(うん、あの時と変わらないわね)
初めてホンスーに乗り込んだ感覚、それとほぼ同じ物を鈴音は感じた。
あの時同様、コックピットで座席に座り、操縦桿を握っている、
あくまでも意識の中、その話だが。
(でも、伝わってくるのよね)
最初に乗った時は感じなかった、しかし今は、
[一体感]をしっかりと感じ取っていた。
(そっか、認めてくれたんだ、私のこと)
マシンザウルスは認めた相手しか乗せない。
肉食獣型など、認めなければ食い殺すほどだ。
ホンスーは鈴音に自身の搭乗者たる資格を感じ取り、
そして彼女の思いの強さから、その選択は間違っていなかったと確信した。
(さあ、行くわよホンスー!)
メタリックイエローの目が輝き、ホンスーは産声のような雄叫びを上げる。
そして背中のブレードを展開、真っ直ぐに秋斗に向かって行く。
「フン!スガタガカワッタカラッテナンダ!」
完全になめきった態度で、秋斗は左の刃を振るう。
「なめんじゃないわよ!」
甲龍の双天牙月そっくりな形状のブレードは
秋斗の刃と正面からぶつかり………断ち切った。
「ナニ?!」
「キサマァァァァァァァァ!」
箒が斬馬刀というべき刀を振るうが、鈴音は難なく
牙で受け止め、そして噛み砕く。
「!」
「あんたらみたいな薄汚い力とは違うのよ!」
アビテクで強化されたとはいえ、所詮は作業用のパワードスーツを
ほぼそのまま戦闘用にしただけの物。
純粋に戦闘兵器として生み出されたホンスーの相手ではない。
噛み砕いた勢いそのままに、箒に体当たりを仕掛け、更に衝撃砲をゼロ距離で放つ。
モロに受け、箒は吹っ飛んだ挙句壁にめり込む。
「オノレェ!クズノブンザイデェ!」
腕に付いていたバルカン砲を乱射するが、ホンスーの
持ち前の身軽さとスピードで難なく回避し、尾に付いていたブレードを振るって
腕のブレードとバルカン砲をすべて斬り落とした。
「ウヲォォォォォォォォォォォ!」
今度は箒が脇差を抜いて切りかかるが、鈴音は即回避、
そして、ISコアを食い千切った。
「バカ…ナ…」
ISコアが無くなったことにより、
打鉄に動きを封じられたまま、箒は気絶した。
「オノレェェェェェェェェェェェェェェ!!」
秋斗が背中の大刀[雪片鴉羽]を引き抜き、今までとは比べ物にならない
速さで間合いを詰め、鈴音に斬りかかる。
「!」
鈴音はとっさに飛びのいて回避、再度ブレードを打ち付けるが、
腕に付いていたブレードの様に斬れない。
(固い!)
何度もつばぜり合いをしながら、立ち位置を変える。
一応速さも馬力も十分対処可能な範疇だ。
しかし、[対処]と[勝利]は違う。
(悔しいけど、今の私達じゃこれが限界ね)
「アハハハハハハ!ドウヤラテズマリノヨウダネ!ショセンクズハ」
「ホント、バカ丸出しじゃない」
「ナンダト?!」
「確かにね、今の私達じゃこれが限界よ……でもね」
ホンスーの中で、鈴音は不敵に笑う。
「私達にはあんたに無い物がある」
「ハ!ソンナモノアルワケ」
「だからアンタはバカなのよ、私達にあって、あんたに無い物、それは……」
瞬間、鈴音は飛びのく。
「[仲間]よ!」
その言葉と同時に、桃色のビーム、スナイパーライフル、青いレーザー、
大型カノン砲、無数のミサイルが秋斗に直撃する。
「遅いわよ!」
「すまん!」
アンティラを蹴散らした一樹達が駆けつけて来たのだ。
しかし、アリーナにまだ残っていたアンティラ達が群がってきた。
そして秋斗は、真っ直ぐ一樹を睨み付ける。
「皆、奴は俺一人で相手をする、その間にアンティラと負傷者を」
「「「「「了解!」」」」」
それぞれがそれぞれの方向に飛び、一樹はムラマサブラスターを引き抜く。
「さあこい屑野郎」
「ウルサイ!クズハオマエダ!」
怒り任せに秋斗は鴉羽を振るうが、一樹はビーム刃で難なく受け止める。
「コノ!イイカゲンタオレロ!」
「五月蝿い、お前天才なんだろ?だったら自分でどうにかしろ」
その後も秋斗は怒涛の連続攻撃を繰り出すが、
一樹は片手間に回避し、受け流し、そして反撃をぶち当てる。
「グガァ!」
「お前は弱い、俺が戦った敵の中で一番弱い」
「フザケルナ!ボクハテンサイナンダゾ!ヨワイワケガ!」
