書きたかったから書いた偉大なる短編集たちの居住区   作:フラグ建築したい男

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お約束のものです。お納めくだしあ。


2.邂逅

 ふと、上空を見上げる。そこには自分の知っている空とはまったくもって別の、人間達が穢していない清浄な空と星達が見える。見渡す限りに広がり、地平線の向こうまで続くソレは、かつて自分を『天敵』として定義したあの空とは違うのだと、呼吸と共に肺の中に入る空気と、目に映る景色が否定してくる。

 そして再度、前を見据える。この東方の建築物の向こう側に見える『住宅街』は、かつて自分が求めたソレによく似ており、同時にここが新たな戦場であることを再確認する。

 

 ―――幾ら『聖杯』によって汚染が抑制されていると言え、このような場所でアレを解き放つべきだろうか。

 

 自分がこれから行おうとしている行為(戦争)は、過去、現在、未来、実際の人物、創作の人物を問わず、多種多様な英雄達が行う戦争だ。自分もその一人として呼ばれたからには、自分も武器を展開しなければいけないのだが、自分の兵器には、幾分危険すぎるものがある。

 かつて自らの世界を汚染しつくしたある一つの物質、名を『コジマ粒子』と言うのだが、ソレを当たりにばら撒くような兵器がある。そのコジマ粒子をあたりにばら撒いたりなどして、果たしてこの美しい草木や大地、頭上に広がる神々しいまでの空を、そして、この町の人々の営みを壊しかねない行為を行っても良いのだろうか。

 

 答えは出ない。また、答えが出ない。

 

「どうしたんだ、ビースト?」

「・・・なんだ、貴様か」

 

 警戒をしていると、ふと自分に近づいてくる気配があった。自分のいた世界では騙し討ちなど当然のように行われていること。故にあからさまな気配に一瞬警戒をしたものの、全く敵意が見られないために警戒を多少解いて振り向いてみた。

 案の定、自分の主人―――自分は依頼人と呼んでいる―――がこちらに向かってきており、その顔色を見て「多少は血色がよくなったな」と独り言のように呟いた。何せ自分がこの場にいるためには必要不可欠な存在だ、多少の心配はするだろう。

 

 召喚された直後、即座に気絶をした依頼人を、適当に部屋を探して、取りあえず寝具の上にブランケットをかけて放っておき、そのまま情報を整理していたところ、朝頃に目を覚ました。

 自分のクラス等を聞かれたため、それを皮切りに互いに質問していった。

 あの爺は何か、この場所はどこか、依頼人の願いは―――。聞きたいことを一通り聞き終わり、とにかくその血色の悪い顔をどうにかしろと言うと、例の化け物爺が何かをしていることが分かった。

 最悪の場合、戦闘中に死亡してしまえば自分の願いも叶えられず終いになるので、どうにか出来ることをするべく、「カロリーと栄養を同時に摂取できる」が売り文句であったトーラスのレーションを食べさせた。医学に詳しいわけではないので、とりあえずカロリー等を摂取すればどうにかなるのではという素人的な考えではあったが、功を奏したようだ。依頼人の血色は良くなっていき、少なくとも戦闘中に死亡などということは無さそうだ。

 

 そういったこともあり、現状では身体面の心配は不要そうだ。以前の状態であれば、正直に言うと全力を出して戦うなどは不可能だっただろう。

 

 自分と依頼人は、ある作戦の遂行中だ。傭兵の仕事に依頼人が着いてくるなど、正直なところ邪魔でしかないが、先ずは自分の実力を互いに再確認するためにも必要だと思い、共に来た。依頼人はそこらの物陰に隠れると言っているので邪魔になることは無いとは思っておこう。

 

 そうやって考えていると、遥か向こうから眩しいほどの光が見えた。・・・時間か。

 

「依頼人」

「ああ・・・行ってくれ」

「了解した」

 

 その指令と共に、俺は宝具を使用する。自分のかつての武器庫を。

 

「『我が半身は目的を達する為(アセンブル・アーマード)』」

 

