売国戦記   作:焼き肉定食

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投稿が遅れて申し訳ありません(>_<)
万が一にも楽しみにしてもらっている方々居られれば本当にごめんなさい(T_T)

仕事の部署移動でここしばらく落ち着きませんで全く書けてなかった…





邂逅と必要の獣

 

 

帝国 帝都ベルン 帝国軍法務局

 

 

 

第203魔導大隊送別会の翌日、ターニャ・フォン・デグレチャフ少佐は副官であるセレブリャコーフ中尉を連れ帝国軍法務局へ赴いていた

 

送迎車を降り、早々にターニャ等が向かうは法務局の職員達が詰める受付窓口だ

 

法務の窓口には若い下士官がおり、ターニャ達に気づくと敬礼と共に「軍籍の提示をお願い致します」と対応してくれる

 

階級は伍長、外見的に恐らく大学生上がりの下士官だろうか、動きは多少ギクシャクしてるものの若いながらも良く対応している

 

今日(こんにち)の帝国での事務方としてはそれなりに優良な人材だろうな

 

法務局の教育がいいのか、法務局がマシな人材を人事から分捕っているか。と203大隊を編成・練成し、自分には教育の才能があるのではと少しばかり自信を持つターニャとしては少し気になるところである

 

「ターニャ・フォン・デグレチャフ魔導少佐と」

 

「ヴィクトーリヤ・イヴァーノヴナ・セレブリャコーフ魔導中尉です」

 

「参謀本部戦略研究室所属。法務局特別独立大隊のセルジュ・ハイネマン局長殿と面会の約束があるはずだが」

 

名前、階級、所属、用件を簡潔に告げると伍長は「デグレチャフ少佐殿とセレブリャコーフ中尉殿でありますね。少々お持ち下さい」と言って書類を確認し始める

 

程無くして確認出来たらしい

 

「確認がとれました。伺っております。担当の者が来ますので宜しければ座ってお待ち下さい」

 

担当者だと?担当者が迎えに来るなんて聞いていなかったが……。 予定に何かしらの変更があったのだろう

 

(まぁとりあえずは担当者とやらを待たせてもらおう)

 

しかし、待合室に行く通り際窓口の奥を覗いたが、若い者が多いようだ。先程の窓口で対応してくれた伍長も若かったが、皆同じか、少し上くらいだろうか?

 

現在の帝国軍の内情は戦前とは比べ物にならない。帝国軍の中核であった多くの将兵はヴァルハラへ旅立ち。今や帝国を支えるのは生き残った古参兵(ベテラン)と経験が圧倒的に不足している新兵だ

 

「軍の若年化か」

 

「少佐殿?」

 

事の厄介さに思わず口に出ていたらしい

 

「いや、何でもないよ。ヴィーシャ」

 

部下の前で言うことではないし、帝国軍で恐らく一番若いであろう私が若年化など言ってヴィーシャに聞かれたらどう思われるか。

 

そんな事を思い心中で苦笑いしながら待合室に向かう

 

 

 

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待合室に着き、ソファーに座るとヴィーシャが恐る恐る問い掛けてくる

 

「あの……少佐殿、法務の方ってどんな人なんでしょうか?」

 

軍歴や執筆した論文、従事した作戦の概要などは基本的に機密扱いになっている。

 

この点、ターニャは参謀本部戦略研究室課長という事でそれなりの機密アクセス権が与えられているが、セレブリャコーフ中尉にはそこまでのアクセス権が無いため概要を知ることが出来ず、どんな人物か知らないのだ

 

「ん?そうだな。ハイネマン局長殿は一言で言えば英俊豪傑、将校殿は……。軍歴を見る限りでは、知的且つ有能でライン塹壕戦の経験を持つ良識人。と言ったところか。今から会うのが楽しみなくらいだ」

 

書類一つで有能だと分かる将校と仕事が出来ると思うと思わず笑みを浮かべてしまう

 

そんな愉快適悦と笑顔なターニャとは対照的にヴィーシャは不安そうな顔をしてその胸の内を語る

 

「しょ、少佐殿がそこまで言われる将校殿とは、粗相をしないか不安です……」

 

そんな彼女にターニャは薄く微笑みながら安心させるように応える

 

「ヴィーシャ、もっと胸を張りたまえ。なに不安がる事などないよ。いつもの調子で居ればいいだけだ」

 

