Re:ゼロから始める一方通行(いっぽうつうこう) 作:因幡inaba
こちらは一方通行×ラムに想像以上にハマった作者が自己満足100%で書いたモノです。本編ではストーリー構造上不可能なcpなので番外編で書いていきます。
確認作業の時間が短いため、本編よりも杜撰な文章です。
この番外編シリーズでは本編以上のキャラ崩壊が起こっているため、ほんの少しでも苦手な方は今すぐブラウザバックしてください。
構わない方はごゆるりと!
「よっしゃエミリアたん! デートしようぜ!」
もはや常套句と化した台詞が
まだ浅い夜、一日の仕事を終えて自室で寝ていた所、窓を開け放していたのは間違いだったかもしれない。
この時間は庭園で精霊術師たるエミリアの日課が行われている。
そしてそこに一方通行の同僚であるナツキスバルが割り込む、これもまたロズワール邸の日課だ。
(邪魔な音は遮断……と)
『空気の振動反射』
その瞬間、一方通行の耳には話し声は愚か、風の音から衣擦れまであらゆる音が届かない状態となった。
元凶である間抜け面を頭に浮かべ、思わずため息をこぼす。
──毎日毎日、よく続くものだ。
恋焦がれる相手にアプローチするのは何も悪いことではない。むしろそれを抵抗なく続けられるスバルはある意味すごいと言える。
ただそれは一方通行には理解し得ないもの。
あそこまでスバルを必死にさせるのは一体何なのだろうか。こればかりは言葉で説明されても理解できない。
まだこの世界に訪れて間もない頃、一度スバルに尋ねてみたことがある。
返答は長々としていたが纏めると、
『好きだから』の一点。
あまりに酷な回答だ。
そんな玉虫色な言葉、理解できようもない。
※玉虫色=曖昧
『……肉?』
『そりゃ食い物の好みだろ』
こんな不毛な会話も生まれよう。それ程までに一方通行は感情論に対して軽薄であった。
『例えば……一緒に居て楽しいとか、長い時間一緒にいたい、とかそういうのかな……って恥ずいなこれ!?』
スバルは幾つかそれに該当するような感情を述べた。
先の言葉と打って変わりかなり具体的な表現。
しかしそれも無意味だった。
一方通行は人生において楽しいと感じたことなど殆ど無い。仮に感じることがあってもその場に他人はいないだろう。
だからそれ以上その話が続くことはなかった。こんな話、深く考えてもバカバカしい、と切り捨てた。
そんな風に当時はさらっと流して次、と言った事柄の話だったのだ。
だが今この時、音の無い世界で寝台に寝ている一方通行に異常が発生。
──一緒に居て楽しいとか、長い時間一緒にいたい……
この言葉を反復してから、とある桃髪のメイドが頭から離れなくなっていた。
一体どうしたことだろう。別のことに思考を回そうとしても、まるで頭の中に写真でも貼り付いているかのように離れない。
加えて胸の辺りを中心に広がっていく高揚。自身の能力を用いてもまるで制御できない熱は、確かな興奮を訴えていた。
──突如、勢いよく身体を起こし、掛けていた布団を払いのけた。
当然少しも引かない熱を鬱陶しく思い、風に当たろうと窓から身を乗り出す。
視界に開くのは月光に映える落ち着いた雰囲気の広い庭園。いつの間にやらエミリアとスバルは中に戻っていたようだ。
肌寒い夜だ。通常展開している能力を全て解いてひたすら夜風に身を預けた。
──寒い、熱い、寒い
分かったのはこの胸の高なりが体温とは無縁のものだと言うことのみ。
抵抗むなしく、まるで効果を得られない無駄な行為を止めてとりあえず座って動きから落ち着く一方通行。
すると、時間が立つにつれて心の方も落ち着いてきたよう。
これはつまり一時的なものだったのだ。
