寝落ち頻度が激しくなっていたので。
一人暮らしは厳しいですね。
「では、いくぞ!」
グレンデルの愛機エインセルは翼から
AL粒子をまき散らしながら飛翔する。
ファンタズム級は飛行能力と近接戦闘能力に優れた
レムリア大陸独自の機種。
まるで獲物を追う隼のごとく、オーク達が駆る
粗悪な
「さしたる脅威ではない……だが」
見渡す限り、オークが群れを成している。
二人だけでどれだけ持ちこたえられるか、
そんな不安が脳裏をよぎる。
(ええい、気をしかと持て!)
グレンデルには誇りがある。
レムリアの貴族、弱者を守る騎士としての誇りが。
故に、彼は膝を屈さなかった。
守護者である自分にとって、敗北とは国と民を守れなかったことを意味する。
自分が生まれ育った国を、自身が納める美しい領地を、
ささやかな日々を精いっぱい生きている民達を愛するグレンデルにとって
それは絶対に認められない事だった。
それは息子のライデンも同じだ。
「父上、私は何者かに統率されてるように思えます」
「であろうな、ならばその者を討てば勝機は見えよう」
勿論頃ほどの数の中から探し出すのは難しい。
しかし彼らは諦めない、そこに勝機が見えたのだから。
グレンデルは剣を、ライデンは斧を振りかぶり、
オークの群れに向かって行った。
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「これは……」
眼前の光景に、弾は呆然とした。
ガラクタを積み上げたような外見で、頭にあたる部分に
剥き出しのコックピットが存在するロボットに乗る、
猪を更に醜くしたような頭の亜人が百を優に超える
数で群れを成していた。
そして、それに応戦するのは騎士甲冑を
思わせる形状をした、ドラグオンより小柄のロボット。
どう見ても猪頭の方が悪役に見える。
「……よし」
騎士甲冑の方を助けようと、弾はボウガン型射撃兵装
[アポロニアン]を構えた。
弾の目に、猪頭に指示を出しているような仕種をしている機体が見えた。
他より遥かに大きく、派手な装飾がされている。
弾はコイツが親玉と判断、狙いを定め、引き金を引いた。
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「ぬぁぁぁぁぁぁ!」
もう何度目かもわからぬ回数、グレンデルは
剣を振り下ろした。
そろそろ疲労が溜まり、剣も所々刃こぼれをしていた。
(いかんな……)
いくら優れた技術で作られた名剣だとしても、
所詮は武器、[消耗品]でしかない。
後何度か振るえば折れてしまうだろう。
(ここまでか)
絶望に沈みかけたその時、
タァァーーーン
一発の銃声が響いた。
「なんだ!?」
レムリアの遠距離への攻撃手段は魔法や弓、投石器なのが主流である。
魔法とゆう技術があるために科学技術が発達せず、
リンケージの魔力を利用して防御や飛行を行う[魔導コンバーター]
との相性が悪いため、レムリアでは銃火器がほとんど存在しない。
砲撃戦の弱さを補うために他国製のガーディアンを輸入しているが、
気風に合わないためにかなり少数だ。
つまり、レムリアに住む人間にとって
銃声などそうそう耳にするものではないのだ。
「あれは……」
一際大型で、派手な装飾をされていたウォーマシンが
爆発霧散するのが辛うじて見えた。
同時に、オーク達が我先にと逃げ出していく。
凶暴だが臆病でもある性質のオークだ、
一度モラルブレイクが起こればもう立て直せない。
どうやら、命拾いしたようだ。
「父上!あれを!」
ライデンが指差す方向を見ると、銃声を出した張本人
弾が乗るドラグオンが歩いてきていた。
弾は別に難しいことは考えていない、ただ助けた相手の状態を
確認したいから出てきただけだ、しかし。
「
グレンデルは驚愕する。
リンケージであれば誰でもある程度乗れるファンタズム級と違い、
レムリアで
乗り手に高い魔導士としての力を要求し、故にファンタズム級とは
比較にもならないほどの高い性能を誇る。
一人乗れる人間がいるだけで、その家の位も格段に上がる。
それぐらいレムリアにとってミスティック級は特別な部類なのだ。
「助太刀いただき感謝する
つかぬ事をお聞きするが、貴殿はどの家の者か?」
『俺は………その……』
グレンデルも貴族、人を見る目には自信がある。
この一言から乗る人間がどんな人間か、大体の見当がついた。
(おそらく外国人だな、何かしろの理由で飛ばされたか
しかし若いな……息子達よりも下か)
その後、ガリューが援軍を連れてきたので、
グレンデルはこの話をいったん脇に置いた。
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あの後、弾はフォンブラウン家と共に
女王の御前に連れて行かれることになった。
ミスティック級の乗れる人間が出るのは一大事。
これぐらいは当然である。
「あ、あの……俺はこれから」
「待たれよ、これより女王陛下の御前だ」
弾は困惑しながらも、周りを真似て
片膝を立てる形で跪く。
そして二分ほど経っただろう。
弾はその場所が不思議な感覚に包まれるのを感じた。
「面を上げなさい
そして此度のグランマナリスを動かした者よ
私の前へ」
その言葉に顔を上げ、弾は初めて女王の
姿を見た。
(女神?)
