先月風邪で休んだり早退することが続いたので、その分を散り返すために
シフト時間を増やしたので、帰宅したら寝る、というのを繰り返してました。
日は進み、学園祭当日となった。
四組では相変わらずリクセルが金槌を振るい続けている。
「リクセル君!翼のやつを5個追加で!」
「イルカのやつを10!」
リクセルが作るアクセサリーは質が良く、デザインも好評なうえに、
有名な[男性IS操縦者]の作品だと箔が付いている。
その為に飛ぶように売れ、休む間もない忙しさに駆られている。
「ええぃ、なんだこの売れ行きは」
夏はとうに過ぎたのに、上半身は薄いシャツ一枚で、リクセルは汗まみれになった。
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「こちらへどうぞ、お嬢様」
営業スマイルといかにもな態度の一樹に、また一人顔全体を朱に染める女性が一人。
嘗てとある小国に潜入任務をこなした際、執事として護衛を務めた一樹だ、
この程度の接客業など造作もないのである。
ラウラが言ったとうり、外来客の休憩所として繁盛していた。
しかし、客が大量に来る理由の大部分は一樹だ。
「よくぞお越しくださいました、お嬢様」
また一人、顔を朱に染めて転倒する女子生徒が一人。
顔がよく、思わず見とれる営業スマイル、そして嫌味が一切ない接待態度。
それは女性達の心を掴むには十分すぎるほどの魅力を持っていた。
「かなりの人数だな」
居室の外を見た一樹は、聞こえないようにつぶやいた。
外にはかなりの人数が長蛇の列を作っている。
当分は忙しくなりそうだと、一樹は接客に戻る。
「よくぞお越しくださいました、お嬢様」
「な!……おじょ……」
大胆なスリットが入ったチャイナドレスに身を包み、
普段はツインテールにしている髪をシニョンと呼ばれる布の中に収めた、
いわゆるお団子頭にした鈴音が紅い顔で昇天するのだった。
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薄暗い学生寮の一室。
そこで秋斗と箒が光の無い目で何かを組み立てていた。
「これだ、これさえ完成すれば……」
「思い知らせてやるぞ、桜野」
準備の手伝いどころか、最近は顔出しさえやっていない。
すでに行き着くところまで行った結果なのだろう。
ただ黙々と目の前の物を組み立てる、二人は気づいていない
自分達がやろうとしていることの結果が何であるかを。
そして疑問にも思うことはない、二人の頭の中には
フォーチュン面々に勝つことだけだった。
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「やっと終わった……」
業務中はおくびにも出さなかったが、一樹は非常に疲れていた。
休憩時間に入った一樹は人気のないベンチで横になってしまう。
「……ふふ、女子高生の力を甘く見ていたな」
横になったので多少は疲れが取れた。
ゆっくりと起き上がり、自販機で何か飲もうと立ち上がる、すると
「すこしいいですか?」
見ると、ふわりとしたロングヘヤーが似合う美人が立っていた。
「私はこういうものです」
差し出された名刺には、[IS装備開発企業『みつるぎ』踄外担当巻紙礼子]とあった。
「今回は桜野さんに、是非わが社の装備を使っていただけないかと思いまして」
たった三人だけの男性IS操縦者、その宣伝効果は代表が使うよりもはるかに大きい。
故に、装備を使ってほしいと申し出る企業は後を絶たないのだ。
最も、ISではなくガーディアンに乗る一樹とリクセルには使えないので迷惑以外の何でもないし、
秋斗にしても、白式は雪欠以外の装備を一切受け付けないので意味がない。
断りの返事しか出てこないのだ。
(おまけにオーラが黒い)
感じるのは完全なる悪意と殺意、どうやら企業を装った敵だろう。
若干悪意以外の感情を感じるが、それさえも殺意に変換されている。
敵対者だと、そう判断した一樹はさっさと話を切り上げることにした。
「生憎間に合ってますので」
「そういわずに!」
アグレッシブに腕を掴まれるが、一樹は簡単に振りほどく。
