売国戦記   作:焼き肉定食

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お久しぶりです!
大変長らくお待たせしました!何やかんやしてたら前回の投稿から1年と少し……年明けてもうすぐバレンタインなんて時間が過ぎるのが早いですね!待って頂きありがとうございます!

1年の間に幼女戦記も売国機関もいい感じに燃え上がって、戦闘描写が最高ですよね!!尚今作は未だ売国機関1話初期というインフレ(自分が早く書かないから自業自得)他作者様のSSも面白くて読んでると時間全く足りないですね!

前置き長すぎてすいません!
自分の妄想の欠片を少しでも楽しんで頂けたら幸いです!
ではどうぞ!






逡巡

 

 

▲ 帝国 帝都ベルン 帝国参謀本部

 

 

時は数日前、参謀本部に赴きシルサルスキ少尉を受領(・・)してロフスキ等と言葉を交わした後に遡る。親しき戦友等と別れ、ルーデルドルフ中将閣下との面会予定時間丁度に作戦次長室前に到着する。

 

コンッコンッコン

 

関係書類や己の服装を軽くチェックし、扉をノックする。

ノックを終えたと同時に次長室から何時もと変わらず勇ましい怒鳴り声が外まで木霊する。勇ましさの具現というべきか。

 

『入れ!』

 

「失礼します」

 

声を整えるべく深呼吸を一つ。いつも通りの声質で発声して入室する。扉を開き、この部屋の主に顔を向ける。葉巻を燻らす御姿は初めてお会いした時とお変わり無い。

 

「来たか。中佐」

 

入室したと同時にギロッと擬音がしそうな勢いで眼を向けられる。

 

「お待たせして申し訳ありません」

 

「時間通りだ、気にするな。早速だが、南方のイルドア(友人)等はなんと?」

 

迂遠な言い回しを好かない傑物らしく、本題を第一に聞いてくる。

 

「はっ、イルドア政府は"未回収のイルドア(チロール地方)"の共同開発の提案、西方の戦地復興事業への支援、軍需工業・製造分野の技術交換、相互不可侵条約の4項目を軸に帝国政府と話を進める様です」

 

イルドア外務省が起草し、帝国外務省が翻訳した書類を中将閣下へと手渡し、それと伴にイルドアから提示された項目を読み上げる。

 

「帝国政府担当、外務省のコンラート参事官殿とも話し確認しました。イルドア政府とイルドア軍の方針は大方(・・)総括されているのは間違いありません」

 

提携している帝国外務省ないし帝国政府の担当者とも厳密に精査した結果も伝えればルーデルドルフ閣下は結構と表情を僅かに緩める。

 

しかし、直ぐに表情の緩みは何時もの強面顔へと戻る。大方の内容に問題はない。帝国・イルドア双方にとっても好ましい内容に纏まっている。ただ1つの懸念事項を除いて

 

「ふむ。技術交換に戦後復興事業支援、それに相互不可侵、友人等は随分と情熱的だな。しかし"未回収のイルドア(チロール地方)"とはな」

 

レルゲン自身は元より帝国外務省……コンラート参事官も懸念を示した箇所にルーデルドルフ中将も他と同様懸念を示す。

 

「イルドアとしては帰属問題の放棄は出来ないかと。チロール地方に点在するイルドア系住民の事もありますので……」

 

「潜在的な係争地域であると帝国政府が公式に認める事すら拒み続手前がある。……まぁ加味すれば帝国への配慮も見えては来るか」

 

「外務省のコンラート参事官殿も同様に見ておられます。共同開発とする事で表向きには帝国領土発展に寄与という形をとり、他方で国民国家であるイルドア国内の溜飲を下げるのにも一定の効果はあるだろうと」

 

(それでも問題は山積み。チロールに限れば一番の問題はチロールの保守派とイルドア系の対立激化か……)

 

「ふん、それで?イルドア軍(・・・・・)からは何か?」

 

「はっ、此方をイルドア軍のカランドロ大佐殿から閣下へ、と」

 

