どんどん原作から離れつつある主人公。
一樹がどれだけチートかと言うと、
[生身]で[素手]なら千冬でも勝てます。
IS学園、IS操縦者育成を目的として日本が設立した、
世界唯一の教育機関である。
女性にしか使えないISについて学ぶ場所のため教員はほぼ女性
(事務員が一人だけ男性だそうだ)、もちろん生徒は全員女性である。
しかし、今回は例外だった。
一年一組の教室の中、最前列の中央に位置する席に、一人の[男子生徒]がいた。
モデルでもやっていけそうな整った顔立ちに柔和な表情を浮かべ、
背はそこまで高くはないが、細い体格のために実際よりも高身長に見える。
織斑秋斗、[世界初の男性IS操縦者]である。
「次、織斑君お願いします」
朝のHRを担当する山田先生に促され、秋斗は教団の前に立つ。
「織斑秋斗です、趣味は剣道、特技は家事全般
史上初の[男性IS操縦者]として皆さんと共に学ぶことになりました
わからないことが多い初心者ですが、どうぞよろしくお願いします」
自己紹介が終わると同時に、周りから黄色い声援が飛ぶ。
しかし誰も気づいていなかった、彼の目が笑っていなかったことに、
まるで[ケージの中のマウス]を見ているような目をしていたことに。
(フン、俗物共が、精々僕の株を上げてくれよ)
秋斗にとって、他人など[利用する駒]、あるいは自分という[宝石]を磨くための[砥石]、
IS学園に来たのも、ただ単に自分を引き立てる飾りが欲しいからだ。
腹の中では他人の頭を踏みつけることしか考えていないのである。
「では最後に編入生を紹介します、入ってきてください」
全員の自己紹介が終わるのを見計らって、山田先生が扉の向こう側に呼びかける。
周りがざわつき、秋斗は口の端を釣り上げる、
利用できる駒が増えたことに喜び、どう使えるか考えているのだ。
しかし、その笑みは消え、表情は凍りついた。
何故なら入ってきたのは……[男子生徒]だったからだ。
これで彼が注目される要素である[唯一の男子生徒]という称号が消えてしまった。
しかし、それ以上に笑みを凍らせたもの、まるで幽霊を見るような表情にしたもの。
目付きが鋭く、よく見れば皮膚が露出している部分から細かい傷が見え隠れし、
何処か落ち着いた雰囲気と違う点は多いが、行方不明になった秋斗の兄、
[織斑一夏]によく似た、そっくり、イヤ本人としか思えなかった。
「桜野一樹です、趣味は機械弄り、特技は家事全般
[二人目の男性IS操縦者]ですが、変な期待をされても困りますので
そのあたりはご了承願います」
一樹は自己紹介を終えると、突然後ろを向き、片手で自分に向かって
振り下ろされた[出席簿]を弾き飛ばした。
出席簿はクルクル回りながら飛び、横にあった掃除用具の金属ロッカーに
文字どうり[突き刺さった]、[紙]の出席簿が[鉄]のロッカーに、だ。
一樹は相手に向かって非難の目を向ける。
背が高く、どことなく一樹や秋斗に似た顔立ちに鋭い眼光の美人、
[織斑千冬]、最強のIS操縦者の称号である初代[ブリュンヒルデ]を持つ人物、
秋斗の実姉、そして一樹とは[血縁]の[姉]である。
記憶喪失の一樹には知る由もない事だが。
「何か処罰の対象になることをしましたか?」
「…ロクな自己紹介もできんのか、織斑兄」
「俺は名前、趣味特技、クラスメイトに向けての挨拶までしました、
一体何が不足しているのか御教授願えますか?
後俺の苗字は桜野です、織斑ではありません」
「……お前は一夏だ、私の実の弟の」
「人違いです、俺には姉も兄も弟もいません、席に戻ります」
千冬にとっては[行方不明になった大切な弟との再会]でも、
一樹にとっては[ワケの解らない話をする初対面との会話]、
つまり一樹にとってはさっさと切り上げたい話なので、背を向けて席に戻ろうとする。
「待て、?!」
「いい加減にしてください」
まだ終わってないと、千冬は一樹の肩を掴むが、視界が周り、床に叩きつけられる。
一樹が相手の腕を掴んで抱え込むように投げる技、所謂、柔道の[一本背負い]をしたのだ。
あまりの事に、周りは絶句する。
千冬は[世界最強の人物]と認識されているのだ、その彼女が易々と投げ飛ばされる様を
目撃したならば、やはり絶句するのは当然だろう。
(何故あのクズが姉さんを、そうか不意打ちだったからだ、そうに違いない!)
