書きたかったから書いた偉大なる短編集たちの居住区 作:フラグ建築したい男
第一問 遅刻事件の原因はコイツ
【第一問】以下の問いに答えなさい。
『調理の為に火にかける鍋を製作する際、重量が軽いのでマグネシウムを材料に選んだのだが調理を始めると問題が発生した。この時の問題点とマグネシウムの代わりに用いるべき金属合金の例を一つ挙げなさい』
姫路 瑞希の答え
『問題点・・・マグネシウムは炎にかけると激しく酸素と反応する為危険であるという点
合金の例・・・ジュラルミン』
御鏡 勇香の答え
『問題点・・・マグネシウムは炎にかけると激しく酸素と化合し、大量の熱と光を発する点
合金の例・・・単純に火に対する耐性ならモリブデンだが、問題に『一つ』と書いているので実用性をとってステンレス。(少し書きすぎてはみ出している)』
教師のコメント
正解です。ジュラルミンが一般的な答えですが、御鏡くんはどうやらより追及したようですね。また、モリブデンは合金のなかで火への耐性は一番強いとも言われていますが、経済的に考えるとステンレスの方が実用的でしょう。
土屋 康太の答え
『問題点・・・ガス代を払っていなかったこと』
教師のコメント
そこは問題じゃありません。
吉井 明久の答え
『合金の例・・・未来合金←すごく強い』
教師のコメント
すごく強いと言われても。
☆
心地良いそよ風。その風に揺れる桜の花びら。目の前には、俺がこれから転入する『文月学園』への道があり、その桜の風景に一瞬だけ目を奪われた後に「学校、か・・・」といったように、一般的な男子高校生としては至極当然であろう、いわゆる『メンドクセーナ』という気持ちが沸き上がってきた。と同時に、これから二年ほど一緒かもしれないクラスメイトのことで心が一杯なのだ。
―――憂鬱な気持ちで。
☆
ジリリリリリ!
部屋の隅に置いていた目覚まし時計から非常にうるさいアラームが鳴り始める。それを聞いて俺は布団を引きずりながら、その音の発生源へと進む。やっとこさたどり着いた頃には俺の目も覚めており、「ああ、今日から学校か。にしても・・・やっぱなぁ~。学校はなぁ~」といったように、聞くだけで相手を学校に行きたくなくさせるような、そんな感じのことを考えながら「さっさと布団から出て制服に着替えるか。・・・そういや今何時だ」とふと思い、たった今アラームを止めた時計を見るとそこには―――
現在時刻:7:54分
さて、ここで問題だ。俺の家は件の文月学園に行くには各種交通機関を使っても30分はかかる。そして今から着替え終わって、最低限の身だしなみを整えて即座に家を出たとしよう。どれくらいの時間に学校に着くだろうか。
答えは8:30ほど。盛大、とまで行かなくても遅刻である。
そして冒頭に戻る。何故俺が憂鬱なのか教えようか。我が心(から死ねばいいのにと思っている)友は一年生からこの学校に在籍しており、さらには中々の問題児だ。ちなみに今回のアラームが遅れてました現象もコイツの仕業だと思われるのだが・・・まあ置いとこう。
コイツは、自分が『被害』にあうたびにとある教師の話をよく言ってくる。
曰く、ヤツの補習を受けると精神が崩壊する。
曰く、ヤツの趣味はトライアスロン。
曰く、そいつは冬でも半袖で過ごす。
それらの事柄がある故かソイツは生徒にこう呼ばれて恐れられている。
―――鉄人、と。
「随分とゆっくりと歩いてくるな。御鏡」
「・・・ええ。朝から最悪な事が重ねて起こりましたしね。そんな意気揚々と歩いてくるだなんて出来ませんよ」
「ほう?具体的にはどういったことだ?」
「具体的には、大変素晴らしいことに目覚まし時計のアラームが鳴る時間が何者かによって一時間半ほどずらされていた、とかですね」
「・・・それは災難だったな。だが遅刻したのは事実だ」
「ですよね~・・・」
まあそりゃそうか。仕事で考えれば要は「寝坊したので遅刻しました。許してください」てことだしな。そうなるのも至極当然か。いやでもちょっと待てよ。今回のは第三者の手が加わっているから違う気が・・・。