渡されるは厳封されたイルドア軍式の封筒。

手早く開封なさるルーデルドルフ中将は中の書類一式を一瞥するや暫し葉巻を燻らすと、ゆっくりと吐き出す。

 

「……中佐、内容は?」

 

「小官も同様の内容書を貰い目を通しました」

 

"不可侵締結後の相互防衛援助協定の提案"

"対連邦・国際共産主義運動を見越した帝国・イルドア二国間防共協定"

 

「叩き台だとしても十分に過ぎるモノかとは思いますが……」

 

イルドアの情勢はカランドロ大佐から詳しく聞いた時には驚いたものだ。イルドア国内は混迷のそれ。左派と右派が跋扈し、王制派は何とか持ち堪えているのが実情らしい。

 

「叩き台としてはそうだろう。だが、それとて連邦の面に泥を塗りたくった挙げ句、殴り付ける器量が帝国にあればの話だ」

 

「やはり、厳しいでしょうか?」

 

「しかり」

 

再び燻らされる葉巻の煙の奥に映るルーデルドルフ中将閣下(上司)の顔は険しきモノ、無論レルゲンとて理由は十二分に分かっているのだが……

 

「……」

 

イルドアは共産主義者への牽制と連邦の牽制両方を同時に行う策として、帝国との協調を目指している。

 

一方の帝国は共産主義を酷く煩わしく思いつつも国境の大部分を隣接している観点からも顔色を窺い、結果融和を余儀なくされている。

 

「中佐、随分と気を揉んでいる様だな」

 

顔に出ていたのだろう。ルーデルドルフ閣下は葉巻の煙を吐き含み笑みを浮かべ指摘する。

 

「はっ……無下に突っ返すには余りにも魅力的に過ぎますので……」

 

「否定はせん。だが、防共協定締結を連邦が座視するとも到底思えん。密約とするにしても露呈すれば、余りの衝撃に連邦(奴等)が帝国に殴り込んできかねん。何れにせよ、一度ゼートゥーアの奴とも話すべき内容だろうな」

 

帝国政府……というより帝国参謀本部上層部としての見解としては連邦と事を構えるのは論外。協商連合・共和国との戦争で擦り減った帝国軍で対連邦戦の持久は3年〜4年が限度(・・)であり、それ以降の推移は未知数だと結論が出ている。それも他国の干渉・宣戦布告が無く、転用可能な戦力を東部に集中させてとの前提で、だ。

 

「先の件は保留とするが、先方との話は続けねばならん。先だって貴様にはイルドア軍との調整を引き続き行ってもらう。取り急ぎ在イルドア帝国大使館へ飛び、駐在武官兼帝国軍交渉団代表として今後の交渉を進める様に」

 

「はっ!それでは早速……」

 

ルーデルドルフ中将の命令を脳内で復唱し、己のやるべき事・成すべき事を行動に移すべく、背を整え、敬礼し退室の許可を求めようとしたところで待ったが掛けられる。

 

「そう急くな……話はまだある。別件……いや、(くだん)の件にも関わる事か」

 

「申し訳ありません。伺えればと」

 

「説明するより見た方が早かろう。辞令だ。読み給え」

 

些かの逡巡の後にルーデルドルフ閣下から渡さられるは1枚の帝国軍式の文書。一歩前に出て受け取った書類に目を通したレルゲン中佐は驚きを顕に上司の顔を見遣る。

 

「…………閣下!」

 

「見ての通りだ。レルゲン大佐(・・)、昇進おめでとう。表向き(・・・)にはイルドア特使団護衛と襲撃者撃退の功で第一級特別鉄十字章授与と共に大佐へ昇進だ。その若さで大佐はまぁ異例だろうな」

 

武功を挙げ、大佐への昇進。それも異例の若さで。

分析を誤り、共和国軍にガラ空きの横合いを滅多刺しにされた責任を取って行われた帝国軍参謀本部の左遷・更迭、その恩恵で得られた地位である中佐位。

 

