鬼滅世界に喰種を突っ込んだお話(一発ネタ)   作:こしあんあんこ

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更新です。




 鬼が人を喰うように、喰種の食性も鬼と同様、人間だ。飲める物はコーヒーか水、それ以外は食べられないし飲むこともかなわない。喰種独特の特性、それはどうあっても変わらないし、変えられない。だが見た目は、姿は人間とは変わらない。感じる心も、……感性も。鬼とは違う点はそこだ、太陽すらも弱点にはなり得ない。だからこそ、喰種は鬼とは異なり人間社会に溶け込めた。食事さえ騙せたら、食事風景を見られなければ、喰種は擬態することが出来た。

 

 しかし、人間とは違う部分はやはりある。鬼と同じく見た目だ、それは眼球。種族(俺達)の眼は赤い。血のように赤い角膜と、白目が反転したように黒く染まる結膜。生物独特の眼だ。普段は隠すことの出来るそれは、極度の飢餓と興奮状態によって発現する。勿論コントロールすることも出来るが、どうしても抑えようにもない状況と状態では、人間に見つかるのは自明の理だ。見つかってしまえば、どうなるか。……迫害の末、死ねと望まれる。今日仲良くしていた人間に、人喰いの化け物だと罵られ、通報された後、直ちに CCG(ハト)に殺される。 赫眼(かくがん)を人間の前に食事以外で晒すということは、無防備に命を晒す行為そのものだ。そんな行為を少年たちに見せれば息を呑む音がした。ビキビキと(まなじり)の皮膚の周辺は血管が浮かぶような音がする。見なくとも分かる、俺の眼の周辺には黒い筋が入っていることだろう。言葉を続ける。

 

「俺も鬼と変わりはない。人間の血の匂いを嗅げば、意識が遠のくほどの飢餓に襲われる」

 

 皮膚の下で巡っている熱い血管を引き千切り、噴出した血を身体いっぱいに浴びながら、幼子のように身に纏った服を台無しにする。それから腹の中にある臓器を引っ張り出し、手に余るだけの腸を持ち、口内に入り切らないくらいほど頬張って。足の爪先から太ももまでを楽しんでから、腕の肉を骨ごと噛み砕く。最後に残った表情が何よりの主菜。残った首からの上の顔面にある、希少な二つしかない眼球をほじくって、舌の上で転がして舐めて喰らう。快楽と興奮に胸を躍らせた。ああ、なんて……旨そうなのだろうか。想像するだけで赫眼はますます熱くなっていった。飢えと激痛に脳内が冒される。喰ってもいいと思う鬼がいない、誤魔化すために指をまたも噛み千切る。もうほとんど癖のようなモノだ、飢えを凌ぐための悪あがき。そして証明してみせる。何を、少年の呼び止める声がする。無くなった指があっという間に再生してみせれば、珠世は静かに見据えていた。

 

「貴方の種族は貴方以外に居るのですか?」

 

「残念ながら、俺は俺以外の種族を此処では見たことが無い、鬼舞辻(きぶつじ)のように増やせるわけでもないからな。捜している、というのが現状だ」

 

 珠世の問いに(いな)と答える。詳細は敢えて省いた。異邦人など、話しても混乱する。そもそも、俺ですら現状が分からない以上説明するのは、不可能だった。

 

「俺だって年を取る、致死量まで切られれば死ぬから鬼よりもその部分は不便だな」

 

 個人的な感想を述べてみれば、少年は口を開く。赤みがかった眼が俺を捉える。

 

「だけど、あなたは俺を食べなかった」

 

 食べようと思えばいつでも食べられましたよね、揺らぐ眼は真っ直ぐ俺に問う。そうだな、俺は否定しない。否定もしないが肯定もしなかった。

 

「だが俺が食べているものが何なのかは、……分かっているだろう、少年?鬼は喰っているが限界だったら、人間の死体を食べるぞ、俺は。……それで充分だろう?」

 

切る理由なら、言外にそう告げる。俺が問いかければ少年は声を張り上げた。

 

「だけど!あなたからは鬼のような酷い匂いがしない、嘘の匂いもしていない」

 

