完全にサポート役の機体ですが、結構強力です。
放たれた砲弾は、突如として弾かれた。
「いくらなんでもやりすぎではないですか?」
砲弾を弾いたのは、専用機[ウシャス]を纏ったリリーだった。
女性用の甲冑と鳥を合わせたような優美なデザインの茜色の外見と装甲。
背中の翼状のスラスターユニットが天使を思わせる。
「貴様、リクセル・C・フォンブラウンと一緒に居た女か」
ウシャスも全身装甲なので顔が分からないが、
声でもう一人注目していた男のそばに居る女と判断した。
最も、リクセルもスカウトする前に阻まれたが。
「取り敢えず、貴方は邪魔です」
「ふざけるな!僕はまだ!」
「だから邪魔です」
勝ち目が無いのに引こうとしない秋斗を、
リリーはピットに向かって蹴り飛ばす。
リクセル達と共に戦ってきたリリーにとって、
秋斗は素人に毛が生えた程度、おまけに引き際を見きれないため
素人より邪魔な存在でしかない。
「ふん、邪魔なら潰してしまえばいいだろうに」
「守ることも大事な仕事ですよ、
貴方の様に力ずくで解決する狂犬と一緒にしないでください」
「何だと?!」
千冬が精神面の教育を放棄していたからだろう、
ラウラは恐ろしく切れやすい。
速い話、ちょっとした挑発にも乗ってしまうのだ。
「いいだろう、まず貴様から潰してやる!」
その言葉を合図に、二人とも突進する。
ラウラはニヤリと笑い、AICを発動させようとするが…
「引っかかりませんよ」
「何?!」
AICが発動する直前、突如ウシャスは鳥型の飛行メカに[変形]
そのまま高速でラウラの周りを飛び回る。
「動きを止める武装、確かに脅威ですね
でも発動にはしっかりイメージする必要があるので
今の私みたいにアクロバットな動きをする相手や
フェイントには効果が無い、そうでしょう?」
「おのれぇ!」
事実である。
万能など存在しない、それが世の真理だ。
「そして」
ウシャスの装甲各部が[開き]、ミサイル発射口が露出。
そのままミサイルが雨霰に四方八方から降り注ぐ。
それをラウラは必死で避けるが、数が多い上に
爆風だけでもシールドエネルギーを削られる。
「止められる対象は一つ、だから複数戦は苦手」
「なめるなぁ!」
何とかリリーを攻撃しようとミサイルを掻い潜り、
両腕に装備されたプラズマブレードとワイヤーを振るうが、
リリーは変形を駆使した縦横無尽の高速移動で回避、
ミサイルのシャワーを浴びせ、腕に装備されているクローで切り裂く。
「!」
「ははは!弾切れだな!」
やはりばら撒き過ぎたようだ。
ウシャスのモニターに、[EMPTY]の文字が浮かぶ。
その隙を逃さず、ラウラはワイヤーを伸ばし、
リリーを絡め取ろうとするが
突如銃声が響き、ワイヤーは全て弾かれる。
「待たせたな」
「問題ありません」
弾いた張本人、スパシィを纏ったリクセルが
リリーの横に並び立つ。
「リクセル・C・フォンブラウンか」
「やれやれ、本当に軍属の人間か怪しいな」
ラウラはリクセルを睨み付け、ふとピットの射出口に
一樹が立っているのに気付く。
「ちょうどいい、私と戦ってもらおう桜野一樹」
ラウラは一樹に向かって飛びかかろうとするが、
リクセルにワイヤークローを巻き付けられ、
そのまま地面に叩き付けられる。
「ふん、一樹と戦いたくば、まず私を倒してからにしてもらおう」
「ほう」
「最も、私と一樹はライバルであり、共に実力は
リリーより上だ、リリーに一撃も当てられなかったお前など
物の数に入らんがな」
珍しく、リクセルが挑発の笑みを浮かべる。
「いいだろう、お前達を倒し
そして桜野一樹と織斑秋斗を倒して
教官を穢した罪を償わせてやる!」
「何のことだ?」
「ドイツいらした時、教官が泣いていたのだ
あの強く凛々しい教官が…
だからその罪を償わせてやる!」
その言葉にリクセル、リリーは揃って溜息をつき
一樹は必死に笑いを堪える。
「何がおかしい!」
等々堪え切れなかったのだろう、
一樹は腹を抱えて笑い出した。
「織斑千冬に認められたいではなく、織斑千冬になりたいのか