其処からの余りに早い昇進。何かしらの意図が感じられる僅かにでも政治に関与してきたからだろうか。

 

「過分な評価、大変光栄では有りますが……可能であれば裏向き(・・・)の話はお聞かせ頂ければと思うのですが?」

 

「当然だ。貴様には知る権利も権限ある。大方、察しては居るだろうが、政治的要因を過分に含んだ昇進だ。政治官僚共からの厚い要望でな」

 

政治家の都合に振り回されるのを煩わしく思われたのか、僅かに煩わしさを顔に滲ませるルーデルドルフ閣下に、レルゲンは心中でゼートゥーア閣下が軽口がてら愚直だなと本人に言われていたのを思い出す。

 

「イルドア軍の交渉担当が大佐級に比して帝国軍(此方)が中佐級一人となれば今後の交渉ひいては両国関係に障るとも限らん、とな」

 

意図を伺えば得心も得られるというモノ、ただ1つ問題があるとすれば……

 

「なるほど。……大佐級の実権は頂けるのでしょうか?」

 

実権、軍に限らず組織体制が整えば整う程に重要になる権限。それが得られるかの確認は酷く重要だ。中佐相当級大佐など実質大佐では無いのだから。だが、その心配は直ぐに解消される。

 

「無論だ。相応の権限は付与する。事務方には通達済み、軍籍も本日正午より中佐から大佐に切り替わる筈だ。襟章等の諸々は副官が受領している筈だ」

 

「ありがとうございます。不肖の身では有りますが、全力を尽くします」

 

実権が万全に得られるならば、帝国の未来を決めかねないイルドア事案にも遺憾無く取り組めるというもの。恐らく、確実に馬車馬の如く遣われるのであろうが……

 

「貴様の事は買っている、貶す意図はない。不憫な理由ですまないとは思うが、必要なのだ。……せめてブーゲンビリア少佐が健在ならば話も違ったが、これ以上参謀本部から使える人間を吐き出す事も出来ん」

 

「……存じております。小官に対する不遇などは甘んじて受ける所存です」

 

ギルベルトが負傷し不在な今、これ以上有用で有限な手数が減るのを回避したいのはレルゲンとしても強く痛感している。

 

ルーデルドルフ閣下の意図としてはギルベルトが健在ならば、レルゲン()とギルベルトで他方の職務も兼任でイルドア事案に宛て、階級差問題をも佐官2人で相殺する算段だったのだろう。

 

「よろしい。それと……ブーゲンビリア少佐の副官、階級差から政治には使えんだろうが、奴も手漉きだ。よって同行させる」

 

その言葉を聞いた時、レルゲンの中で何かが軋む感覚がした。それと同時に反駁を口に出してしまっていた。

 

「それは……閣下、返す様ですが必要でしょうか?」

 

「何だ、大佐。不満か?」

 

反駁を前にルーデルドルフ閣下は訝しみの視線をレルゲン大佐に送る。その視線を前にレルゲンはあくまで現実的な回答を行う。

 

「いえ、ただ必要性が無いのではと……」

 

「現状イルドア国内は現状相当に荒れている。暴発(万が一)という事もあろう。その際の保険だ」

 

イルドアの現状を報告したのは紛れもないレルゲン(自分)でイルドア情勢がきな臭いのは事実。左派を中心にデモや暴動が多発し、右派が王制派を取り込もうと工作している。何かの間違えで燃え上がりかねないのも分かってはいるのだ。しかし……

 

「……ブーゲンビリア少佐の負傷で心的外傷を負い精神的に不安定で職務遂行能力に疑問があるかと思われますが……」

 

「診察した複数の軍医からヒアリングし、経過報告・最終経過では実戦レベルで耐え得ると聞いている。レルゲン大佐と行動中は特に安定しているともな」

 

再三の反駁を受けても尚、理路整然と姿勢を崩す事のないルーデルドルフ中将にレルゲンは形勢の逆転が不可能であり、覆す事の出来ない己の無力感に押し黙る事しか出来なかった。