初めて組む相手なのだ

知らない相手と初めて仕事をするのは誰でも多少なりとも気張ってしまう物だ。それも相手が軍法に携わる法務官となれば尚更だ。

 

ターニャ自身、北方哨戒空域-B47で連合王国国籍艦船攻撃での審議で法務には大変お世話(・・・)になったのだから。

 

「はい! 粗相のないよう誠心誠意勤めます!」

 

「結構、まぁ余り気張らずにな」

 

元気よく返事をする副官とそんなやり取りをしていると徐々に近付いて来る足音が聞こえ、ターニャは足音の方へ眼を向ける

 

眼を向けた先には女性士官がおり、此方に向かって来るのが見えた。そしてターニャ達の前で止まり、短く敬礼すると落ち着いた口調で問い掛けてくる

 

「失礼、デグレチャフ少佐殿とセレブリャコーフ中尉殿でありますか?」

 

「そうだが……貴官は?」

 

まぁこのタイミングで声を掛けてくると言う事はこの士官が担当者なのだろうが、一応確認はしておこう

 

襟章を見れば階級は准尉、目の下がやつれたガサツそうな女性准士官だ

 

「はっ、法務局公衆衛生課独立大隊、リーナ・マートン准尉です。ヨランダ少佐の命令でお迎えに参りました。外に車を用意しましたので、こちらへ……」

 

マートン准尉に促され付いて行くが……

 

(このタバコの臭いは……)

 

マートン准尉から漂うタバコの臭いに眉を顰めかけるターニャだが気合いで捩じ伏せ、マートン准尉に尋ねる

 

「出迎えご苦労、しかし……車?准尉、面会場所は此処ではないのかね?」

 

付いて行きながらターニャはとりあえず思っていた疑念をマートン准尉へ投げ掛ける

 

「はい、少々事情が変わりまして、公衆衛生課独立大隊本部(オペラ座)へお連れします」

 

(オペラ座……確か彼女達の部隊コードだったか)

 

ゼートゥーア閣下から頂いた書類で見た事と今の情報を頭の中で照らし合わせる

 

「では、ハイネマン局長殿もオペラ座(そちら)に?」

 

「はい、局長もオペラ座に居られます」

 

急な変更にしては不自然過ぎ程の段取りの良さ、軍内部のモグラ狩りをしようとする者が此処まで周到な根回し。…であるならこれはそういう事(・・・・・)なのだろう

 

「……そうか、では案内をお願いするとしよう」

 

(法務局にすらシンパ(・・・)がいる…か。最早何処が安全で、誰が信用出来るかすら分からんとは)

 

思わず出そうになるため息を抑えターニャ達は法務局を後にする

 

 

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法務局出ると用意してあった車に乗せられ

走ること十数分、あまり馴染み場所の建物の前で車が止まる

 

 

帝国 帝都ベルン オペラ座本部

 

 

「到着しました、こちらへ」

 

車を降り、マートン准尉の案内で建物の中に入り、廊下を進み応接室の扉の前で止まり、マートン准尉が扉をノックし入室する

 

「失礼します。デグレチャフ少佐殿とセレブリャコーフ中尉殿をお連れしました」

 

応接室には恰幅の良い背広姿の男性と将校軍服に身を包んだ女性がいた

 

(背広の方がハイネマン局長で、軍服の方がロフスキ少佐だろう)

 

「ありがとうリーナ、あと悪いのだけど皆を集めといてくるかしら?」

 

「了解です。では」

 

マートン准尉が退出するなか、ターニャはマートン准尉と入れ替わる様にロフスキ少佐に近づき、適当な位置で止まり、敬礼をしつつ着任の挨拶を行う

 

「参謀本部ターニャ・フォン・デグレチャフ少佐であります。本法務局独立大隊への出向を命じられ。只今着任いたしました。副官共々厄介になります」

 

「ヨランダ・ロフスキ少佐です。法務局独立大隊にて法務課長を拝命しています。急な面会場所の変更ごめんなさいね。デグレチャフ少佐殿の第203魔導大隊のご活躍はかねてより聞き及んでいます。貴女方の様な歴戦塹壕貴族と轡を並べられるとは、とても光栄です」

 

塹壕貴族……か、確か……前線で鉄と血の洗礼を経験した者達の事を塹壕貴族と呼ぶのだったか。以前そんな話を何処かで聞いた覚えがある

 

