鬼滅世界に喰種を突っ込んだお話(一発ネタ)   作:こしあんあんこ

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久々の投稿です。長らく申し訳ありませんでした。




 鬼を喰らって歩き回った。草木を掻き分け、岩肌の見える道なき獣道も通る。歩道なんて整備されていないものだから、未舗装の道を歩けば砂利に足を取られることも珍しくはなかった。道中、頭笠に風鈴を幾つもぶら下げた男と会った。顔は喰種のようにひょっとこの面が付けられていて、まるで分からない。途中の道中までは一緒に歩いたが、会話をしようにも自分が打ったという刀を話すばかりで俺の話を聞かない。そのまま道が分かれた時に、そのまま別れたがやはり最後まで話を聞こうとはしなかった。刀を届けるそうだが、受け取る相手はさぞ苦労するだろうと、同情の念を禁じ得なかった。本当に、よく分からない人間だった。まるで嵐が去ったような思いで記憶から消した。旅を続けた。

 

 当てのない旅路には金が必要だ。だからこそ路銀はその日の労働で得ていたし、森の中で見つけた果実をもいで売った。モノを買うにも、一夜の宿を借りるのも全て金がとりわけ必要なモノだった。家を飛び出したあの頃はモノを得るには金が必要なんてことも知らなかった。だからこそ金の有難みも重みも知っていた。金があれば段ボールで出来た家で住むことも寒さで苦しむこともなかった。それを選んだのは俺だ、それでもエトと出会わなければ、きっと何処かで野垂れ死んでいたか CCG(ハト)に適切に殺されていたに違いなかった。あの時、死を覚悟した癖に。生きていたら会いたい思いが強まった。自分の図々しさに笑いが零れる。生きるのは欲深いものだ。色んな欲に(あふ)れてしまう。エト、君に会ったらきっと頬を抓られるだろうな、それも何だかおかしかった。

 

 エトが見つからない。大体の場所は巡ってしまい手掛かりはなくなった。残すところの手掛かりと言えば消えた人間と鬼が出ると言う噂を追うだけとなる。彼女は半分でも喰種だ。人間を食べる、人間が消えているなんていう噂の大半は、此処では鬼でしかなかった。現に娘が消えたという町へ赴いてみたら鬼が居た匂いが残っていた。だから、エトがこうして噂を残すようなことをするようにも思えない。残すとしたら何かしらの目的があった時だけ。それ以外は上手く隠していた。俺に、人間に擬態することを教え込んだのは彼女だ。上手く社会に入り込んでいるに違いなかった。探しようにも当てがないようだ。

 

 さて、どうする。茶店の座席に腰かけて考える。考え込んでいる内にウェイトレスがやって来る。お待たせしました、差し出されたのはコーヒーだった。コーヒーがあるなんて知らなかったから驚いたものだが、大正の時代だと教えてくれたいつかの少年を思い出した。だったらあっても不思議じゃないのかと納得もした。見渡せばレンガ調の外観の街並みが外の窓から見える。大きな都会に着いたようで、しばらく此処で情報を探すのも悪くはないように思えた。

 

 コーヒーを飲んでみればいつかのエトを思い出す。お気に入りの喫茶店だと言って俺を連れ出した。本当に気に入っているようで喫茶店には彼女の書いた小説が寄贈されて飾られていた。

 

――実はな、父も喫茶店を経営しているんだ

 

 その場所も知っている、頬を肘に寄りかけて、明日の天気でも告げるような調子で俺に伝えてくる。退屈そうないつもの彼女の姿が目についた。いつか持っていた古ぼけたノートを思い出す。本当に大切そうに撫でていたのに。

 

――会おうとは思わなかったのか?

