「で、実際の要件は?」
「その超能力やめてくれない?」
時刻はリクセルが出かけた少し後。
改造結果を確かめた鈴音に、一樹はクスリと笑って聞く。
相手の真理を感じ取るスターゲイザーの一樹に、
隠し事をするのは若葉ドライバーがF1ドライバーに勝つくらい難しい。
鈴音は観念してチケットを取り出す。
「む、今月出来たばかりのウォーターワールドか
確か前売り券は今月分がすでに完売
当日券も二時間は並ばなければ手に入らない」
「そうよ、苦労したんだから」
一樹が工具をしまい、機械油を落とす。
「ここで断るのは失礼極まりないな、何時行けばいい?」
「明日の土曜日」
「急だな、まあいいさ」
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無駄ではないかと思えるほどリフォームされた学生寮の一室。
そのベットで、セシリアは溜息をついていた。
学園に戻る前から、リクセルをデートに誘うための計画を練っていたのだが、
嫉妬心が邪魔をして結局誘うことができなかった。
その結果に悶々としつつ、セシリアはベットの上でゴロゴロと転がる。
すると、ドアがノックされる。
「はい?」
「私だ」
「り、リクセルさん?!」
丁度帰ってきたリクセルが、考え事していた末にセシリアに会いに来たのだ。
「いったい何の用件で」
「これだ」
リクセルはくじ引きで手に入れた景品、
ウォーターワールドのチケットを見せる。
「先ほど入手したのだが、期限が明日なのだ
リリーも一樹も先約済だ、一人ではつまらんので一緒にどうかと
誘いに来たのだが、迷惑だったか?」
「!い、いえ!とんでもありませんわ!」
リリーは簪と本音と共に遊びに行く予定であり、
一樹は言うまでもない、リクセル本人は誰かと遊ぶのが楽しいと
飛翔市で暮らすようになってから深く理解している。
「では、明日10時にここのゲート前で」
「わかりましたわ」
リクセルが自分の部屋に戻って行った後、
セシリアは再びベットに倒れこみ
「~~~~~~~~~~(声にならない)」
涎が垂れるほどの笑顔で枕を抱えたままのたうち回っていた。
(リクセルさんとデート、うふふふふふふふふ)
セシリアの周りがピンクのオーラで染まっていく。
「変態だ、変態が居る……」
それに耐えられなかったルームメイトが、
頭を抱えて蹲りながら呟いた。
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「まあ、こうなる予想はしていたのだが」
「いつもの未来予知か?」
「ああ、今回のデートがうまく進まないだろうなと」
事の次第はこうだ。
まず一樹と鈴音、リクセルとセシリアは待ち合わせの
日付、場所と時間が同じと言う狙っているかのような偶然によって
鉢合わせしてしまい、気まずい雰囲気のまま水着に着替えるのだった。
「リクセル……そのゴム製品はなんだ?」
「……いや、身の危険を感じてな」
「まあ、俺も人のことは言えんがな」
「お前も持っていたのか」
「同じ理由だ、俺は狙ってる奴が多いからな、理由は知らないが」
両名ともに臨海学校での水着に着替える。
しかし最初の気まずい雰囲気は何処に行ったのか。
普通に泳いだり、男子2人が競争して
[水面を]走ったりと充実した時間を過ごしたと思う。
「何で水面を走れるのよ……今に始まった事じゃないけど」
「この二人に常識を当てはめるのは不可能だと思いますが」
2人が水面を走れるのは精々2,3メートル、
一樹の養父樹も同じぐらいで、叔母の香りは
鼻歌交じりで琵琶湖を縦断できる。
そして二人が一樹達の非常識っぷりを見ていたその時
『では!本日のメインイベント!水上タッグペア障害物レースは
午後一時より開始いたします!参加希望の方は十二時までにフロントまで
お届けください!優勝景品はなんと沖縄五泊六日の旅をペアでご招待!』
景品を聞いた途端、二人は立ち上がった。
(いいこと聞いた!)
(これは絶好のチャンスですわ!)