(そう思うと……第203大隊隊員全員が一流の塹壕貴族という事になるのか)

 

「必要の要請でしょう?お気になさらず。しかし古巣をご存知とは…恐縮です。部下達がよくやってくれましたから、私の誇れる数少ない事の1つですよ。小官もロフスキ少佐殿のお噂は耳にしております」

 

「どんな噂かしら?変な噂でなければよいのですが」

 

ロフスキ少佐は微笑みながら肩をすくめてみせ、

ターニャはターニャでロフスキ少佐へ年相応な笑顔を向ける

 

「いえいえ、戦友思いな方だと伺っております。とても愛国的な方だとも」

 

お互い含み笑いを浮かべながら手を差し出し、固く握手をしていると奥の方からお声が掛かる

 

「お互い挨拶は済んだようだな。オペラ座局長セルジュ・ハイネマンだ。君たちの事はゼートゥーア閣下から聞いている、ある程度の裁量権は与えるが基本的にはオペラ座の流儀に従って貰う」

 

まぁこれは当然の要請だろう

ターニャとしても異議は無いのでセレブリャコーフ中尉と共に肯定する

 

「「はっ!」」

 

「結構。ロフスキ少佐、あとは任せる」

 

「あら、もう戻りに?」

 

「顔合わせは済んだ。それにシンパ共の目も逸らさなければならん」

 

ハイネマン局長は疲れた様な呆れた様な声で答え、そんな彼にロフスキ少佐は労う様に語り掛ける

 

「面倒をおかけします。ですが、それももう少しの辛抱ですよ」

 

「かまわん。これも祖国の平和の為だ」

 

そうを言い残し退出するハイネマン局長へロフスキ少佐とターニャ・セレブリャコーフ中尉等はドアが閉まるまで敬礼で見届ける

 

ドアが閉まると一拍置いてロフスキ少佐がターニャ等へ向き直る

 

「さて、私達も参りましょう。オペラ座を案内しますよ。それと私の部下達を紹介しますわ」

 

「それは是非ともお願いしたいものです。ロフスキ少佐殿の部下、さぞ優秀な方達なのでしょうね」

 

「えぇ、期待して頂いても結構ですよ。私自慢(・・)の部下達ですので」

 

そう言いドアに向かうロフスキ少佐に続きながらターニャはロフスキ少佐の動きに眼をやりながらつい要らぬ事を考えてしまう

 

(ふむ……ロフスキ少佐の振る舞いや仕草。何かの歌劇や演劇の様なとても軽やか動きだ。それに加えて美人で長身とは、女性として完璧だ。これは決して彼女への攻撃や否定ではないのだが、なぜ軍人などをやっているのか…。軍服を脱ぎ、ドレスを身に纏えばそれこそ本物のオペラ歌手に見えることだろう)

 

そんな適当な事を思い、いかん、いかんとターニャは軽く頭を振るい。心を入れ替えターニャ達は応接室を後にする

 

 

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帝国 帝都ベルン 帝国参謀本部 陸軍第一晩餐室

 

 

帝国参謀本部の晩餐室では中将の星をぶら下げた二人の帝国軍人が顔を僅に顰めながら少し早めの昼食を取っていた

 

一人は帝国軍の兵站を担い、全方面の補給を支え、その洗練された戦略眼で常に最善策を見出だす鬼才。静かな物腰で学者然とした称される人物あり、そしてターニャの素晴らしき上司であられる

 

tハンス・フォン・ゼートゥーア戦務参謀次長

 

 

もう一人は帝国軍の行う全作戦を統括し、その才幹と自信で、気まぐれな勝利の女神から勝利を奪い続けた俊豪。傲岸さ匂わせ男盛りの精悍な人物であり、苦労人のレルゲン中佐・ギルベルト少佐の上司である

 

tクルト・フォン・ルーデルドルフ作戦参謀次長

 

 

この両人ともが帝国の機動戦と兵站の権威であり、帝国軍を支える中心柱である。そんな二人がなぜ顔を顰めているかというと…

 

「……ここの食事は相変わらずの味だ、嫌な安心感を感じさせてくれる」

 

うんざり気な声質でボソリと呟きルーデルドルフ中将はパンと呼ぶのも烏滸がましいパン擬きを、これまた酷い風味のするコーヒー擬きで嚥下する

 

