-MS-メタリックストラトス《更新停止》   作:アルシェス

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今回はデートの続き。
一樹がとんでもないことを数回やらかします。


準備と到着

(どうするか……)

 

一樹は大いに悩んでいた。

自分を取り巻く少女たちの事だ。

元の世界で夕日とリーリン、この世界で簪、本音、鈴音、シャルロット、ラウラ。

自分に好意を寄せててくれる彼女達を思い、悩んでいた。

重婚はできない以上、一人を選ばなければならない。

一妻多夫制なんて制度はできるかもしれないが、意味が無い。

一樹自身、元の世界に帰れるなら帰る、やらなければならないこともあるし、

家族や親友等親しい人間達が居る、帰りたい……帰るべき場所だ。

しかし[世界]を越えるなど、相当なことだと素人でも分かる。

帰れる可能性は低いだろう。

故に、自分はこの世界に骨を埋めるかもしれない。

その時は、五人の内の誰かを娶ることになるだろう。

いや、もしかしたら更に増えるかもしれない。

自然、溜息が出る。

 

(今は考えてもしかたないか)

 

悩むのは若者の特権であり、皆に好意を抱いてる以上すぐに答えは出ない。

一樹はこの問題を一度脇に置いておくことにした。

水着売り場に到着したので、一旦シャルロットと別れ、

一樹は適当にトランクスタイプを選んで購入する。

資金自体は学園を通して、IS委員会から送られているのだ。

最も、一樹はだからと言って従う気は無い。

PMC、所謂傭兵である以上、報酬を貰って仕事をこなしても……

忠誠心など持っては無い……当たり前のことである。

金の切れ目が縁の切れ目なのだ。

 

「随分早いな」

「そ、その…一樹に選んでほしくて」

 

購入した後、待ち合わせの場所に行くと

シャルロットが頬を赤らめて待っていた。

 

「そこのあなた」

 

いきなり見知らぬ女性に呼び掛けられる。

 

「これ、戻してきて」

 

そういって水着を突き出される。

ISのために女尊男碑になった世界で、男性が

見ず知らずの女性にこき使われるなど良くあることなのだ。

 

「命令される筋合いはない」

 

一瞬で後ろに回り込んで殴打、

気絶させて元の位置に戻る。

周りは、女が勝手に倒れたようにしか見えない。

叔母から手ほどきを受けてる以上、これぐらいの芸当はできる。

 

「ど、どうしたんだろ?」

「疲れてたんじゃないか?」

 

どうでもよさそうに言う一樹を見て、シャルロットは思う。

 

(絶対何かしたでしょ!)

 

聞くなシャルロット、世の中知らぬ方がいいことがあるのだ。

 

「水着選ぶんだろ?早く行こうぜ」

「う、うん(ホントに、一樹って何者?)」

 

ふと、シャルロットは気づく。

自分は一樹の事を何も知らない。

知っているのは父親と叔母と一緒に暮らして居たことと、

専用機を作ったのは父親だということだ。

 

(教えてくれないのかな?)

 

少し寂しく思うシャルロットだったが、

気を切り替えて一樹に付いて行く。

隣の売り場だったので、すぐについた。

 

「そ、その水着見てくれるかな?」

「分かった」

 

シャルロットは意を決した表情を浮かべ、

一樹の手を引いて試着室に入る。

 

「お前、俺を誘ってるのか?」

「そ、そんなんじゃないから!」

 

シャルロットの強引さに疑問を浮かべる一樹だが、

弁えてるのですぐに後ろを向き、終わるのを待つ。

 

「なあ」

「な、何?」

「シャルって呼んでいいか?呼びやすいし、

愛称で呼んでも不思議じゃない仲だろう?」

「う、うん(反則だよ、でもリードしておきたいし)」

 

