-MS-メタリックストラトス《更新停止》   作:アルシェス

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今回で単行本2巻の分が終わります。


新しい旅立ち

束との一件の後、一樹はさっさと布団に潜り込んだ。

明日は早い、千冬の説教を喰らうのは面倒この上ないのだ。

 

「一樹、起きてる?」

「どうした?明日は早いぞ」

 

目をつむったまま、一樹は素っ気無く答える。

 

「僕ね、日本に帰化しようと思うんだ

そうすれば実家もフランスも関係無しに

一樹の傍に居られるから

専用機は手放すことになったんだけどね」

「そうか……」

 

言われるままだったシャルルが初めて自分で決めたこと、

一樹はそれを素直に賞賛した。

 

「だからもう手続きは終わったんだ

日本政府も、何故かデュノア社も文句言わなかったし」

「当然だ、日本からしたら優秀な人材が来るからもろ手を挙げて

歓迎するさ、代表候補生の座は自力で取ったんだろう?」

「そうだよ」

「それに性別を誤魔化して入学させるのは国家単位の力が

無ければ無理だ、お前の帰化に反対すれば

フランス政府とデュノア社両方の偽装が暴露されかねない

風当たりが強いフランスは黙って見逃すしかないさ」

 

いつの間にか、シャルルは一樹のベットに潜り込んで

その背中に抱き付く。

 

「明日から日本の代表候補生として編入しなおすんだ

それでその………お願いがあるんだけど」

「出来る範囲なら聞いてやる」

「その……シャルロットって呼んでほしい」

「それが本名か?」

「うん、お母さんがくれた名前」

「……シャルロット」

 

本当は「卒業したら結婚しよう」と言いたかったのだが、

流石にそこまで言う度胸はシャルロットにはなかった。

そのまま眠りに落ちるシャルロットは

一樹の温もりを静かに感じていた。

 

________________________________________

 

「き、今日は転入生を紹介したいと思います

でも皆さんご存知といいますか…」

 

麻耶の声に促されて前に出たのは、女子の制服を纏ったシャルロットだった。

 

「桜芽シャルロットです

皆さん、改めてよろしくお願いします」

 

帰化及び代表候補生等の手続きは試合前に終わっていたらしい。

そして試合が終わったので用無しとなった[リヴァイブⅡ]は返還、

一樹が自分なりに書いた設計図のデータを基に

専用機が現在作られているらしい。

 

「え、えっと…デュノア君は実はデュノアさんでした…

あぁ、また寮の組み分けをしなくちゃ…」

 

頭を押さえる麻耶に、一樹は心の中で合掌する。

 

「「デュノア君って、女の子だったの?」」

「「つまり美少年じゃなくて美少女だったって事?」」

「「って桜野君!同室で気付かないわけないよね!?」」

「「そういえば!昨日って男子の大浴場の開放日だったよね?ま、まさか…!?」」

 

そんなことを誰かが言った直後、轟音と共にドアが破壊され、

ISを展開した鈴と同じく展開して羽交い絞めにしている簪が立っていた。

 

 

「いーつーきー!あんた実は女の子だった

デュノアとお風呂入ったそうね!?どういうことよ!?」

「鈴押さえて!でも説明してほしい!」

「いや、俺は昨日は部屋のシャワーで済ませたぞ?」

「えっ?…う、嘘付くんじゃないわよ!」

「よく考えろ二人とも、昨日のあの騒ぎの後で、

わざわざ風呂なんて入りに行くと思うか?

軽くシャワーで済ませてすぐに寝たわ」

「た、確かに…」

「言われてみれば……」

「……」

「……」

「はぁ」

「ご、ごめんなさい…」

 

気まずい空気が流れ、皆が一樹に謝罪する

 

「残念ながら俺に謝ったところでしょうがない

…こんなところでIS展開させていいと思ってるのか?」

「「っあ!」」

 

見ると、千冬がまるで獲物を見つけた捕食者の様に

大層良い笑みで笑っていた。

 

「桜野の言うとおりだ凰、更識、放課後覚悟しておけよ?」

「ふぁい」

「ごめんなさい」

 

絶対零度の笑みで死刑宣告された鈴音と簪は泣きそうな顔で

自分のクラスへと帰って行った。

それを見ていた一樹は思わず笑ってしまう。

 

「で、ではこれでHRを…」

「少し、良いだろうか?」

 

HRを締めようとした麻耶の声を、ラウラが遮った。

 

「え、えっと…?どうかしましたか?ボーデヴィッヒさん」

「皆に、言いたいことがあってな、その、迷惑をかけて悪かった」

 

前に出てしっかりと頭を下げて謝る姿に、一樹は嬉しさを感じる。

何だか親か兄になった気分だった

 

「それとだな…一樹、ちょっと来てくれ」

「どうした?」

 

いきなりの名前を呼ばれた一樹は、戸惑いつつも出てみる。

ラウラは茹蛸の如く顔を真っ赤にして、震える口を開いて

よく聞こえる大声で、最大級の爆弾を落とした。

 

「私の嫁になってください!」

 

教室の空気が固まる中、一樹はラウラを小突く。

 

「ラウラ、それは相手が女の時のセリフだ

男の場合は婿と言う」

「そうなのですか?」

「第一、何故いきなりプロポーズする?」

 

ラウラは敬礼の構えで宣言する。

 

「私は貴方という人物にIS搭乗者としても

人間としても女として惚れました!

