売国戦記   作:焼き肉定食

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ゼートゥーア中将 CV大塚芳忠さん
ターニャ・デグレチャフ CV悠木碧さん
でお読み頂くと幸いです(脳⭐内⭐再⭐生)



祖国を憂う者
序開


ご都合主義な表現

定まらない設定

噛み合わない設定

長く無駄な表現などがあると思いますが(駄文)

生暖かい眼で見て頂ければ幸いです

_____________________

 

統一暦1926年 10月

 

終戦より半年の時が過ぎた

 

帝国は今なお暗く

生々しい死者の記憶に囚われていた

 

払った犠牲のその無益さ故に

流したその血の多さが故に

 

誰もが問わざるを得なかった

あの戦争に意味はあったのかと

 

開戦のきっかけは感情だった

軍事大国足る帝国への心理的恐怖

自主と自由への渇望

 

周辺を列強国に囲まれた帝国は生来

その軍事力と国力で自主と平和を勝ち取ってきた

 

必然的に軍備拡張が行われ

比較的新興国家たる帝国は

一気に一大軍事大国へと上り詰めるに至った

 

しかしだからこそ帝国は気づいていなかったのだ

己の剣がどれ程鋭く強大かを…

 

 

諸列強の包囲を脱する為

新外交が叫ばれて久しい帝国は

東方のルーシー王室崩壊後

台頭したボルシェヴィキ政府が樹立した

ルーシー社会主義共和国連邦との

不可侵・平和条約締結を模索・締結せしめた

 

しかし連邦への接近は余りにも顕著となる

 

帝国は一国でも十二分に軍事的脅威足り得ていた

そこに粛清の嵐で軍が弱体化してるとはいえ

連邦が帝国と手を結ぶなど他の周辺諸国にとって

看過しえない脅威と化してしまった

 

そして世界は急激に動きだす

 

 

 

統一暦1923年 6月

 

帝国・連邦と国境を接する連合国家

レガドニア協商連合が暫定非武装線(ざんていひぶそうせん)

侵攻したのである

 

暫定非武装線はロンディニウム条約で定められた

帝国と協商連合間の一種の国境線であり

事実上(・・・)の帝国領土であった

 

 

帝国当局者はこの無謀な侵攻に困惑しながらも

協商連合へ宣戦布告

想定プラン[プラン315]に従い

事前に集結を完了していた大陸軍と北方方面軍で

防衛砲撃戦及び機動戦を展開

 

数的・質的に圧倒的優位の帝国軍は

的確に協商連合侵攻軍を迎撃・撃破し

協商連合野戦軍を撃滅

帝国が協商連合領への侵攻を可能足らしめ

帝国が長年苦悩し、悩み続けた

地政学的難題を解決する絶好の契機を得た

 

 

しかし、そこに悪魔が宿る

 

圧倒的優位と周辺諸国に動員の兆しが無い事を

前に帝国軍参謀本部は大規模攻勢を行い

協商連合軍を粉砕する為

各方面軍から部隊を召集する大規模動員を発令

 

 

かくして帝国軍参謀本部は

西方・東方・南方各方面軍から部隊を抽出

抽出した部隊を北方戦線へ鉄道輸送

輸送後は速やかに前線へ展開する予定であった

 

この時帝国参謀本部は

圧倒的勝利を確信していた

 

しかし

 

 

確信したはずの勝利は

西方からの激震によって打ち砕かれた

 

西方にある歴史的大国 フランソワ共和国

帝国とは長年の国境紛争や領土問題が燻り

数度にわたる局地的戦闘といった

火種を抱えていた国家であった

 

統一暦1923年 8月

 

 

そのフランソワ共和国が

帝国に唐突に宣戦を布告したのだ

 

同時に帝国領へ侵攻を開始

 

西方方面軍は防戦を開始したが圧倒的戦力差の前に

大打撃を受け遅滞戦闘すら危うくなりながらも

残存部隊は徹底抗戦を行っていた

 

当の帝国参謀本部は当初この奇襲に慌て

対応が後手に回っていた西方方面軍を主軸に本国に在った

残留部隊から抽出した教導隊や試験品の実用評価を

任務とする評価部隊などを臨時投入という愚策すら行い

 

帝国西方ライン工業地帯を飲み込まんと

猛進する共和国軍を食い止めるべく奮戦

 

結果は戦線を圧されながらも帝国西方方面軍と

本国抽出部隊の英雄的奮戦により満身創痍に成りながらも

共和国軍のライン工業地帯への進軍は断固阻止

 

