-MS-メタリックストラトス《更新停止》   作:アルシェス

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やってみたくなったので、こんな展開を用意いしました。



姉と弟

あの事件の翌日、一樹は一人でアリーナに居た。

今回の目的は自身の射撃能力を強化するためだ。

いつまでも[射撃が苦手だからあまり使わない]では済まないのだから。

ゆえに、一樹は演習用ターゲットを相手に訓練をしていた。

 

「……ふぅ」

 

計百五十のターゲットを一分足らずですべて撃破した後、

一樹はムラマサブラスターを背中にマウントし直した。

 

「ん?」

 

ふと見上げると、そこに打鉄を纏った千冬がブレードを構えてこちらを見ていた。

観客席にはいつの間にか野次馬が集まっている。

女は噂好きなのはどこの世界でも変わらない、誰かが千冬がアリーナに居ると言いふらしたのだろう。

 

「何の用です?」

 

分かってはいるが、一応聞いてみる。

 

「桜野、今から私と戦え」

「強引ですね」

 

初日で顔を合わせたからというもの、千冬は一樹に対してどこか盲目的だ。

一樹はそんなに弟だと思うのならばDNA鑑定でもしろと思うのだが

今の千冬ではそんな発想には至らないらしい。

だからと言って、何故戦うことになるのか

スターゲイザーの一樹でも理解不能だ。

 

「では……行くぞ!」

 

秋斗とは比べ物にならないスピードで右上段から来た斬撃を

一樹はとっさに後退し回避、ダガーを逆手持ちに斬り払う。

それを千冬はブレードで受け流し、そのまま斬撃を繰り出すが

一樹はそれを急上昇して躱し、そのまま急降下してビームサーベルを引き抜き、振り下ろす。

空戦タイプのガーディアンで可能な技[ハイGヨーヨー]だ。

元に重力による加速が加わった猛スピード攻撃だが、流石はブリュンヒルデ

何とか反応して回避しようとする

しかし完全に回避しきれず、シールドエネルギーを三分の一ほど減らしてしまう。

一樹は攻撃を緩める気はなく、攻撃の勢いのまま急降下し、

再度急上昇し、ビームサーベルを切り上げる。

[ハイGヨーヨー]の逆パターン、[ローGヨーヨー]だ。

こちらも千冬は完全に回避できず、残りのシールドエネルギーは半分になってしまった。

お互いに一度後退して距離を取り、互いに得物を構えて対峙する。

 

「流石はブリュンヒルデ、大抵なら今の二連撃で終わってます」

「こうも簡単に劣勢に追い込んで何を言う」

 

これ以上の問答は無用と、互いに突進した。

 

_______________________________________________

 

「………」

「………」

「………」

「………」

 

噂を聞いてアリーナを見に来た簪、セシリア、本音、鈴音の四人は

目前の現実が信じられず、絶句する。

世界最強と名高い千冬が容易く劣勢に追い込まれているのだ、無理はないだろう。

 

(本当かどうかは知らないが、姉弟対決か)

 

リクセルは一人この戦いの生末を思う。

 

(バカな……あの屑が何で姉さんに?!)

 

未だに一樹を屑と言い張る秋斗は唯事実に混乱していた。

 

_______________________________________________

 

どうやら千冬が本気を出したらしい。

先ほどと比べると鍔迫り合いの回数が多くなっている。

それでも千冬が劣勢だ、鍔迫り合いでは負け気味であり、攻撃も当たらない。

すでにシールドエネルギーも残りわずか、一撃でも喰らえば終わりだ。

 

「何故ビット兵器を使わない?それに何故一本だけで戦う?」

「同じ次元で戦ってみたくなった、それだけです」

 

一樹にとって、この戦いは実力を確かめるための[試合]

何時もの殺し合いなら情け容赦無用で全力を出すが、[試合]にそんなもの必要ない。

故に剣一本という同じ次元で戦いたくなったのだ。

最も、この時点で一樹の勝利はほぼ確定しているが。

 

「「ハァァァァァ!!」」

 

千冬は上段、一樹は横薙ぎの構えで同時に突進し、得物を振るう。

結果は………

 

「私の、負けだ」

 

打鉄のブレードがビームサーベルに耐えられず折れてしまい、

直撃を受けてシールドエネルギーが尽き、一樹の勝利に終わった。

 