だからその象徴である強さを穢した存在を憎んでいるというわけね」
笑い終えた一樹が、小馬鹿にした笑みを浮かべてラウラを見る。
「例え殺したとしても、お前は何も変わらない、何も手にすることはない
何故ならお前はお前、織斑千冬では無いからな
自分から[模造品]になりたがる人間なんて滑稽すぎる」
「お前に私の何がわかる…!」
「知ないし、知りたくもない…ただこれだけは言っといてやる
誰かに認めてもらいたいと思うなら、その思いはそいつにのみ向けられるべきだ
間違っても比較対象じゃあない
全く、あの人は教官失格だな、技術面しか教えてないんだから」
精神面も教えてこそ、一人前の教育者といえる。
まあ、祭り上げられた偶像でしかいない千冬に
そんなことを分かれと言う方が無理なのかもしれないが。
「お前に対する興味は失せた、消えろ」
「ふざけるなぁぁぁ!」
怒りで真っ赤になった顔で、ラウラは吠える。
「お前に用は無い!さっさと消えろ!」
プラズマブレードを展開し、ラウラは親の仇の如く
リクセルを睨み付ける。
「リリー、[アレ]を使おう」
「よろしいのですか?」
「さっさと終わらせるべきだ」
リリ―がリクセルの周りを鳥型に変形して飛び回る、そして
グリップが出た、嘴部分が銃口になった、
コードが伸びてスパシィの右肩に接続された。
一丁の長大な[狙撃銃]になった。
ウシャスはユニオン級、変形機構を持ち
他のガーディアンと[合体]してパワーアップさせる
特殊なクラスなのだ。
「合体しただと?!」
常識では有得ない光景に、ラウラは一瞬止まる。
そして、超一流スナイパーのリクセルにとって
それは一発撃ち込むには十分すぎる時間だった。
「フッ」
狙いを付けたリクセルが引き金を引き、
セシリアのライフルが放つレーザーよりも遥かに太い
緑色のビームがラウラに向かって飛ぶ。
ラウラは回避できずに直撃、リリーとの戦闘で
大幅にシールドエネルギーが減っていたラウラはあと少しで
残量が0になるところにまでダメージを負う。
しかしまだ射撃は続いているので、少しづつ減っている。
「認めん!私が負けるなど!」
吠えた瞬間、ラウラのISがグニャリと歪んだ。
そしてラウラを飲み込み、一体の異形のISとなった。
女性其の物の外見に、手には日本刀型ブレード、
ハッキリわかった、アレは織斑千冬を真似ているのだと。
「そこまで[模造品]になりたいのか、もはや感動を覚えるな」
エクエスを纏った一樹が、リクセルの横に立つ。
「あまりおめでたい状況ではなさそうだな」
「取り敢えず近接戦で「うぉぉぉぉぉぉ!」何だ?」
エネルギーの補充を終えた秋斗が
コピーに向かって斬りかかった。
しかし、カウンターを喰らって弾き飛ばされる。
「待て」
「離せ!あいつは姉さんの真似をした!
あんなの姉さんへの侮辱だ!」
首根っこを掴まれながら喚く秋斗に、
一樹は只々呆れるしかなかった。
「技なんて真似て取り込んで吸収するものだろうが
特許があるわけじゃあないんだぞ」
「何だと?!」
「確かに尊敬する人物の物真似されるのは面白くない
だがな、見せた技なんて真似られて当然だ、出来る出来ないは別にしてな
実用的な技があれば取り入れるさ、ましてブリュンヒルデの技だ
試合の記録もある、皆参考にしているんじゃないか?」
「それは違う!あれは姉さんの技なんだ!」
「確かにアレはどうかと思うが、技の真似は普通だろう、俺だってやってるんだし」
これ以上は不毛だと判断した一樹は雪片を圧し折り、
秋斗を後ろに放り投げてコピーと向き合う。
「模造品の人形、本当にそれがお前の望みか?」
ダガーを二本とも引き抜き、一樹はコピーに近づく。
「……まあ、[空っぽ]のお前にはそれしかないんだろうな」
肩を竦め、ダガーを逆手持ちに構える。
「いっぺんやり直せ!」
再びタール状になったISから出てきたラウラを、一樹は
優しく抱きかかえる。
その光景は、まるで映画のワンシーンだった。
一応人体に無理が無い変形構造をしているという設定です。
次回はラウラと千冬のシーンですが、その前に幾つか挟みます。