売国戦記   作:焼き肉定食

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前の投稿から幾日たったか……
すみませんねぇ本当
書きたいのに書けないジレンマ

誤字脱字誤用などあると思いますが
雰囲気だけでも楽しんで頂ければと思います


外交と軍政

tイルドア北部 地方都市 ベ・ルーヌ市

 

 

 

 

レルゲン・ギルベルトを乗せた列車は山岳部を抜けイルドアの地方都市"ベ・ルーヌ市"に定刻通りに到着する

 

ベ・ルーヌ駅は地方都市の駅にも関わらず広く豪奢な駅ホームであり、帝国との窓口として駅が整備されている証を示している

 

規模や物動量こそ帝都ベルンの中央駅や主要都市の駅に劣るものの。総合的な面で見れば、帝都のそれよりも遥かに優っているようにレルゲンには思えてならなかった

 

我等が帝都の中央駅では終戦を迎え、戦死者の遺体が各戦線から回収・後送が行われており、列車が到着する度に愛する者を失った遺族の悲観の嘆きや憤怒が満ち溢れている

 

それに比べ

イルドアの様相は平和そのもの

曾てはあった帝国の平穏も、今ではそれも遠い記憶となって久しい

 

 

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既にベ・ルーヌ駅には中立国から成る各国の特使やその関係者が集まっており、その周りには特使やその関係者に取材を行おうとする記者等が押し掛けていた

 

この調印式は世界からの注目度が高く

世界中の報道機関が来ることは予想されていた事であったが、その想定を上回る数の報道記者が集まっていた

 

そんな様子を見たギルベルトは怪訝な声質でボソリと呟く

 

「凄い人数だな」

 

「イルドアや合州国はもちろん、帝国、共和国、連合王国、果ては秋津島皇国の記者まで来ているらしい」

 

煩わし気な戦友の言葉にレルゲンは全くだ、と苦笑いを浮かべる

 

レルゲン等が乗車する将官用列車が停車している路線付近は一応の規制が行われているが、一般鉄道は平常通りに運航している為、一般人などの部外者の完全な規制は望むべくも無い

 

「敵があの中に紛れ込んでいるとすれば少し厄介だぞ」

 

協商連合残党が妨害に動いている事を知る者としては煩わしさすら覚えるのは当然の権利と言えよう

 

「それは確かだが……」

 

「失礼だが、それが"政治"というものですよ」

 

レルゲンが次の言葉を

紡ぐより前に回答を述べるのは

 

外務省‐コンラート参事官殿だ

 

レルゲンとギルベルトがイルドアに赴くに際しての表向きの肩書きは帝国軍の代表である"派遣武官"となっているの対し、コンラート参事官は"帝国政府代表"だ

 

コンラート参事官殿は今回の帝国・共和国間の調印式実現の為に奔走し、頭の硬い外務省や政府。関門違いの我々、軍とも積極的に協議を行った功労者である

 

そして何よりも彼の御仁は

"帝国の現状を冷静に直視出来ている"

帝国という国家の歯車としては頼もしい事この上ない

 

「レルゲン中佐、ギルベルト少佐、お話中だと分かってはいたのですが、そろそろ降車する時間だ。最終確認をと思いましてね」

 

コンラート参事官を聞いて

前日に封を開いた封緘書類の事を思い返す

 

ルーデルドルフ中将より直々に渡された封緘書類をギルベルトと共に恐る恐る開け、内容を見た時の衝撃は忘れ難い

 

書類には"世界に冠たる我等が祖国此処にあり"と示せと殴り書き、極めつけは発令者欄に御丁寧にもルーデルドルフ・ゼートゥーア両中将の御名前がご覧列だ

 

記者団にの前で中立国の特使等と交友を大々的にアピールするある種の"政治ショー"はコンラート参事官に一任し、我々(レルゲン・ギルベルト)は雄気堂々とした軍人としての参列などと思っていたが……

 

帝国の威勢を大使等に宣伝し、ライヒが未だ衰え知らずであると触れ回るのだ

 

命令とあれば、どのようなものであれ万全を尽くす、と気負う当人等にとっても勝手の違いは否めない

 

帝国軍の参謀将校とは、突き詰めれば武官だ

 