「そろそろ休憩時間が終わりますので失礼します(これ以上は気分が悪くなる)」
スタスタと一樹は教室に戻っていった。
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「ち、男のくせに」
巻紙礼子、いや、世界各地で活動していたテロ組織[
その一員であるオータムは舌打ちをした。
いや、一員だったというべきか。
世界最大のテロ組織であり、ISも多数保有していた某国企業は
どこの馬の骨ともしれない組織にオータムを含めた三人を残して全滅した。
勿論何もせずに倒されたわけではない、ISを含めた全戦力を
出し惜しみなくぶつけた、しかし無駄だった。
襲ってきた組織の保有していた巨大なロボットを前に、
最強の平気であるISは一撃で破壊され、逆にこちらの攻撃は通じないときた。
あれは戦闘ではなく、一方的な蹂躙だった。
「まあいい、潰してスコールを助け出す」
某国企業の指導者であり、恋人(同性)のスコールは
重傷を負い、人質に取られている状態だ。
解放条件は[IS学園の実力者の調査、可能なら撃破]だった。
そこで一番注目されている一樹に目を付けたのだがご覧のありさま。
しかしオータムは隙を見て潰せばいいと結論を出す。
それがどれだけ身の程知らずな考えかに気づかずに。
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「や、やっと終わった」
教室の隅で、リクセルは上半身シャツ一枚でへたり込んでいた。
騎士である以上、そんな無様な恰好を晒すことには抵抗があるが、
いかんせん今回はどうしようもない、疲労で立つことさえままならないのだ。
「お疲れ様です」
リリーがスポーツドリンクを手渡す。
「む、すまぬ」
蓋を捻り、一気に喉に流し込む。
(ふふふ、これでよし)
リリーの飲みかけだと気づかずに。
その後ゆっくりと起き上がり、制服に袖を通す。
せっかくの学園祭なのだ、楽しまなくては損だろう。
すると、見計らったようにセシリアがやってくる。
「リ、リクセルさん、一緒に学園祭を回りませんか?」
平常心を意識して話しかけるセシリアだが。
(裸……リクセルさんの裸……)
鍛えて引き締まった恋する相手の上半身の裸を、
シャツ越しとは言え直視するのは
セシリアには刺激が強すぎたようだ。
「私もリクセル様とご一緒したいのですが」
つぶらな目で見られてはリクセルも断りづらい。
「貴女は後にしてもらえませんか?」
「貴女こそ」
これが漫画やアニメなら、二人の視線がぶつかり合って火花が飛んでいるだろう。
まあ、セシリアは一服盛られ、リリーは臨海学校で邪魔された恨みがある。
仲が改善されるのはしばらく先の話だろう。
「すまんが、今日は二人一緒に回ってもらえぬか」
普段なら、何かしろの方法で一人づつと回るだろう。
しかし、今回はそうできない理由があった。
(何やら、胸騒ぎがする)
一樹ほどではないが、リクセルにも鋭い第六感がなる。
それが今日中に非常事態があると告げていたのだ。
だからこそ、対処しやすいように一緒に回ることにした。
何もなければ笑い話ですむのだから。
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「むう、お兄ちゃんはどこだ?」
休憩時間になったので、ラウラはメイド服のまま一樹を探していた。
メイド服のスカートは丈が短く、フリルをふんだんに使われているので、
ラウラの幼さという魅力をより引き立てていた。
「どうかしたか?」
「ぬぉ!」
いきなり後ろに立たれ、ラウラは仰天の声を上げる。
立っていたのは、たい焼きを銜えた一樹だった。
「お、お兄ちゃん、脅かさないでくれ」
「悪い悪い、食うか?」
袋からたい焼き(中身はカスタードクリーム)を差し出す。
「貰おう!」
受け取り、さっそく齧り付くラウラ。
ここ最近は対戦部面々と街に出かけるなど、年相応の行動が増えたラウラ。
甘い物は当然好物になっている。
人の触れ合いが増えたために浮かぶようになった笑顔で齧り付くが、
何やら不安らしき物を感じた。
(お兄ちゃん、何を警戒しているのだ?)