「まあそれはさておき、ホレ。お前のクラスが書かれている・・・といっても、試験を受けていないから『そこ』に行くのは当たり前なのだが・・・」
そういえばこの人の紹介含め、自己紹介をしていなかったな。まずは俺から。
俺の名前は『御鏡 勇香』。女みたいな名前だがちゃんと意味はあり、誰かに勇気を与える、ていう意味ともうひとつは、どんなときでも皆を落ち着かせる(良い香りは人の心を癒すから、らしい)ことができるようになる。という、文系の父と理数系の母が二人で考えた名前らしい。文系と理数系て喧嘩にならないんだろうか。いや、まあならないんだろうな。実際のところ母と父が喧嘩してるところ見たことないし。
んで目の前の方は西村先生。心友の情報では生活指導の鬼とかすごい誹謗中傷されてたけど良い先生じゃん。もっと理不尽な奴を想像してたぜ。
☆
どうやら今日学校に登校してくる生徒は俺が最後だったらしく、あの後西村先生は職員室に戻るついでなのか、俺に着いてきていた。多分だが、学校案内も含まれていたのだろう。クラスまでの順路を教えていただいた。
・・・さて、俺の行くクラスに奴が居たら(ていうかアイツの頭のレベルじゃ、とある一教科以外は最底辺だろうしな)どうしてくれようか。首の骨・・・は道徳的にヤバイだろうし、となるとアイツのコレクションを全てホモォ・・・なヤツに代えておくか・・・はたまた・・・。どうすっかね・・・っと、気づいたらもうクラスの前か。
気付いて顔を上げるとそこには、とてつもなくボロい教室と『Fクラス』と書かれたプレートがあった。中からは、クラスメイトなのであろう誰かが自己紹介しているところが聞こえてくる。ていうか今聞こえてきた質問は失礼じゃないか?「どうしてここにいるんですか」なんてよ。まあ俺が気にすることでは無かろう。良し、入るか。
―――ガララッ
「すいませーん遅れましたー・・・って何すかこの空気」
え、何。俺何かしたか?何でそんな「邪魔しやがって」ていう顔でこっちを見るんだよ。そして俺を見た瞬間何故にそこまで顔を明るくするんだよ。
「ああ、丁度良かったです。御鏡くん。今、皆に自己紹介をしてもらっているところでして・・・」
「流れで俺もやるんですね。リョーカイでーす」
俺はクラスメイトに向き合い、さっさと終わらせようと挨拶を済ませる。
「えー・・・どうも、御鏡 勇香と言います。趣味は娯楽全般、特技は人間観察。よろしく」
何かを叫びかけてたクラスメイトを「叫ばせるわけないだろ?」的な速さで挨拶を済ませ、適当に席につこうとしたところで・・・ソイツを見つけた。
「・・・退避!」
「逃がすか!」
走り出したソイツの襟首を掴み、動きを止めた上で此方に顔を向けさせる。
「よう・・・康太」
「・・・どうした、心友」
「分かっているんだろう?」
「・・・素晴らしい寝顔だった」
「死ネ!」
決定的な証拠というか自白をさせた瞬間、即座に顔面を殴る。
「今は時間無いからな。後にしといてやる」
「・・・」
俺が殴ったやつ。コイツは小学生位からの悪友であり、心友である『土屋 康太』。何故殴ったかの理由は今朝のことだ。が、根本的な出来事は小学生にまで遡る。具体的には6年生位に。
コイツは今も大変スケベだが、このスケベ症を発症したのは小学6年生の時。当時、俺は何も知らされないまま「友達だから」という理由でコイツの渡してくる衣装を着ていたんだ。俺って女顔らしいしそれで着せられたんじゃないか。後々になって、それが女の子用の服だと分かった時から(そもそも気付くだろうというツッコミは無しだ。当時は純粋過ぎたんだよ・・・きっと。)コイツは俺の制裁対象となった。いや、本当さ?女子を遠くから眺めるだけで終わってたなら良かったんだよ。けどその情熱(情欲だと思う)を女子に向けて嫌われるのが怖いからって俺を撮影対象にするかよ普通。しないはずだろ。
まあとりあえず、俺はこの心友の康太が俺の家を知っており挙げ句上記の経歴を持つ故に、「早朝に俺の部屋に忍び込み、俺の寝顔か何かを撮って嫌がらせとして目覚まし時計のアラームをずらした」と想像してこいつを捕まえて制裁をしたわけだ。そしたら案の定な?