 閃光と同じブーストユニット、使い慣れたMARVE、そして、真改から貰ったソレを。

 部分的とはいえ、ヘッドユニットなども装着する。急激な魔力消費に依頼人が呻くが、依頼人も耐えると言っていた。ならば自分は躊躇わない。使い慣れた愛機を駆り、空を翔るだけだ。

 

 自らの背中にVOBを取り付け、ブースターに点火する。

 

 自分は今日、もう一度『繋がる者(リンクス)』となろう。

 

  ◆  ◆  ◆

 

 最初に感じたのは、眼前にいる英雄王とは違う、別種の威圧感。

 次いで感じたのは、異様な風を切る音。

 

 そして、見えてきた。

  その色は、ただただ只管に黒。夜よりも暗く、闇よりも暗く。

  その風貌は、マスターから教えていただいた、『セントウキ』なるものに何処か似たようで、まったく違うナニカ。

 

 それが私たちの上空を通過すると同時、火の雨が降ってきた。文字通り、火の雨が。

 

「アイリスフィール!」

「きゃぁっ!」

 

 瞬時にアイリスフィールを守るべく体を動かす。幸いにも被害は無い。どうやら威嚇攻撃のようだ。となれば。

 

「英霊・・・?」

 

 英霊であるだろう。しかしあんな不可思議な鎧を身につけた英霊などいるのだろうか?あまつさえ空を飛び、無数の火の雨を降らすことが出来る。そんな英霊が。

 

 そこで、英雄王が言葉を発した。

 

「・・・誰の許可を得て我が頭上を飛び廻る?」

 

 明らかに怒気を孕んだ声。どうやらかの英雄王の怒りを買ったようだ。

 彼の王は誰よりも自尊心が高い。天上天下唯我独尊を地で行くような王だ。そのような彼が勝手に頭上を飛ばれて怒らないだろうか?当然のごとく、怒るだろう。そうなれば、あの英雄はあらがう間もなく殺される。そんなものは火を見るより明らかだ。

 

「せめて散り様で我を興じさせよ、雑種」

 

 言葉と共に、こちら側に向けられていた王の宝物庫が、宙を飛びまわる蝿を叩き潰すような気軽さで向けられる。そしてそのまま、宝物庫から数多の宝具の原典が射出される。相手の英霊の軌道上に向け、幾度も宝具が放たれる。

 

 あ、と。最初に声を放ったのは誰だっただろうか。

 

 宝具を向けられた英霊は、放たれた宝具によって殺されたはずだった。しかしどうだろう。まるで当然のように、スピードを相殺するためか回転しつつ、地に降りたではないか。その手に英雄王の宝具の剣を持って。

 

 気付いたときにはもう遅い。かの英雄王の持つ剣に無断で触れた、それだけが、彼の怒りのトリガーだった。

 

「・・・その穢れた手で、我が宝物に触れるとは・・・」

 

 顔を俯かせ、声を震わせ、英雄王は言った。そして顔を上げた彼の顔は、憤怒に染まっていた。

 

「そこまで死に急ぐか、鴉風情が!」

 

 言葉と同時、今まで以上に宝物庫の扉が開き、英霊に向けられる。

 

「その手癖の悪さで持ってして、何処まで防ぎきれるか・・・。さあ・・・見せてみよッ!!」

 

 あの英霊は空中を飛行中に、射出された剣を一つ掴んだと思うと続けざまに他の宝具を薙ぎ払い、その勢いのまま回転しつつ着地したのだ。その瞬間をまじまじと見せ付けられた英雄王が憤怒に染まったのは当然だろう。なにせ剣を掴んだ瞬間、あの英霊は奇怪な甲冑の奥で確かに笑ったのだから。

 

「そんなぁ、バカな!」

 

 ライダー『征服王イスカンダル』のマスターは、英雄王の背後に展開されていく宝物庫の扉を見て絶望に染まった顔を浮かべた。こんな地力の差を見せ付けられ、自分のサーヴァントで対抗できるのか疑問に思ったのだろう。当然だ、無限に射出される宝具は全てが原典。幾千もの宝具に対して自らの宝具は数個。果たして抗えるだろうか?

