-MS-メタリックストラトス《更新停止》   作:アルシェス

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三回連続寝落ちで更新が遅れました、すいません。



夏休みその三

「で、実際の要件は?」

「その超能力やめてくれない?」

 

時刻はリクセルが出かけた少し後。

改造結果を確かめた鈴音に、一樹はクスリと笑って聞く。

相手の真理を感じ取るスターゲイザーの一樹に、

隠し事をするのは若葉ドライバーがF1ドライバーに勝つくらい難しい。

鈴音は観念してチケットを取り出す。

 

「む、今月出来たばかりのウォーターワールドか

確か前売り券は今月分がすでに完売

当日券も二時間は並ばなければ手に入らない」

「そうよ、苦労したんだから」

 

一樹が工具をしまい、機械油を落とす。

 

「ここで断るのは失礼極まりないな、何時行けばいい?」

「明日の土曜日」

「急だな、まあいいさ」

 

______________________

 

 

無駄ではないかと思えるほどリフォームされた学生寮の一室。

そのベットで、セシリアは溜息をついていた。

学園に戻る前から、リクセルをデートに誘うための計画を練っていたのだが、

嫉妬心が邪魔をして結局誘うことができなかった。

その結果に悶々としつつ、セシリアはベットの上でゴロゴロと転がる。

すると、ドアがノックされる。

 

「はい?」

「私だ」

「り、リクセルさん?!」

 

丁度帰ってきたリクセルが、考え事していた末にセシリアに会いに来たのだ。

 

「いったい何の用件で」

「これだ」

 

リクセルはくじ引きで手に入れた景品、

ウォーターワールドのチケットを見せる。

 

「先ほど入手したのだが、期限が明日なのだ

リリーも一樹も先約済だ、一人ではつまらんので一緒にどうかと

誘いに来たのだが、迷惑だったか?」

「!い、いえ!とんでもありませんわ!」

 

リリーは簪と本音と共に遊びに行く予定であり、

一樹は言うまでもない、リクセル本人は誰かと遊ぶのが楽しいと

飛翔市で暮らすようになってから深く理解している。

 

「では、明日10時にここのゲート前で」

「わかりましたわ」

 

リクセルが自分の部屋に戻って行った後、

セシリアは再びベットに倒れこみ

 

「~~~~~~~~~~(声にならない)」

 

涎が垂れるほどの笑顔で枕を抱えたままのたうち回っていた。

 

(リクセルさんとデート、うふふふふふふふふ)

 

セシリアの周りがピンクのオーラで染まっていく。

 

「変態だ、変態が居る……」

 

それに耐えられなかったルームメイトが、

頭を抱えて蹲りながら呟いた。

 

______________________

 

「まあ、こうなる予想はしていたのだが」

「いつもの未来予知か?」

「ああ、今回のデートがうまく進まないだろうなと」

 

事の次第はこうだ。

まず一樹と鈴音、リクセルとセシリアは待ち合わせの

日付、場所と時間が同じと言う狙っているかのような偶然によって

鉢合わせしてしまい、気まずい雰囲気のまま水着に着替えるのだった。

 

「リクセル……そのゴム製品はなんだ?」

「……いや、身の危険を感じてな」

「まあ、俺も人のことは言えんがな」

「お前も持っていたのか」

「同じ理由だ、俺は狙ってる奴が多いからな、理由は知らないが」

 

両名ともに臨海学校での水着に着替える。

しかし最初の気まずい雰囲気は何処に行ったのか。

普通に泳いだり、男子2人が競争して

[水面を]走ったりと充実した時間を過ごしたと思う。

 

「何で水面を走れるのよ……今に始まった事じゃないけど」

「この二人に常識を当てはめるのは不可能だと思いますが」

 

2人が水面を走れるのは精々2,3メートル、

一樹の養父樹も同じぐらいで、叔母の香りは

鼻歌交じりで琵琶湖を縦断できる。

そして二人が一樹達の非常識っぷりを見ていたその時

 

『では!本日のメインイベント!水上タッグペア障害物レースは

午後一時より開始いたします!参加希望の方は十二時までにフロントまで

お届けください!優勝景品はなんと沖縄五泊六日の旅をペアでご招待!』

 

景品を聞いた途端、二人は立ち上がった。

 

(いいこと聞いた!)

(これは絶好のチャンスですわ!)

