そのため読んでいるとつまらなく感じるかもしれません。
「どういう意味?」
簪が、理解できないと聞く。
「そのままの意味だ」
対して一樹は平然と返す。
「ちょ、ちょっとまって!」
束が慌てて空中にホログラムディスプレイを出現させる。
「調べたところ、いっ君は行方不明になったちーちゃんの弟、
織斑一夏本人だよ、ほらDNAデータが証明してるし、
………まあ、記憶喪失のいっ君には無関係かもしれないけど」
そのことを聞き、秋斗はより暗い表情になる。
「この世界出身……か」
一樹が壁にもたれかけたまま、どこか遠くを見るように呟く。
「出自はこの世界だが、ここ三年間は違う世界に居た
そうだな、便宜上は暦からとって[機甲世界]と呼ぼう」
次に一樹はリクセルとリリーを見る。
「歴史については俺の方が詳しいから全て俺が話す、構わないか?」
「任せよう、私も自国の歴史しか知らん」
「私も専門外ですから」
頷き、一樹は改めて簪達に向き合う。
「まず事の始まりは旧暦である西暦で1956年3月11日、
とある古代遺跡からある物が発掘されたことだな」
「ある物?ロストテクノロジーとか?」
シャルロットの質問に、一樹は顎に手を当てて考える。
「ある意味正解かもな、それは特殊な金属
あるいは金属と思われる物質、それか自立可能な金属細胞か
とにかくそれは従来の金属とは明らかに異なる存在で、
発見した研究者たちはそれを[
そして、ALTIMAで作られた基本フレームを持つ人型ロボット、[ガーディアン]が生まれた」
「……いっ君、もしかしていっ君たちの機体は」
「そう、ガーディアンだ……鈴のホンスーもな」
束は言葉が詰まった。
ISなど話にもならない機動兵器、それは特別な物ではなく、
一樹達の世界にはありふれた物だと理解した。
自分がどれだけ矮小な存在だったかを、思い知らされた気分だった。
「その後、宇宙進出及び人口増加対策とした建造された
宇宙植民地[スペースコロニー]の利権を巡り、1999年7月1日
第一次世界大戦が勃発、この戦争で初めてガーディアンが投入された
強固な装甲とALTIMAから放出されるAL粒子によるバリアであらゆる攻撃を
防ぐ防御力、人型故に様々な武器を運用できる上に戦う場所を選ばない凡用と
それによる攻撃力、AL粒子によってレーダーを始めとする様々なセンサーを
無力化できるステルス性、正にガーディアンは戦車戦闘機等従来兵器を圧倒する
機甲世界最強の兵器だった、だから戦争は直ぐに終わる……はずだった」
「え?なんで」
鈴が呟く、それほどの兵器が存在するなら直ぐに終わるのは火を見るより明らかだ。
それがなぜ早期決着にならなかったのか。
「悪いことに、どの陣営もガーディアンの開発と実戦投入、量産に成功していたのさ
だから戦争は長期化し、先が見えないほど泥沼化した
そして、人々はガーディアンよりも強力な力を求め、パンドラの箱を開けた、
平行して存在する純粋なエネルギー世界ともいうべき十一次元世界[
に対してAL粒子の干渉力場によってゲートと呼ばれる穴を作り、膨大なエネルギーを
取り出すことのできるアビステクノロジー、略してアビテクを完成させたのさ
織斑と篠ノ之が異常に強くなったのもこれが理由だ、勿論欠点が多いんだがな」
ラウラはベットに居る二人を見て、確信した。
「人体に有害なのだな?」
「そう、狂暴化と共感性の低下で獣みたいになったり、二人みたいに
肉体に異常が発生する、更に無差別に破壊と殺戮を行う化け物[奈落獣]が出現し、
おまけでゲートが固定化されると半径数百キロ四方が焦土と化し、
アビテクを使用しているもの以外は何も残らずに粉砕される、
もう核兵器よりタチが悪い代物なのさ」
突然、秋斗が笑い出す。
「やっぱりな!お前達のせいだ!」
自分がしたことを棚に上げて、一樹達を避難しようと指さす。
しかしそんな子供の言い訳が通じる訳が無く、箒以外の皆が冷たい視線をぶつけ、
一樹が千冬でも反応できないアッパーを繰り出す。
それは秋斗の顎に直撃し、秋斗は天井にぶつかった後、ベットに倒れこむ。
「バカが、どこでアビテクを手に入れたのか知らんが、
使ったのも暴れたのも、この結果になったのもお前のせいだろ
怪しい物に手を出せば碌なことにはならないのが古今東西の常識だろうが
自分を棚に上げて戯言を抜かすな」