 

「……」

 

「他に懸念される事項は?」

 

改めて問われれば返せる応えなど1つしか残されていなかった。

 

「……ありません。詮無き事を申しました。御容赦願えれば幸いです」

 

「構わん。……温暖な気候のイルドア行きは良い骨休めにもなろう」

 

ルーデルドルフ中将は特段反駁を気にすることもなく、葉巻を灰皿に押し付け消しながらイルドア行きの利点を挙げ、レルゲン大佐の溜飲を下げる様に促す。

 

「心身の保養になれば良いのですが……。何れにせよイルドア行きを急ぎます」

 

レルゲンも帝国軍の組織人だ。何時までも一つの事に固執は出来ない事を理解している人間だ。敬礼を行い、命令をこなす為の行動を開始する。

 

「結構。外務省との連携はくれぐれも欠かさぬ様に」

 

ルーデルドルフ中将は答礼し、要点を告げ退出を見届け、何時もの忙しい時間がやってくると、新たな課題への対応に追われる事になる。

 

 

 

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「……」

 

作戦次長室から退出したレルゲン大佐は歩みながらも思い悩み、その一端が思わず声に出てしまう。

 

「閣下も悩まれて居られるのだろうが……」

 

(この局面にあってさえ私は……)

 

先程会ったばかりのロフスキ・ターニャ(友人)を思い出し、彼女等ならどうか?と意味も答えもない自問をしてしまう。我ながら弱気だと思う。

 

「戦力としては頼もしい限り……だが、それとて嘘に嘘を塗り重ねて得たそれ」

 

北方の戦乙女など揶揄される程の戦闘能力。

仮にも友好国へ向かうのだ額面だけ見れば戦力過多と言われても相違ない。しかし、イルドア国内の分裂が日増しに悪化の一途となれば?

 

(彼等の始まりを知っている人間として、戦友として、何よりも友として、これ以上は……)

 

僅かにでも彼女個人を知る人間だ。彼女の心情は明白、多大なる好意を寄せているギルベルト()から託されたと謳った嘘でヴァイオレット(彼女)を再び戦場に駆り立てるのはどうしょうもなく気が引ける。

 

「イルドア有事……暴発さえしなければ。……だが、暴発してしまったら……?」

 

予測が不可能な国家の命運、左派と右派の対立、現政府との摩擦。どれをとっても予断を許さない。その対応策はあるにはあるが、それとて暴発後の対応策だ。

 

「"プラン739(・・・・・・)"か……計画はあるに越したことはない、か」

 

計画を是とする帝国軍の作戦参謀1を用意し、2で備える。作戦参謀としては当たり前の事だ。だが、その計画が嫌にチラつく。

 

「大佐殿、車を回しました。……大佐殿?」

 

「ん、あぁ、すまない。少し考え事をしていた」

 

車を回した副官に気が付かないとは、我ながら反省を思い副官に詫びを伝える。副官は特に気にする事もなく続ける。

 

「いえ、ここ最近の忙しさを思えば仕方ありません」

 

「そう言ってくれると助かる。だが、今は考える時でなし、か。ご苦労だが、ベルン陸軍病院に向かってくれ」

 

気遣いの出来る副官に感謝しながら要を伝える。打てば鳴ると目的地から提案までしてくれるとは有り難い限り。

 

「お任せを。お見舞いの品などはご入用で?」

 

「そうだな。何か品を……花屋に寄りたいのだが、近くにあっただろうか?」

 

「確か……陸軍病院に向かう道中にあったかと。そこに寄りましょう」

 

花をと考え聞いみれば心当たりがと、つくづく出来た副官である。そんな月並みな感想を余所にギルベルトが好きな花は何だったかと昔の記憶を辿る。

 

「あぁ、頼む」

 

 

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▲ 帝国 オペラ座本部 地下牢広間

 

 

 

「ゥァ゙ッ……ンッンンヴ…………」

「また……」「……これは?」

 

