もっと勉強して文才を磨かなければ。
「セシリアは織斑の援護を!簪と鈴音はコンビで避難の安全確保!妨害は俺とリクセルでやる!」
「「「「了解!」」」」
部隊指揮能力も高い一樹の指示に従い、それぞれがそのまま動く。
まだ避難は完了していないため、迂闊に撃破はできない。
遮断シールドを貫く武器が暴発したら大惨事は免れないからだ。
「織斑さん!援護します!」
「僕一人で十分だ!邪魔するな!!」
試合で追い詰められたことが相当頭に来たらしい。
セシリアを突き飛ばした秋斗は、そのまま雪片を振り上げ突進する。
そして、そんな秋斗を無人機達が見逃すわけもなく、秋斗は集中砲火を受ける。
普段道理なら、秋斗は掻い潜って一体か二体は倒せただろう。
しかし今は完全に頭に血が上った状態だ、そんな時に集中砲火を躱せるはずが無く
秋斗はほぼ全ての攻撃を回避しきれず、シールドエネルギーが残りわずかになる。
そして、止めの一発が無情に放たれる。
しかし、それが当たることは無かった。
突然、秋斗が回避不可能な攻撃を高速後退して回避したのだ、秋斗の意思ではない。
見ると、秋斗の胴部分にワイヤーが巻き付いており、
その根元には、リクセルのスパシィがいた。
エンタングルワイヤー、多くのガーディアンに装備されている
捕獲及び牽制用の近中距離装備である。
戦闘以外でも様々な用途に使えるため、リクセル自身はかなり気に入っている。
「よ、余計なことを」
「死ぬかもしれなかったのに、呑気な奴よ」
見えないが、心底嫌そうな表情を浮かべ、リクセルは空き缶をゴミ箱に放り込むように
秋斗を見事なアーチを描く様、安全な場所に放り投げた。
「ヘブゥ!!」
「そこで大人しくしてろ、雑魚」
その横で、一樹・簪・鈴音の三人が無人機達を牽制していた。
簪と鈴音が衝撃砲と長刀を使って攻撃を妨害し、
一樹が殴る蹴るで攻撃を危険がない場所へ誘導する。
「(これだけ撃ってまだ余力があるのか)避難は?」
「もう少しで終わる『秋斗ォ!男ならそれぐらいの敵に勝てなくて何とする!』な?!」
「あ、あのバカ!」
もう少しで避難が終わるというところで、秋斗の幼馴染
箒が放送室を乗っ取り、アリーナに向けて叫んでいた。
箒にとって今の自分は危険を顧みず愛する相手を応援する勇敢な女性なのだろうが、
ハッキリ言って、それは周りの人間も危険にさらす行為だ。
そして一樹達の予想道理、放送室に向けて一機の無人機がビームを放つ。
誰もが箒の死を想像した、しかしそれは現実にはならなっかった。
[クラディアートル]から[アルクス]に換装した一樹が守ったのである。
「さっさと避難しろ!」
「ふざけるな!私は秋斗を「黙れ!貴様など邪魔な枷でしかない!」何だと?!」
その後、避難誘導をしていた上級生が箒を引っ張って行き、避難は完了した。
「良し三人は援護を頼む、行くぞリクセル!」
「招致!」
再び[クラディアートル]に換装した一樹とリクセルが並び、無人機に向き合っていく。
一樹はムラマサブラスター、リクセルはライフルを構える。
「行け!イグニス!」
エクエスのバックパック、それの翼部分の一部が分離し、無人機へ向かって行く。
スターゲイザーの脳量子波で遠隔操作される自立起動兵器イグニスの一種、ソードイグニスだ。
六つの刃が、獲物へ飛びかかる猛禽の様に無人機に襲い掛かり、次々と切り裂いていく。
同時に、一樹がムラマサブラスターを振るって無人機を両断する。
「ビット兵器?!」
「それも自分と同時に動かせるなんて!」
一樹を囲み、残った無人機がビームを放とうとするが、
リクセルが一発で急所を撃ち抜き、行動不能にする。
一機の無人機がリクセルの背後から襲い掛かるが、ソードイグニスによって切り裂かれる。
