Re:ゼロから始める一方通行(いっぽうつうこう) 作:因幡inaba
やっとシリアスになってきました。描写難しい
夕暮れ、日は沈みかけ、吹く風が冷たくなってきた頃。木々に囲まれた辺りはすっかり暗くなり、刻々と夜の時が近づいてきていた。
崖際に座り込み、ロズワール邸をボンヤリ眺めていたスバル。夕日もその橙の光を見せなくなった頃、そろそろ起こすか、と立ち上がり後ろで寝ている一方通行に近づく。
「おーいアクセ……おっ」
だがそれには及ばなかった。スバルが声をかける直前、突然何かに気づいたかのようにパチッと両目を開いたのだ。
そして直ぐに立ち上がり、木々の立ち並ぶ森を睨む一方通行。彼は暗い暗いその闇のなかに、悪意の気配を感じ取っていた。
数秒後にはスバルもその物静かな雰囲気を警戒して、木々の先を見ようと目をこらした。
「なんつーか気配っつーの? 俺の危険センサーがウインウイン鳴ってるぜ」
「鬼が出るか蛇が出るか、その面拝ませてもらおうじゃねェか」
瞬間、ジャラっと金属がぶつかり合うような音とともに、木々の隙間を何かが通り抜けてくる。目視することは叶わなかったが、咄嗟に二人は体勢を低くして回避し、頭上を通り抜けていくソレを確認。
「モーニングスター!?」
「チッ」
飛んできたのは見るも恐ろしい刺付き鉄球だった。鎖によって射程を長くするフレイル型のソレは、鎖の先へと戻っていく。
だがそれを一方通行は許さなかった。鎖を掴むと、鉄球をその場で落とし、持ち主が引いても戻せないようにした。
「ナイス一方通行! 最高! 神!」
涙目で震えながら一方通行を誉めちぎるスバル。
それもそのはず、彼が回避できたのは偶然だった。鉄球という恐ろしいものが飛んできた瞬間、恐怖で後退りすると、小石に躓いて転んだのだ。結果的にそれが嬉しい誤算となったが、足が震えていて直ぐには動けなかったため、第二波が来たら終わる、と本気で思っていた。
「さァて、ご対面ってな。まさかこの状況で逃げるつもりじゃねェだろうなァ?」
まだ見ぬ闇の中に問いかけた。
すると、コツコツと足音を鳴らしながらその人物は近づいてくる。
「仕方ありませんね」
ビクッと二人は身震いした。その簡素で透き通るような声色は、あまりに彼らの知る人物と酷似していたからだ。
やがてその人物は闇を分け、月明かりの下に姿を表した。
二人の顔はみるみる驚愕に染まり、額からは汗が流れ落ちる。
「……なるほどねェ」
「どう、して……?」
それは二人がよく知る人物。
思い出す限りいい思い出しかない。時に優しく、時に厳しく彼らを指導し、超が付くほど真面目で姉のことが大好き。姉といるときだけ見せる笑顔がとても可愛らしい青髪のメイド。
「どういうことだ──レム!」
ロズワール邸の使用人、レムはその手にモーニングスターの持ち手を携え、彼らの前に現れた。
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(狙いはスバルか)
あまりにも驚愕な出来事に戸惑うのも一瞬。一方通行は冷静になると、その状況を分析した。
レムの敵意は明らかにスバルに向けられている。自分はこの場から離脱しても普通にスルーされるような。そんな一途な敵意を持っていた。
「なんでお前がこんなことを……」
「ロズワール様の悲願。それを邪魔する者を排除するのみ」
「このことはロズワールも知ってるのか? それともお前の独断?」
「お答えする必要はありません」
「……へっ、そうかよ」
「では──」
しばらく問答が続いた後、再びスバルに放たれる刺鉄球。それをすんででかわし、逆に鎖を掴んで思い切り引きよせる。
「おらぁっ!」
が、
「へっ?」
全力で引っ張っても鎖はビクともしない。単純に力でレムに敵わなかった結果、逆に引き寄せられるスバル。
「うぉあっ」
ギリギリで鎖を手放し、危機を回避するスバル。だがその数秒で絶望的な力の差を思い知ったスバルは、衝撃で痺れる手を見て呟く。
「やっべーなこりゃ」
だがこのときスバルは忘れていた。すぐ隣には同等かソレ以上の厄ネタがいるということに。
その男はどこまでも歪な笑みを浮かべたまま言った。
「おォい、下がってろよスバル。死ンだら殺すぞ」
死んだら殺す、というおぞましいワード。その表情と声色は穏やかとは対極の位置にあり、聞くもの全てを震え上がらせるように冷たかった。
「ひいぃ!?」
絵に描いたような前門の虎後門の狼。
今は片方が味方でよかったと思うばかり。スバルは必死に一方通行の背中に隠れるように移動。それを確認し、一方通行は一歩前進する。
「アクセラレータ君、どいてください」
やはりな、と一方通行は心の中で呟く。
敵意や殺意を向けられることに慣れている一方通行にとって、その人間が誰に悪意を向けているかなど容易に感じ取れる。
「お断りだ」
「そうですか。では仕方ありません」
金属音を鳴らし、モーニングスターを構えるレム。元々攻撃力の高い刺鉄球にレムの力が加わり、触れたもの全てを破壊するような攻撃が放たれる。
ここで待ってましたと言わんばかりに右手を伸ばし、鉄球を受け止める。すると、左手で手刀を作り、鎖に向かって振り下ろす。
「っ!?」
「ハッ」
キィン、と鎖が断絶。手に残った鉄球を崖から落とし、
「柔いなァ。うっかりへし折っちまったわ」
ニヤリ、と笑いながらその圧倒的な力を見せつけた。
お疲れ様です。
土日のうちに書いておきたかった。平日はまた忙しくなりそうで嫌だな。日曜の次は金曜でもいい、違うか?違うね
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