仕事の大詰(スーパーなので、稼ぎ時でした)、実家訪問。
おかげでさっきまで寝ていました。
(さて、これからどうするか)
一夏はそんなことを考えた。
記憶喪失故に帰る家が何処にあるかわからず、
身分証明できる品も食事をする金もない。
このままでは当然野垂れ死にだ。
一応季節は冬になってないようで暖かい、
どこかで野宿することは難しくないだろう。
しかし、徹底的に管理されている空間である以上、
公園に食べられる野草などは当然存在しないだろう。
となれば、残飯をあさるしかなく、最悪警察に補導される。
身分証明が出来ない以上、事態はさらに悪化するだろう。
(参ったな……)
しかし、ここで瞑想していても事態は進展しない。
一夏は、移動しようとした……その時。
ズドーン!
突如響く轟音と爆発。
それだけでも異常事態だということが伝わる。
一夏はその方向へ全力疾走した。
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「何で毎回毎回!」
宇宙服を兼ねたパイロットスーツに着替えた樹は恨めし気に愚痴った。
自分が書いた設計図から作られた新型機を受け取りさえすれば、
家に帰ってのんびりできるはずだったのだが、
受取先の研究所があるコロニーから急遽、救援要請が出た。
それもあろうことか、[
嘗てガーディアンと共に世界を滅ぼした存在、
この[機甲世界]に平行して存在する、純粋なエネルギー世界と言うべき
十一次元空間[アビス]との間にAL粒子を干渉させて[ゲート]を開き、
膨大で強力なエネルギーを取り出し利用するのが、[アビステクノロジー]だ。
しかしゲートを開けば、[奈落獣]と呼ばれる、破壊活動を行う怪獣が出現し、
ゲートが安定して完全に開けば、流れ込むエネルギーにより
半径数百キロ四方にある、アビスエネルギーを使用しない物を粉砕し焦土にする。
そしてアビスエネルギーに触れた人間は攻撃衝動・残虐衝動が高まり、
さらに他者との共感性が極度に下がって、まるで怪物の様になってしまう。
これだけで酷いが最悪の場合、この地球を含めた太陽系をも破壊してしまう、
まさに開けてはならない[パンドラの箱]なのだ。
早く奈落獣を倒してゲートを閉じなければ、このコロニーは人が住めなくなってしまう。
それに避難は完了していない、どれだけの民間人が犠牲になるか。
「間に合えよ」
縋るように呟き、フルフェイスヘルメットを被った樹は
黒主体のカラーリングと額のV字アンテナ、デュアルアイとV字の背部パーツ
そしてバックパックに取り付けられた大型キャノン砲が特徴の愛機、
[
スイッチを操作してエンジンを始動、モニターを付ける。
シートベルトを締め、ヘルメットのバイザーを下す。
最後に操縦レバーを握り、ペダルを踏む。
同時にデュアルアイが光り、ノワが動き出す。
そのまま移動し、デルフィナスのカタパルトに足を固定する。
「ルーナ・ノワ、出る!」
カタパルトから射出された勢いを利用し、
ノワはスラスターを吹かせながらコロニーに向かった。
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爆音が響く場所にたどり着いた一夏は、己が目を疑った。
「巨大な・・・・・・ロボット?」
横にに割れたゴーグルの様な目をした、巨大なロボットの一団が
手にしたマシンガンやバズーカを、建物や人に向けて撃っていた。
さながらSF映画の様な光景に、一夏は困惑する。
この機体は[ヴィラクマ]、テロ組織[ディスティニー]が保有する
量産型ガーディアン[ミーレス]の一種である。
説明を忘れていたが、ガーディアンはリンゲージと呼ばれる
ALTIMAと特殊な親和性持つ人間でなければ扱えない、
幾ら強力な兵器が一体あったとしても、[数]の前には弱いのが道理だ。
そこでALTIMAを動力等の中枢部にのみ使用した量産型がミーレスだ。
性能面では劣るが、操縦法さえ覚えれば誰でも扱える上に大量に作れる長所があり、
戦車戦闘機と並ぶ一般兵器として各国の軍に配備されている。
勿論、流出してテロ組織などでも使われている。
「!」
一夏の視界に、先ほどの帽子を拾ってあげた少女が写った。
どうやら、両親とはぐれてしまったらしい。
おまけに足を怪我している、自力では動けないだろう
一夏は迷わず彼女を抱きかかえ、安全地を目指して走り出した。
(どこか、安全な場所は!?)