お互い、無駄なくカバーしあっていた。
再び二人は並び、背中合わせになって残っていた三機の撃ち抜き、
ビーム刃とカタナで最後の無人機を上下から切り裂いた。
(いいなぁ)
その光景を見て簪は思う。
今自分はあの場所に行くことはできないだろう、だがそれでいい
今は届かなくても、自分はもっと強くなれる、必ず一樹の隣に立てる。
(いつか必ず、貴方の隣に)
セシリアも思う。
リクセルは一樹と背中を合わせる、それはお互いの信頼がなければできない。
まだ自分にはリクセルと背中を合わせられるほど、信頼も実力もない
それでも、自分は前とは違う、確固たる目標を胸に踏み出せる。
(いつか、貴方と)
二人の少女は、お互いの決意をより確固たる物にした。
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「織「桜野です」…桜野、フォンブラウン、何故壁を破壊した」
あの後、アリーナに残っていた全員が集められ、一樹とリクセルが
千冬から尋問を受けた。
二人が重い罰を受けると確信しているらしく、秋斗がニヤニヤと笑っている。
しかし、この二人がそうなるわけがない。
「あの時最優先すべきは[生徒の避難]、そして相手は遮断シールドを
一撃で貫通する武器を持っていたため、事態は一刻を争う状況でした」
「しかし、出入口がロックされていました
解除されるのを待つことなど出来ないため、[出口]を作るべきと判断した結果です」
二人はいつの間にか用意していた報告書と始末書を千冬に差し出す。
二人の発言は事実であり、実際に最善の結果であった。
命令違反で処罰しようにも、すでに報告書と始末書を作られていてはどうしようもない。
「わかった、もう遅いから部屋に戻れ」
「な?!」
予想と真逆の結果に、秋斗は目を見開く。
「織斑先生、もう一つ問題があります」
「何だ?」
「篠ノ之の処罰です」
突然自分の名前が出てきたことに箒は絶句し、秋斗は一樹を睨み付ける。
「あの時の篠ノ之の行動は自分自身だけではなく
まだ避難していなかった生徒に、アリーナ内にいた我々までも危険にさらしました
これは死人が出なかったから良しで済ませられることではありません
よって、何かしろの処罰を与えることを提案します」
千冬はしばし考え、一樹の言ったことが正論であると判断、
千冬自身も、箒に何かしろの処罰を下すべきと考えていたのでちょうどよかった。
「正論だな、では篠ノ乃には三日間の自室謹慎と反省文五十枚を処分として下す
以上だ、この件はこれで終わりにする」
「貴様ぁぁぁぁ!」
秋斗にとって、[他人]は利用するための道具でしかないが、
千冬と篠ノ乃姉妹は例外、というより大切にしている人間達だ。
それに処罰が下ったことが相当頭に来たらしく、
秋斗は一樹に殴りかかる。
しかし、殴り合いの喧嘩もしたことがない秋斗が軍式の総合格闘術を習得した
一樹に敵うはずもなく、簡単に投げ飛ばされて壁に激突、そのまま崩れ落ちる。
「己!良くも秋斗を!」
愛する相手を投げ飛ばしたことが頭に来たらしい。
箒も木刀を持って一樹に突っ込むが、同じ結果を辿る。
「そこで反省していろ」
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そこはなんとも奇妙な部屋だった。
あちこちに機械とその部品が散らばり、ケーブルがまるで樹海の様に広がっている。
そんな部屋の中心部、金属で出来た椅子に座り、一心不乱にキーボードを叩く人物がいた。
すらりと均等が取れた体型だが、胸が立派に張り出しており、
その顔立ちはどこか箒とよく似ていた。
服装は青いエプロンドレスと兎耳付きのカチューシャ