シャルロットが強引に試着室に引っ張ったのは、尾行している集団に気付いたからだ。

勿論敵対云々な組織ではなく、一樹に好意を寄せる仲間達である。

何故気づいたかを説明しておこう。

全てのISは[コア・ネットワーク]と呼ばれる独自の情報網で繋がっている。

宇宙開発の為に開発され、恒星間距離においても正確にお互いに

位置を把握する必要があるのだから当然の配慮である。

勿論正確に居場所を知るためには登録が必要になるが、

しかし、位置を特定されるのを防ぐための潜伏(ステルス)モードがあり、

簪と鈴音がこの状態になっている。

シャルロットは一樹には劣るが優れた洞察力を持つ、

なので[潜伏モード起動]=[居場所を知られたくない]

この事から事情を察するのは容易いことだった。

 

(諦めてくれないかな?)

 

せっかくの一樹とデートなのだ、邪魔はされたくない。

 

「い、いいよ」

 

セパレートとワンピースの中間の様な水着で、

上下に分かれているそれを背中で交差させて繋げるという構造をしている。

カラーリングは夏をイメージした黄色で、正面がバランスよく膨らんだ

胸元の谷間を強調するデザインになっている。

 

「良く似合うな、やっぱシャルには明るい色が合う」

「!!!」

 

案外シャルロットが一樹の本命なのかもしれない。

さらりと笑顔で口説き文句を言う一樹を見て、

シャルロットは頭から湯気が立つ。

 

「もしや他にもあるのか?」

「ううん!これにするよ!」

 

この状況でも平然としていられる一樹を恨めしく思うが、

これ以上は精神的に危険だと判断、試着室を出る。

その後も一緒に行動するが、まあデートと言える内容だとは思う。

一樹が工具一式や、書店で[恐竜の飼い方]等を購入するという行動をしなければ。

 

「お三人方、いつまで尾行してる気だ?」

 

最初から尾行がばれていた簪、鈴音、本音が合流しなければ。

何とも罪作りな男だと言わざるを得なかった。

 

_______________________________

 

時間を少し戻して、一樹達とは別の場所。

リクセルとセシリア、そしてリリーが水着を買った後、

昼食を終えて学園に帰る途中だった。

 

「お、お兄?!」

 

赤毛の少女がリクセルの目の前に居た。

彼女は五反田蘭、リクセルが記憶を失う前の人物である

五反田弾の実の妹である。

 

「今まで何処に居たの?!ずっと探してたんだよ!

一夏さんは?!一緒じゃないの?!」

 

蘭が両の二の腕に掴み掛って捲し立てる。

無理もない、実の兄と想い人が同時に居なくなったのだから。

しかし、当然リクセルに見覚えがあるはずが無い。

 

「すまないが二人とも、先に帰ってくれないか?」

 

セシリアは後ろ髪をひかれる思いだったが、

リリーに諭され、仕方なく帰路に着く。

 

「落ち着かれよ」

 

蘭の両肩を掴んで引き離し、静かに話しかける。

そして近くの喫茶店に入り、事情を聴くことにした。

 

「三年前に実の兄と、その親友である想い人が行方不明になった

そして私は兄である五反田弾に瓜二つだと……」

「……はい」

 

蘭としては今すぐ何処に居たのか、一夏は何処に居るのか

聞き出したくて堪らなかったが、注文したジュースを啜りながら思う。

姿形は兄としか思えない、見間違うはずが無い、

しかし兄は年相応の性格をしていて、態度もそこら辺の少年と変わらなった。

目の前のリクセルと名乗る青年は紳士的な態度で、言葉使いもやけに丁寧だ。

 

「すまないが、私はリクセル・C・フォンブラウンだ

兄が二人いるだけで妹は居ない、一夏という人物にも心当たりがない」

「そうですか……」

 

蘭は必死に食い下がりたかったが、ここまで記憶と違うと

本当に兄なのか自信を持てなかった。

俯く蘭を見て、リクセルは申し訳ない気持ちになる。

そして、一つの可能性を思いついた。

 