とは言ってもコロニーは円柱型、そして居住部は内側にある。
当然、地球と違って流れ弾の危険は大きい。
こういった事態に備えて、コロニーには専用のシェルターが存在するが、
生憎近くには存在しない。
おまけに2mから4mの、鋭い爪を持つ怪物の群れが出現した。
数が多く、応戦している別のロボット一団も劣勢だ、
状況はさらに悪化し、絶望的とさえ言える。
(どうする!?どうすれば!?)
しかし、運命は彼を見捨てるような真似はしなかったようだ。
「・・・?誰だ?」
言葉ではない、頭、いや心や魂に直接語りかけているような
不思議な声が、一夏を呼んだ。
それに従い、一夏は工場ブロックに歩を進める、
そして、自分を呼んだであろう存在を目にした。
「これは・・・」
それはロボットだった。
18mほどの全長で、細いが力強さを感じさせる外観、
純白で、デュアルアイカメラの人間っぽい顔とV字のアンテナが特別感をだしている。
周りに人はおらず、胸のコックピットハッチが
まるで待っていたかのように開いていた。
「お前か?俺を呼んだのは」
少女を頑丈そうなコンテナに隠れさせ、一夏はコックピットに身を沈める。
こんな物を扱った覚えは無い、だが確信に近いものを感じた、
[こいつを動かせる]と、[動かし方を知っている]と。
一夏は操縦桿をゆっくりと動かした、それに従い、機体はゆっくりと起き上がる。
今度は歩かせる、これもまた自分のイメージ道理に動いてくれた。
そして、ハッチを閉じるとモニターが点灯、
一部に[アルプスエクエス]と文字が表示される。
「それが、お前の名前か?」
モニターに怪物の群れと、虐殺を行ったデュアルゴーグルアイのロボット一団が写る。
「俺は……守りたいんだ」
自分自身に言い聞かせるように、一夏は操縦桿を握りしめる。
「力を貸してくれ!エクエス!」
蕎麦のコンテナに入っていた長剣らしき武器を掴み、
一夏はエクエスを前進させた。
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「アレは?」
コロニー内に突入した樹は驚いた。
受け取るはずだった機体が、ディスティニーの一団と戦っているのだ。
研究所で作られていたのは機体のみ、武装は必要最低限しかない。
しかし、あの機体はそのわずかな武装のみで圧倒している。
相当の実力者が操縦している様だ。
装備しているビームライフルを使い、樹は
試作機の周りに居る敵を一掃し、通信を入れた。
「無事か!?」
『は、はい!』
樹は驚いた、乗っているのはせいぜい中学生くらいの子供だったのだ。
リンケージを育成するための施設はもちろん存在するが、
それでも満15歳以上でなければ入ることが出来ない。
通信モニターに映る少年は明らかにそれより幼い。
「無茶はするな」
『わかりました』
樹はデルフィングにも通信を入れる。
「例の機体が戦闘を行っていた、乗っているのは子供だ」
『!了解です、各機、その少年を援護してください!』
樹以外にもコロニーに突入した面々に向かい、アーセルは指示を飛ばす。
同時に、デルフィナスもコロニー内に突入した。
「……よし!」
その光景に勇気づけられた一夏もまた、ディスティニーに向かって行った。
ついでなんですが、今作品のアンケートに追加項目があります。
詳しくは活動報告まで、どうかお願いします。