奮戦によって生み出された決定的『時間』により

帝国は決戦戦力足る大陸軍の再配置を辛くも間に合わせた

 

この失態で参謀本部では

多くの将校の更迭・左遷が相次いだ

 

前線では再編が進み長大な塹壕線が築かれ

小康状態(しょうこうじょうたい)となり

 

ここから帝国・共和国は互いに未来ある人命を

大地にぶちまけ続ける

 

 

統一暦1924年 12月

 

帝国参謀本部は2正面戦闘の戦況打開策(せんきょうだかいさく)として

北方ー協商連合の要所

オース・フィヨルド軍港への

上陸作戦を策定(さくてい)・実行に移され

帝国陸軍と帝国海軍との共同作戦となった

 

結果は帝国参謀本部直属部隊が先鋒(せんぽう)となり

後続の北洋・大洋両艦隊(高速巡洋戦艦群)の砲撃支援の下

港湾内に上陸、同日中に

協商連合軍オース・フィヨルド守備隊を降伏させ

 

帝国軍は難攻不落といわれたフィヨルド要塞を

見事陥落せしめる事に成功した。

 

 

オース・フィヨルド陥落を皮切り(かわきり)に北方戦線は

大きく動きだした。

 

帝国はオース・フィヨルドから兵員を鉄道輸送し

協商連合主力軍を後方と前方からの挟み込み殲滅(挟撃)

成功足らしめる。

 

統一暦1925年 5月

 

協商連合の事実上敗北が決定した

 

協商連合敗北の情報は瞬く間に世界に駆け巡り

各国に衝撃を与えた

 

しかし帝国では未だに西方方面が片付いておらず

攻勢により戦線を押し戻しつつも

人命が恐ろしい早さで消費されていく

血で血を洗う激戦が続いていた

 

そんな時である

 

中立国家のイルドア王国・合州国が帝国・共和国へ講和交渉(こうわこうしょう)の仲介を申し出たのだ。

 

この申し出に帝国政府は直ぐには取り合わなかった

帝国政府は然るべき賠償がある場合に講和交渉を行う

という意見が殆んどであり

領土的野心も覗かせていた程であった

 

一方の帝国参謀本部首脳陣(ゼートゥーア中将・ルーデルドルフ中将)

一刻も早い終戦を望んでいた

それは損耗の規模が

拡大の一途を辿っている為であった

 

将兵・弾薬の損耗率は戦前の想定を遥かに超え

国力をひたすらに消費し続ける

不毛な戦争となってしまっていた

 

この状況を予想していたであろう

唯一の士官が提出した

『今次大戦の形態変化と戦局予想』という

論文の正にそれであった為だという

 

論文曰く

帝国は全てのリソースを戦火に投じる総力戦に突入

全世界規模での大戦争へ発展する事と

 

共和国を併合すれば連合王国が参戦し最終的には

合州国などの中立国も参戦する可能性が高いと

 

世界大戦の危機

それを回避する為早急に戦争に終わらせる必要がある事を

参謀本部首脳陣は最高統帥会議(さいこうとうすいかいぎ)

政府・帝室に対して訴え 早期講和を提案

 

世界大戦の実現性と危険性を提示し理解を求めた

 

政府高級官僚達はこの意見に当初懐疑的(かいぎてき)であり

軍の弱腰姿勢を批判、危険なほどの融和主義と

言われ会議が紛糾(ふんきゅう)したが

 

最終的に合理性と中立諸国からの圧力を前に

政府・帝室側が折れ、損を被っても

終戦を迎えるべきとの提案を渋々受け入れた

 

 

以下大まかな概要

 

"共和国に対しては無賠償(むばいしょう)無併合(むへいごう)を提案

国境は戦前を基準とし

それを基準に帝国軍を下がらせる事

不可侵条約の締結"

 

"戦争を始めた協商連合に対しては

賠償は必然とし賠償金・一部領土割譲

残る占領地は住民投票を行い

現地の希望に獲得地域(かくとくちいき)を任せる』事など"

 

当初共和国側は講和交渉を峻拒(しゅんきょ)したが

協商連合敗北での西方方面の帝国軍の戦力増強と

戦死者の多さから国内で厭戦気運が高まった事

 

中立国からの外交圧力

秘密裏に共和国を支援していた

連合王国の援助縮小などが起因(きいん)となり

講和の席に就く事になった

 

こうして統一暦1926年 4月

 