「はいはい、君たち。騒がしいですよ」
『あ、すみませ―――』
バキィッ!パラパラパラ・・・
「あー・・・替えを用意します。少し待っていてください」
開いた口が塞がらんていうのか。俺ら以外にも話していたやつらが居たらしく、ソイツらを先生が教卓叩いて注意したら、先生の目の前で音を立ててゴミ屑と化した。
・・・ここって学校だよな?思わずそう思ってしまう。・・・て、おーい。二人ほど教室から出たぞー。注意しなくても・・・いいか。けどちょっと気になるのはなんか凄い相談をこれからします、て顔だったことだな。ま、これもいいか。どうせ俺には関係ないしな。
そう考えてたら先生が帰ってきた。自己紹介が再開。そして最後にクラス代表の自己紹介になった。にしてもあんなガラの悪いのがクラス代表か。・・・面白そうだな。同時に面倒くさそうだけど。
「Fクラス代表の坂本 雄二だ。俺のことは代表でも坂本でも、好きなように呼んでくれて構わない」
クラス代表と、文字だけ見れば大層なモノに聞こえるが、学力最底辺のFクラスでの代表なんてものは、要はEクラスの一般生徒と変わらない。ていうか下だと思う。そんな五十歩百歩みたいな生徒。
「さて、クラス代表として皆に一つ聞きたい」
そんなやつが、ゆっくりと、俺たちの目を見るように告げる。
コイツ話し方が上手いな。人を引き込む、カリスマみたいなのを持ってやがる。
そして全員が坂本を見たところで、坂本の視線は教室の各所に移りだす。
カビ臭い教室。
古く汚れた座布団。
薄汚れた卓袱台。
つられて坂本の視線を追って、勉学に励もうとはとても思えないそれら備品を眺めていった。
「Aクラスは冷暖房完備の上、座席はリクライニングシート、挙げ句個人冷蔵庫なんてものを持ってるらしいが・・・」
坂本は一呼吸置いて、こう告げた。
「―――不満はないか?」
『大ありじゃぁっ!!』
なら頑張って勉強しとけよ、と思ってしまった俺は悪くない。
「だろう?俺だってこの現状は大いに不満だ。代表としても一生徒としても問題意識を抱いている」
『そうだそうだ!』
『いくら学費が安いからといって、この設備はあんまりだ!改善を要求する!』
『そもそもAクラスだって同じ学費だろう?なのにこの差は酷すぎる!』
いやだから勉強して試験頑張ればこうならなかったろうに。だが勉強したくないヤツなりに何か理由があるのだろう。これ以上は言わないでおく。
「みんなの意見はもっともだ。そこでだ」
そんな級友の言葉に満足したのか、自信に満ちた顔で坂本はこう言った。
「これはクラス代表としての提案なのだが・・・」
「FクラスはAクラスに『試験召喚戦争』を仕掛けようと思う」
―――Fクラス代表 坂本 雄二は、試召戦争の引き金を引いた。
私の性癖に男の娘が追加されました。声も女の子らしいのに限りますが。