…扱い悪いけど
「試合の結果、一組の代表は織斑秋斗君に決まりました」
試合の翌日、HRで発表された結果に、一同言葉が出なかった。
試合は一樹が圧倒的に勝利したのだから当然一樹が代表になると思っていたのだから。
「山田先生、僕はその……負けたのに何故代表なのです?」
「俺が辞退したからだ」
[負けた]という言葉を心底嫌そうに言いながら質問する秋斗に、
一樹は相変わらずの態度で答えた。
「何故だ‼」
その答えが大層気に入らなかったらしい。
秋斗は掴み掛らんばかりに怒鳴るが、一樹は全く気にしない。
「面倒なのと……気に入らないからだ」
「気に入らないだと?!」
すでにまっ黒になり始めているノートを閉じ、一樹はようやく
秋斗の方を向く。
「何が気に入らないのですか?」
セシリアが珍しく控えめに聞く。
「では聞こうオルコット、ISとは何だ?」
「宇宙進出のために作られた」
「前書きじゃない、結論と社会への影響を言ってくれ」
すこし考えて、セシリアはおもむろに口を開く。
この時のセシリアは一樹への恐怖心とリクセルへの好意から
すでに女尊男碑の考えを捨てているので、答えはすぐに出てきた。
「[この世界最強の兵器]、そして[核と同じ抑止力]」
その答えに、一樹は頷く。
「そう[兵器]、あらゆる物を破壊し、命を奪う物だ
例えどんな経緯や建前を持っていたとしても変わらない
そして従来の兵器を凌駕するゆえに、戦争への[抑止力]となっている
もっと噛み砕いていえば、この世界を[支配]している物だ
少し考えれば、それこそ小学生でもわかる事実だぞ」
周りが絶句する。
その言葉は見当違いが一切無い、まさに証拠が揃っている事実だ。
「はっきり言えばここは[殺し合い]の予行演習をする場所だ
それを揃いも揃ってアクセサリー感覚で扱ったり
優越感だけで扱ったり、まるで武器で遊んでいるような連中ばかり
そんな奴らの[御飯事]に付き合うなど気に入らない、それが理由だ」
「ふん、じゃあお前は[特別]だとでも言う気かい?」
秋斗が小馬鹿にした表情で笑うが、一樹は侮蔑の表情を浮かべる。
「一般人よりは強いと自負しているが[特別]だと思ったことはない
ただ[現実]を絶えず突きつけられる場所に居ただけだ
だからこそ仮初のでも[平和]を支える人間になるべき場所に遊び感覚で
来るのが気に食わないだけだ、面接内容を考えたほうがいいだろうな」
見下しているのではない、「何故こんな連中がいるんだ」と、
侮蔑だけが籠った表情と視線で、一樹はクラスメイト達を見渡す。
「この中に一人でも[殺し]、そして[殺される]覚悟がある奴がいるか?」
秋斗を含めたクラスメイト達の表情がどんどん青くなる。
その表情と殺意から、一樹が冗談など一切言っていないことが分かったからだ。
[殺し]、[殺される]覚悟、フォーチュンのリンゲージとして
様々な外敵から守りたい人々を命懸けで守り抜いてきた一樹だからこそ
その言葉には想像を絶する重みがあった。
「じゃ……じゃあお前はあるのかい?!その覚悟が‼」
恐怖を振り払うように、秋斗は必死に声を絞り出す。
対して一樹は一切の冗談が無い表情で告げる。
「少なくとも[優越感]や[欲望]だけでここに居る連中よりはあるつもりだ」
事実一樹は何人も殺してきたし、命を捨てることも覚悟してきた。
平和な世界で時代の尻馬に乗り、[優越感]に胡坐をかいていた人間となど
比べることさえおこがましい。
「事実、殺した人間の数など……三桁は下らないだろうな」
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「嫌になるわね、案内無しなんて」
結果が発表された数日後、IS学園の門の前で、ボストンバックを持った一人の少女が愚痴を零していた。
高めに結った黒髪のツインテールに、金色の髪飾りが映え、
彼女の名は
しかし、彼女はその事を誇りに思っていなかった。
彼女が第二の故郷であるここ日本で暮らして居た時、初恋の相手がいたのだが、
三年前に突如行方不明になりなったのだ。
その後帰国し、悲しみと寂しさを紛らわせるためにIS訓練を積んだ結果でしかないからだ。
話を戻し、彼女がここに来た理由は[男性IS操縦者]と接触し、可能ならば自国に
引き込むための勧誘員となるよう指令を受けたからである。
最も、未だに初恋の相手をあきらめきれていない彼女にとっては不愉快だが。
「一夏……」
両親の離婚まで経験している十代の乙女、弱音を吐きたくなる時だってある。
そんな時は必ず初恋の相手の名を口にする
そうすれば、ほんの少しだが気分が明るくなるのだ。
さあ職員室に向かおうとした、その時である。
「これでまた引き分けだな」
「ふん、相変わらずな結果だ」
IS学園では聞くはずが無い、男性の声に振り向くと……
(!一夏?!)