「見ての通り。捕虜擬き、人間の姿をした獣」

 

「ヴ……ンゥ……」ブル……

「子供とは……大人と同様に扱うべきではない。違いますか?」

 

「面白い意見だ。今の言葉を宰相官邸を襲った連中にも聞かせてやりたかったよ。彼奴ら(暴徒共)と来たら、私の様な幼い幼女相手に銃弾を散々ブチ込んで寄こしたのだからな」

 

やれやれ、と自称幼き幼女(ターニャ)は散々撃たれたよ、と自身の胸をトントンと小突く。意図的にだろうが、胸元でギラリと輝く誉れ高き銀翼突撃章を指し示す辺りは存分に皮肉が効いており、抜け目ない。

 

(これが幼き幼女だと?撃ってきた相手はどうなった?彼等を軒並みミンチ肉したくせに!化け物が!)

 

フツフツと湧き出る畏怖と怒りの余りにそれが表情に出るのをヒルシュ大尉が必死に堪えているとロフスキ少佐から更なる皮肉が飛んでくる。

 

「聞いての通りよ大尉。大尉(貴方)が戦場でデグレチャフ少佐と対した際に彼女に銃を向けなければ、貴方の意見も一考に値するわね」

 

「……間違ったにせよ。未来ある子供です」

 

「未来ある?ジェイコブ少佐(愛国者)を背後から撃つ屑に大層な御評価だこと。……まぁ、いいわ。早速、素敵な合同モグラ退治の記念すべき第一歩を歩みましょう」

 

「大尉殿、こちらを」

 

ロフスキの言葉に即応し、待ってましたと言わんばかりの速さで水が満杯の水差しをヒルシュに渡すのはヴィーシャことセレブリャコーフ中尉だ。彼女は最早、オペラ座を織り成す歯車の一部と言って差し支えない。

 

「え、は?」

 

差し出された水差しを前にヒルシュ大尉は戸惑い、堪らず尻込みする。差し出された水差しが何を意味するのか、けして分からぬ訳では無い。だが、脳が理解しても心が、良心がそれを峻拒する。

 

「助かるわヴィーシャ。ヒルシュ大尉、人の親切は素直に受け取るモノよ。お手を貸して頂けるのでしょう?」

 

冷や汗を掻くヒルシュ大尉、そんな彼を見てロフスキ少佐が苦言を呈するのはごく自然な流れであった。なにせ大事な共同捜査(・・・・)を行う仲なのだから。

 

(うわぁ……始まった……)

 

シルサルスキ少尉にして都合何度目かの胃痛タイムである。直属の上司と提携先の高官殿等が啀み合いだ。それを楽観的に見れるほど自分は場数は踏んでいない事を胃痛を感じて改めて痛感する。

 

そんな新米を他所にロフスキ少佐は酷く冷たく呟かれた言葉と共に、冷たく、全く笑いの無い瞳がヒルシュ大尉を射貫く。

 

「豚を歌わせろ」

 

ターニャをして寒気を感じるそれ。さて阿呆(ヒルシュ大尉)は何と返すのかとターニャは成り行きを見守る。

 

「拷問で【真実】とやらを吐かせると?……馬鹿馬鹿しい。モグラ狩りを突き進んで魔女裁判でもやるおつもりですか」

 

訂正、ヒルシュ大尉()はただの底無しの阿呆では無く。底無しの阿呆であるのと同時に究極の大馬鹿でもあったらしい。蛮勇で反論した点もマイナス要素だ。

 

「あなたって、本当に馬鹿ね」

 

己の評価基準がまだまだ甘かった事を理解しつつも、愚者を見つけたとターニャが怪訝な眼差しを向ける。と同時にロフスキ少佐は素の笑顔をニッコリと愚者へと向ける。痛烈な皮肉を込めて。

 

「豚に何を聞くつもり?貴方、豚語を喋れでもするのかしら?この豚の役割は泣き叫ぶ事、恐怖を撒き散らす、ただの楽器よ」

 