以前にスバルが言っていた『深夜テンション』とかいうやつに違いない。
そう自分のなかで言い訳し、再発しないようにと早々に眠りについた──。
☆
ロズワール邸使用人の朝は早い。
朝食の準備から入るためにも、七時には着替えなどの始業準備を済ませて集合する必要がある。
一方通行が時間で抜かることはない。既に習慣化された動きで準備を済ませ、台所へと向かっていた。
一方通行が台所にたどり着いた時、既にラムとレムが待っていた。
流石にベテランメイドである。一方通行と合わせてこの二人が遅刻することは無い。
「アクセラ、バルスは?」
「……いつものだろ」
ラムの問いかけに、そっぽを向きながら答える。
未だスバルだけは稀に寝坊、頻度は徐々に少なくはなっているが、例のごとく連夜話し込んでいてはゼロにはならない。
その度に三人には迷惑がかかる……ハズなのだが、
「仕方ありませんね。ではレムが起こして参ります! 姉様とアクセラレータ君は先に取りかかっていて下さい」
明るい笑顔で言い放ち、パタパタとスバルの部屋へと向かうレム。彼女だけはスバルの寝坊を推奨……いや、毎度直ぐに叩き起こしてくる様から五分五分といったところだろうか。
スバル曰く、優しいけど同じくらい厳しいそうな。
一方通行からはとてもじゃないがそんな風には見えない。
理由は……「スバル君、スバル君の寝顔…」なんて口ずさみながら去っていくレムの姿が全てを物語っている。
「アクセラ」
「……ンだよ」
「ラムはいつかバルスを殺るわ」
「……あっそォ」
ラムはラムで相変わらずのシスコンぶりで、残された二人のこんな会話も日常茶飯事。
ここまではスバル寝坊時のテンプレートとも言える流れ。
しかし今日は少し違うようだ。
どうも一方通行の様子がおかしい。ラムと目を合わせようとしないし、心ここにあらずと言った感じで会話にも意志が感じられない。
そしてそれにラムが気付かないハズがない。
「どうしたの? アクセラ」
そうやって一方通行の顔を覗きこむラム。
突然視界に入ってきたラムに一方通行は、
「おァッ!?」
思い切りのけぞり、数歩後退した。
「な、なンでもねェよ。オラ、さっさと準備しちまうぞ」
わざとらしく足の向きを変えて食材に手をつける一方通行。
明らかに狼狽している。誰が見てもそう思うだろう。
その異常事態にラムは一瞬寂しそうな顔になるが、次の瞬間にはニヤリと意地の悪い笑みを浮かべていた。
足音を殺しながら作業中の一方通行に近寄り、
「うおォォ!!?」
水で濡らした布を首筋に押し当てた。
「ガキみてェなことしてンじゃねェッ!」
振り返り様怒鳴り散らす一方通行を前に、微笑むラムはあまり無い胸を張って手を添えると、諭すように言う。
「ラムと二人きりで緊張するのは分かるわ」
「どこに目ェ付けてンだ」
「美少女を前に心身ともに落ち着かないのは仕方ないこと」
「耳も飾りかボケが」
隣人の制止を意にも介せず続けるラムは、極めつけとばかりに口元に手を運び薄く目を開けると、
「でも濡れタオルで涙ぐむってどうなのかしら」
ぷっ、と感じ悪く嘲笑を浮かべた。
当事者はギリッと歯を鳴らしながら体を震わせて怒りを表明。嘲るラムに食ってかかる。
「涙ぐンじゃいねェッ! 確かにいきなり冷てェモンを……ァ」
と、ここで彼は一つ大きな失敗に気付いた。
昔であれば起きるハズの無いミスだ。ロズワール邸で平凡な日常に慣れる、言ってしまえば心地よい環境のせいで起きてしまったミス。
こればかりは彼が抜けていたと言わざるを得ないそれは、
(あァ……反射を切ってたンだっけ)
──あまりにも……。
最強が聞いて呆れる、自らへの失望で一気に毒気を抜かれた一方通行はため息を吐き、中断していた作業を再開しようとする……が、