中立国(イルドア・合州国)の仲介の下

帝国・共和国の休戦協定が締結

 

血みどろの戦争が終わりを告げ

終戦に至り平和が訪れた

 

しかし

 

帝国は内部に新な火種を生み出してしまった

 

北方戦役の大勝利により

好戦気運が高かったにも関わらず共和国と休戦し

賠償・領土割譲請求が成されなかった事などが

要因で政府・軍に対して不満・反発が強く

 

国内では反政府・反軍が叫ばれ

それは帝国軍内部にすらも起こっていた

 

こうして帝国の新たな闘いが幕を開ける事になる

 

なな『手に入れた平和を守護する闘いを』

 

 

______________________

 

 

 

帝国 帝国参謀本部 戦務参謀次長執務室

 

 

帝国軍の中枢で静かな物腰で学者然とした老軍人

ハンス・フォン・ゼートゥーア(中将)参謀本部戦務参謀次長と白く透き通った肌を持つ金髪碧眼の幼女姿の軍人

ターニャ・フォン・デグレチャフ(少佐)が対面していた

 

「フゥー……フゥーーーー……」

 

ゼートゥーア中将が椅子に腰掛け手に持つ葉巻をゆっくり吸い、ゆっくり煙を燻らす

 

参謀本部では彼が思索に耽っているのは一種の名物でありそれを妨げる者(ルーデルドルフ)は現在この場にはいない

 

「……」

 

ターニャは副流煙を疎ましく思いながらも口を噤み、直立姿勢を保つ

内心これから始まる話が気になって仕方ないのだが…

今は待つしかない…

 

「さて……デクレチャフ少佐。急に呼び出してすまなかったな」

 

しばらく経ち葉巻を消しながらゆっくりと話始める

 

「いえ 小官は参謀本部直轄部隊なればお呼びとあれば即参上いたします」

 

淡々と受け答えをするターニャだが、内心逃げたい気持ちを抑え込んでいた

 

ゼートゥーア閣下の声質が厄介事を押し付けてくる時のそれ、即応魔導大隊の指揮官としてゼートゥーア中将に散々扱き使われ、厄介事と無理難題に放り込まれたターニャである

 

声質で上司(ゼートゥーア)の雰囲気が何となくだが分かるのだ

 

なるべく……いや、本当に厄介事は遠慮申し上げたいのだが……

 

「無駄の無い見事な回答だな。貴官は相も変わらずで何よりだ」

 

面白そうに口元を緩めながらもターニャを見る眼は心なしか普段より鋭くなっている気がする

 

気のせいだと思うが……

 

いやそう思いたい……

 

「遺憾にも性分でして……」

 

自ら虎の尾を踏みに行く道理も無しと言葉は最小限に、心中で半分諦めに似た覚悟を決め、次の言葉を待つ

 

「はっはは、よろしい……では無駄なくいくとしよう。貴官呼んだのは他でもない。203大隊の今後についてだが、参謀本部で入念に検討した結果……貴官には悪いが203大隊はひとまず解隊となる。部隊員は新編部隊の基幹要員と教導隊員として転用する」

 

……厄介事でない? 少し面をくらって思考が遅れたが、次第に理解する

 

しかし、解隊……か

 

いつかは来ると思っていた事だが

 

戦後を迎えた今、即応部隊の必要性が低下している

それに加えて帝国軍は先の共和国・協商連合との戦闘で失った魔導師の補充を急いでいる

 

203大隊は相対的に見てベテランばかりだ

教官として新兵教育に回したいのだろう

 

ならば返答は一つだ

 

「はっ、それが参謀本部の決定とあらば」

 

背筋を伸ばし敬礼をしつつ返答する

 

ゼートゥーア中将をみれば驚いた顔が一つだ。

閣下はなぜ驚かれているのか……?

 

「意外だな……手塩に掛けて育てた部隊を随分あっさり手放すのだな」

 

あぁ、そういう事か

確かにゼートゥーア閣下の言う事はもっともだろう

 

戦中ならば絶対に手放しはしなかっただろう

考えうる限り、許容される範囲で部隊を手放さないよう手を尽くしたに違いない

 

だが

戦後を迎え一応の平和がある今

その肉壁は無用なのだ

 

それに彼らが他方で活躍すれば私の評価も上がるというものだし、彼等なら何処でも上手くやれることだろう

 

何処に出しても恥ずかしくない様に私が鍛えたのだから

 

そもそも論として私は後方で優雅に暮らしたいのだ

本来ならば現場勤務などせずに、後方勤務でキャリアを積みたいし、安全に暮らしたい

 

それに大隊が解隊されれば私は形では戦務局か作戦局に配属されるだろう。

 

ゼートゥーア閣下が私を買ってくれているのは明白だから、この場合は戦務局だろうか?