 

 そうしていると、また英雄王の攻撃が始まった。

 無限に射出されていく剣、槍、槌、etc etc。そしてそれを時に掴み、時に切り捨て、時に避け、様々な方法を使って攻撃をかわしながら、掴んだ宝具を投擲するなどして反撃をしている英霊。どちらの強さも規格外と言えるだろう。

 

 射出された槍を避けるために後方に下がり、それを読んでいたかのように剣が放たれ、それを掴んだかと思うと英雄王に放ち、同時に両の手で槍の柄を掴む。そして両の槍で宝具を払い、叩き折り、そしてまた放つ。幾度も幾度も掴んで放ち、掴んで放ち。やがて英雄王は一つの結論に至ったのか、より圧倒的な量の宝具で持ってして制圧しようと考えたらしい。数十もの宝具を射出した。

 

 流石にあの英霊も食らうかと思った次の瞬間、突然、英霊の体が緑色に輝いたかと思うと、その光が爆発した。

 

 ・・・気のせいか、倦怠感を覚えた気がする。いや、気のせいだろう。

 

 爆煙で英霊の姿が見えない。どうしたものかと思っていると、煙の中から剣と槍が英雄王の足元に向かって放たれた。放たれた剣と槍は、回転しながら英雄王の立っていた街頭を切り、英雄王を地に墜としたのだった。

 

To babels, welcome to the earth(英雄王よ、穢れた地上へようこそ)

 

 英霊から無機質な声が聞こえる。まるで嘲笑うかのようなその声は、英雄王の逆鱗に触れた。

 怒りと共に展開されていく宝物庫からは、全戦全勝の戦士であろうと、成す術なく嬲り殺されるほどの威圧感を放つ、そんな宝具たちが顔を覗かせていた。

 

「痴れ者が・・・。天に仰ぎ見るべきこの俺を、同じ大地に立たせるかッ!!その不敬は万死に値する!!もはや肉片一つすら残さぬぞ、鴉がッ!!」

 

 あの英霊もいくらかたじろいだのか、少し威圧が乱れたが、すぐにそれを保たせた。

 あと少しで一触即発の空気が崩れそうになりそう、その寸前で、英雄王は意識を英霊から逸らした。

 

「何だ、時臣・・・何?・・・フンッ、我に命令するなど腹立たしいことこの上ないが・・・ここは引いてやろう。どうやら奴も、多少は愉悦を覚える愉しみを覚えたようだからな」

 

 その言葉と共に、英雄王は姿を消した。同時、展開されていた宝物庫も消え、英霊は意識をこちらに向けた。

 

 何を考えているのか分からない、謎の鎧。その持ち主は、無機質な光を放つ甲冑の中からこちらを見据え・・・背を向けた。

 

「っ!?貴様・・・!」

 

 その行為は、戦う価値なしと判断したのか、少なくとも私はそう捉えた。故に怒り、英霊に声を放つ。

 

「貴様、私を侮辱するか!!」

 

 自らの剣で英霊を指し、それでも尚こちらを向かない英霊に、遂に飛びかかってしまうほどになりかけたそのとき、ふと英霊が立ち止まり、その身体をこちらに向けた。

 甲冑を消しても、その顔を認識することが出来ない。・・・認識阻害系のスキルでも所持しているのだろうか?

 

「・・・依頼人からの命令を確認した。今から貴様らに俺のクラスを伝える」

 

 クラスを伝えると言ったこの英霊は、男か女かも分からない声のまま、こう言い放った。

 

「俺のクラスは『ビースト』。以上だ」

 

 それだけ伝え、さっさと去っていくビーストクラスの英霊。私は、その後姿を見送ることしか出来なかった。

 明らかに、手札をまだ隠しているだろうその英霊に攻撃するのは、冷静になった今では、危険と分かるから。




なんでわかんないんだろーなー。ふしぎだなー。
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