いよいよ鈴音のガーディアンを登場させます。
ついでに例の彼女も出します。
上品に紅茶を楽しんでいたリクセル達三人の耳に、爆音が響く。
「何事か?」
「いったい何が?!」
「行きましょう!」
せっかくのティータイムだが、仕方がない。
リクセル達は爆音が聞こえた方向へ走り出す。
その時、リクセルの魔法使いの力が、ある物を感じ取った。
「(この気配……
そう、フォーチュンに籍を置く者にとっては宿敵ともいえる存在だった。
奈落の力は脅威だ、ISでは大した抵抗もできないだろう。
感覚を頼りにアビスゲートが開いたであろう場所に向かって走る。
「リクセル!」
「一樹!お前も感じたか?!」
一樹とラウラも駆けつけきた。
「ああ、今までとは違う」
「違う?」
「どうゆうことですの?」
ラウラとセシリアが首をかしげる。
その疑問に、リリーが答えた。
「この学園が、戦場になります」
「「!」」
そして、突如……五人の前に黒い獣のような異形が現れる。
最も小型の部類に入る奈落獣、アンティラだ。
「「「「「!!」」」」
見たこともない異形の怪物に、セシリアとラウラは硬直してしまう。
しかし、フォーチュンの三人は早かった。
即座に己の愛機を展開、それぞれの近接戦闘用武装でアンティラ達を切り裂いていく。
「気を付けろ!こいつらは本気で殺しに来るぞ!」
[死]、それをラウラとセシリアは明確に感じ、竦んでしまうが、
己の責任と一樹達の存在を思い出し、ISを展開する。
ラウラはカノン砲を、セシリアはライフルでアンティラを狙い撃っていく。
幸い、アンティラは奈落獣の中では最も弱い分類に入る。
威力を押えた競技用のIS装備でも問題なく撃破することができた。
しかし数が多く、周りを見る限り生徒や外来客の避難もほとんど終わっていない。
今はまだ大した被害は出ていないようだが、このままでは間違いなく死傷者が出る。
「皆、通信はできるか?」
「……だめだ、全く繋がらない」
「こちらもですわ」
アビスの影響を受け始めているのだろう、専用の対策が施されている
ガーディアンの通信システムならともかく、
ISの通信回線は完全に遮断されていた。
「俺が避難誘導と護衛に向かう、皆は先に行ってくれ」
実質的な攻撃範囲と手段が多い自分が護衛に相応しいと判断した一樹はそう言った。
「承知した、我々は第二アリーナに向かう」
「お気をつけて、二人とも行きますよ」
リクセルが同意し、リリーが残り二人を促す。
「死なないでください、貴方にも教わりたいことがまだあるんですから」
「任せてくれお兄ちゃん!」
四人が第二アリーナに向かって駆け出していく。
「そっちもな」
アリーナに向かう四人を見送った後、一樹は一度エクエスを解除して駆け出す。
エクエスが与える威圧感はISの比ではない。
避難誘導には向かないだろう、そう考えた一樹は拳銃を取り出して逃げ遅れた人間を探す。
すると、腰を抜かして動けない少女と、喰らい付こうとするアンティラを見つけた。
「させるか」
間髪入れずに、一樹はアンティラの頭を撃ち抜く。
元々歩兵のアサルトライフルでも倒せるほど弱い奈落獣だ、すんなりと絶命する。
「怪我は?」
「だ、大丈夫………一夏さん?!」
少女は蘭だった。
鈴音から招待状を渡されていたのだ。
「?……ついてこい」
身に覚えがない呼び名に疑問を持つが、気にせず言う。
しかし、腰が抜けて動けない状態だった。
しかたなしに、一樹は蘭を放り上げて背負う。
「ひゃ?!」
「行くぞ」
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それは学園祭に客が最も集まるであろう時刻に起きた。
「くっくっくっくっく」
「ふっふっふっふっふ」
第二アリーナの中央、白式を纏った秋斗と、
打鉄を無断拝借した箒が不気味な笑みを浮かべて立っていた。
言っておくが、ここでこの時間に出し物をやる予定は一切ない。
「貴方達、なにをやっているんです?」
気づいた教師が放送で呼び掛けるが、二人は笑ったままだ。
そして、黒い結晶が組み込まれた機械に、ISのコードに差し込んだ。
するとどうだろう、突如禍々しい渦が現れ、そしてISが変異した。
百式は両腕が刀になった黒い恐竜のような姿
打鉄は大ぶりな刀を背負った朱い鬼ような姿に。
奈落の力で強制的に[
白式[魔獣]と打鉄[朱鬼]、サイズこそISだが、最早気配は奈落獣そのものだった。
「コワシテヤル、スベテヲ!!」
「アハハハハハ!ゼンブコワレロ!!」
そう叫び、手当たり次第に破壊活動を始める。
悪夢の一日が始まった。
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「頼みます!」
「え?!」
避難誘導にあたっていた麻耶に蘭を押し付け、一樹は大急ぎで引き返していく。
しかしうまくいかないのはいつものことだ。
「!」
少し開けた場所に入った途端、嫌な予感を感じて後ろに飛び、エクエスを展開する。
すると、先ほどまでいた場所に青色のレーザーが飛んできた。
セシリアのブルーティアーズに似た形状のISを纏い、バイザーで顔を隠した黒髪の少女だった。
「何もんだ?」
問いに答えるように、少女はバイザーを投げ捨てる。
きつめに整った美貌、それは織斑千冬と全く同じ顔だった。
まるでアルバムの写真から切り取ったようだ。
「織斑マドカだ」
そう名乗り、銃口を向ける。
「私が私であるために、死んでもらうぞ織斑一夏!」
しかしレーザーが放たれる前に、エクエスのバルカンが火を噴き、ライフルを破壊する。
「下らんな、俺を殺したところで無意味だ」
「!ッ黙れ!」
今度はビットを展開して襲い掛かるが、一樹もイグニスを展開、
逆にすべて撃墜する、勿論弾頭タイプも纏めて。
「お前は言ったよな、織斑マドカと」
「だからどうした!私は試験管から産まれて愛情もなく織斑千冬の代用品として生きてきた!