何やら一人で[不思議の国のアリス]をやっていると言えばいいのだろうか。
彼女は篠ノ之束、箒の実姉にしてISの生みの親、千冬の親友である。
「おっと忘れるところだった、あっ君は活躍できたかなぁ~♪」
ふと思い出したように束は手を止め、横の空間に画面を表示する。
彼女にとって、妹と織斑姉弟以外の人間は道端の石でしかない。
とにかく自身が作ったお手製ISを纏う秋斗を活躍させるために
試合をおこなっている秋斗の元へ無人機を送ったのだ。
もっとも、いつ乱入するかはわからないし、送り込んだ計十五機の無人機の内
何機が乱入するかは運次第なのだが。
束の顔はほころんでいた、秋斗の活躍を想像しワクワクしていたからだ。
しかし映像を見た途端、石になったように固まった。
秋斗は無様な醜態を晒し、無人機部隊は二機の全身装甲機によって
手も足も出ないほど圧倒的に敗北していた。
直ぐに束は二機について調べた、しかし
機体データに搭乗者の情報、どこで作られたのかさえ分からない。
この地球上で束に、世界を鼻歌交じりに引っ掻き回せる[天災]にわからないことなど
存在しない、いやしてはならないはずなのに。
「束さんをバカにしてるのかな?」
新しい玩具を貰った子供の様に、束は無邪気な笑みを浮かべた。
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シャワーを浴び終えた一樹は寝間着に着替え、そのままベットに潜り込もうとしていた。
しかし、扉をノックする音が聞こえたのでそっちに向かう。
勿論警戒しつつ銃をいつでも撃てるようすることも忘れない。
「どちらさま?」
「あ、一樹、アタシよ」
ドアを開けると、私服状態の鈴音がいた。
「どうしたんだ?」
「……謝りたいことがあって、入っていい?」
頷き、一樹は鈴音を部屋に上げる。
「何を誤りたいんだ?」
「そのね……一夏って呼んだこと」
彼女らしくないしおらしい態度で、鈴音は口を開く。
「アタシには幼馴染が居たの、同い年で……アンタにそっくりな顔をしたね
名前は織斑一夏、千冬さんの弟
中一の時にアタシ一夏にこういったの」
[今度会ったとき、毎日自分が作った酢豚を食べてほしい]
一樹にはそれが何を意味するかすぐに分かった。
「遠回しなプロポーズか、イズモ……日本の[味噌汁云々]みたいな」
「そうよ、アンタが一夏そっくりだったから
返事を聞かせてもらうつもりで会いに来たんだけど……別人に当たったってしょうがないわよね」
肩をすくめる鈴音に、一樹は優しく頭に手を添える。
「俺には、三年前以前の記憶がない」
「え?」
「どこで生まれ育ったのかも、全く分からなかった
だから……俺はお前の言う一夏なのかもしれない」
鈴音が顔を上げる。
「記憶が戻らないからどうしようもないから、一から始めないか?」
「……いいわよそれで」
茹で蛸のように赤くなりながら、鈴音は逃げるように部屋を出た。
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「……反則よ」
部屋に逃げ戻った鈴音は、ベットに倒れこんで呟いた。
何があったのかは分からない、だが初恋の相手は[記憶]よりも
強く、厳しく、かっこよく成長していた。
今はまだ心の整理に時間がかかる、だが、それが終わったその時は
「返事、聞かせてもらうわよ」
[初恋]の灯は、燃え上がる業火となっていた。
結局鈴は一樹のヒロインに。
リクセルとくっ付けるより自然に思えたので、リク×鈴希望の方々、すいません。
次回でシャルとラウラのほかにも、
MGキャラを登場させようと考えているのですが
いかんせん候補が多いので誰が登場するかは決めていません。
では次回