロフスキは嫌な顔どころか微笑みながら軍曹に手渡す
「戦友が迷惑?塹壕貴族にあるまじき妄想ですよ。軍曹」
メモを確認し、懐に大事にしまい込み
手渡されたタバコを取り出そうとし、タバコ箱の中に現金が入っているのを見つけロフスキの戦友愛に感謝を述べ
タバコに火をつける
「!……昔語りを何れ」フゥー...
「……安酒を用意しておきましょう」
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▲ 帝国 帝都ベルン ノヴァル通り
「あの……」
「少尉、寒い時代よね。あんな勇者が物乞いよ……義務と献身に対する国家の義務すら蔑ろか」
微々たる給料、微々たる傷痍恩給、国家が保証すべきモノがなおざりにされ、功労者が馬鹿を見て地を這いつくばる
「少佐殿……」
「……軍人としては腸が煮えくり返る思いですが、政治家共も政権の基盤固めに必死なのでしょう」
忌々しげなターニャの言葉に、ロフスキも思い当たる節がありロフスキも忌々しげに呟く
「……選挙ね」
単純な話で軍人より市井の人々の方が人数が多い
当然、市井優先の政策が決定される
帝国の選挙制度は国民が各政党の候補者に投票し、各政党が過半数を得て更に党内で信任投票を行い代表を選出する
その結果を皇帝陛下その人が裁可して初めて組閣を行う事が可能となる
「はい。碌たない新聞社の記事でしたが、なんでも政府中央の支持率の低下が著しいとか」
ルーデルドルフ・ゼートゥーア両中将を始めとする参謀本部も政府の軍事費削減の流れを阻止・遅延させ様と動き幾つかは撤回・先送りにさせては居るが、悲しきかな最高統帥会議で決められた事は阻止しようがない
5年に一度行われる帝国議会選挙
本来ならば統一暦1924年に行われる筈だったが、戦時下となり暫定的に任期の延長がされていたが、終戦に伴って行われることが決まっている
「割を食うのは何時だって軍人!自分達のケツも拭けない
政治家個人が失敗するのはいい
勝手に破滅するなり、野垂れ死ぬなりすれば良いのだから
しかし、たちの悪いことに政治家が政策に失敗した際に不幸になるのは軍人だ
無駄飯食いとも言われよう、偉そうに威張るだけと言われようと許容しよう。だが、帝国に取って無くてはならない矛だ。その源たる膨大な軍事費は不幸な事に何時だって
(内政資金確保の為の軍事費削減かぁ……それが政権安定に必要って理屈はわかるんだけど……)
官僚には、官僚の都合がある
政治家には、政治家の目論見がある
議員には、議員の要求がある
帝室には、帝室の希望がある
軍人には、軍人の道理がある
それぞれに、それぞれの理屈と『特有の意図』が付きまとうとなれば意思疎通さえも困難極まりない。流儀が違う人間を相手取って、議論と調整はどうしても非効率極まりなく消耗させられてしまう
「……ん?」
車を走らせていると前方に複数の憲兵が立っており、
(検問?こんなところで?)
検問か何かだろうかと訝しんでると憲兵が近づいて来ており、サイドウィンドウを下げて応対する
「停車ー!停車ー!これは少尉殿、お急ぎの所申し訳ありません」
「ご苦労さまです。事故か何かあったんですか?」
何かあったのかと聞いてみれば答えは……
「いえ、政府政策反対派のデモ行進でして……何卒ご容赦を」
「あー……」
終戦前後から帝都で見られる定例行事となって久しいそれ
政府の軟弱さを声高らかに叫び、国民諸氏の税金から捻出される政策資金用途に疑問符を何百グロス単位で投げつける
「「「仕事を寄越せ!!」」」「「「 国民にパンを!! 」」」
オォォォ!! 「「「 市民の声に耳を傾けろ!!! 」」」
ガヤガヤ「「「 現政権は恥を知れ!!! 」」」ワアァァ!!