敵情を探れというのは納得できよう。軍使ならば、堂々と使いを果たそう。けれども、政治屋に混じって『言葉』を紡ぐ使節を引き受けよと言われれば面食らわずにはいられなかった

 

(道化も此処に極まれり、と言ったところか

これが軍政畑を少しでも歩んでいたのなら多少なりとも勝手が分かったのだろうが……)

 

その為、昨日レルゲン・ギルベルトの両者はコンラート参事官に様々なアドバイスを貰っていたのだ

 

「それは……、配慮に感謝申し上げます。それと、改めてこの件の為に外交官の心得をご教示して頂いた参事官殿には改めて感謝を」

 

「構いませんよ。軍人の貴殿方に外交を説くというのも奇妙な話ではありましたが。帝国(国家)の大事ともなれば外務省やら軍やらといった垣根をも越えてやらねばなりますまい」

 

国家の暴力装置である軍が外交政治へ積極的介入!

挙げ句に政治の統治機構足る政府がそれを容認?

軍国まっしぐらも良いところ

 

帝国の先人が、この惨状を目の当たりにしたら余りの衝撃にショック死してしまうのではないだろうか

 

先人(彼等)も、よもや、後世の子孫がここまでぼんくらだとは、夢にも思っていなかったに違いあるまい

 

現在の当事者である我々ですらこんな事態になるとは、戦前、誰もが夢思ってもいなかったのだから

 

「その点でいえば軍と政府が互いに手を取り合う事が出来たのは、ここ最近の帝国事情からすればまさに枯木竜吟とも言えます」

 

大変喜ばしいと手を叩くコンラート参事官

にレルゲンはややはぐらかして答える

 

(我々)としては今回の様な事は非常時の措置だと理解しているとしか答えようがありません」

 

軍人としての義務は、政治の忌避。将又政治と軍事の剥離の徹底。レルゲン自身、参謀過程で散々叩き込まれた義務として根付いている

 

「大変結構です。そこを弁えて頂けて頂いているのなら帝国の未来も切り開けるというもの」

 

「……開戦劈頭、帝国の未来が少しでも明るくなればと今日まで(ギルベルト)や私を始めとする帝国軍全将兵は戦ってきました」

 

「分かってますとも。貴殿方()が、帝国が払った犠牲の膨大さは……」

 

「参事官殿、我々は、やれることをやります。許容しうる限りの犠牲を払い、命を懸けて貴殿方を守り、希求すべき最大限の成果を求めましょう。だからこそ、一つだけ約束して貰いたい」

 

真剣な眼差しを向けた参事官に「どうぞ」と促されギルベルトはゆっくりと確固たる意思を持ってその言葉を発する

 

「この講和……何としても纏めて貰いたい……」

 

正直情けない話だと思う

後世の評論家が軍当局を非難・酷評するのも仕方ないものだと理解も納得としよう

 

戦後を迎えた帝国に過剰余力などは皆無

 

肝心の講和がご破算となれば帝国という国家が滅亡しかねない瀬戸際

 

退路は無し、ただただ突き進む事だけを運命という気紛れの女神に許されている

 

軍はそれに抗うことを是としながらも抗うことが出来ずにここまで進んできたのだ

 

これを情けないと言わずになんと言えばいいのか

 

「えぇ、確約しましょう。その為にお互い此処まで来たのですから」

 

世界大戦という引き金を引かせぬためと集った彼等は互いを戦友と言える間柄にまで関係性を昇華しつつある

 

「では、そろそろ行きましょう。余り先方を待たせるのもよろしくないですからね」

 

コンラート参事官に促され、彼等は政治の舞台へと踊り立つ

 

 

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帝国の寝台列車を中心に展開する各国記者団からのシャッター攻撃を受けつつも。

それに怯むことなく前進し、特使団のイルドア代表等と如才なく社交辞令を交わす

 

『貴国の受けた犠牲者の冥福をお祈り致します』

 

『今回の調印で貴国の復興が進む事を願っております』

 

『貴国にご協力出来る事があれば我が国は喜んで協力しますよ』

 

見るからに謹厳実直な武官そのものという調子で中立国の特使等と朗らかに向き合う

 