 切る理由はないのだと、言わんばかりだ。少年は俺に情でも湧いてしまったというのか。甘い、と思う。優しいと言えばそこまでだが。意地悪はこれ以上するべきではないか、そう判断して俺は切り替えるように珠世に顔を向けた。もう、限界だった。 赫眼(かくがん)を抑えられない。

 

「……すまないが、腹が減っている。何か飢えを凌ぐものをくれ。……俺だって何も好き好んで同じように喋る相手を食べたいとは思ってはいないんだ」

 

 この救われない飢餓を理解するのは、彼女以外いないだろう。いいでしょう、珠世のその一言で少年との会話は終わりを告げた。

 

 場所は変わって地下へと移動する。少年の足の容態も診るという目的もあるようだ、珠世は少年の方へと移動する。少女も少年のそばへと向かい走り去った。残ったのは二人。おい、と兪史郎(ゆしろう)が俺に血液を渡す。輸血と称して買い取ったという血液。容器に移され渡された。容器には底の見えないどす黒い真っ赤な血液が、波立って揺れる。容器を傾けて口にすれば、味覚に全てが支配される。心地の良い暖かさに包まれたような感覚。それは人間には与えられない言い知れぬ快感だ、喰種はこれだけが許された。気付けば容器は空になっていた。顎を更に上げて見せれば、容器の中に残る一滴が喉に落ちてくる。残った液体を勿体無いと舐めまわす。感情がせめぎ合う。足りない、足りない。食べてもいいの、両親が笑う。十分だ、もう飲んだ、これだけあれば暫くもつ筈だ。いいや、こんな程度じゃまだ足りない、中身も欲しい。肉の弾力を、感触を味わいたい。

 

 ……もう、いらない。記憶の底にある少女が笑って俺を見ている。少女の顔は、見えない。ガシャン、手放した容器が落ちて割れた。眼が熱い、熱い。頭痛がする、口内で鉄の味が広がった。唇を噛み締めて、手を白くなるまで握り締めた。

 

「……みっともないな」

 

 兪史郎(ゆしろう)が俺の状態をそう称した。何てザマだ、そう言う兪史郎(ゆしろう)の顔を見ればお互い酷い顔をしていた。兪史郎(ゆしろう)と珠世の、食後の感情が(うかが)いしれた。

 

「まだ足りないなら飲めばいいだろう?」

 

 兪史郎(ゆしろう)は、一回りも二回りも大きい底の深い容器を目の前で見せつけた。きっと中にはその倍ある血液が入っているのだろう、想像して顔を背けた。首を振って兪史郎(ゆしろう)の提案を断った。

 

「お前達もこれだけしか飲まないのだろう?それなら、俺もそれで十分だ」

 

 容器ももうないからな、俺は割れた容器を見る。散らばったガラスの破片が周囲に散らばって、反射する。容器の底に残った血液が、床を少しだけ汚した。思わずその光景を見続けてしまう。それでも先程よりもマシになって、眼の熱さはスッとなくなった。もう 赫眼(かくがん)をコントロール出来るまでには戻れたようだった。

 

「ふん、偏屈め」

 

 顔をしかめて、俺を見る。同時に珠世達も戻ってきた。処置をしてもらったのか、少年の顔は少しだけ明るくなっていた。「もう大丈夫ですか」と珠世が首を傾げている。

 

「もういらないらしいから大丈夫です、珠世様」

 

 俺が答える前に兪史郎(ゆしろう)が答えた。そうですか、珠世は俯いて再び顔を上げた。彼女はあることを俺に申し出た。




ちょっとワンクッション置いてみる。短い感じもするから加筆するかもしれません。

――追記――
活動報告にて喰種世界にいた頃の話限定でリクエストを受け付けます。感想にはリクエストを書かないでください。お願いします。

今後の【鬼滅世界に喰種を突っ込んだお話】の方針で、ちょっとアンケートのご協力を。参考にしたいのです。安易に主人公に同行させると無理やりな感じして嫌なのでゆくゆくはという感じです。ご協力お願いします。

6月30日
アンケート撤去します。ご協力ありがとうございました!!
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