「──それで、何かあったの? アクセラ」
これでまるで抜け目が無いのがラムの意地の悪さなのだ。
一方通行の動きがピタリと止まる。
確かに何かはあるのだが、まさか本人の前で打ち明けるわけにもいかない。
見向きもせず作業を続けながら答える。
「だから、何でもねェっての」
「ふーん。あくまでそれを貫くのね」
「貫くも何もねェよ」
それが全てだ、と片手間で主張する一方通行。
これで誤魔化せたら……いや、誤魔化せないということを彼は知っている。でなければこんなにも彼女を意識していない。
それでも知らぬ存ぜぬを通すのが最善ではあるのだ。一方通行はそれ以上何も語らず手作業を進めていく。
「いいのかしら?」
不意にそんな言葉が飛ぶ。
ピクリと耳が跳ねた。この台詞、そしていつも以上に無機質な声色から録でもない事を考えているのが分かるからだ。
ここは無理矢理にでも返答すべきことを一方通行は知っていた。
「少し、引っ掛かることがあるだけだ。オマエには関係ねェ」
流石に適当すぎるか? そう頭で考えるも補足できそうなことは何も無い。
後悔先に立たずとはよくも言ったものである。一方通行は少し気を引き締めてラムの言葉を待つ。
「そう。ま、いいわ」
反応は、一方通行の予測したものとは全然違うものだった。
この一言で自分も作業に取りかかるラム。これはこれで不気味だが、多少安堵して次のステップに移ろうとする一方通行。
だがそれは未遂に終わる。
「ッ!?」
振り向いた先に、一辺の曇りもない真顔のラムがいたからだ。
いつの間に……、と思いその場で硬直する一方通行。
静寂が空間を支配する中、満を持してラムが口を開く。
「アクセラ」
「…………?」
硬直はまるで解けず、声にならない声で疑問を表す。
「これから五分置きにあなたの前に顔を出すわ」
「どンッだけ嫌な奴だテメェ!? グッ……」
声を発した後、直ぐに後悔する。
反射的に応えてしまったとは言え、これでは自分がラムのことで悩んでると言っているようなものだ。
(クッソ……らしくねェ)
自分がここまで不覚を取るとは……、と先ほどから下がり続けている自己評価を内に秘め、一方通行は仕方ないとばかりにこの日初めて、心なしか
──綺麗な顔立ちだと思う。雪のように白い肌、満月を想起させる癖に小さいというお手本のような輪郭。桃色の髪と赤い瞳がその可憐さに拍車をかける……
(こりゃ本格的に──)
その思考の渦に自己否定の言葉が続きそうになるが、それより早く耳に入った言葉が一方通行を現実に引き戻す。
「……アクセラ、そんなに見つめないで……虫酸が走るわ」
──そんなラムを見て、一方通行は心のモヤが全て吹き飛ぶのを感じた。
「……あァ、うン。オマエはオマエだわ」
そうだ、何を意識することがあろうか。
冷静になれば普段と何も変わらない。一方通行は一方通行だし、ラムはラムだ。
別の何かに変わってしまったわけではない。
「ハッ、クハハ。オラあのバカが来る前に終わらせるぞ」
そう言って片端から手をつけていく一方通行。
取り憑いていた厄でも払ったかのようにいつも通りだ。ラムはそんな様子を見ながら密かに安堵した。
「ほんと、世話が焼けるんだから……」
また、一方通行も吹っ切れたようにこう思っていた。
(あァ、楽しいねェ。……と一緒にいるのは、ホントに楽しい。やっと……)
本人も自覚していない僅かに赤くなった頬とともに、今日も彼らはいつも通りの日常を過ごす。
この番外編を書くことによって評価が下がる形になっても構わない。書きたかったんだ……
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