しかし、これが厚貌深情かとまじまじと思う

良心的に語り掛けてくる特使等に受け答えるレルゲンは大使(彼等)の本心を推察する

 

(何とまぁ御優しい事か、恐らくは共和国や協商連合の代表にも同じ事を言ってるだろうな)

 

内心でそれを恨めしながらもレルゲンは冷静にイルドア王国当局の対応を合理的に見定める

 

相手は先の戦いで一貫して風見鶏を演じ続けた

国家理性の僕

 

帝国とその他の交戦国が鎬を削る中

各国はイルドアを己が陣営に加えようと躍起になり様々な外交手段が講じられたが、連合軍・帝国軍双方の全ての策が失敗に終わっている

 

そんな相手が今度は支援を惜しまない?

どう見積もっても打算ありきなのは明白

 

(恐らく、根底にあるのは……)

 

長くイルドア=帝国間で燻り続けている領土問題

 

領土問題は、バカバカしくも根深い問題である

 

それは帝国形成期に我らがライヒに組み込まれてしまったイルドア語圏の帰属をめぐる問題だ

 

この問題は帝国にとって『論じるにも値しない』問題とされ、係争地域であると公式に認めることすら帝国政府が拒み続けている事柄だが

 

他方のイルドア王国にしてみれば、イルドア語を喋っていた人々の土地をイルドアに統合できない道理を受け入れる余地がない

 

なればこそ、その執着は、凄まじい

 

正当な領有権を有すると信じる土地への渇望は、国民国家という存在にとって奔流のごとき激情とすら化しうる

 

今回の調印式を仲介し、恩を売ることで

領土交渉を有利に進め、帝国に譲歩を迫るつもりか

 

そんな連中相手に政治合戦

全く現場は苦労させられる

 

覚悟を決めて臨んでなお

その慣れなさからか疲弊してしまう

 

(今ならば……)

 

(今ならば参謀本部の何でも屋として酷使されたデグレチャフ少佐の気持ちも分かる)

 

そんなことを思考し、思わず苦笑いが出かけるが、すぐに現実に戻り、特使等に対しこれでもかと社交辞令を投射する

 

なまじ付け焼き刃だと自覚している為不安にもなるが、顔には絶対に出さないと孤軍奮闘

 

 

どうにか一通り特使と社交辞令を交わし終わる頃、気を見計らった様にレルゲン等帝国側の人員に声を掛けてきたのは……

 

「初めまして、ですな。レルゲン中佐殿。私はヴィルジニオ・カランドロ大佐。イゴール・ガスマン閣下より今回の調印式に参加するよう命ぜられた者です。イルドア軍の代表(・・・・)とでも思って貰えれば幸いだ」 

 

これまた礼儀正しさを身にまとったイルドア王国軍人。にこやかで人懐っこい笑顔の男性

 

敬礼を交そうとする寸前に、握手でもと手を差し伸ばしてくる手際は驚くほど素早い

 

するり、と懐に入り込んでくるようなタイプだ

 

しかし……

 

「イルドア軍の……、あ、いや、失礼、帝国軍参謀本部のレルゲン中佐です。こちらは……」

 

不覚にも思わず出てしまった一言を誤魔化す為

己等の事に話を持っていく

 

まだ相手の実力も測りきれていない

ただ相当厄介な部類の将校なのは確かだ

 

「北方の英雄、ギルベルト・フォン・ブーゲンビリア少佐殿とお見受けしますが?」

 

レルゲンが、将又ギルベルト自身が紹介するよりも早く答えるカランドロ大佐は流石と言うべきか

 

「大佐殿に名を覚えて頂けているとは、光栄です」

 

あくまでも外面(・・)で対応するギルベルトに

愉快そうな笑みを携えつつ、カランドロ大佐は手を打つ

 

「これは私個人の考えですが、恐らくあなた程世間に認知されている軍人も珍しいでしょう」

 

確かに軍人としての彼の認知度は高い

 

忘れもしない凍てつく大地

"北方ノルデン戦役"

戦力不足で攻略が難航した戦線、それを打破せしめた強襲上陸作戦、そしてノルデン戦役最後の攻略戦

 

インテンス大要塞攻略作戦

 

