Re:ゼロから始める一方通行(いっぽうつうこう) 作:因幡inaba
真っ白な空間に放り込まれた。
はっきりとしない意識の中で、
数多ものノイズが飛び交うのを聞いた。
その中に一つ
はっきりと耳に届いた。
聞こうとしたわけじゃない。
一方的に告げられた。
────お前には、なにも守れない
と。
「ッ!?」
俺は夢から逃げるように現実で覚醒した。いや、既にどんな夢だったのかなど覚えていない。が、相当不愉快なものだったのには間違いない。
上半身を起こし、状態を確認する。少しだるい。起き上がったという事実の理解が遅れ、動作一つ一つの感覚がぼんやりとしている。典型的な貧血の症状だ。
咄嗟にこめかみ辺りを触れ、身体の状態を確認する。確かに本調子ではないが、何らかの異常の後、治療を施されたようで基本的に身体に問題はない。
一体何が起きた?
そもそもこうなる前に何をしていた?
そんな考えは次の瞬間消え去っていた。
「あら、目覚めましたわ、姉様」
「そうね、目覚めたわね、レム」
少しも動かず綺麗な直立だったために気づかなかったが、部屋には俺以外にも人がいたようだ。
「俺はどれくらい寝てた?」
「二時間ほどたちましたわ、お客様」
「およそ二時間になりますわ、お客様」
二時間か、やはり記憶が混濁している。
それはそれとして、目の前に佇む二人のガキは使用人か何かだろうか。
メイド服? を華麗に着こなし、片や水色よりの青い髪で右目を隠し、片やピンクよりの赤い髪で左目を隠している。違いがそのくらいしか見当たらなかった。双子、それも一卵性、髪色的には二卵性と見るべきだがかなり似て……
いや、そんなことはどうでもいい。
「レム……と?」
「レムはレムです、お客様」
「ラムはラムよ、お客様」
この双子は青髪の方がレム。赤髪の方がラムというらしい。
それぞれ名前を知ったところで思ったのは俺に対する態度。
お客様、ね。ここまで、下手に出られるのは人生初だ。エミリアが言うにはここの館主は相当の変人らしいが、この使用人からはそんな気は微塵も感じられない。
「二時間ってこたァもォ9時を回ったところか」
そういえば腹が減った。今朝から頭を使ってたからか、いつもより空腹感が大きい。
そこで何を察したのか双子の使用人は言った。
「もうじきロズワール様がお戻りになられます、お客様」
「もうしばらく待ってちょうだい、お客様」
レムは真顔のまま。ラムは冷やかすように微笑みながら。
「……あァ、そォかい」
気遣いが上手いというか、俺そんな顔に出てたか?
ロズワールってやつがこの館の主らしい。ロズワールというと、ロズワール・L・メイザースだろう。ここルグニカ王国最高峰の魔術師であり、大規模なメイザース領の領主。魔法を学ぼうと思えば必ず通る名だ。だからこそ知っているのだが。
エミリアは確かただのエミリアとか言っていたな。この館を使っているのはどんな事情だ? あの騎士ラインハルトの態度といい高位な人物であるというのは分かるが……。
とそこでふと気付いた。天井を見ながら考え事をする俺を双子の使用人はじっと見ていた。
そうか、
「悪ィな、戻っていいぞ」
「承知しました、お客様」
「ではごゆっくり、お客様」
と言葉を残し、いそいそと退室していった。
俺のことを客などと言っていた辺り、出るに出れなかったのだろう。ラムの方は途中から崩れてたが。
そして入れ違いにある人物が入ってきた。
「元気そうで残念かしら」
「あァ?」
頭に煽ってくる幼女だ。相変わらず腹立つやつだが、
「何の用だ?」
「ふん、思ったよりも平常そうで心底残念なのよ。それにしてもバカなやつかしら。そんな状態で魔法を使おうとすれば、そうなるのは当然なのよ」
魔法……そうか、思い出した。
事は単純、口喧しい幼女を躾ようと得たばかりの知識で魔法を使おうとしたのだ。そこからの記憶がない。
「俺はどうなった?」
「詠唱を始めたかと思えばすぐに血を吐いたのよ。更に続けていれば例えベティーでも寿命を縮めていたかしら」
「……待て。その言い方はなンだ? まさか俺の治療をしたのは……」
「ベティーなのよ」
「なン、だと……」
最悪だ。コイツに借りを作るとは……。
それにしてもコイツが俺を治療してくれるとはな。相当嫌われていたと思ったが……。
「よくもまぁそんな体で魔法を使おうと思ったものかしら」
「そォいやさっきから言ってたが俺の体には異常でもあンのか?」
「大アリなのよ。むしろ自覚がない方がおかしいかしら」
そして俺は衝撃で不可解な事実を告げられる。
「お前のゲートは既に壊れているのよ」
お疲れ様です。
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