間違い無い、行方不明になった初恋の相手とその親友、
織斑一夏と五反田弾が並んで歩いていた。
何故ここに居るのかは知らないが、反射的に駆け寄ろうとして
「あんな勝負世界大会でも見れない」
一緒に歩いている、暗い印象の美少女が目についた。
(ちょっと!誰よあの女?!)
どうやら、一樹達にまた一騒動が近づいているようだ。
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「聞いた?二組に転校生が来るんだって」
翌日、一組は転校生の話でもちきりだった。
「やはり話題になるな」
「それだけではありませんわ、入学式を終えてからの一般生徒転入は
余程の例外が無い限り原則不可能と聞いてますし、出来るとしたら代表候補生くらいですわ」
「つまり来るのは相応の実力者か、まあ目的は[俺達]だろうがな」
現在、一樹とセシリアの関係は友好的だ。
セシリア自身はリクセルを射止めるために親友とも友好関係を結んでおこうという魂胆なのだが。
それでも、一樹もリクセルもISの情報と訓練相手が居るのはありがたい限りだ。
ついでに一樹の周りは人気が無い。
あの一件以来、皆一樹を怖がっているのだ。
「織斑君がんばってね」
「フリーパスの為に!」
クラス対抗戦の優勝景品は食堂のスイーツ食べ放題のフリーパス。
なんとも女子が喜びそうな景品だ。
「今のところ専用機持ちの代表は一組と四組だけだから楽勝だよ」
「その情報古いよ」
いつの間にか入口に、小柄のツインテール娘がいた
もちろん
「二組の代表も専用機持ちになったの、簡単に優勝できないからね」
腕を組み、片膝を立ててドアにもたれかかっていた鈴音に
一樹は心底面白くなさそうな顔で言った。
「似合わないな、そのポーズ」
「な!開口一番に何言うのよ!」
「似合わん物は似合わんさ」
「この…再開早々」
「後ろにご用心」
一樹が言うのと同時に、バシィィィン!といい音が響いた。
「SHRの時間だ、さっさと教室に戻れ」
「ち、千冬さん」
「織斑先生だ、馬鹿者」
二度も出席簿を喰らいたくはないらしく、大人しく自分の教室に戻っていく。
(またしても一騒動ありそうだな)
そう考えながら、一樹はノートを更に黒くしていくのだった。
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「ということがあってな」
「随分な話だな」
「知り合いなの?」
「いや、初対面のはずだ」
「あっちの子は知ってたみたいだよー」
昼休み、一樹・リクセル・簪・本音の何時ものメンバーにセシリアを加えた一行は
食堂に行きながらその日のことを話していた。
全員が日替わりランチを注文し、空いている席を探す。
「待ってたわよ一夏!」
そんな彼らの前に、鈴音が立ちはだかる。
「通行の邪魔だ、後ラーメン伸びるぞ」
「う、うるさいわね!さっさと来ないアンタが悪いんでしょう!」
「初対面に何言ってるんだ?」
「え?」
構わず、一樹達は空いているテーブルに向かい、後から鈴音が追いかける。
「ちょっと!初対面ってどうゆうことよ?!」
「いや、俺はお前に会ったことがない」
鬱陶しいと思いながら、相手にしつつ一樹は食事をする。
確かに今でも続く初恋の相手に忘れられるのは腹立たしいが、
記憶喪失の人間にそのことを分かれというのは酷な話だ。
「弾!アンタも何か言ってよ!」
「私はリクセル・C・フォンブラウンだ、弾ではない」
噛み付きたくなるような気分の鈴音だが、ふと気づく。
自分が知っている[一夏]と[弾]は年相応の性格をしていた。
しかし、目の前にいるのはかなり落ち着いた雰囲気の青年だ。
どちらも見間違うはずが無いのだが、記憶と違いすぎる。
(もしかして……)
「気は済んだか?」
一足先に食事を終えた一樹とリクセルはさっさと席を立つ。
しょっちゅう非常事態に巻き込まれる二人は自然と早食いになってしまっている。
「あの……貴方はお二人を知っておられるのですか?」
「アンタ達は?」
「申し遅れました、わたくしはセシリア・オルコット、イギリスの代表候補生ですわ」
「更識簪、日本の代表候補生」
「わたしはー布仏本音ー好きに呼んでー」
「そう、私は凰鈴音、あの二人とは…幼馴染ってところかしらね」
「しかし、お二人は貴方を初対面と」
「…あの二人は[織斑一夏]と[五反田弾]が本名よ」
「織斑…まさか一樹は?!」
「そう、千冬さんの弟よ」
「じゃあー記憶喪失なんじゃないかなー?」
「「「え?」」」
今まで殆ど喋らなかった本音が突然口を開いた。
「記憶を失ったところを今のご家族に保護されたと?」
「…確かに考えられるわね」
もちろん正解だが、彼女達には知る術もない。
「悪いけど一夏…じゃなくて一樹に伝えて、放課後アリーナで待ってるって」
楯無同様、鈴ものほほんもヒロインにするかどうか微妙なところ。
「鈴×リクセル希望」というお便りも来ていますが
考える絡み理由がどれも今一です……どうしようか