Re:ゼロから始める一方通行(いっぽうつうこう)   作:因幡inaba

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こんばんは。ちょっと中途半端だけど投稿します。少し忙しくなり、書けなくなりそうなので途中ですがあげます。


13話 月を見て……

 

 ロズワール邸の庭園。そこは日頃の手入れのお陰か、昼は日に照らされる草木がサンサンと明るい緑に溢れており、夜は月に照らされ、そよ風に吹かれる草木が、物静かで厳かな雰囲気を醸し出す。

 

 庭園端の一角では無数の青白い光が揺蕩い、幻想的という要素を加えていた。

 

 その中心にいる少女に近づく男が二人。

 

「よ、よっす。こんなとこでキグーじゃね?」

 

「毎日日課に割り込んでくる癖に。あ、あくせられーたも来たの」

 

「連れてこられただけだ」

 

 少女エミリア。長い銀色の髪は淡い光に照らされ、美しく輝いていた。

 

「つゥか別にフルで呼ぶ必要ねェよ。そンなアホみたいな呼ばれ方も困るしな」

 

「えっと、じゃあ、あー君?」

 

「ブハッ」

 

 不意打ちのあー君にスバルは全力で吹き出し、腹を抱えて笑い転げる。

 

「いや、あっくん?」

 

「ちょっ、もうやめてエミリアたん。俺のライフはもう0よっ」

 

 真顔で言い放つエミリアとなにも考えず笑うスバル。その傍らで大きくため息をつく一方通行が一言。

 

「殺す」

 

「へ? ぷげらっ!?」

 

 突如発生した強風に吹き飛ばされ、転がるスバル。エミリアはそんなこと気にもせず、一方通行の呼び方を考えていた。

 

「もォいい」

 

「そう?じゃああくせられーたで」

 

「なん、で、俺だけ……」

 

「あれ、どうしたのスバル。そんなに転がって」

 

 わざとなのか天然なのか、明らかに後者なのは言うまでもないが、彼女の行動は一方通行から見ても少し面白いらしく、一方通行がエミリアに対して負の感情を抱くことはあまりない。

 

 大丈夫、とスバルが手でアピールすると彼女は再び青白い光と向き合い、対話を再開した。彼女の日課というのは、精霊たちと対話することだ。それが契約の条件であったりするらしい。

 

 特にやることもない一方通行は芝生の上に仰向けに寝転がる。両手を枕にし、全身の力を抜いた。空を見上げる、視界に映る月と星々。月の光を見ながらぼんやりと上の空になる。

 

「……見てて面白いものでもないでしょ?」

 

 その静寂を破ったのは意外にもエミリアだった。

 

 一方通行は答えない。というより聞こえてないという方が正しいが。

 

 その問いには、一方通行と同じく仰向けになって夜空を眺めているスバルが答える。

 

「エミリアたんと一緒にいて、退屈と思うことなんてねぇよ」

 

「なっ」

 

 あまりにストレートな言葉にたじろぐエミリア。スバルの言葉など普段は適当にかわすのだが、問題は雰囲気だ。

 実際スバルにいつものおちゃらけた様子はなく、寝転がったまま真顔で答えていた。

 

 スバルもその事実にはっ、となって上半身を起こし表情を崩す。

 

「あ、あー、ほら具体的にはアレだ。最近はエミリアたんとゆっくり話す機会もなかったし?」

 

「そ、そうよね。スバルはお屋敷のお仕事を覚えるのに大変だったでしょうし。うん、一生懸命……一生懸命……頑張ってたものね」

 

「優しいフォローがむしろ痛いっ」

 

 新卒二人組の一週間は、片や順調、片や停滞といった感じだった。与えられた仕事を二回目以降完璧にこなす一方通行と、与えられた仕事を先輩に手伝ってもらいながらやっと50点というスバル。

 

「あ、でも裁縫だけは完璧貰ったよ」

 

「本当に一部分だけ突出して器用なのね」

 

「生活に必要のない技術を育てるのが趣味なもんで」

 

 ひたすら自堕落に自分のやりたいことだけをやり続けた人間の末路である。

 

