Re:ゼロから始める一方通行(いっぽうつうこう) 作:因幡inaba
序章
声を聞いた気がした。
ただただ真っ白な世界にたった一人黒く、暗く、どこか儚げな少女。
────泣いているのか?
返ってこない。来ることはない。分かっていても、声をかけずにはいられない。
少年は気づいた。
光の世界に一人。真っ黒な少女。
一人しかいないのにまるで四面楚歌を表しているような。
────あァそうか。オマエも一人なンだな。
少年は少女に希望を。
お前だけじゃない。
────もォ一人じゃねェ。
俺が手を差しのべるから。ずっとそばにいてやるから。
────オマエも俺に手を差しのべてくれ。
二人の少年少女の手が満たされた。
まばゆい光が二人を包み込み、
少年は意識を失った。
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※ここから1話。
半袖長ズボン、紅い目に白髪、右手にコンビニの袋を持った少年。
「なンだここは……」
この様である。
そう、少し前までは自他共に認める普通の格好だった。だが今この格好を普通と思っているのは本人だけ。周りからは不思議なものを見る目で見られている。
「頭痛ェ」
目の前を馬ではなく竜が引いてる車が横切った。
トカゲがでかくなって翼を持っただけ、で済ませられるような事態ではないと悟った。
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白髪どころか黒髪の人間すら見当たらない。全員が何らかの民族衣装を着ている。そんな中で一人一方通行にとって普通と呼べる格好の者がいた。
(どォいうことだ?)
その少年は妙に落ち着いている。まるでこの世界を知っているかのような。
(とりあえず情報収集だな)
一方通行はその少年に話を聞くことにした。
──少年と接触することが、後の彼の人生に大きな影響を与えることになるが、今はまだ知る由もない。
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少年に話を聞くべく一方通行は歩き始めた。
(ったく、こっちはまだ事態の把握もできてねェってのに……!?)
心のなかで悪態をついているとふと目のはしに竜が引いてる車に轢かれそうな少女が映りこんだ。
(なぜ竜を止めねェ!?)ダッ
竜車は止まる気配もない。一方通行は高速で、それでも少女を傷つけないよう細心の注意を払って助けだした。
少女はお礼を言って去っていった。だが目的の少年は路地裏に入っていき、それを三人の醜い連中がこそこそと追いかけていった。
(ちっ、立て続けにめンどくせェな……)
だが収穫もあった。それは少女と会話ができたこと。周りの看板には意味不明な文字が綴ってあるため不安だった一方通行だが杞憂だったようだ。
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「ぶっ殺す」
一方通行が路地裏を覗いて最初に聞こえた言葉である。三人のチンピラの一人がいったようだ。
(おォ……思ったより面倒くせェことになってンじゃねェか)
一方通行は笑みを浮かべているが内心穏やかではない。
(まァ3対1だし、あいつがやられる前に助けてやるか...)
と思ったその時。
チンピラの一人を少年が殴った。
(オマエが仕掛けンのかよ……)
更にもう一人のチンピラにハイキック。中々の柔軟性だ。
(……結構やる奴なのか?)
少年は勢いを止めず最後の一人に殴りかかろうとし、次の瞬間。
「すみません。俺が全面的に悪かったです。どうか命だけは──!」
土下座した。
更に他の二人も大したダメージではなかったらしく普通に起き上がり、ポンポンと服についた埃などを払っている。
あのバカは助けなくていいのではないか、一方通行は一瞬そう思ったが他に手がかりもないので助けてやることにした。
「あれ!? 俺無双の攻撃でダメージ小ってどいういこと!? 召喚もののお約束は!?」
「なにわけわかんねえこと言ってやがる! よくもやってくれやがったな!」
早くしないと少年の方がやられそうだ。
「おいオマエら」
一方通行はチンピラに話しかけた。
「あぁ!? 何だてめぇh、グハッ!!」
最初に振り向いたやつの顔面を殴り飛ばし、
「!? てめえよくもやりやがグホァッ」
二人目を蹴り飛ばし、
「カンバリー! ラチンス! てめぇよくゲフゥッ」
三人目を投げ飛ばした。
「「「覚えてやがれぇー!!」」」
何とも小物らしい言葉を残して去っていった三人衆。
一方通行はその背中を見ながらケラケラと笑い、
「忘れてやるよ。さてと、」
正座したまま一部始終を見ていた少年に目を向けた。
「おいオマ──「おぉぉぉー!! 召喚直後強制イベントに颯爽とかけつけ助けてくれる! これはあれか! アンタは俺のライバル枠ってことか!? 今は敵わないけど俺が成長して希に共闘とかするようになってラストには決着をつけるっていう王道パターンか!? これだよこれ! 俺が求めてたものは! いやでもまだ一番重要なヒロインがいない……おかしいな。あ、俺はナツキスバル、よろしくな!!」……」
俺はナツキスバル!! 以外何も解らなかった。
一方通行はハァ、とため息をつくとゆっくりと右足を上げ、
ダンッ!
と自分が立っている地面を半径一メートルに渡って破壊し、
「一回黙れ」
「ひゃ、ひゃい」
少年、ナツキスバルを文字通り黙らせた。
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「一応聞く。出身は?」
「えーっとずっと東の方の国だ」
「……日本か?」
「えっ! そうだけどなぜ分かったんだ? そういえばあんたはどこにいでもいたような格好だな、二人で召喚されたってことか!? まさか二人で一人のヒロインを取り合うっていう展開か!? ていうことはこれから先へぶっ」
「まじ黙れオマエ、殺されたいのか?」
「い、生きていたいです」
「お前はここについてどこまで把握してる?」
「えーっとジャンルは異世界ファンタジー。文明は典型的な中世風。亜人ありありで、たぶん戦争とか冒険もある。動物に若干の違いはあるけど、役割的に変化なし。そいで会話はできるけど文字が違うからおそらく言葉は同じだが書き方が違う。こんくらいか?」
(やっぱ違う世界だったか)
しかも亜人ということは『一方通行』もどこまで通用するか分かったもんじゃない。
物理法則は大体同じだから力の向きはコンプリート。
「ファンタジーってのは例えば何だ?」
「魔法とか?」
「魔法……」
いよいよ危なくなってきた。
「帰る方法は……分かってるわけないよな」
(さァてこれからどォすっかね……)
あまりに情報が少ない上に、左右も分からない世界では詰みに近い。学園都市最高の頭脳をもってしてもどうにもできない事態に一方通行は悩むしかなかった。
直後、
「そこまでよ、悪党」
路地裏に高く、透き通るような声が響いた。
投稿は完成してる分は1日1話。よろしくお願いしますm(_ _)m
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