Re:ゼロから始める一方通行(いっぽうつうこう) 作:因幡inaba
「徽章盗難、その事実を隠蔽するため相応の対価を支払おう」
朝食の時間は前回と大体同じ流れを沿った。所々内容がずれていた部分もあったが、最終的な着地点はしっかり確保できたため及第点といっていいだろう。
「その台詞を待ってたんだ。俺たちの願いはただ一つ!」
スバルはそこで間を空けて大きく息を吸うと、
「俺たちを五日間夢の食っちゃ寝生活に招待してくれ!」
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その日の夜。スバルはロズワールに借りたペン、白紙の冊子、童話集を持って一方通行の部屋にいた。
結果として、彼らは無事『五日間の衣食住の保証』を勝ち取った。だがその道は楽なものではなかったのだ。
まず、言わずもがなスバルの発言はその意味を汲み取ってもらえず、そこから一方通行が会話に参加し始める。そこまでだと大した苦労はないが、『五日間の衣食住の保証』という要求が弱すぎたのだ。本来、軽いもので済むなら済ませたいであろう館の住民が、
「欲が無さすぎる」
と口を合わせて言うくらいだ。それでも、これで充分だと主張した結果ただ一人を除いてその場は収まった。だがやはり件のエミリアは、
「それじゃ私が納得できない!」
と認めることはなかった。今回、彼女がここまで食い下がる原因は距離感にある。
この二度目の世界で、盗品蔵以降スバルはエミリアやパックと一言も話していない。前回はエミリアの日課に割り込み、互いの距離を縮めていた。だからこそ今回は未だ他人行儀な部分があるのだ。
そして結果として、『五日間の衣食住の保証』に加えて、『出発時の土産』を約束することで何とかその場の全員を納得させた。土産というのは、当分生活に困らないだけの資金。それに行く場所が決まってるなら、そのための足を用意してくれるとのことだ。
「つっても金も足もあんま必要ないけどな」
「あるに越したこたァねェだろ。そしてオマエは自分の部屋に帰れ」
「まぁまぁ。姉様方に指導を仰げない以上、お前に教わるしかないだろ」
文字の書き取りをしながら自らの魂胆を語るスバル。
彼は、周りが全て忘れてしまうなら自分の中に残る約束くらいは守ろう、と考えた。前回のラムとの勉強の日々、そこで交わした約束である『毎日書き取りをする』を律儀に守っているのだ。
「つってもきびぃものがあんな。こんなのを3つも一日で覚えたのか? 俺なら短く見積もっても一ヶ月はかかるぞ……」
気難しい顔をしてそう話すスバルに対して、一方通行は珍しく呆けたような顔を見せた。
「何言ってンだ? オマエが一ヶ月なら俺が一日で合ってンじゃねェか」
「くっそムカつく……でも何も言い返せない。不条理だ、理不尽だ……」
その様子を見て顎を突き出し、ヘラっと煽る様に笑う一方通行。その悪友のようなやり取りは、コンコンと扉が叩かれるまで続いた。
「失礼するわ」
片手で扉を開き、反対の手で抱えるようにお盆を持つ桃色の髪のメイド、ラム。
彼女はその部屋にスバルが居るのを見て、お茶を手際よく三つの湯のみに注いだ。そしてそれぞれ茶托に置き、一つはベッドに座る一方通行、また一つは机に向かうスバル、最後の一つを自分の左手で持つとペタンとその場に座り込み、お茶を啜った。
「……」
「……」
「……」
「ってお前も飲むんかいっ!!」
会心の突っ込みがスバルから飛んだ。
「自然すぎて一瞬麻痺してたけどよくよく考えるとおかしいだろ!」
「あら、お客様のお顔にはその品の欠片もない喋り方が随分似合ってますわ」
「うへぇ……仮にもお客様にこの態度、これいかに」
「食客という名の居候。そう認識してますわお客様」
しれっ、とそっぽを向きながらそう言うラムにスバルはげんなりした。半ば事実を語っているのが彼の反論を封じているのだ。
そんな中、もう一人の居候は他所を向いて呑気にお茶を啜っていた。我関せず、二人の話に見向きもしない彼の態度がそう語っていた。
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それにしても、とラムは前置きして続ける。
「本当にお勉強をしているのね、お客様」
「ん、まぁな。そろそろイ文字だけで書かれた童話くらいなら読める気がする」
そう思いながらそれを口にし、少しニヤけながら童話集に手を伸ばすスバル。端から見れば初めての事にワクワクする少年のようにも見える。
「知らなければ恥をかくような、そんな常識的な話ばかりよ、お客様」
そんなスバルを嘲笑うかのように言うラム。客という立場にいながら微塵も労られている気がしないスバルはこう言った。
「お前ほどお客様お客様言ってるだけのメイドも珍しいよな……」
「つゥかお客様である必要あンのか? 俺がいいって言やァいいンだろ」
そこまで静観していた一方通行がそう言うと、ラムは、待ってましたとばかりに口を開く。
「ではこれからレータと呼ばせてもらうわ」
「お、おォ」
前回では大抵『アクセラ』の部分を文字っていただけに、少し違和感を感じながらも一方通行は承諾した。
そんな二人を見て、僅かに疎外感を感じたスバルは一方通行に習い、こう言った。
「俺のことも好きな呼び方でいいぜ? スバル君っ、とかナツキさん、とかとか」
白い歯をむき出しにして愛嬌たっぷりに言うスバル。ラムが次に言葉を紡ぐのを今か今かと待ちわびていた。
「では、バルスで」
「」
一方通行に対しての呼び方が変わったように、自分ももっとマシな呼び方してくれるかもしれない、と考えていたスバルは、静かに涙を飲んだ。
お疲れ様です。
皆さん渾名つけられたことありますか?自分は一時期『サル』と呼ばれていました。今そう呼ばれたら、「サルに失礼だろ!」って言う自信があります。
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