そして!惚れたら即求婚するのが日本の

習わしと聞いた結果実行に移しました!」

「よし、今すぐその知識を教えた奴を呼べ

じっくりと説教してやる」

 

そんなやり取りをしている内に驚愕から復活したらしい、

千冬が怒りで真っ赤になりながら怒鳴る。

 

「黙れラウラ!お前に一樹はやれんし妹など認めん!」

 

一樹は呆れ顔でチョークを握り、親指で弾いて

まるで弾丸の様に飛ばす。

見事千冬の眉間に命中し、千冬は転倒する。

 

「織斑先生、何で貴方が出てくるんですか?

貴方に許可を貰う謂れは一切ありませんよね?」

 

そんなやり取りを見ていたラウラは思わず苦笑するが

すぐに気を取り直して姿勢を戻す。

 

「ではお兄ちゃんと呼ばせていただきます!

日本では尊敬する男性をそう呼ぶとお聞きした故!」

「「だからそれを止めろ!」」

 

珍しく、一樹と千冬の声が揃うのだった。

 

_______________________________

 

「ふははははははは!やはりお前と居ると

退屈とは無縁だな、笑いが止まらんぞ

「ほっとけ……」

 

流石にラウラのプロポーズが応えたらしく、

一樹はリクセルとだけ共に食事をすることにした。

自分がモテるのは知ってるし、そのせいで面倒事に

巻き込まれるのも自覚しているが、

生憎何が原因なのか分からない一樹は

只々悩むしかない、最近頭痛薬のストックが増えている。

 

「それよりもリクセル」

 

急に、一樹が真面目な顔をする。

 

「どうした」

「実はな……」

 

一樹はリクセルに耳打ちをする。

するとリクセルの顔が驚愕に歪んでいく。

 

「それは真か?」

「まだ実験はしていないが、おそらくは」

 

何故か、二人が食事をする速度は何時もより遅くなっていた。

 

________________________________

 

放課後、一樹は機嫌が直ったらしく、何時もの態度に戻ったのだが。

 

「ちょっとアンタ!何で一樹に抱き付いてるのよ?!」

「直ぐに離れて?!」

「そこは私のばしょー!」

「ラウラ…すこし話があるんだけど」

「ふん、私とお兄ちゃんの時間を邪魔しないでもらおう」

 

一樹にラウラが抱き付き、それに四人が食って掛かる光景が

アリーナのピットで出来上がっていた。

 

(一樹よ、強く生きてくれ、私にはそれしか言えん)

 

一樹は頭痛がするらしく、頭を押さえて呻いている。

リクセルも同じ気分だった。

 

「セシリアさん、離れていただけませんか?」

「嫌ですわ、リリーさんこそ離れたらどうなのです?」

 

右にリリー、左にセシリアが抱き付き

視線がぶつかって火花を散らすその光景に、

リクセル自身、溜息しか出てこないのである。

 

_________________________________

 

「クソ、クソ、クソクソクソ!」

 

他に誰もいない部屋、そこで秋斗は壁を殴り続けていた。

自分より劣る、少なくとも秋斗はそう思っていた一樹に

毎回毎回手も足も出ずに敗北する。

それが何より秋斗を苛立たせていた。

 

「どうしてだ!僕は天才だ、天才なんだぞ!

何であんな屑に勝てないんだ!秘密があるに違いない!」

 

実際には努力の差でしか似のだが、

歪に歪み、異常に膨れ上がったプライドで

自分を支えている秋斗には分からなかった。

いや、わかっていても認めたくないのかもしれない。

子供だった、束同様、秋斗もまた精神が幼かった。

 

(秋斗……おのれぇ桜野!)

 

秋斗の苛立ちの声をドア越しに聞いていた箒は、

怒りをあらわにして拳を握りしめる。

 

(そうだ力が、私にも専用機があれば!)

 

専用機を手にしたところで、箒の実力で

一樹達に勝つことなど出来はしないのだが、

精神面が秋斗に似てしまっている箒には分からないのだろう。

箒はケータイを取り出し、普段は絶対に使わない番号を押すのだった。

 

 




次回から臨海学校になるわけで、束の性格が少し変わっています。
さて、樹達は何時登場させるかな……
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