嗜虐的な笑みを浮かべてヒルシュ大尉を一瞥し、眼の前で縛られた人間擬きに視線を戻す。そして膝座りしているそれを蹴り飛ばし、ロッティ中尉から受け取った注射器を人擬きの腕に打ち込んでいく。

 

うぁ……あぁああ……あぁァァアァ

 

打ち込まれるは俗に言う自白剤、帝国・共和国問わず使われた便利なお薬の1つ。神経系に作用し神経過敏や酷く強い皮膚過敏、強度に使用すれば意識混濁を引き起こす事が出来る。

おまけに注射器と相まって即効性が高く、過度な投与を除けば死ぬ事は殆ど無いなど安全性まで確約された一品だ。

 

薬物を打ち込まれた人間擬きの顎を手で抑え、少し捻るように顔を上向きにして開口させれば、使い道の無かったゴミが恐怖を撒き散らす蓄音器に早変わりだ。

 

この時まで嗜虐的な笑みは保たれ、それどころか笑みは深まり口角も上がっている。一方のターニャはというと、実に合理的で合法的な尋問術の手際の良さに感服していた。

 

合法で合理的な尋問……祖国を脅かす敵を痛ぶり、情報を得る。悲しきかな、この真っ当で尊き行為のそれを理解出来ていない愚者に寄って害される。

 

うわぁ……ハッ!な、何でもありません!」

 

「苦痛は嘘を生むわ。でも、恐怖は真実を語る。恐怖から逃れる為に転ぶ者すら現れるでしょう」

 

「えげつない事で」

 

その言葉を聞いた途端、ほんの一瞬微笑し、瞬きした次の瞬間には褒め言葉ですよと薄ら笑いすら浮かべる余裕を見せるロフスキ。

 

「恐怖と苦痛の幻想が薄っぺらい信念を侵食する。見せしめは一番効果的なのですよ。さ、始めてくださいね」

 

「…………」

 

「……何か、豚に同情する理由でも?」

 

静かに人間擬きを見つめて黙り込むヒルシュ大尉にロフスキは目を細めて暗く明るい作り笑みで問い掛ける。帰ってきた回答は時間を掛けたにしては、当たり前で、在り来りなそれ。

 

「私は将校です。名誉と……義務がある」

 

「奇遇ね。私も、そして此処に居る全員がそう。だからこそ汚い仕事もしなければいけない」

 

酷い話よね、と目を伏せ、どこか誇る様な、自嘲する様にボヤく。そんなロフスキ(戦友)を横目にターニャはセレブリャコーフ中尉から水差しを分捕ると眼の前で尻込みする男に差し出す。

 

「……時間は有限なのだ。水差しを、取り給え」

 

ロフスキに睨まれ、再三催促された挙げ句、ターニャに低く冷たい声と鋭い視線で凄まれれば、此処まで拒んできたヒルシュ大尉とて最早、証明しない訳にはいかなかった。

 

「っ……」

 

水差しに入った水が音を立て、ヒルシュ大尉の焦燥感にも似たそれを酷く掻き立てる。ロフスキや中尉連が見つめる中、強張った表情でターニャから水差しを受け取る。

 

結果から言えばヒルシュ大尉は己が立場の在り処を証明しい得た。今のところは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




如何でしたでしょうか?少しでも楽しんで頂けたら嬉しいですが!
余談も余談ですが、売国機関アニメ化したりしませんかねぇ〜
幼女戦記第2期も心から渇望してるので楽しみですね!
最近はアニメも豊作で時間が……(以下略


読んで頂きありがとうございます!
今後もゆっくりかもしれませんが、書いていくので読んで頂けたら嬉しいです!誤字脱字・御意見・御感想・ここすき・お気に入り・評価等などして頂けると嬉しいです!!
では!ライヒに栄光を!!



今後のオリジナル展開について

  • 構わん、やれ。
  • は、早まるな!
  • 全て心の中だ。今はそれでいい。
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