「味音痴な貴様がそう言うのだ、ここの食事も相当だろう。しかし、安心感とは……フフ、よく言ったものだな」

 

ルーデルドルフ中将と同じく晩餐室(ここ)の食事に不満を漏らしながらも、親友の言葉を面白がるように笑みを浮かべるゼートゥーア中将

 

(だが戦時糧食の体験か、ガゼル大佐もよく言ったものだな)

 

そう、ここ参謀本部第一(陸軍)晩餐室の食事は常在戦場の食堂であり、戦場体験を後方に意識させ、忘れさせない場なのだ。当然そのメニュー内容も常在戦場を意識したものとなっている。

 

その為こう言ってはなんだが、クソ不味いのだ、何なら飯不味で有名な連合王国のそれと競争でもしているのか?と担当料理人に直接聞きたいくらい不味い。

 

これを好き好んで食べる者など帝国参謀将校の中には居ないと確信出来る代物だ。

 

実際ゼートゥーア中将が知る味音痴代表であるルーデルドルフ中将を苦悶させる程の代物なのだから相当だろう

 

「ふん、物動状況が改善して来てもこの味に変化が無い事に安心すると思ったまでだ」

 

「それについては私も同意するがね。さて、そろそろ仕事の話に戻ろう」

 

ゼートゥーア中将にしたところで代用珈琲の味を紛らわす為にも。仕事の話に戻ろう、と暗にルーデルドルフ中将に促すと、ルーデルドルフ中将もこの食事から逃れられるなら喜んで仕事の話をするとも、と匙を投げるのが参謀本部の食堂なのだ

 

「あぁ、そうするとしよう」

 

ルーデルドルフ中将はきっぱりと気持ちを切り替え、山積する所用問題を頭の棚から引っ張りだす

 

「さて、帝国軍に蔓延るモグラ共の件だが……」

 

ゼートゥーア中将は目下の懸案事項である帝国軍内の内通者についての話題を口にする

 

戦務局(私の所)からは〔デグレチャフ少佐〕と〔オペラ座〕をこの件の収拾にあたらせるつもりだ」

 

ゼートゥーア中将が出せる最大の切り札2つである

 

それを惜しみもなく出すという親友にルーデルドルフも分かってはいるのだが思わず聞き返してしまう

 

「貴様の虎の子を2つもか?まぁ事の重大さを考えればそれも妥当か」

 

「あぁ、彼女達を使えば確実だろう。それに調印式の欺瞞情報が既に外部に流れている兆候もある。慎重過ぎる事もあるまい」

 

ロフスキ少佐の立案した計画を採択し、ゼートゥーア中将が認可した計画。それは情報部の一大掃除である。予てより情報部のテコ入れが必要だと思っていたゼートゥーア中将にとって不穏分子もろとも排除するというロフスキ少佐の計画は、まさに渡りに舟であった

 

「情報部か。敵が味方の中に紛れているなど厄介に過ぎるな」

 

ルーデルドルフ中将は軍政・政治の分野には疎く、それら全てをゼートゥーア中将に丸投げしていた彼からすればこの手の事は心底煩わしくて堪らないのだろうな、とそんな親友にゼートゥーア中将は心中で苦笑いしてしまう

 

「その為の虎の子だとも。それで、そちらの方は?」

 

「中立国から来るお客人達の件か?作戦局(俺の所)からはブーゲンビリア少佐の部隊を客人の警護に着ける。それからレルゲン中佐をその支援にだす。奴等なら上手くやれるだろう」

 

デグレチャフ少佐・ロフスキ少佐が戦務の虎の子ならばブーゲンビリア少佐・レルゲン中佐は作戦の虎の子と言ったところだろう

 

「ブーゲンビリア少佐?確かに彼の部隊なら適当か。しかし、気をつけろ。敵は国内の主戦論者(ジンゴイスト)や排外主義者だけではないぞ。例の件、北方方面軍に確認が取れた。北方の収容所が襲撃され一部の捕虜の逃亡を許したそうだ。情報を統合するに恐らくは中立国調印調整特使団の襲撃を計画しているのだろう」

 

調印式は中立国の監視があって初めてその効果を発揮するのだ、そして往生際が悪い者達が何を考えたかその査察団の排除を考えているのだ

 

「ブーゲンビリア少佐の部隊なら必ず守りきる。だが……協商連合政府はなんと言っているのだ?奴等が関わっている可能性は?」

 