 

自惚れ過ぎるのは危険だが……

きっと大丈夫だろう……

 

 

やはり確認しようか……

 

うん……確認は大事だ!

 

あのマッドサイエンティストの所(陸軍航空隊試験工廠)に行かぬ為にも……‼

 

「小官は軍人です。軍令には従います。ですが閣下……。一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」

 

内心の不安を表に出さぬよう聞くとゼートゥーア中将は「無論だとも」と頷いて下さったので

ターニャは続ける

 

「解隊後隊員が他部隊の基礎要員や教導隊へ回されるのは理解できましたが、その場合私の配属先はどうなるのでしょうか?」

 

質問に対しゼートゥーア中将は新しい葉巻をカットし微笑みながら答えて下さった

 

「フフ……心配するな。ルーデルドルフの奴とも話したが貴官の配属先は戦務局だ。優秀な貴官を手放したりはせんよ。作戦局と戦務局が合同で新設する参謀本部戦略研究室に席を用意してある、人事局には話は着けてある」

 

全て手筈は整えたと言い

葉巻に火をつけ 優雅に噴かし答える中将閣下

とりあえず危険(MAD行き)は無いと分かったが、参謀本部戦略研究室!?

 

「御配慮と過分な評価に感謝を……しかし、参謀本部戦略研究室ですか?」

 

中将閣下は「然り」と

(これは‼研究といえば当然書類仕事もある訳だ!という事は愛しのデスクワーク!??)

 

(これこそ望んでいた仕事なのでは!!?)

 

「了解致しました。情報分析には自信があります。ご期待に添えるよう職務に邁進致します」

 

内心の嬉しさを必死に隠しながら敬礼し心からの言葉を紡ぐ

そんなターニャにゼートゥーア閣下は

「大変よろしい」と頷く

 

「では早速だが軍令だ」

 

葉巻を灰皿に置き 中将閣下は命令書を渡してくる

 

「拝見致します」

 

意気揚々と命令書を受け取り開封し中身を確認するが

大枠を掴んだ所で疑問が生まれる

 

(これは……どういう……?)

 

確認しようと命令者たるゼートゥーア中将閣下に眼を向けようと顔を上げると…

 

「単刀直入に言おう。ターニャ・デクレチャフ少佐、貴官に法務局への出向を命じる」

 

顔を上げるのとほぼ同時に告げられる命令

それが全てを物語っていた

 

命令書の内容を要約すると

『ターニャ・V・デクレチャフ少佐は直ちに法務局へ出向し、法務局公衆衛生課へ出頭せよ』と

 

 

「ほ……法務局公衆衛生課……でありますか?」

 

(まだ参謀本部戦略研究室のデスクにすら就いても無いのに出向?それに公衆衛生課?)

 

とてつもなく悪い予感がするな……

そんなターニャの心中などお構い無しに中将閣下は話を続けてくださる

 

「然りだ、少々事情があってな……。その話の前に貴官は7日後に行われる帝国と共和国間での平和条約調印式の事は知っているかね?」

 

?知っているが、その話と出向と何の関係が?

 

「少しばかりに耳に致しました」と頷くターニャ

 

自分にも影響がある事なので情報はチェックしていたが

 

「ふむ。多少なりとも知っているのならば話は早い、何処で調印式が行われるのかは知っているかね?」

 

「寡聞にして存じません」

 

分かるかと問われれば答えはNoだ

調印式があるのは知っていたが場所まで分からなかった

 

露骨に秘匿された感じはしていたが……

まさか?と閣下を見る

 

「開催場所の情報は情報統制により機密扱だったのだ。貴官が知らなくて当然だろう、調印式は帝国議事堂で行う予定だが、軍の一部には調印式が行われる場所は宰相官邸という欺瞞情報を流したがな」

 

(情報統制に欺瞞情報?それも軍内に?その意味する所は……)

 

ゼートゥーア中将は灰皿から葉巻を持ち再び燻らせながら呆れた様に語る

 

「フゥー……外部に情報が漏れている兆候があってな、既に欺瞞情報が条約反対派に流れている、参謀本部の水漏れ箇所を見つけ止めなければならん」

 

紡がれるのは帝国軍の御粗末な実情

 

(参謀本部内に講和条約に反対する者がいる??)