沖縄の海に行く、ライバルとの差を埋めるには
まさに絶好の機会だろう。
「セシリア!」
「鈴さん!」
「「目指せ優勝!」」
拳を掲げて高らかに宣言する二人、その後ろでは
「「………もう何も言わない」」
プルーサイドの淵にもたれ掛かって呆れ顔を浮かべる男子達が居た。
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結果としては、散々だった。
まず優勝したのはいいが、ゴールの旗を取るために鈴音がセシリアを、
しかも顔面を踏み台にしたせいでセシリアが激怒。
お互いがISを展開して一触即発になり、
一樹がレンチで鈴音の頭を殴り、リクセルが刀の峰打ちで
セシリアの腹を横薙ぎに叩き付けて黙らせる。
そのためにせっかくの優勝はおじゃんになってしまい、
景品は手に入らなくなってしまった。
「「………」」
これでもかというくらい暗い表情で項垂れる二人。
(自業自得とはいえ)
(あまりにも哀れだな)
流石にかわいそうだと思った男2人は、
彼女達を元気づけるためにはどうすればいいか考える。
そして、ふと思いついた。
「@クルーズに行こう」
「念のために資金は多めに用意した
一番高い物を奢ろう」
その言葉に少しだけ元気を取り戻し、
鈴音は一樹の右側、セシリアはリクセルの左側に抱き付いた。
四人の影が夕日に照らされて長く伸びる。
それはまだ暑さが絶えない、八月のある日の出来事だった。
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「さてと……」
学園に戻ってきた一樹は早速作業着に着替え、
工具を手に作業台に向かった。
今回作るのはIS関係の代物ではない。
半分は一樹の趣味、もう半分は仲間達の為に
[あるもの]を作ろうとしていた。
「……まずラウラの武器を持ち歩く癖をどうにかしないとな」
一樹は拳銃を空港の金属探知機にも引っかからないホルスターに
入れてできるだけ目立たないようにしているが、
ラウラは惜しげも無く晒して歩いている。
今はまだ学園内だけの話なのだが、いずれは町中を歩く必要が出てくるだろう。
その時に堂々と武器を持ち歩くのは大変よろしくない。
「運搬型でいいだろう」
そう呟いたのを最後に、無言でせっせと作業をする一樹、
彼の傍らで、黒いアタッシュケースの様な物が組みあがっていった。
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「むむむ、これは凄い!」
所変わって束のアジト。
そこで束はある資料に目を通していた。
それは一樹達と深い関わりがある代表候補生達の専用機のデータだった。
一樹は改造した後、そのデータを彼女達の所属国家に送りつけ、
更に新型のIS装備の設計図を送ることによって改造する許可を勝ち取り、
自身が持つオリジナルのデータは用が済み次第、即破棄していた。
そしてIS学園の生徒はどこにも帰属しないという条約のせいで
各国及び企業は手出しも文句を言う事も出来ず、さらに束が
「一樹達の邪魔をしたら潰す」と全世界を脅しているので、
誰も彼もが魅力的なお宝を前に泣き寝入りするしかなかった。
そして、送られたデータを、束が分析しているのである。
「ホントにすごい、もうすぐ紅蕾を越えるよ」
いくら手抜きの[
自身の作品を簡単に上回るものを作るなど、驚きでしかない。
「いっ君はすごいな、できたらお婿さんに……
ちーちゃんが黙ってなさそう、それにお父さんも」
束は諦めずに一樹の父を捜しているのだが、一向に見つからない。
流石の束も、平行世界の壁は越えられないようだ。
「せめて名前を聞きたいな……でもいっ君は教えてくれないだろうし
親友のリッ君も同じだろうし……リーちゃんはどうかな?……無理っぽい」
ふと、束は自身の後ろを振り向き、そこに鎮座している物を見る。
[紅椿]本来ならば箒の専用機なるはずだった第四世代型IS。
これをどうするか束は真剣に悩んでいた。
「封印するかあげるかは置いといて
箒ちゃんに渡したら即いっ君達に襲い掛かるだろうな
まあ、返り討ちになるだけだろうけど
あっ君も同じだし……ちーちゃんは[暮桜]持ってるだろうからな要らないだろうし
は、いっ君にあげれば……「貴様の気分次第でどうにでもなる
ガラクタなんざいらん」って言われるのがオチだろうな」
最近になって悩みが増える束であった。