Re:ゼロから始める一方通行(いっぽうつうこう) 作:因幡inaba
これが本来の更新ペースだと思います……なにかと忙しくて。
スバルと一方通行がロズワール邸で雇われ早五日。
今宵、光源を月明かりに絞った部屋で会話する二人の男女。それは一見、微笑ましい上司と部下の会話に見えるが、所々滲み出る不穏な空気がこの邂逅の意味を表していた。
「あれから五日。二人の様子はどうだい?」
切り出したのは館の主ロズワール。その低く、囁くような声は広くは渡らずとも、自らの膝に座る少女には充分届いている。
「そうですね。アクリルに関しては言うことはありません。仕事は未経験らしいですが、一度教えたことは反復することなく完璧にこなしています」
五日かけてもラムの一方通行の呼び方は定まっていなかった。その場その場で微妙に変えているため、本人はもちろん、周りの者もそれにツッコむことはない。
「それはすばらしい。してスバル君の方は?」
「バルスは……物覚えは悪くありませんが、知らないことが多すぎます。よほど育ちがよかったのでしょう。それにしては教養に欠けますが……」
「あらら。まぁまだ始まったばかりだ。長い目で見てあげようじゃない」
クツクツと微笑をもらす主人を前に、やや呆れた表情を見せるラム。主従といえど彼らが一定の信頼関係にあるのは間違いない。
少しの間そうして日常会話を楽しんだ後、ロズワールは今回の核心に触れる。
「して──間者の可能性は?」
「……現状では可能性の話しかできませんが、かなり薄いかと」
「ふむ、その心は?」
「まずアクセラレータですが、彼は聡明です。教えたことを即座に吸収し、得た基礎から応用をこなす。傑物といっても差し支えない。だからこそ、たまに見せる間抜けな部分が演技とは思えません」
間抜けな部分、というのは一方通行やスバルならではの常識に欠ける部分、また複雑な文法が絡んだ際の伝書のミス等を指す。
「ふむ、彼が優秀というのは同意だ。では現状は気にしなくていいかな。私も身内に気を回したくないかぁらね」
「次にバルスですが。彼は良くも悪くも目立ちすぎです。特に悪い方に……エミリア様への態度ときたらもう……」
余程思うことがあるのか。スバルに対してはあることあること言い続けるラムを見て、ロズワールは表情を崩す。
「なるほど納得。てことは彼らは本当に善意の第三者か……」
そう言うと、ロズワールは机に向かっていた椅子を回し、窓と向き合う形になる。懐で縮まるラムが月明かりに照らされ、目を細める。
「しぃかし、彼もめげないねぇ……おや?」
窓から見えるのは館の敷地内の庭園。月光でライトアップされた緑が美しく映えるなか、庭園の端で談笑するエミリアとスバル、そして一方通行の姿が見えた。
「今日は彼も参加しているようだぁね。大方スバル君に連れてこられたって感じだろうけど。スバル君の情熱は尽きないねぇ」
「女はあれくらい追ってくれた方が嬉しいものですよ」
「ふっふっ、女心は我々には一生分からないものだぁよ? ──分からないからこそ、魅力的に見えるわけさ」
そこで備え付けられていた幕は下り、そこから先、その部屋の内側は何者も見ることはできなかった。
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時は少し遡り、浴室。
「よし、いける、いけるぞ俺。風呂上がりの自分はいつもより五割増しイケメンに見える、その現象が今まさに俺に訪れている。これは──いける」
鏡の前で髪をいじりながらブツブツ呟くスバルと、
「ァ? なンか色落ちしてねェか? 異世界じゃァ洗剤も合いませンってかァ?」
着替えを済ませ、自分の服に文句を言う一方通行。彼らは業務時間上、入浴の時間が被る。
「よし、セットも完璧! さぁ今日こそいったりますか! な、一方通行!」
「はァ? ンで俺も行くみてェな言い方してンだ」
心底めんどくさそうに返す一方通行に対し、スバルは分かっていたとばかりに言う。
「チッチッチ。分かってないな一方通行。いつもいつもこの時間、俺だけがエミリアたんに会いに行く。そうなればマンネリ化は避けられない。何事もマンネリ化するのはよくない。よって今日はお前もって、待てぇぇぇぇーー!」
「ン?」
自分の言葉を最後まで聞こうとせず、浴室から出ようとした一方通行を必死に止める。
当の一方通行は、何か言ったか?といった空気を醸し出している。
「お願いします! 今日だけ! 今日だけ! な?」
手を合わせ拝むように頼み込むスバルに、一方通行は避ける方が面倒だと考え、着いていくことにした。
「おおっし! じゃあ行こうすぐ行こう!」
「オイ、引っ張るンじゃねェ」
お疲れ様です。
次回、久々にあの娘が出てきて色々な話。
表現がんばってみました。感想待ってます♪
一方通行の呼び方ですが、
地の文→一方通行
スバル→一方通行
異世界組→アクセラレータ
エミリア→あくせられーた
となっております。
あなたの推しキャラ
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