 

信じられないと顔すれば中将閣下も苦笑いである

 

「……帝国の参謀将校はそこまで落ちたのですか?まともな理性があるとは思えませんが……」

 

帝国の参謀将校とは軍大学から最良が選抜され、国家戦略と国防に直結した概念を徹底的に叩き込まれる。

 

当然、その選抜過程において複数の選択肢を考慮し最適な人材を発掘する為の努力と手間が払われて久しい

 

ターニャとて参謀課程を経験した人間である

だからこそ思わずには居られなかった

 

(その最良でこれか!?参謀課程で何を学んだんだ!!)

 

嘆きたい気持ちを抑えているとゼートゥーア閣下から更に衝撃的な言葉が飛び出す

 

「少佐、残念ながらそれは将校に限った事ではないぞ。外部に情報が漏れていると言ったが……、外部とは詰まる所、我等が血に濡れ戦い守った帝国臣民諸氏だ。そして恐らくだが……その臣民諸氏は今頃、偽情報に従い盛大な宰相官邸襲撃計画を準備している事だろう」

 

何事も無しと放たれる言葉

その言葉にターニャは思わず態勢を忘れ叫んでいた

 

「と……とても信じかねます!我々は人命を薪として戦火にくべ続けるような愚行をしていたのですぞ!?にも関わらずあの戦争を自ら望むなど!とても知性のある人間の言動とは思えません!」

 

ターニャの悲鳴にも似た反駁に対し

ゼートゥーア中将は「全くだ」と苦笑い

 

「戦争に名誉と誉れを求めるロマン主義はあの戦争で殺し尽くしたと思っていたのだが……。認めなければな……帝国には栄光を、闘争を、勝利を求める感情が入り交じったキメラの様な化け物が世論に生まれ落ちつつある」

 

諭す様な物言いに冷静さを取り戻したターニャは思った事をそのまま言葉にする

 

「機関銃の一斉掃射で薙ぎ払ってしかるべきですな。鉄と血が解決してくれましょう」

 

物理(鉛弾)は、戯言(アホ共)を粉砕する

どれほど頑なに信じようと、世界は『思い通り』には動いてくれないのだ

 

ターニャの発言に

ゼートゥーア閣下は笑みを浮かべ頷いていた

 

「ハッハハ、全く持って貴官の言うとうりだろうて、だからこその出向辞令だ。参謀本部内の事ゆえ我々(高級将校)が動けば察知される。幸いして貴官は前線勤務だったからな。マークされている可能性が極めて低い、その為貴官には法務局と協力し水漏れ箇所を見つけ対処してもらう。せめてもの配慮だ、副官も連れていきたまえ。手配しておく」

 

結局いつもの厄介事なのか……

と内心思いつつも、平和を守る為の厄介事ならば致し方なしと思う事にする。

 

平和万歳をモットーとするターニャにとって平和に敵対する者は明確な敵である、戦争をしたがるアホ共に平穏をぶち壊されるのであれば、そいつらは似非愛国主義者もいいところだ。豚のように吊るし、平穏の為に駆逐してやらねばならないとターニャは信じて疑わない

 

ならば……殺ってやろうじゃないか

 

そう覚悟を決め、綺麗な敬礼をしながらゼートゥーア閣下に向かい宣誓する

 

「はっ!ご配慮に感謝申し上げます。軍令了解致しました。愛国を謳う似非愛国主義者共を叩き潰し、祖国(ライヒ)に平穏を勝ち取って参りましょう」

 

「結構、結構、実に結構。では祖国(ライヒ)の平穏の為に血を流してくれたまえ、期待させてもらおう」

 

規則正しく、踵を打ち付けて退室していく幼い少佐を見送ったゼートゥーアは手に持つ葉巻を消しながら心中で思う

 

(少し前まで子供を戦争に送る事に含む所があったが、退室するあの小さくも頼もしい背中を見た今はそれ全く感じていない。まったく……嫌な大人にはなりたくなかったのだがな……)

 

 

 




!初◇投◇稿!
誰もこの組み合わせを書いてなかったので書きました
後悔はしていない……と思います……
評価 ご感想 酷評(控えめな)を心よりお待ちしております

今後のオリジナル展開について

  • 構わん、やれ。
  • は、早まるな!
  • 全て心の中だ。今はそれでいい。

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