そう思うほど、目の前の人物は美しかった。
超一流の職人が丹精込めて作った人形のごとく
美しくも優しげに整った顔立ちに、光沢を放つ
腰まで伸びた深緑の髪、長身で豊満な肉体だが、
いやらしさを一切感じず、逆に触れることを躊躇ってしまいそうだ。
「この国を治める女王、サナート・レムリアです」
自分の前に来た弾に、サナートは右手を差し出す。
それに戸惑いながらも、弾はそっと手を握る。
(不思議だ……温もりを感じる)
手を放し、静かに後ろ下がろうとする弾を止め、
サナートは再び口を開く。
「この国の人間ではありませんね、
それに記憶も無い」
何もかもを見透かされたような物言いに、
弾はすくみ上るものを感じる。
「安心してください、何も害しようとは思っていません」
サナートは静かにほほ笑む。
「精神的は申し分ありませんね
年相応の欲望はありますが、他者を貶めや苦しめ
で喜びを見出す気概はなく、正義感などは十分」
玉座に座っていたサナートは静かに立ち上がり、
そして謁見の間にいた人々を見渡して宣言する。
「これよりサナート・レムリアの名において
この者を我が国の臣民と認めます」
「ま、待ってください
俺はただのよそ者です!」
いきなりのことに弾は仰天するが、
サナートは静かに笑うだけで
大した問題とみていない。
「私は貴方の心を見ました
故に精神面において問題無しと判断しました
グランマナリスに乗れるだけでも十分な資格があります
実力は今後に期待しますがね」
有無を言わせぬとはこのことだろう、
静かだが、サナートの迫力は弾を黙らせるには十分だった。
「我が騎士グレンデル・F・フォンブラウン
貴方に彼を預けます、良き騎士に育ててください」
「御意!」
見つけたんだから責任持てということだろう。
他の家の者達は内心不満を持ちつつ
これで解散となりそれぞれ帰路に就いた。
「よかったのですか?俺なんかを」
「言うな」
フォンブラウン家だけの状態になった時、
弾は疑問を口にするが、グレンデルは静かに諭す。
「確かにお前は余所者だ、だが女王陛下が
悪人ではないと断言された、あのお方の言葉は
我らにとっては何より信用できる証言だ
それに私は路頭に迷ったものを見捨てるほど非常ではない
助けられた恩もあるしな」
「そうだ、手を差し伸べるのは貴族として当然のこと
これから家族となるものならなおさらだ」
ライデンも続く。
「記憶がない以上帰るに帰れまい
……名を聞いていなかったな」
ガリューがようやく、名を訊ねる。
「すいません、名前も……」
その答えに、グレンデルはしばし考え、
「リクセル」
「え?」
「名が無いのは何かと不便だからな
思い出すまででいい、リクセルと名乗れ」
こうして、五反田弾はリクセル・C・フォンブラウンとなった。
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さらに時間を巻き戻して、飛翔市のとある民家。
そこでもう一人の少年、御手洗数馬は目を覚ました。
「……ここは?」
「気が付いたようだね」
部屋のドアが開き、ナイスミドルという表現が似合う
整った顔立ちと爽やかな雰囲気を持つ中年男性が入ってくる。
「私は
「数馬です、御手洗数馬
………あの、なんで俺はここに?」
「覚えてないのかい?
うちの前で倒れてたのを娘が見つけたんだが」
倒れてたと言われても、当然数馬には身に覚えがない。
その日はもう遅いので布団を被っていたのだから。
「すいません、ここはなんて言う都市ですか?」
「飛翔市だよ」
「へ?」
数馬には心当たりが一切ない都市名だ。
さらに困惑してしまう。
おまけに自分の常識の内、半分以上が通用しない。
「ふむ……嘘を言ってるようには見えないし
これといって悪い人間に見える要素はない、信用できそうだね」
「どうゆうことですか?」
「これでもそこそこ大きな企業の代表でね
人を見る目は十分あると自負しているよ」
「はぁ……」
断言され、数馬は若干困惑する。
「そうだ、家で暮らさないかい?
息子もほしいと思っていたし」
「いいんですか?」
「気にしない気にしない、妻と娘には私から言っておくよ」
親友であった三人、再び出会う日は近い。
数馬のガーディアンは後々登場します。
半分以上私のイメージで選んでいるんですが。
さあ、皆さんはどれかわかりますでしょうか?