「でも、他の仕事もめげずにやってて偉いじゃない。ラムとレムもこっそりだけど、スバルのことを褒めたりしてたのよ?」

 

 そう、比べられる対象がアレなだけにスバルが見劣りするが、実際スバルは常人よりも物覚えがよく、始めの一週間にしては充分すぎる成果だった。

 

「まじか!まさかのツンデレでしたってか!?あとは俺の前でそれやってくれたら満点だよ!」

 

 ツンデレとは、相手が気づかなければ嫌われてると勘違いされがちだ。それにより嫌われてると勘違いする鈍感主人公モノは結構多い。

 それをスバルはたくさんの恋愛教科書(ラノベ、ギャルゲetc)から学んだ。

 

「そう考えると今俺フラグ多いな。これがゲームなら選び放題なんだが……」

 

 下衆なことを画策するがこれはあくまで現実(リアル)であり、ゲームではない。哀れな幻想を口にすると、段々恥ずかしくなり頭を抱えて左右にゴロゴロ。

 突然の奇行に戸惑いつつも、エミリアは話題を変えようと、

 

「でも毎日大変じゃない?」

 

「あーもう超大変、エミリアたんの腕、胸、膝のローテーションで眠りたい」

 

「はいはい」

 

 今度はしっかりとかわすエミリア。素っ気ない彼女の反応に涙する。そんなスバルを見て、クスクスと笑うエミリア。

 

「そうやって茶化せる間は大丈夫そうね」

 

「もし折れちゃったら添い寝してね?」

 

「考えておく……ていうのはなんか恐いから、嫌」

 

「言質頂けませんでした! 泣」

 

 起こしていた上半身を再び寝かせ、星と月の光を見ながらふとため息。

 エミリアも夜空を見上げるのを確認し、今だと用意していた言葉を……

 

「──月が、綺麗ですね」

 

「手が届かない所にあるものね」

 

「ぐっはぁぁ!?」

 

「え、なに!?」

 

 何が元ネタかは知らないが、そういう意味だと知っている言葉。それはこの世界では当然通用せず、当たり前の反応をされてしまう。

 

 胸を抑え転げ回るスバルを見て、今まで発言せず、夜空を眺めていた一方通行が口を開く。

 

「アホかオマエ。今時そんな言い回し使うやついねェよ」

 

「くっ……でもお前分かってるやないけ」

 

「え、なにか意味があるの? あくせられーた」

 

「『月が綺麗ですね』てのはある文豪が『I love you』という文を訳す時に使った言葉だ」

 

 かの文豪、夏目漱石は『I love you 』という英文に対して、『日本人なら、月が綺麗ですね、とでも訳しておけばいい』と授業したそうな。それが真実なのかは、今は確かめようもないが。

 

「意味は、私はあなたを──」

 

「ストォォォッップ!!」

 

 そこでスバルが全力で制止。当然、その先を他人に言われるわけにはいかない。

 

 

「ハッ、下らねェことで騒いでンじゃねェよ」

 

「俺からしたら重要なことなんだよ! 世界一といっても過言じゃないほどにな! あでもやっぱり世界一はエミリアたんの存在だけどね」

 

「過言じゃねェか。……俺は戻るからな」

 

「あ、待って、あくせられーた」

 

 何を思ってか、立ち去ろうとする一方通行をエミリアが止めた。

 

「あくせられーたはアレ見てどう思う?」

 

 エミリアがアレ、と指差したのは空に浮かぶ月だ。

 二人が月に対する思いを言ったから、もう一人にも聞いてみようという興味であろうか。彼女の考えていることは一方通行には分からなかった。

 別に当たり障りないため、今一度月を見て浮かんできた思いをまんま吐き出す。

 

「……高っけェ所から見下ろしてンじゃねェぞ」

 

「ぷっなぁに、それ」

 

 そこまで面白かったか、というくらい笑う彼女を見て、一方通行が何を思ったかは分からない。

 

「ふふっ、おやすみ、あくせられーた」

 

「あァ」

 

 その短いやり取りを最後に、一方通行は館の中へと消えていった。

 

 




お疲れ様です。
ちょっと遠出してきます。
感想待ってます♪

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