そして一樹は再び皆に向き直る。
「で、どの陣営も勝つために奈落兵器を無差別に使い続け、
おおよそ2013年に、世界は一度滅亡した
記録も記憶もあいまいだから正確な日付は不明だ」
滅亡、それはいったいどんな光景なのか、皆想像さえできなかった。
「文化、伝統、歴史、技術の大半が失われ、地殻変動で
地図は紙切れに変わり、気候も大きく変動、地軸もずれた
それから復興までの期間を大暗黒期と呼ぶ
その時に復興の力になったのがガーディアンだ
災害に立ち向かう盾、都市再建の道具、犯罪者等への剣としてな」
「戦争の為の破壊神が、一変して守護神か……」
「皮肉ね」
束がそっと呟き、いつの間にかいた包帯だらけの盾無が皮肉を言う。
「その後[人類再建宣言]が出され、再び宇宙進出が始まった
この時に暦が[機甲歴]に改められたんだ、過ちを忘れないために
もっとも、さっそく繰り返されちまったがな」
簪達が顔を見合わせる、それほどの過ちがなぜ繰り返されたのかわからないからだ。
「再建当時、コロニーは地球連邦に所属する諸国の施設扱いだったんだ
施設だから固有議員の選出はできず、住民は税金に加えて使用料を
支払う必要があった、最初は地球側の費用負担が理由で我慢できた
しかし復興が進むにつれ、不満は膨れ上がる一方だった
不平等な税制、移動の大きな制限、環境が悪いと考えられていた故に
素行不良で左遷された兵士で構成された駐留軍の横暴、三代にわたる住民ローン
これらの不平等体性に対し、政治思想家でコロニー間での指導者的な存在だった
ジークフリード・マリアムはコロニーを狼、コロニーと月の連合体を群れに例えた
[ヴォルフ主義]を提唱し、纏まっていった宇宙と地球の溝は深まる一方だった
そして機甲歴53年8月1日、コロニー[オニール]で駐留軍の略奪に抗議する
デモ隊に向かってガーディアン部隊が発砲し数百人の死者が出る[オニールの悲劇]を
切っ掛けにコロニー側は共存路線を放棄、武力闘争路線に切り替えた
そして機甲歴53年3月2日、月面とL1・L2コロニー群は一斉蜂起
[ヴォルフ共和国]を名乗って建国宣言をして地球側に宣戦布告をした」
今のままだったら似たようなことが起こるかもしれない。
そんな冷たい予感が簪達の脳裏に浮かんだ。
「当初は独立のみを目標にしていたんだが、連邦側が奈落兵器の投入
とその報復、停戦協定の締結失敗と直後のマリアム暗殺によって泥沼化
その後国力差で追いつめられた共和国親衛隊政府はコロニーを
質量弾頭として地上に落下させる[コロニー落とし]で地球の殲滅を図ったが
連邦軍巡洋艦[アークバード]のスーパーロボット部隊と
コロニー落としに反対して協力関係になった共和国第七艦隊
通称[スターゲイザー部隊]によって阻止に成功
そしてそのまま親衛隊政権を打倒して連邦に再加入し、戦争は終結した」
誰も何も言わなかった、言えるわけがない。
一樹達の世界は、この世界以上に戦乱に飲まれていた世界だった。
それに比べれば、自分たちの世界など信じられないほどぬるま湯だ。
何かを言う資格などあるはずがない。
「それでも、第三次世界大戦の火種は幾つもある
爬虫人類の国家[恐竜帝国ハイパーボレア]の出現
魔法大陸[レムリア]の出現、宇宙から来た金属生命体[メタルガイスト]の侵略
犯罪組織の複合体[ネガティブシンジゲート]、親衛隊政権残党の[ノイエヴォルフ]
そしてアビテクで繁栄している[ラーフ帝国]とその特殊部隊[ディスティニー]
何時戦争が始まってもおかしくないほどの状況だ
だからコロニー落としを防いだ面々によって第三次世界大戦を防ぐ為の
組織が設立された、それが……」
一樹の隣に、リクセルとリリーが並び立つ。
「俺達が所属する民間軍事会社[フォーチュン]だ」
一樹が語り終え、ペットボトルの水を口に含んだその時。
「お、織斑先生!大変です!」
突如麻耶が慌ただしく駈け込んで来たのだった。
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「どうやらゲートは閉じられてしまったようです」
「そうか、まあいい……作戦を開始するぞ」
「Mはどうします?」
「放っておけ、スコールはとうにくたばったし、
アイツも気づいていないだけでナノマシンも御釈迦だ」
終わりの魔の手が、すでに伸び始めていた。