ブーゲンビリア家は名家であり、そしてギルベルト・ブーゲンビリア少佐は北方戦役を勝利に導いた英雄とまで将兵の間では言われている

 

「外務省のコンラート参事官経由で確認したが、協商連合政府が関わっている可能性は限り無くゼロだ。私も残党共の独断だと見ているが……」

 

新選されたばかりの協商連合政府がこの件に万が一にも関わっていれば、蠢く政府・世論を止めることは出来ないだろう

 

「ふん、連中がまだ戦うと言うのなら再び叩き潰すのみ。残党共などにライヒの未来を潰させはせん!」

 

拳を握りしめて見せるルーデルドルフ中将にゼートゥーアはやれやれとわざとらしく肩をすくめてみせる

 

「貴様のそういう豪気な所は変わらんな。まぁ、そうだな。ライヒの未来は守らねばなるまい」

 

ライヒを守る、それはゼートゥーア・ルーデルドルフ両中将が任官したその日に誓った事だ。その誓いは今でも変わらず固く心に刻まれている

 

「そうだ。我々は犠牲の末に勝ち取った平和を守る義務が有るのだからな。その為に血を流すことに躊躇や迷いなどない」

 

帝国の勝利を信じ、散っていた将兵達に報いる為にも多少の犠牲を払ってでも平和を維持し続けなければならないとルーデルドルフ中将は信じてやまない

 

「それで例え将兵が守った臣民が血を流したとしてもかね?」

 

ゼートゥーア中将は眼を細め眼前の男を凝視する

 

「それは調印式反対派の事か?」

 

モグラと関わっているのは過激派だ

反対派の中にも比較的穏健派がいるのだ

 

「そうだとも、彼等は帝国の臣民だ。主戦論者や過激派とは違うのだぞ?彼等は彼等の権利を行使しているに過ぎん」

 

武器を持たず、プラカードを掲げ、不平等な条約に反対を訴えるのは臣民の当然の権利だ

 

それを殺すのか?と不愉快な顔をする親友にルーデルドルフ中将は冗談めかしながらも慎んで指摘して差し上げる

 

「ゼートゥーア中将、鏡で自分の顔を見てみたらどうだね?口元が弛んでいるぞ」

 

「ん?……ふむ」

 

ゼートゥーア中将は、やや困惑したように顎を撫でる

 

しかし、その口元に手が伸びた時だった。不機嫌顔が綻び、まるで春日のように穏やかな表情へと回帰するのは……劇的な変化と言うほかにない

 

「随分ご機嫌で居られるようだな。ゼートゥーア中将」

 

ゼートゥーア中将の表情は愉悦が零れ落ちているというか、愉快痛快と言わんばかりのソレだ

有能で、冷酷でサイコパスな悪友であり盟友だ

 

「フッフフフ、そういう君もいい笑顔で居られるようだが?」

 

ゼートゥーア中将に指摘され、ルーデルドルフ中将も自分も口が緩んでいる事に気が付き、豪快に笑ってしまう

 

「ハッハハハ」

 

「結局、我々は同じ穴の狢なのだろう。罪を自覚してはいるが、必要という母のぬくもりにはお互い勝てぬと見える」

 

ゼートゥーア、ルーデルドルフという友人たちは、非常によく似ているのだ。両者とも国家という構造体に心底からの忠誠心を持つ愛国者であり、必要の要請に常に応え続けてきた勇士達だ

 

「全く……違いない」

 

ライヒがそれを必要とする、ならば我々の成すべきことは一つだ

 

「ならば調印式反対派(彼等)にはハイマート百年の礎になって貰う事としよう」

 

ゼートゥーア中将がそういうと、どちらからだろうか。

ルーデルドルフ・ゼートゥーアの二人は心の底より笑っていた

 

「フッフフフフフ」

 

「ハッハハハハハ」

 

その時、帝国参謀本部 第一晩餐室には快楽殺人犯の様な顔で二人の老軍人が悪魔の如く笑っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




誤字報告・脱字報告・ご意見・感想・批判(控えめ)を心より御待ちしております

それと今後また投稿が遅れるかもしれませんがよろしくお願いいたします❗(>_<)




…………早く出ないかなぁ売国機関二巻…

今後のオリジナル展開について

  • 構わん、やれ。
  • は、早まるな!
  • 全て心の中だ。今はそれでいい。

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