Re:ゼロから始める一方通行(いっぽうつうこう)   作:因幡inaba

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こんばんは!毎日投稿はここまでになりそうです……頑張ってきましたがわりときつい 


11話 同僚

 不安と緊張が混じり合う新生活の初夜、門出を祝うように光る月を見ながら語る。

 

「姫と従者、俺とエミリアたんの禁断の恋が、始まりを告げたんだな……」

 

 感慨深くふけるも、横から飛んでくる無機質な声がスバルを現実に戻す。

 

「あァそォ。ンで、なンでてめェは俺の部屋に居ンだよ」

 

 入浴を終え、残すところ寝るのみとなった二人。スバルは一方通行の部屋のベッドに寝転がっていた。

 一方通行は残り僅かとなっていた文字の勉強を再開。終わらせたら直ぐに寝るつもりだったが、簡単にはいかないかもしれない。

 

「いやなんつーか、俺ちょっとこういうの憧れてたんだよ。仕事終わりに同僚と話すっていう大人の青春! ってわけで俺とトークしようぜトーク!」

 

「そォか死ね。……いや、これを見ろ」

 

 速攻で終わらせようと思ったが、一方通行には確認しておきたい気になることがあった。

 スバルに向かって、今朝書庫で見つけた英語で書かれた本を雑に投げる。

 

 スバルはばふっ、とそれを顔で受け止めると、表紙に何も書いてないことを確認してから、中を見る。

 

「なっ!? これは……」

 

 開くや否や、瞬きを加速させ、驚愕を表すスバル。無理もない反応だ。一方通行だって初め目にしたときは似たような反応をした。

 

 異世界入りが確定した状況で、地球上の言語で書かれた本を目の当たりにすれば、二人でなくても同じ反応をするだろう。

 

 もっとも、

 

「これは、さっぱり読めん」

 

 驚くポイントは人それぞれなのだが。

 

「死ねやてめェ」

 

「ぶへぁ!?」

 

 一方通行はその場で手を振るい、能力で生み出した強風でスバルをベッドから吹き落とした。

 

「うわ痛ぇ……ん? なんでこの世界に英語の本が?」

 

 床に打った頭を擦りながら、スバルが問いかける。

 一方通行は一つため息をついて、本を寄越せとジェスチャーした。

 

「これが書かれたのは400年前だ。俺は英語は訳せるが、専門でも通訳者でもねェ。こうもボロボロで所々穴が空いてちゃ全容を把握することはできねェ」

 

「ああ、虫食いがあるのか。そりゃ厳しいかもな」

 

 スバルはそれが難しいことを知っている。彼は一時期、英語をできないことをこう言い訳していた。

 

『いや、考えてみろ。国で一番偉い総理大臣やら政治家連中でも、外国人と話すとき通訳をつけるだろう?それはつまり通訳者になりたい人だけが英語を勉強すればいい、ということではないだろうか?』

 

 後にちゃんと調べ、その考えがいかに愚かだったかを思い知った。そのため彼は、できると専門の違いについてはよく知っている。

 

「ばァか、死ね」

 

 不快感を隠そうともせずそう言う一方通行に、スバルは別の話題で攻めることに決めた。

 

「そ、そうだ。お前の魔法陣について教えてくれよ! あれの効果ってなんなんだ?」

 

 スバルは入浴中から気になっていたことを話題とし、すかさず問いを投げかけた。

 

「ありゃァ、この本の通りなら──」

 

 『精霊の加護』

 それは魔法陣の効果範囲のマナであれば、術者のマナとして魔法に変換できるというもの。名はその効果から来ており、ゲートを失い、本来魔法を使えないものでも使えるようになるため『人工魔法器』なのである。

 

 とはいえ、魔法の発動は術者の腕次第であるため、一方通行は魔法の研究を続けなければならない。

 

「へぇー。ってお前ゲートないの!?」

 

「ないっつゥか、俺には心当たりないが、既にぶっ壊れてるらしい」

 

「あぁ、それで……」

 

 浴室で、去り際にロズワールが言った言葉の意味が分かった。

 

『アクセラレータ君の前で魔法の話はあまりしない方がいいかもね』

 

 ロズワールは一方通行のゲート事情に気づいていたのだろう。それで遠回りにスバルに釘をさした。

 

「ん? てことは全然魔法トークできるってことか!? よっしゃそうと分かりゃ魔法だ魔法。魔法についてトークしようぜ!」

 

 未だ魔法に心を踊らせるスバルは、テンションを上げて話し始めるが、そのテンションは一気に落ちることになる。

 

 コンコン、と優しいノックの音とともに扉が開かれ、入ってくる一人の人物。

 

「ここにいたのねバルス」

 

 未だ入浴を済ませてないのか、メイド服を纏った赤髪の少女ラム。彼女はスバルを見つけると、ズカズカと歩いていきスバルの腕を掴む。

 

「な、なんだよラムちー!?」

 

「なんだよ、じゃないわ。文字を教える約束だったでしょう。それなのに部屋にいないなんて……」

 

「あ、あぁーそんなこともあったような……って一方通行は!? アイツはいいのか姉様!」

 

「アクセルには必要ないでしょう」

 

(アクセル?)