「……織斑先生、俺がどれだけ貴方の言う[一夏]に似ているのか知りません

でも俺は俺です、家族は父一人と叔母一人だけですよ」

「それだけ大事なのだな、家族が」

「養子組ですけどね、それでも生みの親より大事です」

 

一樹はふと思い出す、初めて家族となった日のことを

 

_______________________________________________

 

初めての戦闘の後、一樹は割り当てられた部屋で一人蹲っていた。

守るためとはいえ、自分は人を殺したのだ。

自分が撃ったミーレス、それには確かに人が乗っていたのだから。

 

「一樹」

 

息子となった一樹が心配だったらしく、樹が様子を見に来た。

 

「樹さん」

「親父でいい、これから家族なんだからさ」

 

優しげな笑みを浮かべ、樹は一樹の隣に座る。

言っては失礼だがその様子は樹の容姿のせいで、父子と言うより姉と弟に見えた。

一樹は、自身の胸の内を言った。

一通り聞いた後、樹は口を開く。

 

「そればっかりはお前自身が解決しないといけない問題だからな

俺がどうこう言える物じゃない」

 

一樹は再び俯く。

 

「偶然うまくやれたただけなんです、無我夢中で

俺は褒められも感謝されるようなこともやってないのに」

「……確かにな、そこにガーディアンがあったのは偶然だろう

だが、ガーディアンに乗ったのは偶然じゃないはずだ」

 

顔を上げた一樹は、樹と目が合う。

 

「お前は何故ガーディアンに乗った?」

「……ただ、助けたかったから……」

 

そっと、樹が一樹の頭に手を添える。

 

「それでいいんだ」

「え?」

「確かに人を殺したことに変わりはない、例え相手がテロリストだとしてもな

だから殺した責務から逃げるな

奪った命の重さを絶対に忘れるな、そして、その殺しの罪悪感を絶対に忘れるな

それを忘れた瞬間、言葉通りの本当の人殺しになる」

 

フォーチュンに長く所属し、今の一樹よりも沢山の人間を殺してきた樹のその言葉には

言い様の無い[重み]が感じられた。

 

「それと……これだ」

 

樹は、ポケットから翼を模したペンダントを一樹に手渡す。

 

「お前が助けた嬢ちゃんから渡してくれって頼まれた物だ

あの子、感謝してたぜ…「ありがとう」ってな」

 

一樹はペンダントを手に持ち、茫然と眺める。

 

「お前が守った命も、忘れるな」

 

一樹は両手で握りしめ、涙を流した。

自分は許されないことをした、それでも少女は自分に感謝してくれた。

一樹は一つの決意をする、リンゲージを続けようと。

これからも沢山の人を殺すことになるだろう、守り切れずに涙することもあるだろう。

助けた人達から石を投げられることだってあるだろう。

それでも、自分が守った[命]は、こんなにも暖かいのだから。

 

______________________________________________

 

「迷った時や辛い時、ただ励ますんじゃなくて自分なりの手がかりをくれる人だから

疲れ切って帰って、「ただいま」って言えば、「おかえり」って言ってくれる場所だから

変わり者で厳しいけど…優しい、尊敬できる人だから

俺は、あの人の息子になれたことを…誇りに思っているんです」

「誇りに、か……」

 

自分達を捨ててどこかに行ってしまった両親を恨んでいる千冬には、

例え口が裂けても言えない言葉だった。

全力でぶつかったからこそ分かる

今目の前にいる[弟]は、自分の記憶よりも大きく、強く、逞しく

かっこよく、厳しく、そして優しく成長していた。

もう、自分が知っている[一夏]は居ないのだ。

暗闇で縮みこまっていた自分では、到底たどり着けない場所まで登って行ったのだ。

 

「ありがとう[一樹]、立派になってくれて……

ありがとう……一樹の[親]になってくれた人……」

 

ハイパーセンサーを使わない限り聞き取れないような小さな声で、

千冬はピットに戻っていく一樹の背中に向かって呟いた。

 

 




一樹と千冬の対決、いかがだったでしょうか。
まあ、大半の皆さまが想像した通り、一樹の実力は千冬より上です。
勿論千冬は全盛期を過ぎて弱体化している分もありますが
それでも[現在最強のIS乗り]に間違いないんですがね。
次はシャㇽと黒ウサギの登場、天災はもう少し引っ張ろうと思います。
ついでに、MGヒロインを一人投入しようと思います。
まあ、一樹の[ロミジュリ的ヒロイン]か
リクセルの[付き人ヒロイン]か迷っている最中ですが。
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