信じられない光景を見た秋斗は、[自分の中の常識]で考えられる事実を浮かべ、無理矢理納得する。
(何故だ……何があったんだ一夏)
一人倒れたまま弟の身を案じる千冬は、変わり果てた一樹に絶句する。
(……この女性、俺の[失くした記憶]に関係あるのか?)
周りを気にせず席に戻った一樹は、[自分の記憶]について考えるのだった。
_______________________________________
あの夜の一件の後、IS学園の教師達は会議の結果、
一樹を[第二]、リクセルを[第三]の[男性IS操縦者]として入学させることにした。
この順番は、一樹が先にヘルメットを取って顔を見せたからだ。
増えたとはいえ、男性操縦者は希少であり、あらゆる方面から狙われることになる。
世界とISについて説明を受けた二人はそのことを理解し、入学に応じた。
女尊男卑主義のバカ連中に命を狙われるのも、男性開放主義者に利用されるのもゴメンだからだ。
仮に決められた寮の部屋は別だったので、教室は同じかと思いきや、
結局違い、一樹が一組、リクセルが四組となった。
________________________________________
一時間目の授業が終わったあとの休み時間、一樹は自身の席で予習をしていた。
記憶喪失のまま三年間ISなど存在しない世界で暮らしてきたため、
そうでなくとも千冬がずっと関わらせなかったせいで、彼には知識が不足していたからだ。
この世界に留まる事になる以上、ISと敵対することになるだろう。
だからこそ、彼は知識を覚え、それを元に対抗策を考えねばならなかった。
加えてこの学園は[女尊男卑の連中が世界中から集まる場所]、
授業についていけないとなると、馬鹿にしてくる連中が掃いて捨てるほど出てくるだろう。
自分が馬鹿にされるのはどうでもいいが、仲間や家族までもなのは我慢ならない。
以上の理由から、彼は休み時間も予習に当てていたのだ。
「ちょっといいかな?」
声を掛けられて振り向くと、自分と同じ男性IS操縦者、織斑秋斗がいた。
表情はにこやかだが、目が笑っていない。
オマケに[スターゲイザー]として感じるドス黒い[悪意]に、
一樹はロクな人物ではないと判断、深入りはしないと決める。
「織斑秋斗だったな、同じ境遇同士の挨拶か?」
「話があるんだ、屋上に来てくれないか?」
「俺は見ての通り予習で忙しい、それに話ならここでもできるだろう
それとも何か?ここじゃ出来ないやましい話か?」
秋斗が苦々しい表情を浮かべ、長い黒髪をポニーテールに結った女子生徒が
こちらを睨みつけてくるが、一樹は構わず視線を戻し、電話帳の如きぶ厚い
教科書の内容をノートに独自解釈などを混ぜながら書き込んでいく。
「大した用じゃなになら後にしてくれ、覚えることが多いんだ」
「……よくもまあ、僕達の前に顔を出せたね」
「初対面に向かって何言ってるんだ?どこかで頭をぶつけたのか?」
何を言っても取り付く島がないどころか、逆に遠ざけられていく様に
秋斗は困惑し、どうすればいいかと考え始めるが
(まあいい、どうせ虚栄だ、この学園からいられなくしてやる)
勝手に結論を出して納得し、席に戻った。
(何なんだ、あのどす黒いオーラは)
今まで様々な人間のオーラを感じてきたが、あそこまで黒々とした
ゴミ溜めの様なオーラを纏う人間は初めてだ。
まるでアビスゲートそのものの様で気分が悪くなる。
(警戒しないとな)
そう結論し、一樹はより熱心に予習を再開するのだった。
次回はセッシーからの決闘宣言予定。
でもって、簪が登場し早速フラグ建設。
そしてエクエス再登場。
MGメンバーは現在一樹とリクセルだけなので、ヒロインは当分簪だけの予定。
鈴はどうするかね……