 

 思っていたことを口にする訳じゃなかったが思わず零れた。エトはそれを聞いて可笑しいものを聞いたように笑い出す。喫茶店独特の穏やかに流れるBGMを切り裂いた。

 

――ああ、馬鹿にしたわけじゃないさ。当然そう思うだろうな

 

 勿論、会いに行ったとも、エトの言葉は続いた。昔の笑い話でもするように。

 

――作家になったから発売した本を持ってな、報告でもしようとでも思ったのかねぇ……、今でもよく分からん。父の姿を見た瞬間、私は持ってきた本を握り潰してしまったよ

 

 で、そのまま店の前に捨ててしまって帰った、笑いながら全てを拒絶する。エトはコーヒーを飲み干してコーヒーカップをソーサーに置いた。カシャン、陶器のぶつかる音がやけに冷たく重く、鼓膜にのしかかる。

 

――さて、休憩は終了だ

 

 仕事に戻ろうか、付き人としてなのか、あるいはアオギリとしての仕事なのか、どちらか分からないが彼女に手を引かれて店を後にした。

 

 ……思い出している内に飲んでいるコーヒーはすっかり冷え込んでいた。ウェイトレスの気遣いなのだろう。考え込んでいる俺を心配したのか、それとも顔色が悪かったのか、頼んでもいないサンドイッチが一つ置かれていた。これを食べれば俺の体調は悪くなってしまう訳だが、好意は受け取らなければならないだろう。一口食べて、咀嚼する。エトから教わった食べ方で。不味かったけど、それで良かった。全部食べ切って、サンドイッチの代金も多めに支払って茶店を後にした。

 

 人に聞いて回り、外は既に暗闇になっていた。街灯は灯り、人波の顔触れは大人に変わって、増えていく。匂いは俺にとって美味しそうで、サンドイッチを食べたこともあってそれはますます美味しそうに感じたが抑え込む。聞き込みは続く。どうやら何処かで騒ぎがあったようで、突然人が人を襲ったらしい。少年が押さえつけてそれからは分からないと逃げ込んだ男は俺にそう話すがそれ以外の情報に真新しいものはなかった。そのまま聞き込みを切り上げて休める場所を探すことに決めた。人気のない場所を選ぶため、路地裏に入る。野晒しの生活が長いせいか、休む場所は人気のない場所を好んだ。臆病な喰種らしい特性だった。

 

 ある路地裏に入った瞬間だった、人間の血の匂いが、色濃く香ってきた。ただ、怪我をした量ではない血の匂いが、香る。致死量だ。気付けば嗅覚が鋭く捉えた先まで歩いていた。路地を曲がれば、血に塗れた現場が放置されていた。高所から落ちたように潰れた男が目に入る。さらに少し先に壁に頭を打ち付けて、トマトが潰れたように後頭部の中身を開かせた男が死んでいた。壁にはひびが入り血に濡れ、破片には肉片が張り付いていた。既にこの血生臭い光景を作った当人はいないようで気配はなかった。男の亡骸二つと中身を失った女性の着物だけが残る。異様な空間だった。香る匂いに本能は逆らえない。眼が熱くなってくる。このままでは不味いと考えて残留する鬼の匂いを追うことにして現場を後にした。

 

 サンドイッチを食べてしまったのは不味かったのかもしれない。記憶を打ち消したくてしでかしたことが身体を蝕んだ。喰種の飢えは抗いがたく、救いがたい。きっと繁華街に出れば臓物の詰まった肉にありつける。考えるだけでも魅力的だったが、思いっきり壁に頭を打ち付けて考えを消し去る。衝撃で幾許(いくばく)かの考える思考を取り戻した。鬼の匂いを追ってみれば人気のない道へ進んでいる。鬼もまるで喰種のように人気のない道を選んで進むのか、ぼんやりとそんなことを考えていると不意に壁にぶつかった。これ以上はどう考えても進めない、しかし匂いは此処だと告げている。念のためにと般若の面を被って、壁へと走り出した。

 

 あと7歩、5歩、3歩、2歩、1歩。壁にぶつかる、そう思ったが衝撃はやって来ないまま、壁をすり抜けた。不思議な感覚だった。通り抜ければ半壊した屋敷が真っ先に視界に飛び込んだ。周囲を見渡せばいつぞやの少年が数珠を首に巻いた鬼の首を切り落としていた。




仕事が忙しかったのと、原作無いのでアニメ待っていたのと、番外書いててかなり遅い更新です。アニメまた待たねばならんから更新が遅くなるジレンマに襲われる。
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