「しかし、私には三年前以前の記憶が無いのだ

もしかしたら私は君の兄なのかもしれない」

 

そして自分の髪の毛を幾つか抜き、趣味の金属加工で

作った小箱に、自分の電話番号を書いたメモと一緒に居れて渡す。

 

「私の髪と電話番号だ、改めて分かったら教えてほしい」

 

紅茶を飲み終えたリクセルは勘定をテーブルに置き、そっと立ち去った。

____________________________________________________

 

 

時は過ぎ臨海学校当日。

バスに揺られながら目的地の旅館に向かう。

一樹の故郷である飛翔市も海に面した都市だったので、

休日はよく海に行ったものだ。

目的地に到着すると、旅館の前で整列させられた。

どうやら女将さんに挨拶するようだ。

取り敢えず挨拶を済ませた一樹達は、自分達の部屋を知るために

しおりを開こうとして……嫌な予感がした。

開いたしおりには自分達の部屋が書かれていない。

そして、千冬に案内されたのは……[教員室]

つまり、男は全員千冬と相部屋だという事だ。

秋斗は二人を睨み付け、一樹は千冬を殴り飛ばしたい衝動に駆られるが、

二三日だと割り切ることにした。

さっさと荷物を整理して(電子ロックとシリンダーキーの二重防犯)

水着に着替え、さっさとビーチに向かう。

そのつもりだったのだが………

 

「ふ、悪ふざけも大概にしてほしいな」

 

途中、旅館の中庭に妙なものを見つけた。

土の中から兎の耳が生えていたのである。

そばには[引っ張てください]との紙が置いてある。

秋斗は引き抜こうとするが、一樹が何処からか大型のレンチを取り出し、

問答無用で叩き潰した。

 

「何するのさ!」

「こんなとこに人が埋まってるわけないだろう

それにこんな怪しい物は潰すに越したことは無い」

 

今度は空気を切り裂いて高速で物が飛んでいるような音、

それがどんどんと近づいてくる。

その音の発生元に、一樹は拳銃を撃った。

すると、音を出していた物の正体、人参の形をしていた何かは

爆発して海に墜落するのだった。

 

「これでよし」

「そんなわけあるか!」

「どうせあの天災だろう?

死んだ方が世界の為になるじゃないか」

 

すると、人型の何かが[海面]を走ってこちらに向かってくる。

一樹はそれが目前に迫ったところで、レンチを振り下ろした。

 

「いった―い!いっくん酷いよ!

何でレンチで殴るのさ!せめて素手で殴ってよ!」

「死んだ方がいい人間に遠慮も情けも不要だ、文句あるか」

 

一樹が違う物を手にして睨み付けた。

それは、某ホッケーマスクの殺人鬼が持っていそうな……

かなり大ぶりのチェーンソーだった。

それが唸りをあげているのだから黙るしかない。

ついでにこのチェーンソー、ガーディアン整備・修理用の工具である。

 

「あはは、それより箒ちゃんはどこかな?

まあ私が作った……何これ?!何で修理不可能なスクラップに?!

うーん、いっくん容赦無いなー」

 

興味は無いと、一樹はスタスタ海に向かった。

________________________

 

「シャル、そのバスタオルのお化けは何だ?」

 

ビーチに向かってすぐのこと。

シャルロットと合流したのだが、その横

バスタオルをまるでエジプトのミイラの様に巻き付けた物体が立っていた。

 

「もう照れちゃって、そりゃ!」

 

シャルロットが勢いよくバスタオルを引っぺがすと、

髪をツインテールにし、黒いビキニを着たラウラが

茹で蛸のように赤くなって立っていた。

 

「へぇ、可愛いじゃないか」

 

その一言が止めのノックアウトパンチになったらしい、

ラウラは湯気を立てた後、目を回してぶっ倒れるのだった。

 

 




そういえば、千冬と麻耶は歳幾つだったかな?
後皆さん、[新しい旅立ち]の前まで
一樹をなんて読んでました?
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