 

沖縄の海に行く、ライバルとの差を埋めるには

まさに絶好の機会だろう。

 

「セシリア!」

「鈴さん!」

「「目指せ優勝!」」

 

拳を掲げて高らかに宣言する二人、その後ろでは

 

「「………もう何も言わない」」

 

プルーサイドの淵にもたれ掛かって呆れ顔を浮かべる男子達が居た。

 

____________________

 

結果としては、散々だった。

まず優勝したのはいいが、ゴールの旗を取るために鈴音がセシリアを、

しかも顔面を踏み台にしたせいでセシリアが激怒。

お互いがISを展開して一触即発になり、

一樹がレンチで鈴音の頭を殴り、リクセルが刀の峰打ちで

セシリアの腹を横薙ぎに叩き付けて黙らせる。

そのためにせっかくの優勝はおじゃんになってしまい、

景品は手に入らなくなってしまった。

 

「「………」」

 

これでもかというくらい暗い表情で項垂れる二人。

 

(自業自得とはいえ)

(あまりにも哀れだな)

 

流石にかわいそうだと思った男2人は、

彼女達を元気づけるためにはどうすればいいか考える。

そして、ふと思いついた。

 

「@クルーズに行こう」

「念のために資金は多めに用意した

一番高い物を奢ろう」

 

その言葉に少しだけ元気を取り戻し、

鈴音は一樹の右側、セシリアはリクセルの左側に抱き付いた。

四人の影が夕日に照らされて長く伸びる。

それはまだ暑さが絶えない、八月のある日の出来事だった。

 

________________________

 

「さてと……」

 

学園に戻ってきた一樹は早速作業着に着替え、

工具を手に作業台に向かった。

今回作るのはIS関係の代物ではない。

半分は一樹の趣味、もう半分は仲間達の為に

[あるもの]を作ろうとしていた。

 

「……まずラウラの武器を持ち歩く癖をどうにかしないとな」

 

一樹は拳銃を空港の金属探知機にも引っかからないホルスターに

入れてできるだけ目立たないようにしているが、

ラウラは惜しげも無く晒して歩いている。

今はまだ学園内だけの話なのだが、いずれは町中を歩く必要が出てくるだろう。

その時に堂々と武器を持ち歩くのは大変よろしくない。

 

「運搬型でいいだろう」

 

そう呟いたのを最後に、無言でせっせと作業をする一樹、

彼の傍らで、黒いアタッシュケースの様な物が組みあがっていった。

 

________________________

 

「むむむ、これは凄い!」

 

所変わって束のアジト。

そこで束はある資料に目を通していた。

それは一樹達と深い関わりがある代表候補生達の専用機のデータだった。

一樹は改造した後、そのデータを彼女達の所属国家に送りつけ、

更に新型のIS装備の設計図を送ることによって改造する許可を勝ち取り、

自身が持つオリジナルのデータは用が済み次第、即破棄していた。

そしてIS学園の生徒はどこにも帰属しないという条約のせいで

各国及び企業は手出しも文句を言う事も出来ず、さらに束が

「一樹達の邪魔をしたら潰す」と全世界を脅しているので、

誰も彼もが魅力的なお宝を前に泣き寝入りするしかなかった。

そして、送られたデータを、束が分析しているのである。

 

「ホントにすごい、もうすぐ紅蕾を越えるよ」

 

いくら手抜きの[第三世代(下位相互)型]とはいえ、

自身の作品を簡単に上回るものを作るなど、驚きでしかない。

 

「いっ君はすごいな、できたらお婿さんに……

ちーちゃんが黙ってなさそう、それにお父さんも」

 

束は諦めずに一樹の父を捜しているのだが、一向に見つからない。

流石の束も、平行世界の壁は越えられないようだ。

 

「せめて名前を聞きたいな……でもいっ君は教えてくれないだろうし

親友のリッ君も同じだろうし……リーちゃんはどうかな?……無理っぽい」

 

ふと、束は自身の後ろを振り向き、そこに鎮座している物を見る。

[紅椿]本来ならば箒の専用機なるはずだった第四世代型IS。

これをどうするか束は真剣に悩んでいた。

 

「封印するかあげるかは置いといて

箒ちゃんに渡したら即いっ君達に襲い掛かるだろうな

まあ、返り討ちになるだけだろうけど

あっ君も同じだし……ちーちゃんは[暮桜]持ってるだろうからな要らないだろうし

は、いっ君にあげれば……「貴様の気分次第でどうにでもなる

ガラクタなんざいらん」って言われるのがオチだろうな」

 

最近になって悩みが増える束であった。

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