 

 今一定まらない一方通行の呼び方。本人は特になにも思わないが、ラムはひそかに一番しっくりくる呼び名を考えていた。

 

「ちょアクセルっヘルプ! ヘールプ!」

 

 当の通称アクセルは、見向きもせずに机に向かっている。

 

「薄情者ぉぉぉーー!!」

 

 去り際にそんな言葉を残して退室したラムとスバル。

 一人になった部屋で、アクセルはボソッと呟いた。

 

「……ゥるっせェなァクソガキが」

 

 気分が変わった一方通行は、勉強を止め、窓際に立つ。

 窓から見えるのは広大な庭。そしてその一部に青白い光が集まっている。中心にいるのはエミリアだ。彼女は誰かと会話してるかのように、表情をコロコロと変えている。

 

 ドクン

 

 一方通行は自分の心臓の音を聞いた。

 

「……?」

 

 別にいつも通りだ。心拍数が上がる要素はなにもない。だかエミリアの顔を見れば見るほど、その音は止まらない。

 

 なにもない。

 彼女を見てもなにも思わない。

 なにもないのに、心音だけが跳ねる。

 まるで自分に話しかけるように。

 彼はまだ知らない。

 

 ──自分の無意識空間が激しく揺れていたことに、気付くことはない。

 

 

────────────────────────

 

 

 深夜2時。

 隣の部屋からゴンッ、という音が聞こえ、一方通行は目を覚ました。

 

「……あァ?」

 

 まだはっきりとしない意識の中で、その音が響く。一方通行の隣はスバルの部屋だ。なにかあってからでは遅いため、様子を見に行くことにした。

 

「ちっ」

 

 扉を開けて目に入ったのは、ベッドから転落したであろう体勢のスバル。どうやら寝相が悪いだけだったらしい。

 

「ったく……ン?」

 

 一方通行はスバルの部屋の机の上にある本を手に取る。

 

「童話、か。イ文字だけで書かれてンのか」

 

 パラパラ、と流し読みしていくと一つの物語に目が止まった。

 

「嫉妬の魔女サテラ?」

 

 その聞き覚えのある名前が気にかかり、その物語を全て読む。

 

「400年前に世界の半分を飲み込ンだ災害、か」

 

 何故そんなものの名前を偽名に使ったのか。その答えはすぐに出る。

 

「お人好しが……」

 

 パタン、と閉じた本を机に戻し、自分の部屋へ戻る。

 

 そのまま今度は、朝まで覚めない睡眠に入るのだった。

 

 

─────────────────────

 

 

※蛇足です。本編に全く関係ない、とは言いませんが勢いで書きました。

 

 

 『物語 ???』

 

「よしっ、今だ!やれえぇぇーー!!!」

 

 怒号のような掛け声を受け、一人の男が突っ込む。男は仲間のサポートを無駄にすることなく、弾幕の嵐を掻い潜り、ソレに接近。

 

「届いたっ!」

 

『いっけえぇぇーーーーー!!!!』

 

 その場に集う全ての者が声を張り上げ、その男に声援を送る。

 

 だが、真っ黒なソレは己の危機を目の前に、何重ものバリアを張った。

 

 人々はそのバリアが如何に強力なものか知っていた。だが迷うものはいなかった。彼らはその英雄を信じきっていた。

 

 彼なら

 あいつなら

 あの男なら

 あの人なら

 

『やってくれる』と。

 

「あア゛!!」

 

 その英雄は人々の思いを背に、バリアを次々と破壊していく。

 ガガガガガガッパリンッッ、と全てのバリアを破壊しきり、その男の拳がついにソレをとらえる。

 

「っっっ悪ィがァ!!こっから先は一方通行だっ!行きのガソリンしか積ンでませンってなァ!!」

 

 彼はその勢いを止めることなく、ソレを貫かんという勢いで飛んでいく。

 

 彼は知っていた。ソレを倒すことは不可能であると。だからこそ彼は選んだのだ。自分がとることができる最善の手。そして、

 

 ──自分が一番後悔してしまう手を。

 

 それでも彼は、苦しみとともに。

 

「愛してるよ、      」

 

「あァ、俺も…………俺、も……     」

 

 その日ついに、人類は災厄の封印に成功。

 何年にもわたる、世界の半分とたくさんの生命を巡る戦いに終止符をうった。

 

 




お疲れ様です。
蛇足はガソリンの台詞が使いたかったので勢い任せに書きました。たくさんの閲覧ありがとうございます。また、お気に入りしおり感想ともいつも嬉しいです。これからもよろしくお願いします

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