その立役者ことギルベルト・フォン・ブーゲンビリア少佐麾下の部隊を帝国系の新聞、ラジオは英雄として大々的に喧伝したのだ

 

ギルベルト・ブーゲンビリアの名が知れ渡っているのも分かるのだが、次の言葉でこのヴィルジニオ・カランドロ人物がただ者ではないことが確定した

 

「ついでにいえば、お二人は帝国軍大学の誉れである十二騎士であられる。卒業時の論文も拝見させてもらったが正に秀才と言える」

 

列強とはいえ近隣国のいち将校が、帝国軍の参謀将校育成プロセスや軍機に近い軍大学論文などを閲覧?

そんな事が出来るはずがない

 

恐らくだがカランドロ大佐殿はイルドア対外情報部、最低でも対外政策の策定に携わる軍中央の軍官僚だろう

 

「そんな参謀将校が、このタイミングで話し掛けてきた意図を分からないとは思いませんが?」

 

微笑みを浮かべつつ、しかしレルゲン等を見つめる瞳だけは笑っていない。じっと凝視して寄越す視線には、透徹した観察者としてのそれが宿っている

 

(つまりはお互い腹を割って本音で話したい、と)

 

「……大佐殿が、それほどまでに帝国軍の事情をご存知である事、帝国に対する興味、ご関心に感謝申し上げるべきなでしょうか」

 

感謝など、と微笑み描けてくるカランドロ大佐は笑みを絶やさずにさもないと言い放つ

 

「当然ですよ、イルドアと帝国は近隣友好国(・・・・・)なのですから。イルドア(我々)は善隣友好政策を唱えて久しいのですよ」

 

この会話相手がイルドアの外交官や大使なら、話は簡単だったのだが、カランドロ大佐殿は職業軍人(・・・・)であり、それも中枢の人間

 

彼の接触はイルドア軍上層部の指示

 

恐らくこの後の話はおおよそ帝国軍人がしていい範疇を越えてくるだろう、しかし、今の帝国は毒に犯され、解毒藥を求めて奔走している

 

毒が回りきるまでが勝負

古い諺にもある

<毒食らわば皿まで喰らえ>と

 

覚悟を一層に固めてカランドロ大佐殿に向き直る

 

「カランドロ大佐殿、そのご用件伺いたく思いますが……」

 

レルゲンの返答にカランドロ大佐は満足感だ

と、ちょうどその時 ビフオォォオオという高い轟音が鳴り響く

 

列車が発車する10分前を知らせる汽笛だ

 

回りを見渡せば特使等も乗り込み始めている

コンラート参事官も特使等と共に列車に乗り込んでいた

 

「発車も近いですし、此処では何でしょう。御話は中でお聞きしたいと思います」

 

よろしいですか?と聞けば和やかな口調で

 

「結構、気を使うとは思いますが一つよろしく頼みます」

 

ギルベルトとアイコンタクトで頷く

 

「では、こちらへ」

 

ギルベルトが先導し、それに続いていく

 

「御話は食堂車で食事を取ってからではどうでしょうか?」

 

「全然構いませんとも、御一緒させて貰いますよ。帝国名物もヴルストも楽しみにしてましたからな」

 

にこやかに答えるカランドロ大佐殿は相当な面の分厚さだ

協商連合軍残党も気になるが、彼との話も相当な物だろうな

 

だが、職務なのだ

レルゲン中佐とギルベルト少佐という軍人に与えられた命令だ。今はただ参謀将校として命令を完遂するのみだ

どんな犠牲を払ってでも帝国に繁栄と平穏を……

かくして長い列車の旅が始まる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうでしたでしょうか?
我ながらうーんって思いますw
読者の皆さんはきっとこう感じてるはずです

あれ、これ結局同じ事言ってるだけじゃね?って
頑張ってはいるんですがねぇ

閲覧ありがとうございます
感想誤字誤用報告を心よりお待ちしております


私も色々考えているネタはあるのですが
こんなネタどうです?という方が居ればぜひお教え頂ければと思います

ではまたいつか

今後のオリジナル展開について

  • 構わん、やれ。
  • は、早まるな!
  • 全て心の中だ。今はそれでいい。
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