酷く不安に思うが、そこは
普段は冷静な一樹がここまで経過するような状況だ、
仮に何事もなかったとしても、「気のせいだった」と笑い話ですむ。
そう考えながら、二人は食い物関係の場所を中心に周りに
一通り腹に収めてていると、人気のない場所に来た。
「うん、うまい」
「だな」
そこに先ほどであった人物、巻紙礼子がやってくる。
「おや、先ほどの…まだ何か?」
「はい、桜野さんのISをいただこうと思いまして」
巻紙礼子、いやオータムがそう言って蹴りかかろうとしたその時、
二回、乾いた音が響き、オータムが膝をつく。
「だと思ったよ」
団子の串を銜えたまま、拳銃を撃った一樹は、無表情でそう呟いた。
「て…てめぇ……何でそんなもん持ってんだよ?!」
足を撃たれたオータムが忌々しげに吠える。
「仕事柄ね、必需品なんだよ」
「敵か!」
一樹を庇う様に、ラウラがナイフを抜いて前に立つ。
「ち、成長してやがるな」
「何のことだ?」
「知らないなら教えてやるよ……三年前にお前を誘拐したのはうちの組織なんだよ!」
オータムは事実を使って相手を相手を怒らせる作戦に出る。
昔誘拐した相手が目の前にいるなら、怒り狂うのが普通だ。
しかし、オータムは前提を間違えていた。
「人違いだ」
そう言ってオータムの左肩を撃ち抜く。
久しぶりに言うが、一樹は記憶喪失だ、身に覚えなどあるはずがない。
「こ、このクソガキガァ」
「下がってろラウラ、俺との戦いをご所望らしい」
「わかった」
映像で知ったことだが、一樹は千冬に圧倒的な差を見せつけながら勝利した。
今更誰かに負けるとは到底思えない。
むしろ、相手の命の方が危機だろう。
「さあ、とっとと来な」
エクエスを展開し、ビームサーベルを引き抜く。
「なめるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
八本の装甲脚を持つ蜘蛛のような専用IS[アラクネ]を展開し、
雄叫びを上げながら襲い掛かるオータム、しかし
「遅いな」
刹那、オータムの両腕と八本の装甲脚は斬り落とされていた。
リミッターを解除したエクエスの武装の前には、絶対防御など濡紙の盾でしかない。
おまけに一樹は人を傷つけるどころか、人を殺すことにも抵抗はない。
「いぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「うるさい」
絶叫を上げてのたうち回るオータムを、一樹は容赦なく蹴り飛ばす。
「う………」
幾ら軍人とは言え、やはり殺し合いを経験したことが無いラウラには刺激が強すぎたようだ。
(民間軍事会社だからな、人を殺していて当然か……)
口を押えながら、ラウラはやっぱりと納得する。
PMCや海兵隊はその性質上、現代最も実戦経験豊富な軍事組織である。
紛争地帯や、海賊出現地帯に派遣されることが多いからだ。
そこに所属する一樹は殺人経験はあるだろうと、ラウラは思っていた。
もちろんその予想は当たっている。
「さて、どこの差し金か…言うわけないか」
(ま、まずい………殺される!)
ISを乗るようになったオータムが初めて経験する[死の恐怖]
この時になって、オータムは自分がどれだけ身の程知らずだったのかを悟った。
撃破は[可能なら]、バカなことは考えずに逃げればよかったのだ。
この怪物が起きる前に、牙をむく前に。
「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!」
残っていた武装のミサイルで壁を破壊し、すぐに逃げるオータム。
もはや時間稼ぎに閃光弾を、などとも思いつかないらしい。
「逃げられるとでも?」
今まで一度も使われなかった武装、ビームマグナムを取り出した一樹は、
上空で既に小さくなっているオータムに向け、躊躇い無く引き金を引いた。
バシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!
極太のビームが轟音と共に放たれオータムの足に直撃、
そしてオータムはISと共に[蒸発]した。
「すまない、嫌な物を見せたな」
「お兄ちゃん……」
エクエスを解除した一樹の制服の裾を、ラウラはそっと握る。
ISに乗る以上、いつかは手を血で汚さないといけない。
それを自覚しているラウラに、一樹を嫌うことはできなかった。
この初恋は、そう簡単には覚めないだろう。
しんみりとした空気が流れる中、再び爆音が響く。
「!行くぞ!」
「わかった!」
二人は知らない、この日が、今までの日常を崩す日になることを。
とまあ、最初のハッキリわかる殺人描写になったわけですが…
駄作ですね、すいません。