Re:ゼロから始める一方通行(いっぽうつうこう)   作:因幡inaba

28 / 51
こんばんはー。いらん番外編挟んでの本編です。




15話 コンティニュー《1》

 

 真っ白な空間に放り込まれた。

 はっきりとしない意識の中で、数多ものノイズが飛び交うのを聞いた。

 

 その中に一つ

 はっきりと俺に届いた。

 聞こうとしたわけじゃない。

 一方的に告げられた。

 

 

────お前には、なにも守れない

 

 と。

 

「ッ!?」

 

 その男、一方通行は悪夢から現実に逃げるように覚醒した。

 

(守れない……だと?)

 

 自分が何を守るというのか、と疑問を浮かべながら夢の内容を吟味する。

 

 豪雨の音のように、ひたすら雑なノイズが耳に流れ、周りには何もない、見渡す限り白のみの空間。そんな中だからこそ、はっきりと聞き取れた言葉。

 

(アレは、誰の声だ?)

 

 それだけが思い出せなかった。そこで彼は違和感に気付き、右手でこめかみの辺りを抑える。

 

(体が怠い……貧血?)

 

 更に思考は加速する。

 

 ──血を出したなンてこたァありえねェ、変な体勢で寝た記憶もねェな。最近は俺にとってありえないほど健康的な生活を送っていたハズだ。待てよ、血を出した記憶……

 

 そこまで思考して、ベッド脇に立つ少女の存在に気付く。

 

「っ!? 何だオマエら、いたの、か……?」

 

 相変わらず綺麗な直立だったため気付かなかったが、扉を開ける音などはしなかったため、少なくとも起きてからはずっといたのだろう。

 

 だがなんというか、違和感があった。目の前にいるのはレムとラム。それは間違いない。一方通行はその違和感を無視した。

 

「っと、今何時だ?」

 

「今は陽日九時になります、お客様」

「今は陽日九時になるわ、お客様」

 

「九時……いや、待て。お客様だと?」

 

 ロズワール邸の使用人の業務開始時間は七時だ。寝過ごすなどあり得ない……という疑問が一瞬浮かぶが、それはまさに一瞬で消え、別の疑問に思考が持っていかれた。

 

「? はい、お客様はお客様です」

「? お客様はお客様だわ」

 

 そして違和感の正体に気付く。

 

 一方通行にとっての逃げ道は、悪戯されている、というものだが、ラム一人ならともかくレムはこんなことをするタイプではない。それは重々承知だった。

 

 加えてこのタイミングでの貧血の症状。

 

 つまり、

 

「オイオイ、笑えねェぞこりゃァ……」

 

 ──世界は、五日前に戻ったのだ

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

 人は褒められたい生き物であり、自分の存在を認めて欲しいと常に思っている。『無視される』ということに対して不快感を表すのは、その人間がそこにいないかのように扱われるからであり、存在を否定されたことになるからである。

 

 今一方通行は、それに似た感情に襲われていた。

 

「チッ、めンどくせェなァ……」

 

 が、なんてことはない。彼の人間らしい部分はそこまで成長していなかった。これまで周りの人間を信じることなく、避け続け、孤独に浸っていたのが一方通行だ。変わり始めているとは言え、一週間やそこらでは本質は変わるものではない。

 

 レムとラムが退出し、一人になった部屋でこれからすべきことを考えていると、不意に開かれる扉。

 

「あァ、オマエもだったな」

 

「元気そうで、心底残念かしら」

 

 出会い頭から若干腹を立てた様子のベアトリスだ。ここまでくると一方通行も既視感を覚えずにいられない。

 

「何の用だ?」

 

「思ったよりも平常そうで心底残念なのよ。それにしてもバカなやつかしら。そんな状態で魔法を使おうとすれば、そうなるのは当然なのよ」

 

 呆れたように言うベアトリス。ネタが割れてる一方通行からすると、言ってはなんだが茶番に過ぎないため、早々に話を進めようとした。

 

「あァ、そォだったな」

 

「その分かったような感じ、ムカつくのよ。大体本当に分かってるのかしら」

 

「ゲートが壊れている状態で魔法を使おうとしたらどうなるか、実験しただけだ」

 

「いーい迷惑かしら。何でベティーがそんな愚行に巻き込まれなきゃいけないのよ」

 

「そォいや治療してくれたのはお前だってな」

 

「……ふん、これに懲りて二度とバカなことはしないことかしら。生き急ぐんじゃないのよ、人間」

 

 機嫌を損ねてか否か、前回と比べ随分早く退室しようとするベアトリスを、あろうことか一方通行は呼び止める。

 

「ベアトリス」

 

 それに返事をすることはないが、扉に向かっていた体を再び一方通行へと向けた。

 

「っ……なンでもねェ」

 

「なら呼ぶんじゃないのよ!」

 

 ベアトリスは更に怒りを大きくし、出ていってしまった。

 

 彼が口にしたかったのは謝礼の言葉だ──と、本人は自覚していない。そもそも呼び止めたという事実に、彼自身が疑問を抱いた。

 

 だが、彼は確かにベアトリスを呼び止めたのだ。感謝の気持ちを伝えるために。実際、言葉が紡がれることはなかったが、感謝をするという気持ちが見え隠れした瞬間だった。

 

 そういう意味でも彼、一方通行は本質から変わり始めている。確かな結果を伴って。

 

 

 にしても、と一方通行は独り言をこぼす。

 

「こりゃァ、一方通行(いっぽうつうこう)ってなァ引退かもな」

 

 立ち上がり、その部屋を後にするのだった。

 

 

 




生き残りたい 生き残りたい まだ生きてたくなる

お疲れ様です。
作者はバンドリ派です。でも好きなんです
感想評価待ってます

※作者から質問です。ルビを振った言葉に傍点をつけることはできないのでしょうか?調べてみたのですが、別々の方法しか載ってなかったのです

あなたの推しキャラ

  • エミリア
  • レム
  • ラム
  • ベアトリス
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。