だからお前達を倒して、代用品ではなくより優れた存在だと証明して見せる!」
お互いにナイフを取り出して切り結びながらマドカが叫ぶが、
一樹は片腕だけですべての斬撃を捌いて見せる。
「名前がある以上、お前はもう[個人]だ
[織斑千冬の代用品]じゃなく[マドカという少女]、とっくに独立した存在なんだよ
遺伝子ではない、人格ではない、魂が織斑マドカという存在なんだ」
マドカのナイフを弾き飛ばし、空いた片腕で殴りつける。
「それでも代用品だと思うなら家に来い、俺の家族としてやり直せばいい」
ISが強制解除されて倒れこむマドカを、同じく解除した一樹が優しく抱き留める。
一樹はマドカをオータムのように殺す気にはなれなかった。
スターゲイザーとして感じた彼女の孤独、そしてぶちまけられた彼女の思いを受け止めた以上、
敵だからと殺そうとは思えなかった。
「……優しいな……そして意地悪だ…………[兄さん]」
耳を澄ませなければ聞こえないほど小さな声でマドカはそう呟き、気を失った。
「さ、桜野君?!大丈夫ですか?!」
避難誘導が終わって駆けつけてきた麻耶が驚愕の声を上げる。
「すいません、また頼みます」
「え?!ちょっと!」
マドカを麻耶に一旦押し付け、一樹は再び走り出した。
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「「アハハハハハハハハハハハハハハハ!」」
第二アリーナに狂ったような笑い声が響く。
教師陣が使えるISの半数を動員して立ち向かったが、あっさりと全滅。
二、三年生の専用機持ちも攻撃に参加したが、同じ結果に終わった。
「皆、大丈夫?」
「なんとかってところね」
「三人には感謝しないとね」
現在戦える状態なのは簪、鈴音、シャルロットの三人だけだ。
一樹達はアンティラの数の多さに、たどり着けていない。
おまけに三人は劣勢に追いやられている。
シールドエネルギーは半分以下、武装も所々破損している。
本来ならとっくに撃墜されているだろう、しかし一樹の改造によって
第四世代クラスの性能と、訓練によって代表クラスの実力を得ているので持ちこたえている。
「簪、何か作戦はない?」
「私達の武器じゃ効果が無い、なんとか弱点を探さないと」
二式は既にミサイルが尽き、他の武装も破壊寸前だ。
昴はショットガンとアサルトライフルが破壊され、ライフルは弾が少々、
シールドビットも罅が入り、もう持たないだろう。
甲龍にいたっては、もう武器が無いのである。
(悔しい、何もできないなんて)
鈴音は悔しかった、真っ先に劣勢になってしまった自分が。
まだまだ一樹に遠く及ばない弱さが。
一樹達が駆けつけてくるなら、問題無く勝利できるだろう。
あの三人なら、それだけのことをやってのけると思える。
しかし、自分たちは時間稼ぎさえできない状態だ。
(しっかりなさい!必ず追いついて隣に立つって決めたじゃない!)
歯が砕けんばかりに噛締め、こぶしを強く握る。
(力が………力が欲しい!)
その時、鈴音の脳内に獅子の雄叫びが響く。
(ホンスー?)
いつの間にか目の前に、自分に懐いた機械の獅子が見える。
(あたしに、力を貸してくれるの?)
頷くように、ホンスーが吠える。
それに励まされた鈴音は、しっかりと前を見据える。
「いくわよ、ホンスー!」
そう叫んだ途端、鈴音は光に包まれた。
「きゃ!」
「何?!」
そして光が収まると、そこに鈴音の代わりに別の存在が立っていた。
甲龍の色に、赤を足したトロコロールカラーの装甲。
背中には二本一対のブレードと、甲龍のアンロックユニットに似た砲台が一門。
メタリックイエローの眼を輝かせ、それは産声にも思える雄叫びを上げた。
「グウォォォォォォォン!!」
それはライオン型マシンザウルスがISを取り込んで生まれた存在。
鈴音の新たなる力にして相棒。
戦う意思をもった金属生命体の獣。
[ブレードレオ・甲紅]であった。
MZ-145 ブレードレオ
全高10,8m 全長24m
重量132t
最高時速330km
外見イメージ[ライガーゼロシーザー・ザ・キング]
武装
ストライククロー 多くのマシンザウルスに装備されている爪
ザウルスブレード すれ違いざまに斬ることに適したブレード
破壊光線 ブレードに装着されている砲門から放たれるビーム
衝撃砲 甲龍の物と同じ、ただし大きいので威力は上、真空でも使える
ブレードレオが甲龍を吸収(一体化ではなく)して進化した姿。
基本性能、特に格闘能力が大幅に強化されている。
ISを吸収したため、宇宙や空中でも僅かだが戦闘可能になった。
最初はライガーゼロか、チェンジマイズできるレオストライカーをベースに考えて、
設定を作っているうちにふと思いました。
「鈴音に多機能を使いこなせるのか?」と
甲龍は原作でもかなりシンプルだったうえに、鈴音は器用さとは縁がなさそうなヒロイン。
なのでよりシンプルかつ、外見がいい漫画版主人公機をベースにしました。
一樹が換装を使いこなせるのは[スターゲイザー]+[指導役の多さ]を理由にしています。