鬼滅世界に喰種を突っ込んだお話(一発ネタ) 作:こしあんあんこ
という訳でアニメを待つぞ!!しばらく更新はストップだ!!
※注意
人食い描写ありです。
――ねぇ、どうして食べないの?
包帯をほどけば陶磁器のような白い肌が晒される。ふわりと柔らかい綿毛のような翡翠の髪が視界をかすめた。翡翠とそれに相反する赤黒い双眸の眼が俺を見ている。矛盾しているのにとても綺麗な眼だった。食い入るように見つめれば、その眼は大きく歪み微笑んだ。周囲には肉片が散らばっていた。俺たちを追いかけ狩ろうとしていた連中だった筈の残骸。汚いのにそれをした張本人はとても綺麗だった。俺も赤いのに、なんて綺麗なのだろうか。
――ほら、とっても美味しそう。
包帯が巻かれた手は残骸の臓物を拾い上げた。ぐちゃり、生々しい音と共に白い包帯は赤く汚れた。その手に持った心の臓腑を貪り喰らう。頬は汚れ、血が顎を伝い地面に落ちた。先程まで動かしていた命の躍動は既になく、冷たくなって、俺たちを生かすために喰われている。目が離せない、そのまま眼が熱くなった。こんなに眼が熱くて仕方ないのに。残念なことに、俺は泣いてなどいなかった。どうあっても
――お腹が空いているのね。
彼女はまた新しい臓物を両手いっぱいに拾い上げて、俺に見せつけた。食べて、優しく語りかけてくる。今まで不味いものばかりだった、きっと目の前のモノはとんでもないご馳走。少しぐらいいいじゃないか、本能が問いかけて、思わず顔を背けた。ビチャリ、頬に赤い液体が撫でつけられた。生温かくて、いい匂い。再び見せつけられたそれに顔を埋めて喰らった。そして、止められなくなった。美味しいと何度も言って、繰り返す。
――遠慮なんてしなくていいよ?
まるで悪魔の誘いだ。きっと逃れられない。思い出すのは顔も思い出せなくなった少女と両親。もう、引き返せなくなったのを感じた。
――食べよう!
エトは天真爛漫に微笑んだ。食べ終わったころには服が血にまみれて駄目になっていた。捨てるのが名残惜しいね、勿体無いと匂いを嗅いでいた。トンと、胸元に彼女の手が置かれる。もう片方の手は遊ぶように俺の腕に絡みつき、行きついた先の俺の手が重なり繋ぎ合う。
――殺された仲間の分までいっぱい殺そうね?
そうだな、頷いた。
頼もしかった。……彼女となら、きっと地獄だって怖くない。俺も一緒になって笑っていた。
チチチチッ……、小鳥のさえずりが鼓膜に響く。朝日の光が目蓋越しに差し込んで、起き上がる。見渡せば相変わらず青々しく生い茂った草木が俺の視界に映る。先ほど見た血生臭い光景はもうなかった。どうやら夢を見ていたらしい。
「ふふっ……!」
……随分、懐かしい夢を見た。思い出す。人間を食べず、同族喰らいを繰り返していた俺に、エトは業を煮やしていたんだったけ。確かに人間を食べたほうが衰弱もなくなるし回復だって早い。それでもエトに会った頃はギリギリになるまで食べなかった。口に入れる気が失せていたんだ。しばらくしたらエトが俺を連れ出した、喰えと言わんばかりに死体を作り出して。その後
……あんな夢を見たせいだろうか。人間の臓物が脳内に蘇って、唾液が滲む。口いっぱいに頬張りたい。……ああ、まったく。お腹が空いた。
山を登れば、藤の花が咲いていた。まだ咲く時期じゃないのに、垂れ下がる藤の花の一房触れる。花の優しい匂いが鼻孔をくすぐった。あともう少しか、上を見上げれば山の山頂が見える。
人気のない獣道を選びながら身を潜め、登っていけばそこには人食い鬼が多数いた。茂る草木は返り血で色を変え、刀を持つ人間と殺し合いが繰り広げられていた。敗者は容赦なく喰われ、恐怖は伝染し、怒りに猛る。被った面の向こうには阿鼻叫喚の光景が映されている。動きが乱れた者から死んでいく。火が消えるように勢いは無くなり最後には人食い鬼だけが残った。久々の肉だと狂喜乱舞する連中の首を尾赫でそぎ落とす。呆気にとられたような表情で首が口を開く。首より下は勝手にあちこち動き回る。一つ首を拾って、そのまま喰らえば、周囲の首が叫んだ。不味い、そしてうるさい。黙らせるように尾赫で一つ突き刺して持ち上げる。血が流れ落ちて見上げて飲み下せば、今度は人間に代わって人食い鬼の方が恐怖の声を上げた。ますますうるさくなったが喰種の本能は食欲を促した、眼が熱くなった。
「……ああ、今日は入れ食いだな」
赤くなった眼で連中を見れば、面の隙間から眼が見えたようだった。悲鳴が小さく上がり、宿主の居ない胴体どもが俺に襲い掛かった。尾赫で軽く薙げば、胴体は半分になって動かなくなった。叫び声が更に深まって。血は更に濃くなった。
長い間随分と食事をしていた。飢えが満たされる。手は血でまみれ、肉片が爪に詰まっていた。人食い鬼はすっかりいなくなり、周囲には人間の亡骸だけしか残っていない。亡骸からは香る匂いがたち、失せた食欲が湧くが頭を振って打ち消した。
――偏食め。
エト、君が居れば俺をそう言ってくれるのだろうか、朝の夢を見てからますます会いたい思いが強まった。ガサリ、草が動く音がした。動物じゃない。誰だ、揺れた方を睨む。俺は正体の分からないそいつに声を掛けた。
主人公。エト好きすぎる件について。書いてて気づくことが多すぎた。