オーオー!!「「「 連邦軍駐留予算負担反対!!! 」」」
「「「共和国から賠償をもぎ取れ!!!」」」ワーワー
ガヤガヤ!!「「「帝国から赤共を追い出せ!!!」」」
「「「軟弱外交反対!!!」」」「「「領土を分捕れ!!!」」」
「「「共和国と協商連合を全土占領せよ!!!」」」
「「「「「 帝国万歳!!!! 帝国万歳!!!! 」」」」」
「チッ……」「……」
(排外主義者はいつも通り。むしろ増えた?……あーもう何だかなぁ〜。帝国一国で共和国・協商連合とまた対峙して全土占領?連合王国も参戦してきそうな……実際
そうだ !!「「「軍人優遇反対!!!!」」」反対ー!!
平等を !!「「「国民を平等に扱え!!!!」」」扱えー!!
(またかぁー……私たち軍人も贅沢してる訳じゃないんだけどなぁ……むしろカツカツ……)
何時も目の敵にされるのは軍人かぁ、とうなだれ気味でいると後ろからドスの効いた声を掛けられ振り向きたくないが、振り向くと……
「「少尉、少しいいかしら(だろうか)」」
「なんでしy……ッ!?」
「「あの糞豚どもを轢き殺せ、今すぐ(に)」」
先程の優しげな顔は鳴りを潜め、ロフスキ・ターニャの殺人的な眼と目が合い、動揺しながらも恐ろしい命令に思わず反駁する
「少佐殿!?それは!」
反駁など意に介さずに両少佐殿は容赦ない指示を続ける
「豚が人を語る!悍ましくて耐え難い、やれ」
「妄言を吐く家畜共に分からせねばなるまい」
「じょ、冗談ですよね……?」
シルサルスキ少尉は引き笑いを浮かべつつ、ロフスキ少佐に流石に冗談かと聞いてみれば、ロフスキ少佐は作った満面の笑みを浮かべ、デグレチャフ少佐は軽蔑仕切った眼を未だに群衆に向けて続けながら話す
「私は事実を言ったにすぎん。奴らには知性の片鱗すらない」
「違いないわ。少尉、私もデグレチャフ少佐も半分は本気よ?」
「……」
「少尉殿、お待たせ致しました。……どうかなされましたか?その、顔色が……」
デモ隊が通り過ぎ車の通行が可能になったのか憲兵が通行の許可と協力感謝を述べに来たが、シルサルスキ少尉が震え上がっていた所に丁度来た為に体調を心配されてしまった
「え、あ、いや、何でもないです!……もう通っても?」
「はい、御協力に感謝を。お気を付けて」
何でもないと誤魔化し、敬礼する憲兵に小さく会釈して車を進めて目的地を目指す。ターニャは瞳を閉じ到着を待ち、ロフスキは目的地に着くまで外を静かに覗いていた
(レルゲン中佐殿……私は今意味が分かった気がします……)
シルサルスキ少尉は参謀本部でレルゲン中佐に言われた激励を思い出して心中で納得するのであった
どうでしたでしょうか!
最近、幼女戦記・売国機関を読むことも出来てなくて幼女戦記・売国機関感が無くなっているかもしれませんね、、、ssは難しいですなぁ、、、
漫画の場面?を文字に起こすだけでも四苦八苦しており、妄想が7割ほど入ってますがご容赦を……
売国機関も7話まで来てて最高に面白いですね!!
皆さんも読みましたかね!!?本作品は未だ1巻の序盤という、、、
幼女戦記の二期も死ぬ程楽しみです!!!
御意見・御感想・誤字脱字・お気に・ここすき・投票などして頂けると気力が湧いてきますので、よろしければお願い致します!!ではまたいずれ!!
今後のオリジナル展開について
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構わん、やれ。
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は、早まるな!
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全て心の中だ。今はそれでいい。