「弱いさ、初めて戦った時と何も変わらないんだから」
秋斗は一樹が自分より強いと認めなかった。
それが現実にも係わらず、異常に歪んで膨れ上がったプライド故に認めなかった。
だから前に進むことは無く、ずっと止まっていた。
幼いままに、欲望だけが成長していった。
何も変わらない、それは後退と同意だ。
対して、一樹はリクセルや簪達とずっと鍛錬を積んでいたし、
元居た世界での経験をしっかりと生かしている。
そう、始めから秋斗に勝算などなかったのだ。
「所詮、お前は人を見下すしか能がない、ただの愚物だ」
「ウルサイ!ウルサイ!ウルサイ!ウルサイ!ウルサイ!!」
醜く歪んだ表情で秋斗は鴉羽を唐竹割りに振るう。
「無駄だ」
それを一樹は平然と片手で受け止め、圧し折った。
「バ……バカナ、ソンナバカナ!」
初めて恐怖を感じ、秋斗は後ずさる。
「ナンデダ?!ボクハチカラヲ!ダレニモマケナイチカラヲ!」
「お前自身が弱いからだ」
一樹は右腕にエネルギーを収束させる。
「拾った装飾品を身に着けて偉くなった気でいるだけなんだよ
猪口才なクソガキが、認めてほしいなら相応の努力をすればよかったんだ」
ブースターを吹かし、一樹は一気に接近する。
「ク、クルナァァァァァァァァァァァァァ!」
最後の足掻きに、秋斗は口から朱い光線を吐く。
しかしそんな攻撃が当たるわけが無く、一樹は難なく忌避して秋斗を掴む。
「消えろ」
そのまま椀部に装着さていたビーム砲を今撃てる最大出力で発射、
白式は強制解除されるだけでなく、修復不可能なスクラップに成り果てた。
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時間を少し早めて学園の医療施設。
問題を起こした秋斗と箒を隔離している病室の前で、一樹達は集まっていた。
「お兄ちゃん、少し話がある」
「ん?」
不機嫌そうに、ラウラは一樹を、正確にはその隣を睨む。
「その女は誰だ?」
そこには、マドカが猫の様に一樹にすり寄っていた。
「お前こそ誰だ?兄さんの知り合いか?」
「兄さんだと?お前は桜野一樹の妹のつもりか?」
「そうだ」
エッヘン、という表現が合う表情をマドカは浮かべる。
「ふざけるな、桜野一樹の妹は私だ、お兄ちゃんと呼んでいいのは私だけだ」
「何を言う、兄さんは私を妹だと言ってくれたのだ、だから妹は私だ」
「ほざけ、真っ先に私が妹宣言して承諾してもらったのだ、
だからお兄ちゃんの妹は私だ、異論などありえん」
「………」
傍から見れば子供言い争いでしかない光景に苦笑する一樹だが、
二人に抱き着かれているので動くに動けないのである。
「一樹さん、私が代わりにやります」
「すまない」
一樹が持っていたタブレット端末を受け取り、
リリーはあの戦闘でのデータを調べ始める。
本来この面子では一樹が適任なのだが、動けないので
次に適しているリリーが変わることにしたのだ。
「……お前達もいたのか」
現場指揮で忙しかった千冬と、ハッキングであらましを知った束が駆けつけて来た。
「箒ちゃん達は?」
「そこの部屋だ」
その言葉を合図に、全員が病室内に入る。
秋斗も箒もすでに起きていたが、様子がおかしかった。
「秋斗」
「その声は姉さん?」
キョロキョロと秋斗は辺りを見渡す。
灯が付いている上に、すぐ隣に居る千冬に全く気付いていない。
「……もしかして」
束が何処からか謎の機械を取り出し、秋斗にかぶせる。
そしてホログラムディスプレイのデータを眺め、息をのんだ。
「視覚神経が……消えてる」
「なんだと?!」
千冬が仰天の声を上げる。
そう、秋斗は失明したのだ。
「まさか……箒ちゃんもどこかおかしい?」
「………足が動きません」
これまた機械を使い、情報を読み取っていく。
「……両足の運動神経が消えてる」
「一部神経の喪失、高濃度のアビスエネルギーを浴びていた場合
大よそ6割ほどの確率で起こる現象だ」
一樹が、詩を朗読するように呟く。
「いっ君、何で知ってるの?」
束が一樹達を見つめる全員を代表して言う。
「それは………俺達が別世界の人間だからだ」
次回は[機甲世界]の説明、及び黒幕が動き出します。